こんな夢を見た
研究室での手伝いもどうにか馴染んできたある日、書類を届けに行った会議室で自分にも意見を求めてくれる気さくな女性研究長と、チーフアシスタント、責任者の男性。
そうですね……と意見を交わしているとビルの窓越しにふと有り得ない光景が目に飛び込んできた。
近くにあったので工場地帯で小さな衝突事故が起こったのだ。
それ自体は小さい物だったが飛び散った火花が次の爆破を呼び、規模は徐々に拡大を続け、最終的に我が研究所横のタンクに引火、大爆発を起こした。
「窓から逃げて!!」
叫んだ自分の言葉よりも爆発の方が早かった
咄嗟に3人を抱き抱える様に庇って目を閉じた次の瞬間、炎に包まれた部屋から一瞬にして見た事もない荒野へと風景が変わった。
「え…?」
驚き、見渡していると三人の視線は自分に注がれている事に気付いた。
「落ち着いて、元の場所を思い浮かべるんだ」そう諭されて訳も分からず研究所を思い出す
すると、風景がぐにゃりと曲がり、また瞬時にして元の研究所へと戻ったのだ。
瞬間転移、その言葉がすぐに過ぎったのはここが『超能力研究所』だからだ。
自分には無いと思っていた力。それが急に発覚した。
が、研究長の表情は冴えない。
「まさか、貴方が特異点とは……」
特異点、とは能力者の中でも特殊で、一人で世界の次元を壊す事が出来るほどの力を有している危険人物。
その捜索をしつつ能力者達に制御を教えるのがこの研究所の役割りだった。
しかし、自分のあの力が特異点の物だとするならば、自分の末路は? そんな事を思った時にはすでに意識をなくしていた
狭い拘束用のポッドの中で目を覚ます。
機械は動き出し溶液の中に浸ろうとしていた。
この溶液がどんな物なのかは知らないがきっと命を落とす事には変わりない。
が、自分の力が元で多くの犠牲を払う未来があるなら、このまま消去されても良いか。
ぼんやりとそう思っていると、徐にポッドの扉が開く
「助けに来たぞ!さぁ出るんだ!」
手を差し伸べ自分を引き出してくれたのは責任者の男性だった。
なぜ?そう思いながら脱出すると研究長と責任者の間で特異点に対する結論が割れていたのだと明かされた。
「君の力は確かに危険だが、救いにもなる筈だ!」
追ってくる研究所の警備員達を振り切る
走りながら役に立てる力ならば、と言う思いが胸中に生まれ、一先ずこの場を脱出するのだ