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現実的なハーレムの作り方  作者: 中高下零郎
興味を持ってもらえるような章の書き方
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興味を持ってもらえるようなプロローグの書き方

現実的とは言ってもフィクションです。よい子は真似しないでください。

「ロコ、俺達付き合って一年になるよな」

「そうだな。私は察しのいい彼女だからな、君の言いたいことはわかるぞ。……わかった、女になろうじゃないか。シャワーを借りるぞ……いや、ちょっと汗臭い方が好きか?」

「何を勘違いしているのかわかんねーけど、俺、お前に黙ってたことがあるんだよ」

「……? なんだ、まさか二股をかけていましたごめんなさいとか言うんじゃないだろうな?」


 高校二年生の5月。ゴールデンウィークに俺、蛟火竜みずち・ひどらと、家が隣の幼馴染であり彼女でもある猫狩狼狐ねこがり・ろこは、俺の部屋でピコピコとゲームをして遊ぶという、隣に住んでいるという設定を存分に活かした恋人生活を享受していた。そんな中、一年経ったし自分の抱えている秘密を彼女に白状するかと真剣な目になって彼女を見つめたのだが、何を勘違いしたのか顔を赤らめながら服を脱ごうとする。


「実はな……俺、ハーレム願望があるんだよ」

「……そんな事を言われても困るのだが」

「思ったより引かないんだな」


 恋人に『俺はハーレム願望がある』と言われるというのは、人によっては二股をかけていましたごめんなさいの方がまだマシだと思えるくらい、酷い台詞だと自分でもわかっている。別れ話を切り出されてもしょうがないレベルかもしれない。けれど恋人には俺のそういった願望を含めて受け入れて欲しかったから、今回こうやって告白するに至ったのだ。ロコは大きくため息をつくと、呆れたような目でこちらを見やる。


「まあ、男は淫らな事ばかり考えているどうしようもない生き物だ、と私は思っているからな。たくさんの女の子に囲まれてうはうはしたい、なんていう願望もある程度は理解してやれるつもりだよ、私は寛容な女だからな。それくらいでドン引きしてビンタして別れ話を切り出すような狭量な女だと思っていたのか?それは実にショックだ」

「いや、お前を信じていたよ俺は」

「そうか、それは嬉しいな。……しかしなあ、君ももう17だろう、いい加減現実を見ないか。あれは所詮漫画や小説、アニメの中の概念だ。しかも頭の中がピンク色の中坊が好むような」


 気持ち悪いカミングアウトをした俺を受け入れながらも、できることならその性根を叩き直してあげようとお小言を言うロコ。実に彼女の鑑である。恐らくは彼女の言っていることは正論なのだろう、しかし、俺にも譲れないものがある。


「……ロマンなんだよ、男の。お前だってたくさんのイケメンに囲まれたいだろう?」

「いや全然。気の合う恋人に100%の愛情を貰って、100%の愛情を返したいね。恋人を4人も作ってみろ、一人当たり25%の愛情しか与えられないし、それで相手からは100%の愛情を貰おうなど言語道断」

「違う! 全員100%だ! 全員に100%の愛情でぶつかって、皆が納得してくれる、それが理想のハーレムなんだ!」


 自分でも馬鹿だと思っている。ハーレムを作りたいなんて彼氏にあるまじき願望を受け入れながらも説教してくれる素晴らしい彼女に、熱くこんな事を語るなんて。流石の彼女も俺の最後のセリフは若干気持ち悪かったのかしかめた顔をしながらも、ふむ、と言いながら顎に手をあてて目を瞑る。彼女が何やら考え事をしている間、俺は内心『別れ話かなあ、流石にまずかったかなあ』なんて、ハーレムどころかたった一人の彼女すら失うことを心配していたのだが、彼女は目を開くとニヤリと笑う。


「……なるほど。うん、わかった。それじゃあ彼女として、ハーレムの作り方を提案しよう」

「マジで?」

「私達はまだ若い、理想を追い求めることも大事だよ。時としてそれは取り返しのつかない事態を引き起こすけど、そうならないために私がいると自負している。それに、彼氏がハーレム形成しているようなモテモテ男だなんて、よくよく考えたらステータスじゃないか、面白そうだ」

「そうか……?」


 最後の部分は正直理解しかねるが、とにかく彼女が俺のハーレム形成を手伝ってくれるというのは有難いし、ハーレムという俺の夢も現実味を帯びてくる。何せ俺は容姿にはそこそこ自信があるが、おつむには自身が無かったから。


「案その1……お金だね」

「いきなり生々しい案だね……」

「頑張って油田でも掘り当てて数十億くらい手にしてみろ、女共が股を開きながら寄ってくるぞ。お金の力は偉大だ、私もこの前知らないおじさんに3万円でどう? って言われて迷ってしまった」

