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第9話、杖で殴られると本気で痛い

はい、魔界に行きます!

 青い空、青い海、白い雲、白い砂浜、普通だったらこのフレーズを聞いてどんなイメージが頭に浮かぶだろうか。

そう常夏のリゾート地のようなキャッチフレーズがぴったりの世界、魔界。


 今、僕達は魔界に来ています。


〜今日の朝〜


「パパ!」


「何?」


「この漬け物すっごく美味しいよ!」


「市販のヤツだもん」


ミュランダがしゅんとなる


「ちょっと修様ぁ〜?幼児虐待はいけませんよぉ?」


「してねぇよ!!」


つい最近まで一人だった食卓が何故か急に3人なったのはつい最近の事だ。


「あのねパパ、お話があるんだけど?」


「ん、何言ってみ?」


口の中の朝食を飲み込んでから答える。


「あのね…あたしまがっ!!げほっげほっ」


「うっわきったね!色々飛んできた!お前ばっか!口の中に物を入れて喋るなって言っただろ!?」


ミュランダはまたしゅんとなる。


「修様はダメですねぇ〜子供には叱り方と言う者が…」


魔界の兵器のセリフとは思えません。


「あのっ私と魔界に行って欲し」


「断る」


「でも…魔界」


「断固拒否する」


「うっ…ぐずっ…ひっ」


「あ〜よしよしミュラちゃ〜ん、超弩級のケチ、ケチの中のケチ、ロリコンが悪いんだからミュラちゃんは泣かなくて良いんだよぉ〜?」


ケチはわかるけど最後のやつには耳を疑いました。


泣いているミュランダをなだめながらマキは、(バカ)と言うような目でこっちをじろっと見る。


「だああああっもうわかったよ!話くらいなら聞いてやるって!」


「パパ……心して聞くが良い」


ちなみにミュランダのキャラがコロコロ変わるのは出会った時からだ。


〜5分後〜


「〇?♂℃″*&#%∴」


「あーなるほどぉそういう事ですかぁ〜」 

僕は急に人外の言葉を喋り出したミュランダを見ながらキョトンとしていた。何故かマキには通じるらしくさっきから二人で喋っている。


「という訳なんです!」


「わかるかああああっ!!」


「あ、修様私が説明しますねぇ〜」


マキの話はだいたいこんな感じだった…


魔王がミュランダに俺の暗殺を依頼、理由は魔機なんか入ってる人間が危険だという事、まぁ確かに危険には違い無いがちょっと前に現れたとんでもない化け物達の方がよっぽど危険な気がするが…更に暗殺に失敗した場合は自害しろとの命令を受けていたが実行できなかった為、魔王が刺客をじゃんじゃん送り込んで来る可能性があるという事、以上の理由で向こうが動く前にミュランダが魔王に俺の事は危険な存在で無い事を報告して今後安全に暮らせるようにする為…みたいな話だった。


「いや…でもね今日は学校があるわけで…」


「あ、それなら大丈夫だよ!魔界の時間とこちらの世界の時間の進み方はだいぶ差があるから!」


「なるほど…ちなみに魔界での一日の時間はこっちの世界で言うとどれくらいなんだ?」


「2秒ですよぉ修様」


短かっ!!


「あーわかった!ちゃっちゃと行ってさっさと終わらせて帰るなら行ってやる!」


「ありがとうパパっ!!」


という訳で魔界に行く事になった、まぁ2秒もかからないなら良いだろうというのがこの時の俺の甘い考えだった…


「じゃ準備するから待っててね!」


と言うとミュランダは何かの詠唱を始める。


「我、魔の者達が住まう世への門をここに紡がん」


ミュランダの周りには魔法陣が浮かび上がり緑の閃光が床に魔法陣を焼き付けて行く


「ってアホおおおお!!お前絶対金取られるって!床燃やしちゃダメだって!!」


しかしミュランダは瞳を閉じて詠唱を続ける。


「我の中に流れる魔の血に命じる、ミュランダ・クロスハートの名の元に」


「へぇ〜ミュラちゃんの苗字ってクロスハートって言うんですって修様!!」


「そこ!?今そこに注目!?どこに食い付いてんの!?速く止めてえええ!!」


「門よ開け!」



その瞬間ミュランダの背後にブラックホールのような空間が現れる


「ミュラちゃん上手なゲートですねぇ〜!」

 

