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第十話 魔弓将軍

「ブリジットが!?サム!!今日は何月の何日だ!?」


「六月の、十八日だよ。」


「……なんてことだ。奴が来るまで、あと三日しかないじゃないか……!!」


アレスはサムから今日が何日かを聞き出し、絶望した。あとたった三日で、再びブリジットがこの村に攻めてくる。


「こうしてはいられない。早く準備を……!!」


「その身体じゃ無理だ!!」


すぐに戦いの準備を始めようとするアレスを、サムが押さえる。万能薬の効果で呪いは治せたが、体力までは回復していない。病み上がりの身体でブリジットと戦って、勝てるはずがない。


「今言ったように、ブリジットとは僕が戦います。そのために、魔法を教えて欲しいんです。」


「ですが、ブリジットは反魔導アーマーを装備しています。よほど強力な上級魔法か、対反魔魔法でもない限りは……」


翠の魔法の技術の高さは、サムも見た。だが、帝国には反魔導アーマーがある。あれがある限り、中級程度の魔法は無力化されてしまうのだ。


「オーガメイジが使った、アースクエイクやウインドカッターみたいな魔法、アレスさんは使えませんか?」


「……使えることは使えますが、あれは一朝一夕で習得できる魔法では……」


「イメージさえ教えて頂ければ、僕はすぐ使えるようになります。超進化の実で魔法技術を進化させたので、どんな魔法もイメージさえわかればすぐ使えるようになるんです。」


「……わかりました。お教えします」


まだ身体を動かすことはできないが、魔法のイメージを口頭で伝えることはできる。翠はアレスからアースクエイクやウインドカッター以外にも、いくつか魔法を教わった。


「ありがとうございます。じゃあ僕は、少し練習してきますね。村の皆さんには、今のうちに逃げるように伝えておいて下さい。」


もし翠がしくじったりしたら、この村は奴隷徴収隊に蹂躙されてしまう。それを避けるための措置だ。


「……わかりました。」


不本意ではあったが、アレスはまだ戦える状態ではなかったので、渋々承諾した。











それから三日間、翠はひたすら魔法の習得と、精度と威力の向上、ブリジットに対抗できる進化に努めた。そして、運命の三日目。


「……来たな。」


翠は遠目から、奴隷徴収隊の馬車が向かってくるのを見た。ハボンの村にやってきた連中より、ずっと数が多い。村に残っているのは、サムとアレスだけだ。


「残っているのはあなた達だけです。さぁ、逃げて下さい!」


「ありがとうございます。」


「翠さん。きっと生きて、もう一度会いましょうね!」


翠は二人が逃げたのを確認してから、村の出口から外に出て、真っ直ぐ奴隷徴収隊に向かった。


「そこで止まれ!」


ある程度村から離れてから、翠は奴隷徴収隊に止まるよう言う。大きなグリーンスネークが喋ったのに驚いたのか、奴隷徴収隊はピタリと止まった。だが直後、白い馬に乗った一人の兵士が、進み出てくる。


「今我々に止まれと言ったのはお前か?」


反魔導アーマーを着込み、長い金髪を垂らしている美しい女性だ。しかし、その瞳は青く、氷のような冷たさを感じさせる、冷酷極まりない眼光を放っている。翠は直感した。この女兵士こそ、イルシール帝国が誇る最強の六大魔将軍の一人、魔弓将軍ブリジットであると。


「他に誰かいるように見えるのか?」


翠は一応周囲を見回してから、ブリジットに答える。


「数日前帝都アルルーヴァに奇妙なメッセージが届いた。ハボンの村に向かった奴隷徴収隊の隊長は、言葉を話すグリーンスネークに殺されたと。」


「それは僕のことだ。負けた国だからって無理矢理国民を奴隷にしようとするお前達から、あの村を守ったんだよ。」


「やはりそうだったか。ただのグリーンスネークではなさそうだな?超進化の実、か?」


「……よくわかったな。」


「簡単な推測だ。お前は見たところグリーンスネークにしか見えないが、ただのグリーンスネークが言葉を介するなどあり得ない。ならば、そうなるように進化したと考えたまで。」


