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現実的なハーレムの作り方  作者: 中高下零郎
実の妹の依存させ方
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偽善的な妹の慰め方

「おかえり四重。今日は少し遅かったな」

「ただいま……。え、えへへ、今日は、靴隠されちゃった。探すのに、時間かかっちゃった。先生が不審に思って話しかけてきて、誤魔化すの、大変だった」

「結局靴は見つかったのか?」

「うん。靴箱の掃除ロッカーの上に置いてあったよ」

「そうか。見つかったなら、とりあえずは良かった」


 学校が終わるとすぐに平穏を求めて家に向かう妹を慰めるために、俺もここのところは毎日学校が終わるとすぐに家へと帰っていた。学校での出来事を逐一報告する四重。これが学校が楽しくて毎日出来事を報告してくる四重なら、どんなに良かったことだろうか。


「ねえヒドラ……私、どうすればいいのかな。思い切って、謝った方がいいかな」

「どうだろうな……謝ってすむレベルなら、そもそもいじめなんて受けない気もするしな……悪い、俺そういう経験無くてさ、あまりアドバイスできねえや」

「ううん、そんなことない。私、凄く助かってるよ」


 四重がこれ以上酷い目に遭う、無い知恵を絞っている日々。決して俺は『四重にいい加減なアドバイスをして、もっと酷い目に遭ってもらって俺に依存させよう』だなんて思っていない。好きな子の気を引くために、依存させるためにいじめを自作自演しているような物語の主人公がいたとしたら、お前は主人公失格だと罵ってやりたい。俺はあくまで『四重を守りつつ、無理をして自分を変える必要はないと気づかせる』という正義の心を体現するのだ。


「そうだ、今日はお兄ちゃんと何かして遊ぶか。たまには気分転換しないとな」

「うん……あ、あれやろうよ。あの、ハーモニカ吹いてて、手足が伸びる」

「ああ、『BLOK!』か……懐かしいな、1機毎に交代して遊んでたな。結局クリア出来なかったけど、今なら出来るかもな。んじゃ、部屋行くか」

「うん」


 幼い頃に親にゲーム機を二人でお願いし、あっさりと買ってもらえたはいいが、ゲーム機だけでは遊べないとは誰一人知らなかったというオチがつき、ソフトはあまり買って貰えなかった。なので一本のゲームを二人で長く楽しんだものだ。二人で仲良く部屋に向かい、今はもうほとんど遊ばなくなった古いゲーム機を取り出してセットする傍ら、四重はキョロキョロと部屋の中を見渡す。


「……随分と、変わったね。こんな可愛らしいぬいぐるみなんて置いてたんだ」

「ああ、それね……水草さん……友達が遊びに来る時に、『途中でゲームセンターに寄ったらもう少しで落ちそうなUFOキャッチャーがあったのでワンコインで見事攻略してやりましたが別にいらないので置いておきますね』とか言いながら勝手に置いていくことをかれこれ何度もやらかしてるんだ」

「あはは、変なの。こっちの難しそうな本は?」

「それも友達が『つまらなかったから置いておくわ』って」

「面白かったからじゃないんだ」

「まあ、そういう子なんだよ」


 彼女達に侵食されてしまった部屋を眺めながら、どこか寂しそうな表情し、すぐに平静を装う四重。そのまま二人で1機ずつゲームをプレイするが、当時よりも下手になっているらしく、最初のステージすらクリアできない始末。


「操作性悪いな……昔はこんなコントローラーに慣れてたのか……」

「あはは……そうだよね、数年も立てば、変わっちゃうよね。うん、変わっちゃうよ」


 先ほどよりも寂しそうな表情をする四重。お兄ちゃんと仲良く二人で遊んでいたのは幼い頃の話。そのうち俺はロコと遊ぶようになり、ロコと付き合うようになり、更に他の女の子とも付き合うようになった。兄妹の仲なんて、時と共に薄れるものだと思っていたし、だからこそ世の中で兄妹愛がタブー扱いされる程浸透していないのだ。


