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第四十五話 エレノーグ・ファギアス

魔導兵を全滅させた反乱軍は帝都の門をぶち破り、帝都に侵攻していた。エリーは反乱軍の中で、一番必死になって城を目指している。やがて、奴隷達が集められている施設を見つけると、扉を破壊して勢い良く飛び込んだ。


「父さん!!母さん!!あたしよ!!エリーよ!!」


すると、中で休んでいた奴隷達が、一斉にエリーを見る。


「……エリー?」


「エリーだって?お前なのか!?」


その中で二人、男性と女性がエリーの存在に気付き、駆け寄ってきた。


「父さん!!母さん!!」


見間違えるはずがない。あの時帝国に奴隷として徴収された、エリーの両親だ。


「エリー!!」


「エリー!!」


三人は再会できたことを喜び、抱き合う。


「ひどい……父さんも母さんも、こんなにやつれて……!!」


エリーの両親は、帝国に引き離される前とは比べものにならないほど、痩せ細っていた。


「……ここに連れてこられてから、まともな食事ももらえなくて、厳しい労働ばかりさせられてたからな。」


「でも、まだ生きてるわ。それにしてもよかった……生きてる間にもう一度あなたに会える日が来るなんて……」


二人とも、二度とエリーに会えないまま、ここで奴隷として潰れるまで働かされると思っていた。だが、彼のそんな苛酷な日々も、今日で終わりだ。


「皆さん!!我々は反乱軍です!!皆さんを帝国の支配から解放しに来ました!!」


少し遅れて、フェリアが反乱軍と一緒にやってくる。


「解放?ってことは、もう皇帝に従わなくていいのか!?」


「帰れるんだ……俺達帰れるんだ!!」


「よかった!!私生きてこの帝都から出られるのね!!」


反乱軍の到着に、奴隷達は歓声をあげる。彼らはもう、ここで働かされなくて済むのだ。故郷の村や町に、生きて帰ることができるのだ。



その時、とてつもない轟音が聞こえた。



「な、何だ今の音は!?」


「隊長!!大変です!!メハベル城が!!」


施設の中に、反乱軍の一人が飛び込んでくる。フェリア達は慌てて外に出ると、メハベル城を見た。


「あれは、こ、皇帝!?」


エリーの父が言った。そう、メハベル城の遥か上空に、皇帝エレノーグが浮いていたのだ。


「こ、皇帝だ!!」「何であんな所に!?」「ひぃぃぃっ!!」


奴隷達はエレノーグの出現に怯えていた。エレノーグは反乱軍の存在に気付き、大声で呼び掛ける。


「反乱軍諸君。私の帝都でずいぶん好き勝手してくれているようだね?まぁいい。私は神となったのだからな!」


「神!?神だと!?」


フェリアが尋ねる。


「そうだ!私は人為的に造り出した超進化の実を使い、神に進化したのだ!!この力で、お前達の下らない希望を、櫻井翠をたった今殺してやった!!」


「何だと!?」


シーラは驚愕した。翠が既にエレノーグに挑んでいるだろうとは予想していたが……いや、既に挑んでいるなら、エレノーグがああして無事でいるはずがない。ならば、まだ挑んでいないか、それともエレノーグが言うように敗れたか。


「人を騙すのもいい加減にしろ!!まだ嘘で自分を着飾るつもりか!!」


「そうだ!!今まで散々嘘を吐いてきて!!もうお前の言葉に惑わされたりはしないぞ!!」


フェリアとアレスは反論する。嘘でたくさんの人間を騙してきたエレノーグの言葉なので、信用していない。


「確かに大勢の人間を騙してきたな。それは認めよう。だが、今回は真実だ。私は間違いなく、この手であの怪物を殺した。そうだ!口で言うより、実際に見せてやろう。櫻井翠を殺した力を」


エレノーグが全身に力を込めると、身体から黒いオーラが溢れ出した。オーラの影響で、空気が震動を始める。


「な、何てパワーだ……!!」


フェリア達はエレノーグが放つ恐ろしいパワーを感じている。一番危機を感じているのはシーラだ。


(この力、世界樹と同質のものだ。とすると、奴は本当に神になったのか!?)