「おいおい……お前の貞操観念はともかく、金は流石に現実的じゃないし、そもそもそれで寄ってくるのは俺じゃなくて金が好きなんだよ。そんなのはハーレムって言わないよ」

「なるほど」


 親指と人差し指で輪っかを作ってニヤリと笑いながら、しょっぱなから酷い案をぶちかますロコ。確かにお金の力は偉大だし、頑張って高収入になって女にモテようって考えの人はいっぱいいる。お金を稼ぐのも本人の能力だし魅力だとは思うけれど、それでもお金の力でなんとかしようという考えは、まだ社会にも出てない俺にはできなかった。


「じゃあ次だ。一夫多妻制の国に行こう。うん、とっても簡単な答えだな」

「えー……日本離れたくないなあ。そういう国ってなんか危ないイメージあるし。仮に俺が『一夫多妻制度のある国に行ってハーレムだぜ!』って言いながら移住する時に、お前ついてきてくれる?」

「いや行かない。やっぱり日本が最高だよ、修学旅行でマレーシアに行った時は散々だった」

「じゃあいいや。なんだかんだ言ってお前とは別れたくないし」

「照れるなあ」


 一夫多妻制度の国への移住を勧めるロコ。確かにそういう国なら法律上でもハーレムは合法だし、住んでいる人間もハーレムに対する嫌悪感なんてものはないだろう。しかし、日本を離れるというのはかなりのデメリットだ。俺は愛国心に満ち溢れた国士様ではないけれど、ネットもできるし水道も飲めるし24時間コンビニが開いているこの国を離れて、言葉も通じない国にハーレム作りのために行けるか? と言われたら、首を横に振ってしまう。所詮俺のハーレム願望などその程度かと言われてしまえばその通りなのかもしれないが。


「うーん……知的障碍者を飼う、というのはどうだろう?」

「……? お前何言ってるんだ?」

「知的障碍者だよ。いわゆる池沼だよ。あいつら頭が最高に弱いから、多分二股かけようが三股かけようが特に疑問も持たずにいてくれるんじゃないかな。小学校の時にいた、みたきちゃんとその係の子を覚えているかい? あの二人今は付き合ってるみたいなんだけどさ、係の子は何股もかけてるらしいね、頻繁に違う女の子と一緒にいるのが目撃されているよ。頭の弱さの程度にもよるけど、中には親からも見放された可哀想な子がいるし、そういう子を飼っていけば皆が幸せさ。たくさんの犬や猫を飼っているようなものだと割り切れば」

「それ以上言うと俺の方から別れ話を切り出すぞ」

「ごめんごめん」


 三つ目の案は、悪意にまみれたものだったからイライラして話を遮る。言いたいことはわかる。いつまで経っても頭の中が小学生な残念な人は確かに存在するし、日本でハーレムを作るなら、そういう頭の弱い人間をターゲットにした方が成功しやすいに決まっている。馬鹿な女ほど、男にとって都合のいい存在はないし、あえて馬鹿な女と付き合って、馬鹿だからばれないだろうと二股かけてるチャラい男だっていっぱいいる、ようはその頂点なわけだ。けれども俺は、プライドというか、良心というか、とにかくそんな感じのものがそういう考えを許さないようだ。少し安心した。


「さて、最後の案は、ちょっと前の案と似ているかもしれないからひょっとしたら怒るかもしれないけど許してね。日本のような一夫一妻の国でハーレムを作るのはなかなか難しいよ、日本の女は二股を許すように教育されてないからね。じゃあ、ちょっと考え方を変えてみよう。『恋人が二股をかけていたけど、別れられない』……どんな状況だと思う?」

「男に脅されてるとか?」

「わーお、君は暴力で女性を屈服させてハーレムを作ろうというのかい、中世ファンタジーの世界にでも行ってきたらどうだい。まあそれも確かに有り得るケースだけどね。依存だよ依存」


 依存。いい意味で使われることがほとんどない、ニコチンだとかアルコールだとかの依存症以外にも、恋愛で使われることも多い言葉だ。彼女は一つの例を挙げはじめる。


「例えばだけどね……君の両親は君を全然愛していない、妹の雷神ちゃんに構ってばっかりで君のことは知らんぷり。学校には行かせてくれるし食事も出してくれるけど、ただそれだけ。愛情なんて全くない、さっさと家から出て行って欲しいと思っている、そう仮定しよう。ああ、もちろん雷神ちゃんも君のこと大嫌いだよ、死ねばいいのにって思ってる」

「なんでそんな例を出すんだよ……違うよな? 俺は愛されているよな?」


 聞いただけで悲しくなるような設定だ。家族は大事な存在で、何よりの味方であるべきなのに、そういった存在から拒絶されるというのは実に悲しいに寂しい。家族から無視される自分を想像して落ち込んでしまうナイーブな俺であったが、彼女はそんな俺に追い打ちをかける。


「更に君は学校でも味方がいない。同姓の友達は当然いないし、異性には気持ち悪がられてる。いじめだって受けているし、教師も君の味方じゃあない。毎日のように机には花瓶とマジックでの暴言がプレゼントされ、いつも椅子には画鋲やノリがついている」

