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現実的なハーレムの作り方  作者: 中高下零郎
コミュ障少女の落とし方
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ぼっちな少女の探し方

「ぼっちな女の子、っていっても、どの程度のぼっちな女の子ならいいんだろうか」

「うーん、それは難しい質問だね。ぼっち、って言ってもなんだかんだいって友達の一人や二人いる子って多いしね。『ぼっちな女の子は楽に落とせる』なんて同じ事を考える男も多いからさ、友達はいないけど彼氏がいる、なんて女の子もいるし。ひとまずは情報収集が必要だね」


 ハーレムを作ると誓った翌日、俺達は学校の空き教室でお弁当を食べながら作戦会議を行う。『友達いない女の子カモ~ン、ハーレムの一員として愛してあげるよ^^』なんて呼びかけをして来てくれれば話は早いが、そんな女の子はいないだろうし、そもそもそんな女の子は俺としてもちょっと嫌だ。


「問題は、俺はそこまで友達が多い方じゃないから、情報収集が苦手ってことだ」

「同じく。どうしても恋人持ちは友情を犠牲にしてしまうね」


 見栄を張っているわけでもなんでもなく、俺達にはきちんとそれぞれの友人がいる。だが、多いか少ないかで言えば、多分少ないだろう。恋人との時間を大事にする代わりにどうしても友人との時間を疎かにしがちだし、恋人がいるというだけで嫉妬の目で見てくるような人だっている。学生生活において恋人というのは確かにステータスかもしれないが、決していいことばかりではない。特に俺達みたいに、同じ学校、同じクラスの恋人というのはTPOを弁えなければリア充から一転いじめの対象にだってなりかねない。だから俺達は恋人同士であるということは隠してはいないが、人前で惚気るようなことはまずしないのだ。


「ひとまずは、同じクラスで探してみるかな……高校二年生になってまだ1ヶ月だしなあ、どんな奴がいるのかすらいまいちわかってないし」

「そうだね。ま、頑張りなよ。私は足を使うタイプじゃないから、参謀役だから。その辺は君の腕の見せ所だ」

「彼氏のハーレム作りのために足を使って奔走する彼女ってのはなんかアレだしな」


 あはははは、と笑って本日の作戦会議は終了。教室に戻って、各自それぞれの友人の下へ向かう。教室の中心あたり一つの机を挟んでカードゲームをしている二人の男に割って入り、よくわかんないけど流行っているらしいカードゲームを眺めながら話しかける。


「おっすおっすおっすおっす」

「あー、あれ罠かな……」

「いいんだぜ? 攻撃してもヨ」

「無視すんなや」


 俺を無視してカードゲームに興じる不届きな友人達に悪態をつくのだが、二人とも面倒くさそうに俺を見て悪態をつく。


「俺達はカードゲームやってんだからヨ、ロコちゃんと乳繰り合っとけヤ」

「全くだぜ、こないだもカラオケ行こうぜって誘ったらロコちゃんと映画見に行くからって拒否りやがって」

「おいおい妬いてるのか?」

「くたばれ」


 こんなノリだがこれでも俺の中学時代からの数少ない友人、一般的なチンピラ男子のケースケと帰国子女様のロゼッタなのだ。とりあえず持つべきものは友人だ、ぼっちな女の子についての情報を聞くことにしよう。


「ところで我が友よ。友達のいない女の子を探しているんだが、心当たりはないか?」

「ああ? 何でそんなことを聞くんだよ。理由もなしにほいほい情報提供するほど俺はいい加減な人間じゃないぞ」

「ミーツー」


 怪訝そうな顔をする友人達。確かに恋人すらいる男が、友達いない女の子を探してるなんて言ってきたら俺だって怪しむというもの。友情の深さを信じて、他人に聞こえないくらいの声で俺は正直に話すことにした。