マキがミュランダの作り出すゲートとやらをやたら褒めているが今は、そんなことより


「ちょっ!とりあえず火消して!!ヤバいから!そんなお金無いから!!」


「パパったらぁもう行くよー?」


ミュランダの背にバサッと青い翼が生える、そして親指をくいっとゲートに向ける


「俺のバイクの後ろに乗れよ?」みたいな感じだ


「あぁう…完璧焦げ付いてるじゃん…」 

ジューっとくっきり魔法陣型の焦げ目が床に残って白い煙を立ち上ぼらせている。


「修様ドンマイ!」


ポンと俺の肩に手を置き親指をぐっと立ててウィンクしている。


「なんだろう…この絶望感…あはは…」


「ちょっとぉ!パパもママも行くよぉ!?」


ミュランダが青い翼をばたつかせながら膨れっ面でこっちを見ている


「いつでも良いですよぉ〜」


「好きにしてくれよ…」


「じゃ行きまぁ〜す……あの〜大人三人お願いしたいんですけどぉー?」


「ンア?オジョーチャンハコドモダロ?」


は?


「エーット、コノマヌケヅラノニイチャント、ジュンジョウハノネェチャント、オジョーチャンデエエンヤナ?」


「あ、はいそうです!よろしくお願いします!」


なんかゲートとか言うのが喋ってますけど…?


「って誰が間抜け面だ!!」


「まぁまぁ」


マキになだめられたのでとりあえず水に流す事にする。


「ホンナラ、トリアエズモヨリノエキカラトーキョーホウメンノデンシャニノッテモラッテ…」


「うっそだぁ!?ありえんやん!?普通そのブラックホールみたいな所に飛び込む所じゃん!?何?電車とか?」


「ゲートですよぉ修様」


「アッハッハッ、ニイチャンオモロイノゥ」


「うっせーよ!!」


「ちょちょっとパパ落ち着いてよ。」


「ヨッシャ、キニイッタ!コンカイハタダデオクッタルワ!ガハハハハハ!!ホンマナラヒトリハチジュウエンナンヤデ?」


安っ!!!!


「本当にこんなんに頼んで大丈夫なんだろーな?」


「「…」」


「そこで無言かよ!?」



ドスーン!!



「え?何?」


「ハイ、トウチャク」


速っ!魔界近っ!!


「ゲートさんありがとうございました。」


ぺこりとミュランダが頭を下げる


「エエンヨ、コンドソコノジュンジョウハノネェチャンショーカイシテナ?」


「ごめんなさい、ママはパパの物なんです!!」


マキはきゃっと手で顔を覆う


「照れてんじゃねぇよ!!」


「チッ、アホヅラニシテハヤルノウ」


「良し、喧嘩する?喧嘩!?」


「まぁまぁ」


今度はミュランダになだめられる


「ゲンカンカラデラレルヨウニナットルデナー」


「「ありがとー」」


そそくさと出て行く女子二人


「ン?ナンヤ?ニイチャンハイカヘンノカ?」


「…えせ関西弁」


「ガーン!」


「ガーンって自分でいうのかよ…」


と少々どうでもいい会話をしてから家を出た…が…驚いた。


「それー」


「キャー冷たいですよぉ〜」


二人(?)の女の子が砂浜で波と戯れている。


「ほらほらミュラちゃん、こっちですよぉ〜」


「あー待ってよー」


実に楽しそうに、周りには椰子の木やらハイビスカスのような赤い綺麗な花が咲いていて、暖かい心地の良い風がさわさわと吹き抜けている。


「おっ沖縄!?」


ひとしきりじゃれあっていたマキとミュランダが戻って来る。


「違いますよぉ魔界ですよ修様?」


「パパったら何言ってるの?」


あっれええええええええ!?