神の樹、世界樹と同質の力。すなわちそれは、神となったことと同義。だとすれば、シーラ達は勝てない。



しかし、



「何が神よ!!あんたがどんな存在になろうと関係ないわ!!あたしはねぇ、あんたをぶっ殺したくて仕方なかったんだから!!」


エリーは全く動じなかった。エレノーグが神となったことへの恐怖より、エレノーグが自分の両親にした仕打ちへの怒りが大きかったのだ。


「サンダーバスター!!!」


怒りを爆発させたエリーは、エレノーグに向けてサンダーバスターを放つ。サンダーバスターはエレノーグに命中したが、エレノーグの力の波動は消えなかった。


「ファイアバスター!!!ウォーターバスター!!!サンダーブレイカー!!!!」


一発で駄目ならと、どんどん上級魔法を叩き込んでいくエリー。しかしエレノーグは、ダメージを受けるどころか揺らぎもしなかった。


「気は済んだかね?そして理解したかね?君に私は、絶対に殺せないということを!!」


エレノーグは右手をエリーに向け、エネルギーを集中していく。エレノーグの力の源は魔力だが、それを別種のエネルギーに変換できるように進化した。これにより、対物理でも対魔法でも防げない攻撃方法が完成する。そして、


「暗黒の閃弾。」


エレノーグはその闇エネルギーとでも呼称すべきエネルギーを圧縮して、弾として放った。


「闘竜拳、剛撃返し!!」


シーラはいち早く反応し、それを両手で受け止め、真上へと弾き飛ばす。暗黒の閃弾は高空へと飛んでいき、大爆発を起こした。もしあのまま帝都に着弾していたら、帝都は灰も残らず吹き飛んでいただろう、そんな破壊力だ。


「貴様!!自分の国を吹き飛ばすつもりか!!」


「神となった以上こんな小さな国に用はない。もう私はこのデミトラシアそのものの支配者となったのだからな!!」


なんということだろうか。絶対に神になってはいけない性格の持ち主が神になってしまった。エレノーグを野放しにしておけば、デミトラシアは確実に滅ぶ。何としてでも、エレノーグをここで倒さなければならない。


「総員構え!!攻撃目標は皇帝エレノーグだ!!」


「はっ!!」


フェリアか反乱軍に指示を出し、反乱軍は弓や魔石銃を使って攻撃。


「ファイアブラスト!!」


アレスが魔法で援護。


「トルネードアトラクション!!!」


ここでエリーが、新たな魔法を発動させる。巨大な竜巻が発生し、エレノーグを飲み込んだのだ。そこに、シーラ達ドラゴン軍団が炎を浴びせかけ、巨大な炎の竜巻が完成する。さしものエレノーグも、こんな強力な攻撃を浴びれば、生きてはいられないだろう。



誰もがそう思った瞬間、エレノーグが右手を振るい、同時に炎の竜巻が吹き飛んだ。



「少し遊んでやるか。」


超スピードでこちらに向かって飛んでくるエレノーグ。そこから先は、地獄そのものだった。ただの突撃で、反乱軍のほぼ全員が戦闘不能になり、エリーも、アレスも、フェリアも、グリーンドラゴン達も敗れた。シーラの闘竜拳も通用せず、倒されてしまったのだ。