恐ろしく聡明で頭の回る女だ。ただ会話しただけだというのに、翠が超進化の実を食べたということに気付いた。


「だがお前が何者であろうと、そこを退いてもらわねばならん。これも仕事でな、それに何より確認したいのだ。あの男……この村にとって唯一の戦力、アレス・ロゼストを失った村人達が、絶望に沈んでいる顔を見たいのだよ。」


本当に、どうしようもない外道である。翠はこういう外道の企みを崩してやるために、アレスは死んでいないことを告げた。


「アレスさんなら死んでないよ。サムさんが万能薬を飲ませたから」


「何?私のペインデッドアローの秘密を解き明かし、あまつさえ解呪したというのか?」


アレスは完全に死んだと思っていたようで、ブリジットは心底驚いている。


「それから、村に行っても無駄だ。全員逃げてもらった。それでもお前達に村を荒らさせるわけにはいかないから、相手になるけどね。どうする?このまま帰るなら死人を出さずに済むよ。僕の目的は、あくまでもエレノーグだけだから。」


もう奴隷徴収隊が村を襲う理由がない。倒す相手はエレノーグだけなので、無駄な戦いをするつもりもない。翠にそう言われ、ブリジットは考える。


「決まっている!!貴様を駆除するのみだ!!」


答えたのはブリジットではない。この奴隷徴収隊の隊長だ。


「貴様は既に我らの同胞を葬っている。それに貴様の目的は皇帝陛下なのだろう?ならば見逃す理由がない!」


確かに、言われてみればその通りだ。自分達の主人を殺すと言われて、黙っている馬鹿はいない。それに、もう翠は奴隷徴収隊を一つ壊滅させているのだ。帝国にとって反乱分子であることは間違いないし、これからどんどん進化していく眼前の脅威を放逐する理由がない。


「どうしても戦うつもりでいるのか?」


「くどいぞグリーンスネーク!!」


翠は再度確認したが、隊長達は答えを変えない。


「なら教えてやる。僕の目的はエレノーグだけだが、エレノーグに味方をするなら、そいつらは全員僕の敵だ!!容赦はしない!!」


「やれるものならやってみろ!!モンスター風情が!!全軍突撃ぃぃ!!」


「おい待て!」


翠に挑発された奴隷徴収隊は、ブリジットの制止を振り切って突撃する。奴隷徴収隊は、たかがグリーンスネークなどに負けはしないと思っていた。だが、そのたかがグリーンスネークという考えは、突撃直後に覆されることになる。覆された時には、もう遅かったが。


「アースクエイク!!!」


翠は覚えたてのアースクエイクを使った。イメージを教えられた段階で使えたものを三日間みっちり練習したからか、規模が非常に大きい。ブリジットはすぐに馬を走らせて回避したが、奴隷徴収隊は突っ込んでいたために逃げられず、押し寄せる岩や石柱や棘に打ち砕かれ、押し潰され、串刺しにされ、一瞬で全滅した。


「愚か者共が……進化していると言ったではないか。」


ブリジットは奴隷徴収隊の全滅を悲しむこともなく、ただ愚か者共と吐き捨てた。


「ずいぶん冷酷なんだな。」


「当然だ。思慮の浅い愚かな兵士に、用などない。私にとっては価値のない存在だ」


翠に冷酷な点を指摘されたブリジットは、特にそれを隠すこともなく、またしても無価値な存在と吐き捨てる。


「しかし、やってくれたな。お前を倒せても、私一人しかいないのでは村を制圧できないではないか。」


ブリジットも人間だ。一人では対応できないこともある。村を制圧して奴隷を徴収するなど、彼女一人ではできない。そういう意味では、奴隷徴収隊を失ったことは惜しいと言える。


「……まぁ、正直奴隷などどうでもいいのだが。」


「何?」


「皇帝の定めたことだから従っているだけだ。そもそも私が将軍になったのは、奴隷集めに奔走するためではない。狩りをするためだ」


「…狩り?」


「そう、狩りだ。世間では戦争だ戦争だとほざいているが、私にとって戦争は戦争ではなく、狩りなのだよ。」


ブリジットは人間を人間と見ていない。彼女にとって、人間は獲物である。


「ゆえに私にとっての価値観は、狩りがいがあるか否か、それのみ。」


「……それが一国の将軍の言うことなのか?はっきり言うけどお前、将軍の器じゃないぞ。」


「何でもいいのだ。狩りさえ、できればな。今帝国がどういう状態にあるか、知らないわけではあるまい?世界中と戦争状態だ。つまり、狩る獲物が増える。だから私は帝国の兵として参入し、狩り続けている間にいつの間にか将軍になったのだ。」


