三人目の彼女の探し方
「そろそろ次の彼女を作るべきではないでしょうか」
水草さんを二人目の彼女として迎えて約1ヶ月。『あの女の子は誰なの?』と家族に不審がられて『女友達だよ』とかわすという何とも情けない俺ではあるが、特に彼女達の間でトラブルが起こることなく今のところは順調に恋人ライフを満喫していた。そんな折、いつものようにゲームを3人で遊んでいると水草さんがそんな事を呟く。
「水草さんの方からそんな事言うなんて思わなかったよ、普通は作らないで欲しいって思うもんじゃないの?」
「女の子の友達は欲しいですし蛟さんゲームが下手すぎてつまらないのでゲームがうまい女の子がいいですね」
「あはは、水草さんなかなか酷い事を言うね」
欲望に忠実な水草さんと彼氏をフォローすることなくゲラゲラと笑うロコはさておき、確かにそろそろ次のステップに移ってもいい段階かもしれない。早速俺は、翌日学校で友人達に助けを求めるのだった。
「というわけで、なんかいい感じの子しらない?」
「なんかマンネリな恋人が刺激を求めてスワップ相手探してるみたいなノリで腹立つな……」
「彼女二人もいるのに贅沢だネー」
体育の授業を仲良くサボり、体育館の裏で作戦会議。呆れたような目で見てきながらも、協力してくれるらしく一緒に考えてくれる素晴らしき友人達。とりあえず同じクラスで探すのはやめた方がいいとケースケが神妙な顔で告げる。
「孤独だった水草さんに救いの手を差し伸べたことに関しては、お前はある程度自分の行動を誇ってもいいと俺は思う。だが、お前のクラス内での評価が微妙なのも仕方がない話だし、そもそも水草さん以外はそれなりに仲がいいのがウチのクラスだ」
「となると、範囲を別のクラスや別の学年にするべきだネ。今一緒に体育やってる隣のクラスとかでいいのいるカナ?」
「んじゃ、下見にでも行きますか」
合同体育の授業でくらいしか見ることのない隣のクラス。クラスに一人くらいは水草さんみたいなぼっちな子がいるだろうと、俺達は女子の下見のためにサボりを中断してグラウンドへ向かう。
「おりょ、珍しいね授業に復帰するなんて」
「いや、隣のクラスにいい女の子いないかなと」
「なるへろ」
マラソンということでほとんど徒歩のペースで走っているロコに合流。ちなみに水草さんは何気に運動ができるタイプの子なので悠々自適にトラックを走っている。
「隣のクラスはよくわかんないけど、確か性格が悪くて孤立している女の子がいるんだったかなあ……」
ロコが隣のクラスについての情報を思い出している中、一人の女の子が俺達の後ろから走ってきてあっという間に追い抜かしていく。俺達がほとんど徒歩なのもあるが、かなりのスピードだ。ぱっと見だがスタイルもなかなかのもので、思わず普通にガン見してしまった。
「ああ、今の子だよ確か。美人さんで頭もいいし運動もできるけど性格が悪いって評判の。名前は何だったかなあ?」
「……神狩神喰だな。あの女はやめておけ」
ロコが先ほどの女の子についての情報を思い出している中、横にいたケースケが口を開く。口ぶりからして、彼女の事を俺達よりは知っているようだ。
「やめておけって?」
「ぼっちな女の子を救済してハーレムに加えよう、まあそれについてはいいとしてだ、ぼっちな女の子って言っても色々あるだろ、水草さんみたいにオタクでコミュニケーションが苦手な子とか。そういうのは、なんか可哀想だなって感じもするよ。だがな、あの女みたいにガチで性格が悪くて孤立してるような女は自業自得だし、そういう女を引き入れたってムードが悪くなるだけだ」
「具体的にどう性格が悪いノ? そのゴッドイーターさん」
絶妙なネーミングセンスを発揮したロゼッタの問いかけにケースケは忌々しそうな表情をする。何かトラブルがあったらしい。
「……あの女はな、ロコちゃんの倍は性格が悪い」
「……!」
「なん……だと……」
