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現実的なハーレムの作り方  作者: 中高下零郎
完成したハーレムの満喫し方
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妖精達の夏の刺激し方

「もうすぐ夏休みも終わりだね」

「もうすぐ夏休みも終わりだな」

「もうすぐ夏休みも終わりだねー」


 幼馴染と妹を両隣に侍らせて、クーラーの効いた自宅のリビングでテレビ番組を見ながらアイスを頬張る。夏休みの正しい楽しみ方100選に認定されそうな満喫っぷりだが、俺にはまだやり残したことがある。


「……プールか、海に行こう」

「……まあ、夏だしね。覚悟を決めるか。よし四重ちゃん、水着買いに行くよ」

「はーい」


 プールに行くか海に行くかの違いなんてどうでもいい。水着が見たい。水をかけあったりしてきゃっきゃうふふしたい。皆の好感度が下がるとしても、そんな男のロマンを無視するなんて俺にはできず、思い立ったが吉日、早速他の二人に連絡を取る。既に旅行とかでプールやら海やらを満喫している二人は水着を買う必要も無く、あっさりと了承してくれた。隣にいる二人も構わないようで、早速二人で水着を買うために出かけて行ってしまう。


「……ちょっと夏にだらけすぎたからな、身体がたるんでないかな」


 スタイルを気にするのは女の子だけではない。単純な露出度で言えば男の方が高い。女の子以上に本来は見た目には気を付けなければいけないのだ。健康診断の前に断食する手遅れ感のある女の子のように、この暑い中走りこんでみたりと悪あがきをし始める。その往生際の悪さも、きっといい男の条件だから。そして数日後、地元のプールに俺達は集合した。



「海の方が良かったかなぁ」

「海は正直遊ぶのには適さないと思いますよ海の家でアルバイトしてた時も一体海の何が楽しいんだと客を眺めながら悩んでました」

「海ってなんだかんだ言って汚いものね。人間は人間の手が入った場所で遊ぶのが一番よ」

「でもここのプールって結構ボウフラとかいるよ……?」


 ペラペラとお喋りをする、水着姿の妖精達。そんな彼女達を見ながら言葉も失って鼻の下を伸ばすだらしない男。ああ、ここは桃源郷だ。黄金卿だ。理想郷だ。


「セパレートに、ビキニに、ワンピースに、スクール水着……様々なタイプの水着の女の子を独り占め、間違いなくこのプールの中で一番の幸せ者だよ、俺は」

「言葉だけ聞くと凄く気持ち悪いね」

「というか明らかに変なのが混ざってないかしら」

「水草さん、その格好で海の家でバイトしたんですか……?」

「変とは失礼ですねこの圧倒的な機能性と萌えを兼ね備えた究極の装備それがスクール水着なんですよ大体周りを見てください普通に小学生の女の子とかだってスクール水着着てるじゃないですか何がおかしいんですか自分の価値を理解してニッチャ戦略を行く高校生ともなればそのくらいは必要なんです」


 自分のスタイルに自信がないからか恥ずかしいのか露出の低めなセパレートタイプを着る愛らしいロコ、自分のスタイルに自信があるのかないのかよくわからないし、恥ずかしいという概念すら存在しなさそうなスク水の水草さん、スタイルにも自身があるし女は見られてナンボだと言わんばかりにビキニを着た神狩さん、露出こそ少ないもののワンピースで可愛らしい少女らしさをアピールしている四重。皆最高だ。感極まったテンションで早速ヒャッホウと一人近くにあった流れるプールに向かい、彼女達は若干俺のテンションに呆れたり理解を示したりしながらそれに続く。


「……女の子がいっぱいいるなあ」

「声に出てるぞエロ親父」


 プールは女の子の水着を見ることが出来るという素晴らしい場所であるが、同時に危険な場所でもある。プールにいるのは彼女や女友達だけではない、そこら中にいるJSやJCやJKやJDやOLが、男を誘惑する。そして本命のはずの彼女達に白い目で見られてしまう、そんな恐ろしい場所なのだ。そして例に漏れず、俺もそこら中にいる可愛らしい少女やセクシーなお姉さんに目移りしてしまい、ロコに心底見下すような表情をされる。