「やめてくれよ……」


 俺のような学生は家に味方がいなければ学校の味方を頼るしかないが、その学校にすら味方なんて地獄すぎる。そんな状況になれば、俺は家族から更に白い目で見られるのを承知な上で引きこもってしまうかもしれない。


「まあそれでもバイト先だとか、動物だとか、逃げ道はなんだかんだ言ってあるけどさ、これは例だから、君は世界中の全てから拒絶されているわけ。たった一人を除いて」

「たった一人?」


 世界から拒絶された俺を肯定してくれる神様のような存在は一体誰なのかわくわくしながら聞いてみると、彼女は立ち上がって普通サイズの胸をどんと叩く。


「それがこの私さ。学校でも君の評判など気にせずに昼食にはお弁当を一緒に食べようと誘って、家に帰っても君がこうして寂しくないように遊びに来てくれる、そんな女神のような恋人」

「おお……」


 よかったよかった、やっぱり一人味方がいると、自分を愛してくれる存在がいると全然違ってくるものだ。そんな状況になれば、ハーレムなんて作ろうとは思わずに、この人を一生愛して行こう、一生愛されるように頑張ろう、なんて思えるかもしれない。けれども彼女は、そんな俺の細やかな幸せを奪おうとする。


「しかしながら、君はある日見てしまいました。私が別の男と楽しそうにデートしているところを」

「何てことだ……」


 自分にとって唯一とも言える味方の浮気現場を見てしまったら、俺はどうにかなってしまうかもしれない。ハーレムを作ろうなんて人間がそんなメンタルじゃあいけないだろうけど、それはそれ、これはこれ。自分がハーレムを作るのと、自分がハーレムの一員になるのではやはり全然違うわけだ。俺みたいな人間ってのは、基本的に独占欲が強いから。だから複数の女性を独占したいと思っているし、一人の女性だって独占したいのだ。


「さて。ここで質問だ。君はどうする? 私に別れ話を切り出すか?」

「……う、それは……」


 彼女の質問に口ごもる。こんな悲惨な仮定ではなく、今のように普通に俺とロコが付き合っていて、ロコの浮気が発覚したならば、俺は別れ話を切り出すか、別の男と縁を切るように強く出ることができただろう。しかし、彼女以外に味方がいないとなれば話は変わってくる。別れてしまえば俺はまた一人ぼっち、別の男と縁を切れ、なんて言って『君の方が間男だから君と縁を切るよ。ばいばい』なんて言われでもしたら最悪だからそんな事だって言えない。結局、別の恋人がいることを知ってて、甘んじて恋人の一人となる道を選ぶかもしれない……そんな答えを俺が出すと、彼女はうんうんと頷いた。


「……というわけだよ。これを女性に置き換えればいいわけだ。簡単に言えば『ぼっちな女の子を落として、自分に依存させて、自分から逃げられなくする』というわけだね。割と現実的じゃないか?」

「うーん、確かに現実的かもしれないけれど、なんか、なんかこう、ゲスいよ……」


 現実的かもしれないし、頭の弱い女の子を騙しているわけでもない。けれども結局は弱みにつけ込んでいるわけで、素晴らしい案だと賞賛することはできない。


「うんうん、そこが君のいいところだ。けれど君は言ったじゃないか、皆が納得するようなハーレムを作るって。確かに弱みにつけこんで自分から離れられなくするのはいけないことかもしれないけれど、そこからは男の見せどころだよ。全力で彼女達を愛して、最終的には弱みなんて関係なく、自分から離れないようにするんだ。いわば、弱みにつけ込むのはそのための時間稼ぎだ。大丈夫、君はとてもいい男だよ。時間さえかければ、私がハーレム願望を受け入れたように、きっと他の皆も受け入れてくれる。そのために、ただちょっと時間が必要なだけなんだ。これは必要なことなんだ」

「なるほど……」


 そんな俺の優しい? 性格を褒め称えながらも説得しようとするロコ。まるで彼女の方がハーレム作りにノリノリな感じすらしてくる。悩んだ俺であったが、


「わかった。その作戦で行こうじゃないか」


 最終的には彼女の案を、ぼっちな女の子を落として自分に依存させて無理矢理縛りつけ、時間をかけて本当にハーレムの一員として愛して貰えるように頑張る、なんていう壮大なんだかよくわからないハーレム形成法を受け入れた。


「その意気だ。言っておくけど、簡単なことじゃあないと思うよ。ぼっちな女の子は落としやすいなんて言うけど、連中一癖も二癖もあるもんだし、そいつらと関わっているだけで君の評価が下がって、いずれは本当に孤独になってしまうことすらあるかもしれない。ま、ハーレム作ろうなんてふざけたこと言っている君には、そんなの百も承知かな?」

「おうともよ。世間から後ろ指をさされたっていい。俺を愛してくれる、お前含めた皆のために、ゲスい男にでもなんでもなってやるぜ!」


 最初の恋人として、ハーレム作りの参謀として彼女にこれからもよろしくという意味を込めて彼女とがっちりと握手をする。今ここに、俺のハーレム作りがスタートしたのだった。

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