「……俺がハーレム作りたいって中学の頃言っていたのを覚えているか?」

「ああ、覚えてるよ。凄く気持ち悪かった。もう一度言うぞ、凄く気持ち悪かった」

「高校生になってロコちゃんと付き合いだしたから、真っ当になったんだなあと感動したネ」


 中学の頃、理想の恋愛なんていう話になるたびに男はやっぱりハーレムだ、なんて話をして、毎回のように『気持ちはわかるけど、引くわ……』みたいな反応を返されたのを覚えている。当時を思い出して呆れたような顔をする友人達だが、今の状況を話したら更に呆れられることだろう。


「で、この前ロコにハーレム作りたいって言ったら、面白そうだなって協力してくれることになったんだ」

「……お前馬鹿じゃねえの?」

「話を聞く限りロコちゃんもかなりの馬鹿ジャネーノ?」

「おい、人の彼女を馬鹿にすんじゃねえよ」


 俺の予想通り、俺にもロコにも呆れはじめる友人達。まあ、正直言って俺もロコが協力的な姿勢を見せた時、『大丈夫か、この女……?』なんてちょっとだけ思ってしまったし。本当はあの時、彼女にきちんと説得されたかったのかもしれないなあなんて、自分の不安定な価値観を考えながら続きを語る。


「で、ロコが言うには、『友達とかがいない孤独な女の子なら、何股かけても別れを切り出せないからそういう子を狙って、やがて本当に自分を愛してくれるように頑張る』というのが現実的なハーレムの作り方らしい」

「うわあ酷い考えだな、ロコちゃん見損なったよ」

「のほほんとした顔して結構考えることは物騒だよネー」

「だから人の彼女を馬鹿にすんなよ」


 自分で馬鹿にしたりするのはいいが、人に馬鹿にされると苛立ってしまう。恋人とはそういうもんだ。というわけで俺が孤独な女の子を探している理由をきちんと伝えたのだが、友人達は顔をしかめる。


「まあ、理由はわかったけど、残念ながらお前に紹介できるような、友達いない女の子の知り合いはいないなあ。というか友達いないってわかってるのに知り合いって言うのはちょっと酷いだろう?」

「大体俺だって彼女欲しいからナー、なるほどナー、友達いない女の子カー、俺も狙ってみるかナー」

「やめとけやめとロゼッタちゃんよ。友達いない女の子なんて地雷だよ地雷。やっぱり彼女にするなら、友達の多い、性格のいい子に限る限る。地雷な女でもいいなんてのは、女をハーレムの頭数程度にしか考えてない可哀想なヒドラちゃんくらいなもんだ」

「酷いこと言うなよ」


 ケースケは誤解している。俺は皆を平等に愛したいだけなんだ。確かに友達のいない人間というのはそれ相応の何かがあるかもしれない、けれど、そんな子だって愛される権利はあるし、愛する権利はあるはずなんだ……とは流石に気持ち悪すぎて二人には言えなかったけれど。なんだかんだいって二人とも興味のない話題ではなかったらしく、クラスの女子の品定め、というか交友関係の確認なんて、女子にドン引きされそうな会話をこそこそと続ける。


「……お前の隣に座ってる子、そういえば他人と喋ってるの全然見たことないぞ」

「水草さん、だっケ?」

「ああ、確かに。存在感がないから見落としていた」


 ケースケが指摘した通り、確かに俺の右隣に座っている水草太陽みずくさ・そらさんは、このクラスの女子の中では一番友達がいない可能性が高い。クラスの女子と会話しているのを見たことがないし、休憩時間中に別のクラスに遊びに行っているわけでもなさそうだ。見落としてはいたが、隣に座っていればなんだかんだいってわかるもんだ。


「……」


 俺のもともと座っている席の隣でじっと本を読んでいる彼女を見やる。見た目はボーイッシュ系のロコと似た感じだけど、表情やらなにやらから気弱そうだ、というのが見て取れる。『友達なんていらない、私は孤独を好む』というタイプにも見えないから友達を欲していそうだし、押しに弱そうだし、最初のターゲットとしてふさわしいのではないだろうか。


「よし、彼女にアタックしてみるか」

「精々頑張れよ、面白そうだから俺も応援してやるよ」

「ハーレム作って飽きたら、俺にも回してネー」


 友人達の応援を受けながら、俺は最初の一歩として、隣に座る少女に狙いを定めるのだった。


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