つまり、将軍自体はブリジットが望んでなったものではない。周囲が勝手にブリジットを持ち上げ、エレノーグが勝手に将軍の地位に据えただけだ。


「……狂ってる。」


「私に向かってそう言ったのはお前が初めてではない。だが気に留めたこともない。私にとっての価値観は狩りがいがあるかどうかだけであり、何を言われようと知ったことではないのだ。」


ブリジットは馬を降り、提げてあった弓を手に取る。黒い弓だ。黒く、闇が形となったかのような弓だ。だが、弓のあちこちには文字が刻まれており、ただの弓ではないことを匂わせている。


「さて、お前はどちらかな?私にとって狩る価値があるか、それともないのか。私としてはお前に興味があるから、前者であることを願っているがね。」


次の瞬間、弓にピンク色に輝く弦が、ブリジットの片手に同じくピンク色に輝く矢が一本出現し、ブリジットはそれを素早くつがえ、弦を引き絞って発射した。


「リフレクション!!!」


サムからブリジットが射るのは魔力の矢だと聞いていたので、リフレクションで防げるはずだ。そう思った翠はリフレクションを使い、ブリジットの矢を防ごうとする。しかし、矢はリフレクションのバリアを貫通し、翠の胴体に突き刺さった。


「なっ!?」


「教えてやろう。私のアブソリュートザミエルは、ただの弓ではない。私が放つ魔力の矢に、魔法防御貫通性能を加えるのだ。」


確かにただの弓ではないと思っていたが、魔法防御貫通だと?冗談ではない。翠は刺さった矢を口で引き抜き、吸魔を使って吸収し、ダメージは自己再生で治す。


(吸魔は効く。あくまでも防御を貫通するだけみたいだな)


吸魔が効くなら、まだ対策の立てようがある。そう思っていた時だった。


「おおそうだ。私ばかり飛び道具を使ってはずるいな」


なんとブリジットは、反魔導アーマーを脱ぎ捨て、服だけになった。


「……どういうつもりだ?」


「ハンデだよ。狩る者と狩られる者は、同等の立場でなければ。狩りとは本来そういうものだ」


「……馬鹿にするな!!サンダーブラスター!!!」


遊ばれている。そう感じた翠は、サンダーブラスターでブリジットを攻撃した。罠かもしれないと思ったが、逃げ場もなく威力も相応の攻撃なら、小細工をさせることもない。



だが、ブリジットはサンダーブラスターの攻撃範囲から離脱することで、いとも容易くかわしてしまった。



「なっ!?」


凄まじいスピード。よくよく考えて翠は思う。鎧を着れば防御力は上がるが、スピードは落ちる。ブリジットは弓兵だ。鎧で身を守りながらの戦いというのは、弓兵の戦い方ではない。弓兵は基本耐久力がなく、鎧を着ていようが一撃もらえば終わる。ならば敵の攻撃を回避しながら、的確に矢を撃ち込む。つまり、反魔導アーマーを脱ぎ捨てるという行為は、ブリジットにアドバンテージを与えたのである。


「ファイアブラスター!!!」


だが、攻撃の手を緩めるわけにはいかない。ひたすら攻め続ければ、いつか必ず当たるはずだ。しかし、


「レギオンアロー!!」


ブリジットが矢を三本つがえて射った瞬間に、矢がいくつもに分裂。ファイアブラスターを相殺し、残った矢が二本、翠の身体に突き刺さった。


「くっ!」


矢は翠の身体を、地面に縫い付けた。痛い。だが逃げないと、すぐ次の矢が来る。しかし、ブリジットは次の矢を射たない。待っているのだ。翠が動けるようになるのを。


「アースクエイク!!!ウインドカッター!!!」


翠は矢を引き抜いて吸収し、再生してからしっぽを振って地面を叩き、風の刃を飛ばして攻撃したりもしたが、ブリジットには全てかわされてしまい、代わりに無数の矢が返ってくる。


「……つまらん。」


先に言ったのはブリジットだった。


「同じことの繰り返しで進展が一切ないし、お前が再生するからいつまで経っても終わらん。つまらんから、もう終わらせる。」


ブリジットは一本、極太の矢を出現させ、それを放った。


「ジェノサイドアロー!!!」


矢は空中でみるみるうちに巨大化し、光線となって翠に飛んでいく。


(そういうのを待ってたんだ!!)