「ダメだ、全然クリアできねー。当時は3面までは行けたし、今なら全クリできると思ったんだけどなぁ」

「難しいね……そろそろ私、自分の部屋に戻るね」

「ああ」


 部屋を出ていく彼女を見送り、ゲーム機を片づけながら今後の方針を考える。ロコの言う通り、四重は一般的な妹に比べればかなりのブラコンなのだろう。けれども友人を失ってしまったショックから、同年代の女の子と一緒に遊ぶことへの渇望が段々強まっている。先程寂しそうな表情を見せたのは、兄が別の女の子の物になってしまったことへの嫉妬よりも、友達が欲しかったからなのだろう。明日は金曜日、ロコ達と一緒に遊ぶ日だ。それにより四重の心の中にある、お兄ちゃんもいて女友達もいる環境への憧れを増大させる、それが現在考えている作戦だ。決して汚くはない。




「きったねー」

「サイテー」

「いやいや、作戦だから」


 翌日、作戦を決行する前にケースケ、ロゼッタに胸の内を明かして見たが、二人ともドン引き。彼女の殻を壊すには、天岩戸から引きずり出すには、多少は強引な方法を使わないといけないんだと力説して見せるが、『傍から見たら、お前がクズ扱いしてる自作自演のいじめやって好感度稼ぐ男と変わらねーぞ』とケースケに言われてしまった。違う、俺はそういう連中とは違うんだ……と、友人達に否定された事に少しばかり心を痛めながら、自己暗示の如く自分に言い聞かせる。



「あ、おかえり、ヒド……ロコさん、いらっしゃい」

「やあ四重ちゃん。調子はどうだい?」

「うん、ヒドラがアドバイスしてくれるおかげで、状況はそこまで悪くなってないよ」

「そっか、それはよかった」

「それじゃ、ごゆっくり」


 ロコと共に家へ。既にリビングのソファに座っていた四重だったが、ロコが来ていることに気付くとそそくさと自分の部屋に戻る。罪悪感を感じながら部屋に向かい、今日の遊びの準備をし始める。


「なんかさー、四重ちゃんが呼び捨てすると多少腹が立っちゃうんだよね。まあ、妹が兄を呼び捨てにするのは割と一般的な事だとはわかってるつもりだけどさ、それでもさ、うん」

「わかったわかった、わかったから接続手伝ってくれよ」


 ロコ達にはどんちゃか騒いで四重を羨ましいと思わせよう、という俺の意向は伝えていない。こういうのは自然体でやってもらわなければ効果が期待できないからだ。だから『皆で実況プレイ動画を撮ろう』だなんていう、盛り上がること間違いなしの題材を選んだわけだ。


「あー、緊張するな。テステス、テステス……どうも皆さん初めましてー狐狼猫と書いて『ころにゃん』と申しますー」

「何だその酷いセンスは……」


 予行演習をするロコを冷ややかな目で見ていると、扉が開いて残りの二人も部屋に突入してくる。


「ふふふふふ私をいつも訳のわからないぬいぐるみを部屋に置いていく変な女だと思っていたら大間違いですよ今日はなんとカカオ99.9%を大量にゲットしてきました」

「そんなもの食べながらゲームできないわよ……というかゲームするよりそれの食レポした方が再生数稼げるんじゃないかしら……?」


 部屋に大量の苦さしかないチョコレートをばらまき得意気になる水草さんと呆れ顔の神狩さん。隣の部屋にいるであろう四重に、十分に盛り上がりは伝わるだろうと俺はニヤつきながら準備を進めた。





「あー……噛み噛みだった……ねえヒドラ、これお蔵入りにした方がいいよ」

「私も同感ですね一人で実況プレイする時はうまくいったんですけど皆で喋るとなると難しいですね」

「私他人のプレイに文句言ってばかりだったわ……」


 3時間後、解散となり一人部屋に残される。ロコの言う通りこの録画した実況動画はお蔵入りにするつもりだ、可愛い彼女達をネットの晒し者にするつもりはないし、目的は動画をアップロードすることではないから。


「……すん……すん……」

「?」


 四重は羨ましがってくれたかな、と期待していると、壁の向こうからわずかに声が聞こえる。方角的に四重の部屋だ。鼻をすする音にしては大きいな、と俺は聞き耳を立てる。


「うっ……えぐっ……ひぐっ……う、すん……ぐじゅん……う、うぅぇ、ぇえっっ」

「……」


 それが寂しさを刺激しすぎた、せつなさが炸裂した四重の嗚咽だと気付いた時、ケースケの言う通り、俺も蔑んでいた連中と大差ないと理解し、後悔の念に駆られる。そして、それが妹は俺が救わなければ、愛さなければという強い責任感へと変わるのだった。



好きな子の気を引くために、依存させるためにいじめを自作自演しているような物語の主人公……過去作(割と黒歴史)

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