「ちょい待ち? ケースケ君、私をさりげなく性格悪い扱いしてないかい? ロゼッタ君もね、その表情明らかにそりゃ相当だなって表情だよね? ていうかどうしてヒドラはすぐに怒らないのさ何で便乗して驚いてるのさ酷くない?」
性格が悪い扱いされている女の子の半分くらい性格が悪いらしい恋人が何やら必死になっているが、ケースケは構わずに彼女とのエピソードを語り始めた。
◆ ◆ ◆
その日、俺は本屋にいたんだ。目当ての本を見つけてレジに向かう途中、その女がいてな。まああの見た目だからな、つい気になって、同じ学校だしとつい声かけちまったんだよ。
「よう。……お前隣のクラスの神狩だよな?」
「……」
「いや、特に用があるわけないんだけどよ、奇遇だなって声かけただけだ、悪いな」
「……」
「何だよ、無愛想な女だな。美人さんなのに」
我ながらナンパ男だなあと思いつつも何とかコミュニケーションをとろうとしたんだが、その女は俺を見下すような目で睨みつけてきた後、
「……エロ本買ってるような男と関わりたくないので」
そう言って一瞥し、呆然とする俺を置いて去っていったというわけだ……
◆ ◆ ◆
「……というわけだ。ああ、今思い出しても腹が立つ……何だあのアマ」
「……」
「……」
エピソードを語った後に苛立つケースケだが、周囲の反応は非常に冷ややか。俺もロゼッタも哀れみの視線を彼に送り、ロコは心底蔑んだ視線を送る。
「……死ねよ……」
「ひ、酷いなロコちゃん!? 俺の名誉のために言っておくがな、俺はエロ本なんざ買ってないからな、グラビアアイドルの写真集だからな、俺は全裸至上主義じゃないんだ、着エロの魅力だってわかってるんだ」
「気持ち悪いな……いいから死ねよ……」
「……」
彼氏がいるのにたった3万で売春しようか悩んだことは棚に上げ、ロコはケースケを冷ややかな目で見つめ続ける。耐えられなくなったケースケは俯きながら無言で走り去っていってしまった。
「……あの馬鹿はさておき、確かにゴッドイーターさんは相当評判悪いみたいだネー、噂では中学時代苛めにあっていたけど、全員に復讐したそうだヨ」
「そりゃあ恐ろしい女だな」
「えー、そんなの当然だと思うけどねー。彼女かなり優秀らしいしただの僻みとかじゃないの? 正直私は女だから、男の言う性格の悪い女ってのには賛同しかねるんだよね。性格悪い悪い言ってるのは女なのかもしれないけれど」
彼女の肩を持つロコ。彼女をハーレムの一員として加えようというのだから、多少は肩を持ってくれないと確かにまずい。やはりケースケの言う通り、性格が地雷扱いされている女性は慎重にすべきか、なんて悩んでいるところ、既に一周してきたようで後ろから当の本人がやってきて、あっという間に走り去っていってしまった。
「次に狙う女の子の目星がついたよ」
「本当ですか誰ですかバランス的には男の娘がいいんじゃないかと思うんですけど」
「いや、バランス絶対おかしいからそれ。隣のクラスの神狩さんって言うんだけど、噂によるとロコの倍性格が悪いらしい」
「そんなにですかそれは相当ですね」
その日の放課後、いつものように俺の部屋に二人が集った後、事情を知らない水草さんに次に狙う子の話をする。ロコの倍性格が悪いというフレーズを聞いて本気で驚く様子を見せる水草さんに、人のゲームのコントローラーを床に叩きつけてロコがキレる。
「み、水草さん? 私達友達だろう? この関係が友達って言えるのかはわからないけど、私達は仲良くしないといけないはずだろう? 何なの、ヒドラも水草さんも何で私がそんな性格悪い前提なの」
「仲がいいからこそ本音を言えるんですよ正直ゲームのプレイを見るだけでも性格の悪さが滲み出てますよ」
「だよなあ、陰湿だよなあ」
「……」
乙女心が傷ついた、とボソリと漏らしながら、対戦アクションゲーム中に俺のコントローラーを引き抜くロコであった。そりゃあ性格悪いって言われるわ。




