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第三話『警告状』

 窓から差し込む温かい光で、僕は目覚めた。

 背もたれから身を起こし、昨夜のことを思い出す。

 そうか、昨晩フリストと別れたあと僕はこの廊下のアームチェアで寝ついていたんだ。

 重い頭がかすかにそう認識し、僕は立ち上がるとぽろんと膝からカーキ色の毛布が落ちた。

 おそらくイリーナがかけたものだろう。僕は毛布を拾い、アームチェアに投げた。


 居間に行くとイリーナが鼻歌を歌いながら鍋をかき混ぜていた。

「おはよう、イリーナ」

 僕はそう声かける。

 イリーナは振り向くと、

「あ、おはよう兄さん。また椅子で寝ていたでしょ?」

 と微笑んだ。

「風邪でもひいたらどうするの?」

「本当だよ、毛布ありがとな」

 僕は言いながらテーブルの席についた。

 イリーナはスープのカップと皿に乗せたパンを持ってきた。

「今日もまた戦いに行くの?」

 早速朝食にとりかかる僕にイリーナは話しかける。

 僕はパンを口に含んだまま頷くと、イリーナは「そっか」と返事をした。

「ねぇ兄さん、別の仕事を見つけたら?」

「またその話か」

 僕はいい加減、いらっとしてパンを飲み下した。

「言ったよね、他にどんな仕事があると。僕は頭が良くないし、技術も何も持っていないんだ。兵士の他にどんな仕事をしてお前や母さんを食べさせて行けると思ってる?」

 僕はまくし立てると、スープを一気に飲み干した。

「けど、稼ぐって理由だけで命の遣り取りをするなんて……」

 僕はそれには答えず、

「ごちそうさま」

 と言い、出かける支度をするために居間から出た。

 イリーナが制止する危機感があったが幸い、呼び止められもせず、居間から出ることができた。


 ※


 家の外を出た僕を待っていたのは、フリストとお馴染みの赤いセダンだった。

「よぅ、イヴァン」

 フリストは軽く手を上げる。

「おう……」

 さっきのイリーナとの喧嘩を引きずっていたのか、暗い調子の声となってしまった。

「どうしたんだ?」

 フリストは心配そうに聞く。

「イリーナとまたやってしまってね」

「またか、お前も頑固者だよなぁ」

 フリストはため息をつく。

「お前だって昨日言ってただろ」

 僕はセダンに乗りながら言った。

「『隠し事は、まずいんじゃないか?』と言ったんだ。俺はお前の家族じゃねぇし、お前の生き方についてケチつける気はねぇよ」

 フリストも運転席に乗り込む。

「ま、話は後だ。今日も死なねぇように頑張ろうぜ」

 フリストと僕の乗ったセダンは急発進した。


 僕らの乗ったセダンはいつもの野営地に到着した。

 車を降りると、テントの下にちょっとした集まりができていた。

「みんなどうしたんだろう?」

 僕は不安に思う。

「行ってみようぜ」

 僕とフリストは人がざわついている集まりに向かった。


「アンドレイ!」

 僕は集まりの中にいる戦友の一人、僕たちよりちょっと年上の男を呼ぶ。

 アンドレイはこっちに気がつくと、何やら紙切れのようなものを持ってきた。

「この集まりは何だ?」

 フリストがそう聞く。

「これを読め」

 アンドレイは言い、4つ折りに折り畳めてある紙を渡した。

 フリストは紙を広げて読む。僕もフリストの隣に立ち、覗き見た。

『警告状。反政府侵攻軍宛。侵攻軍、貴君らの行動により、正式に我が軍の上層部からの命が下った。速やかに反政府運動を中止せよ。さもなくば、我が軍はいかなる手段を用いてもそれを阻止する。政府軍、ニコライ・デレクヴィッチ准将』

 ワープロ書体で書かれたその文を読み上げた、僕とフリストは顔を見合わせた。

「たぶん、政府軍派の一般人がイタズラで入れたものだと結論づけられてるけどな。ほら、警告状ならもっとこう、印とか入れるだろ?でもこの紙切れにはそれらしきものは見当たらない」

「本当だな」

 フリストは頷く。僕も紙に目を戻した。確かに印らしきものは見当たらない。だが、この真に迫るかのような胸騒ぎは一体何なのだろうか?

「ま、それよりも今日は政府軍の大拠点であるリェーヴノスチを叩く。この紙に書かれてることが本当でも、その拠点さえ潰せば政府も焦ってそれどころじゃなくなるだろう。さぁ行くぞ。AK持てよ、お前ら」

 そんな軽い問題なのだろうか? 僕は拭い去れない不安を持ちながらも、AKライフルを取りに行った。

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