翠は口を大きく開けて、ジェノサイドアローを吸収した。


「……ふん、お前にはそれがあったな。ならば、苦しんで死んでもらうとしよう。」


ブリジットは再び、今度は普通の太さの矢をつがえ、放った。


「ペインデッドアロー!!!」


アレスを苦しめた呪いの矢、ペインデッドアローだ。翠はかわすこともせず、それを受けた。勝ったと確信するブリジット。



しかし、何も起きない。ペインデッドアローを撃ち込まれた者は、すぐに全身を耐え難い苦痛が襲い、倒れ込むというのに、翠は一向に苦しむ素振りも見せないのだ。



「む?ペインデッドアローが効かない?」


「お前のペインデッドアローは、呪属性と毒属性を融合させた魔法の矢だ。一度その呪いを受ければ、呪いと毒を同時に回復させないと治せない。つまり、呪いと毒に耐性があれば、呪いは受けないんだ。」


翠はブリジットに対抗するため、進化で自分の身体に呪い耐性を追加した。毒と呪い、二つの属性への耐性が揃ったため、ペインデッドアローの呪いを無効化したのだ。


「面倒なやつだ。なら、これでどうだ。レギオンアロー!!!」


レギオンアローを放つブリジット。しかし、レギオンアローは翠の身体に触れる寸前に、無害な魔力に変換されて、翠に吸収されてしまう。何度レギオンアローを使っても、同じことだった。気付けばペインデッドアローも消え、ダメージが治っている。


「進化で吸魔をパワーアップさせたんだよ。」


翠は先ほどのジェノサイドアローを吸収した際に、その魔力を使って吸魔を進化させ、牙だけでなく全身に掛けられるようにしたのだ。


「リフレクションは突破できても、パワーアップした吸魔は突破できないみたいだな。ウォーターブラスター!!」


ブリジットの矢で魔力は補充した。それに、もうブリジットの矢は翠に効かない。あとはひたすら、攻撃あるのみだ。ブリジットはそのスピードを利用して弾幕を掻い潜り、翠に接近してくる。


(接近戦を挑むつもりか?)


しかし、弓兵は力が弱く、接近戦には向かない。魔法が通じない以上仕方ないことだが、接近戦なら翠の方が得意である。叩き潰して、全身の骨をへし折ってやる。そう思った翠は接近戦をしやすいように、身体を大きくした。そして、しっぽをブリジット目掛けて振る。



だが、ブリジットがアブソリュートザミエルを振った瞬間、翠のしっぽは輪切りにされていた。



「は!?」


驚く翠を尻目に、ブリジットはしっぽを輪切りにしながら進んでくる。


「さ、サンダーブラスター!!」


慌ててサンダーブラスターを使うと、ブリジットは攻撃を避けて飛び退いた。


「接近戦ができないとでも思ったか?アブソリュートザミエルはただの弓ではないと言ったはずだ。」


アブソリュートザミエルは両端が鋭利な刃になっており、有事の際にはこれを使って接近戦もできるのだ。


「残念だったな?私にとって魔力矢を封じられることは、何の障害にもならない。遠距離が駄目なら近距離に切り替えればいい、それだけの話だ。」


「……プロテクション!!!ストロング!!!」


強力な遠距離攻撃の上に近距離攻撃も強いなど、反則だ。そう思いながらも、自己再生で欠損部分を修復し、プロテクションとストロングを併用して使い、ブリジットに挑む。


「遠距離には魔法防御貫通が付けられ、近距離には物理防御魔法貫通が付けられる。これを防ぐにはただ単純に己を頑丈にするしかないが、お前はそこまでは進化していなかったようだな。」