「男の性だから仕方がないんじゃない?」

「わかりますあそこのJSとても可愛いですよねしかも見た感じあれ旧型ですよ萌えですよなんていうかですね幼女のスクール水着を経由した水滴ってのはきっとネクタルなんですよエリクサーなんですよラブポーションなんですよ」

「JSって何……?」


 しかし俺がそこらの男とは違う点があるとすれば、それはハーレムを作っているということだ。つまり周囲の女性は俺は、男とはそういう生き物だと理解している、故に寛容なのだ。男のロマンを理解してくれる素晴らしい彼女達に恵まれたことに感謝しつつ、さあ行きたいとこがあればお兄さんが連れて行ってあげようと紳士っぽく振舞って見せる。


「ウォータースライダーをしよう。先に君が滑った後に私が滑って君にドロップキック。一度やってみたかった」

「悪趣味だなおい……」


 まずはロコに連れられてウォータースライダーの行列へ。まずは俺が先行して滑り始める。子供の頃は変わった滑り方をしてみようと色々やってみたものだが、結局普通に楽しむのが一番だ。ハーレムという非日常を求めながらこういう部分で日常的な部分を求めるのは矛盾しているのだろうかと悩んだのも束の間、出口が見えてきて水飛沫と共に圧倒的な爽快感で悩みなんてどうでもよくなる。そして期待に応えるため、その場から出ずに待ち構えていると、ロコの悲鳴が聞こえてきた。


「あああああ! 誰か! 誰か助けて!」


 何事だと振り返ってみると、いい年して変わった滑り方をしようとして失敗したのか、頭から突っ込んでくるロコ。俺にドロップキップをかますどころか盛大にロケット頭突きをして本人の方がダメージを受けるなんていう悲劇を起こさないために俺がしてやることは、素直にその場から離れることだ。そしてロコがガボガボと水に頭から突っ込む喜劇が起きた。


「焼きそばにたこ焼きにかき氷さあ夏の味を満喫しましょう」

「あの、水草さん。水草さんは海の家でアルバイトしていたよね? 今更なのでは?」

「海の家でアルバイトをしていた時は調理中は勿論食べられませんしバイトが終わった後に冷めた廃棄予定のを処理していたので全然満喫できていなかったのですそれに女の子が一人でそんなたくさん注文するなんて恥ずかしいじゃないですかわかりませんかねこの乙女心」


 彼女に恥の概念があるのかはさておき、出店で売っていた定番のグルメを彼女と頂く。正直この後も泳いだりするので腹一杯食べるのは勘弁して欲しいところだが、ピンクの悪魔の如く胃袋がどこかの異世界に繋がっていそうな彼女はお構いなしにフルコースを展開して強引に俺の口元に炭水化物を持ってくる。ああ、この徹底的にコスト削減を追求した出店の焼きそばの味。たまにタコが入っていないたこ焼きの味。シロップが少ししかかかっていなくてほとんどかちわりなかき氷の味。確かにこれは夏だ。夏の味だ。


「水泳は久々ね……負けるつもりはないわ」

「俺さっき大量にご飯食べてまともに泳げないよ……」

「男なら言い訳しない」


 そしてお腹がたぷたぷになった後に俺を待っていたのは、本気で泳ぎたくなったらしい神狩さんとの水泳試合。勿論こんな状態で勝負になるはずもないのだが、そんな俺の事情を汲み取ってくれない無慈悲な彼女に何度も再戦を要求され、解放された後にトイレに行って昼に食べたものを全て吐き出す羽目に。


「楽しいね、お兄ちゃん」


 つい先ほどまでゲロを吐いていたことなんて知らない四重と流れるプールで戯れる。若干グロッキーになっている今の俺にとっては、心地よいはずの波すらも若干気持ち良いが、素敵な恋人を、いい彼氏を演じるために精一杯耐えて見せる。


「ああ、俺、幸せだ……可愛い女の子達に囲まれて、彼女達のために奮闘できて、ああ、世界が回っている、俺を中心に回っている」


 他に面白い場所ないか探して来るねと去って行く四重を見送った後、その場に立ち尽くす。このくらくらするような暑さも、ふらふらするような疲労感も、全てが俺が幸せ者であることの証。そう悟った瞬間、突然世界が俺を中心にぐるぐると回り始めた。

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