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第十五話 孤軍奮闘

ロルウェイの港町は、大量の帝国兵に襲われ、陥落寸前だった。


「まさか増援が到着する前に、帝国側が行動を起こすとはな!」


そう言いながら帝国兵の一人を斬り捨てたのは、ロルウェイが帝国に押さえられないよう守っていた、反乱軍の兵士だ。もうすぐ反乱軍の増援部隊が到着するはずだったのだが、それより早く帝国が港を押さえに動き出したのだ。


「あと少しで援軍が到着する!!それまで持ちこたえろ!!」


反乱軍兵の後ろから斬り掛かろうとしていた帝国兵を、もう一人の反乱軍兵が倒しながら言った。




「首尾はどうだ?」


帝国軍の隊長が、報告に来た兵士に、港の制圧状況はどうなっているかを訊いた。


「僅かに反乱軍の兵士がいましたが、既に八割方制圧完了です。時間の問題かと思われます」


「そうかそうか。」


隊長は満足そうに頷いた。元々数でも、個々の戦力でも、帝国側が上回っているのだ。それに、反乱軍側の増援が来る前という隙を突いている。負ける要素がない。




「……来ねぇな。」


「あの定期船、町が攻められてるってわかったら止まりやがった!」


船着き場には多数の帝国兵がいて、定期船が来るのを待っていたが、定期船は来ない。一人の兵士が双眼鏡を見ながら、定期船がこちらを警戒していることを伝える。


「仕方ない。そこらへんのボートでもかっさらって、強引に乗り込もう。」


「はい。」


いくら待っても定期船は動きそうにないので、仕方なく強引な手段を使うことにする。


「ん?」


と、その双眼鏡持ちの兵士が、何かに気付いた。


「何か飛んで……」


定期船から、何かが船着き場に向かって飛んできたのだ。



「スケイルブレード!!!」



次の瞬間、双眼鏡持ちの兵士は飛んできたそれに細切れにされた。


「なっ何だ!?」


「リザードソルジャーだと!?」


突然やってきたリザードソルジャーに、帝国兵達は驚いている。


「僕の名前は櫻井翠だ。リザードソルジャーっていうのは、僕の種族名だよ!!」


うまく船着き場に着地できた翠は名乗り、両腕のスケイルブレードを振るって、船着き場にいる帝国兵を一瞬で全滅させた。


「いやしかしすごい切れ味だな。帝国兵の反魔導アーマーをものともしない」


翠はスケイルブレードを見て言った。戦っている間に三人くらいまとめて切ったが、全く抵抗を感じず刃こぼれを起こした様子もない。強化魔法ストロングを使っているのもあるのだろうが。


「おっと!早く町を解放しなきゃ!」


翠は本来の目的を思い出し、すぐ近くにいた帝国兵四人に一瞬で近付き、切り殺した。


「スピードもすんごぉい!!」


それから次は、別の兵士と戦っている帝国兵を見つけた。その兵士は劣勢に陥っており、鎧も違うことから反乱軍の兵士であるとわかる。これにも翠は一瞬で近付き、帝国兵だけを倒した。


「でもトカゲかぁ……」


翠は一人呟いた。確かに蛇を人間サイズのトカゲに変えて二足歩行で走らせれば、速いだろうし進化にも無理がない。ただ、やっぱり人間になれなかったことに少し未練があった。


「あ?え?」


反乱軍の兵士は、かなり困惑している。そりゃ目の前に突然リザードソルジャーが現れてわけのわからないことを言い出したら、困惑もするだろう。


「ん?あなたは反乱軍の方ですか?」


それに気付いた翠は、一応兵士に確認を取る。


「あ、ああ、そうだが……」


「なら安心して下さい。僕はあなた方の味方です」


「えっ?」


深くは答えず、すぐ他の敵を探しに行く。時間が惜しい。一刻も早く帝国軍を全滅させなければ、いつまで経っても定期船は入港できないのだ。


「モンスターだ!!」


と、行く手に帝国兵が多数溜まっており、翠を見付けて武器を構えた。剣や槍、斧やハンマー、弓などの様々な武器を、翠を見付けた瞬間に構えた。



だがそれでは遅い。もう遅い。見付けてからでは遅すぎる。見付けると同時に攻撃するべきだった。



翠が駆け抜けた後には、切り刻まれた帝国兵の亡骸が転がっていた。生存者は一人もいない。全員まとめて翠が倒した。切り殺した。


「存在進化すると、ここまで変わるのか……」


翠は新たな力に陶酔しながら、帝国兵を狩っていった。今までなら、魔法を使わなければならなかった相手を、翠は肉弾戦で容易く倒している。グリーンスネークのままだったら、肉弾戦で倒すのに苦労していた帝国兵の軍隊を、簡単に倒せている。以前の彼とは、レベルそのものが完全に違っていた。戦いながら、翠はスケイルブレードの使い方を覚える。スケイルブレードは自由に可動させることができ、刃を腕の先に向けて、突き刺すこともできた。


「手足があるって最高!」


翠は取り戻した手足を遺憾なく使い、戦場を縦横無尽に駆け回り、帝国兵を倒していく。


「そこまでだ!!モンスター!!」


突然声を掛けられて、翠は足を止めた。そこにいたのは、帝国軍の隊長だ。


「この港町ロルウェイの制圧は、我々にとってとても大切な任務なのだ。邪魔をされては困る」


「困る?それはよかった。邪魔されたくなかったら止めてみなよ」


「……モンスター風情が。大きく出たな!!」


翠の挑発に怒った隊長は、剣を構えて斬り掛かってきた。だが、斬り掛かってきた時にはもう翠は隊長の背後に移動しており、


「馬鹿な……速すぎる……!!」


隊長は全身から血を吹き出して倒れた。


「た、隊長がやられた……!!」


「退却!!退却ーっ!!」


隊長が倒されて敵わないと思ったのか、次々と引き上げていく帝国兵。翠は帝国軍の撃退に成功した。


「よし。これでボルドーさん達を呼べる」


これでもう定期船が入港しても大丈夫だ。問題は、どうやって定期船に合図するかだが……


「あ」


と、翠はすぐ近くにいて唖然としている反乱軍兵に訊いた。


「すいません。反乱軍のシンボルマークとか、そんな感じのものってありませんか?」


「……え?あ、ああ。それならそこに……」


反乱軍兵は指差した。見ると、近くの地面に、帝国の紋章に白いペンキでバッテンが書かれているという旗が落ちていた。


「これが反乱軍のシンボルか……わかりやすいな。」


翠は反乱軍旗を持って近くの高台に飛び乗ると、定期船に向かって大きく振った。


「やっぱり手足があるって最高!!」




双眼鏡で町を見ていた船員の一人が、反乱軍旗を振っている翠を見付けた。


「翠さんからの合図です!反乱軍の旗を振ってます!」


「よしもう大丈夫だ!入港しろ!」


安全を確認したボルドーはすぐ定期船を動かすよう命令を出し、間もなくして定期船は入港した。




「これでひと安心、と。」


定期船が入港したのを確認した翠は、反乱軍旗を下ろす。しかし、定期船が動き出してから入港するまでずっと旗を振っていたが、ほとんど疲れていない。筋力と持久力も、かなりパワーアップしている。


「ん?」


見晴らしのいい場所に立っていたおかげで気付くことができた。反乱軍旗を掲げた大部隊が、この町にやってきている。


「援軍の到着、か。」


これでしばらくの間、この町は大丈夫だろう。あとは、反乱軍のリーダーが、翠を認めてくれるかどうかだけだ。

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