だがブリジットが言うように、翠の身体はどんどん刻まれていく。


「ドラゴンの鱗すら容易に切り裂く刃だ。そうそう防げるものではないよ」


ドラゴンの鱗とやらがどれだけ固いかはわからないが、少なくとも今の翠の身体よりは固いはずだ。全身に切り傷を付けられ、ぼろぼろにされた翠。傷は自己再生で治っていくが、体力までは回復しない。度重なるブリジットの攻撃が、翠から抵抗できなくなるほど体力を奪ってしまった。


「やはりつまらんな。少し攻め方を変えたら、もうこれか。だが、普通の兵士よりは狩りがいのある獲物だったよ。」


翠に死刑宣告し、アブソリュートザミエルを振り下ろすブリジット。



しかし次の瞬間、一本の荘厳な白銀の剣が割って入り、ブリジットの攻撃を防いだ。



「このヴァイスカリバーは、俺の家に代々伝わる聖剣だ。アブソリュートザミエルがいかに強力な武器だろうと、容易く折ることはできないぞ!!」


その者、アレスは勢い良く聖剣、ヴァイスカリバーを振るい、ブリジットを翠から遠ざけた。


「アレスさん!!どうして!?」


「すいません翠さん。どうしても、恩人を見捨てて行くことはできないんです!」


アレスはこの三日間、結局戦えるようになるまでは回復しなかった。だから、翠に逃げろと言われたのだ。しかし、見ず知らずの他人でありながらサムに協力し、自分を救ってくれた恩人に代わりに戦ってもらうなど、彼にはどうしてもできなかった。


「アレス……本当に生きていたのか……」


「一ヶ月ぶりだなブリジット。今度は負けないぞ!」


「……ふん。ならばもう一度、苦痛の呪いを受けるがいい!!」


ブリジットはペインデッドアローを放つ。


「そうはさせるか!!」


しかし、翠がしっぽを割り込ませ、ペインデッドアローを吸収。


「はぁぁぁぁ!!!」


アレスがブリジットに斬り掛かる。


「くっ……!!」


ブリジットはアレスのヴァイスカリバーを防ぐが、直後に翠がしっぽや魔法で攻撃してくる。それに気を取られれば、今度はアレスが聖剣で攻撃してくる。翠もアレスも、ブリジットにとって片手間で相手にできる存在ではない。


「形勢不利か……仕方あるまい。」


既に勝機は逸した。そう感じたブリジットは、大きく後ろに跳躍し、待機させている馬に乗った。


「グリーンスネークよ!お前の名を聞かせてくれ!」


ブリジットは翠に名を訊く。


「櫻井、翠だ!!」


「私の名はブリジット!ブリジット・カーウェイン!皇帝エレノーグ陛下より、魔弓将軍の称号を賜った者だ!」


ブリジットも名乗る。


「私はお前を自分の獲物に決めたぞ。次に会う時までに、もっと極上の獲物に進化しておけ!!」


そう言ったブリジットは踵を返し、馬を走らせて帝都に帰っていった。











「本当に、行ってしまわれるんですか?」


サムは尋ねた。メトの村は守られ、奴隷徴収隊は去った。魔弓将軍ほどの存在が追い払われたので、帝国もしばらくこの村に対しては慎重になるだろう。


「はい。この村は守られましたが、帝国に苦しめられている人達は大勢いるはずです。僕はその人達を助けに行かなければなりません」


そのためには、先代皇帝を失脚させて代わりに皇帝に即位したエレノーグを、一刻も早く倒さなくてはならない。立ち止まっている暇はないのだ。


「そうですか……」


「……翠さん。皇帝エレノーグを倒したら、またこの村に来てくれますか?」


今度はアレスが尋ねる。翠は力強く頷いた。


「はい!必ず!」





「さようなら翠さん!」


「いつかまた、メトの村に来て下さいね!」


サムとアレスは、これからもやってくるはずの奴隷徴収隊と戦うため、村に留まらなければならない。結局、翠はまた一人旅だ。だが、恐れることはない。自分の助けを待っている人達がいるのだから、怖がっている場合じゃない。翠は帝国を倒すことをさらに強く誓い、村人達に見送られながら、次の戦いの舞台へ、意気揚々と旅立っていった。





さて、翠はさらに強くならなければならないわけですが、ここでコラボを募集します。ウチの作品に登場させたい作品のキャラがいる、あるいは翠を使いたいという方は、どしどしご応募下さい。常時、受け付けています。

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