「想像以上だ!これだけの力があれば、デミトラシアどころか宇宙を征服できる!!素晴らしいぞ!!」


自分の力が強大であるということは自負していたが、はっきり言ってその力はエレノーグ自身の想像すら超えていた。


「……そうだな。宇宙を征服できるなら、もうこんな小さな星に固執する必要もない。では、潰そうか。そうだな!それがいい!」


エレノーグは勝手に納得し、宇宙に向かって飛んでいった。











「翠!翠起きろ!」


闇の中で、翠は目を覚ました。


「ネイゼン、さん?それに、世界樹さんも?」


そこにはネイゼンと一緒に世界樹の化身がいる。と、翠は自分がどうなったのか、思い出した。


「え、エレノーグは!!ぼ、僕は死んで……!!」


「慌てるな翠。お前は死んでいない」


「だが、状況は最悪だ。神となったエレノーグはこの世界に見切りをつけ、破壊しようとしている。」


「えっ!?」


ネイゼンと世界樹の化身は、外の状況を伝える。


「シーラすら倒されてしまった。こうなった以上、立ち向かえるのはお前しかおらん。だが、今のままお前を蘇生させても、返り討ちにされて終わりだろう。」


世界樹の化身の言葉に、翠は言い返せなかった。翠とエレノーグの力の差は歴然であり、このまま再戦を挑んでも勝てないし、そんなことをすれば今度こそ殺される。


「……我の力を与える時が来たようだな。」


「世界樹よ。エレノーグの力は、はっきり言ってあなたをも超えている。あなたの力だけでは、翠を奴以上の存在に強化することは不可能だ。よって、及ばずながらわしも力を貸そう。」


世界樹の化身とネイゼンは、翠に手をかざす。


「頼む翠。どうかこの世界を守ってくれ」


二人は翠に、自分の力を注ぐ。


「はい!!」


翠は力強く返事をして、この精神世界から出た。




精神世界の外。


(今床を突き破って外に出ていったのは、間違いなく陛下だった……翠!!)


クリスは急いで地下に向かっていた。エレノーグが出てきたということは、翠が倒されたということ。翠の無事を祈りながら、最下層を目指す。


「!!」


最下層の最奥で、クリスは見つけた。倒れている翠を。自己再生が発動しているのでダメージは再生しているが、過度なダメージを負った影響で仮死状態に陥っている。


「翠!!」


慌てて駆け寄って抱き上げるクリス。だが、翠は目を覚まさない。


「ごめんなさい。あなたばかりに、こんなつらいことをさせて。」


クリスは謝る。思えば、翠にエレノーグと戦わせてしまったのも自分だ。目的がわかっているから、いつでも奴の企みを阻止できたはずなのに。


「お願い翠。目を覚まして」


クリスは涙を流す。



その涙が翠の頬に触れた瞬間、翠が眩い光に包まれた。



「!?」


驚いて両手で顔を覆うクリス。そして、


「大丈夫。クリスは悪くないよ」


次に聞こえた優しい声。


「翠!!」


クリスは見た。そこには、神々しい光を全身から放つ、翠が立っている。


「クリス!!僕はあの邪神を滅ぼす!!」


翠は自分の手でエレノーグを倒すことを宣言すると、エレノーグが空けた穴から宇宙へ飛び出していった。











宇宙。神へと進化したエレノーグは、もはや宇宙空間でさえ自由に行動できる存在となっていた。


「この星はこんな形をしていたのか。だが、それも今日で見納めだな。」


デミトラシアを破壊しようとするエレノーグ。だが、


「ん?」


彼は気付いた。何かがこちらに猛スピードで向かってくるのを。



竜だ。六枚の翼と四本の角、二本の尾を持つ、鮮やかな緑色の竜だ。エレノーグはその竜が何であるか気付いた。



「櫻井翠だな?」


そう、翠だ。翠は世界樹とネイゼンから力を受け取り、緑神竜ユグドラシルドラゴンに進化したのである。


「まだ死んでいなかったとはな。だが、何度挑もうと同じこと。」


「エレノーグ!!さっきと同じようにはいかないぞ!!」


宇宙空間を舞台に、最後の戦いが始まろうとしていた。

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