「いや、魔界ってさ!もっと紫色とか赤とか黒のイメージじゃん!!」

 

「あーそれは人間の勝手なイメージの話で」


「こういう世界なんですよぉ」


と口々に答える。


「しかもスッゲー平和そうじゃん!?」


「まぁ最近では戦もないし」


「魔界に住む魔族はあまり争いを好まないんですよぉ」


あれまぁ


「でも百八十年前のゴルデス戦役では…」


「いや聞いてねぇよ!ゴルデス戦役!」


とまぁあっさり俺が持っていた魔界のイメージが覆されたのだ。



そして今に至る。

 

「なぁーそろそろ魔王の所に行かなくて良いのかぁー?」


砂の城を作ったり、海で泳いだりしている二名に向かって尋ねる、彼女等は約1時間くらい遊んでいる。


「修様も遊びましょ〜」


とマキがビーチボールを見せてくる、ビーチボールがどこから出て来たかあえて追求はしない。


「そうだよパパーせっかくなんだからさー」


とミュランダがこれみよがしに打ち上げられた海藻を押しつけてくる。


 

「いや、意味がわからん!ビーチボールならわかるけど何でワカメ!?ちょっ!しかも臭い!程よく太陽に当たってるから臭い!」


「ワカメじゃないよ?シルルトルソーズだよ?」


「知るかぁあああああ!!」


「おっほっほっほ、みなさん楽しんでますか?」



「あ、はい楽しんでますよ約二名…ってどなたですか?」


それはもうトロピカルなアロハシャツを着た、 

人相の良い優しそうなお爺さんが杖を片手に立っている。


ちなみに約二名はまた浜辺に戻ってきゃっきゃとじゃれあっている。


「失礼、この魔界を治めるグリントと言う者です。」


「あ、こりゃご丁寧にどうも…って事は魔王!?」


「一応そういう事になっております」


と言い深々と頭を下げたので吊られて頭を下げる。


「失礼ですが、あなたの御名前を伺っても宜しいですかな?」

 

「あ、すいません俺、片桐修真って言います」


「おや!あなたが噂の?人間にしては魔力がお強いのでもしやと思いましたが」


「あーはい、噂のそれです」


と苦笑いで答える、第一ミュランダに俺を殺すように頼んだのはこの人なんだし用心に越した事は無い。


「いやぁお目にかかれて光栄です」


と、またも深々と頭を下げるので吊られ頭を下げるその瞬間


「きぇえええ!!死ねぇえええ!!」

 

どごん


「ぎゃああああれべれぶれぼ!!」


どさっ


突然グリントと名乗る魔王は雷を帯びた杖を俺の頭に振り下ろした、もろに直撃を受けた俺はその場に昏倒する


「貴様!修様に何をした!」


と遊んでいたマキが駆け付ける。


「あっはっはっは!!例え魔機を内蔵しようと所詮は人間だな!!不意打ちに気付かんとはな!!」


グリントは笑う


「何事だ!?ってパパ!?」


マキに遅れてミュランダも駆け付ける、砂浜に顔を埋めて煙をぷすぷす上げている俺を見て驚きの声をあげる。


「あっはっはっは愚かな人間の分際で魔の地に踏み入るからだ!ひゃーはっはっうげほっげほっ!」


「人間相手に不意打ち、更に自分の高笑いで()せるとは…なかなか汚いやり方ですね魔王グリント!」


「はっ魔機の小娘がっ!!人間などに寄生してその貧弱な体でも乗っ取るつもりか?」


「貴様っ!」


 

「魔王グリント様、この者達は敵ではありませんっ!!」


「おぉう、誰かと思えば役立たずの作り物ではないか?」


ミュランダの顔が暗くなる…


「任務を失敗し、まさか標的と共に再び魔界の地を踏むとは良い度胸だ…」


「うっ」


魔王の鋭い眼光に睨まれたミュランダは自分の危険を悟り後ずさる。


「ミュラちゃんを苛める奴は許しませんよっ!!」


「はっ!兵器にも母性本能があるのか?滑稽だな!!」

 

グリントは再び高笑いをあげ…噎せる


「ごほん!さぁ仲良く血祭りに上げてやろうぞ!!」


魔王の周りにバチバチと稲妻が走り出す。


「魔王様!この者達は…パパとママは!危険な存在ではありません!魔界に攻め込むつもりなんて無いのです!力を悪用する気なんて無いのですっ!!」


再び魔王が高笑いをあげる


「愉快だ!ここまで馬鹿だったとは!!最後に良い事を教えてやろう…いいか?私は私の魔界の事など案じておらぬ、私が欲しい物は魔機の持つ強大な力だ!!」


「なっ…」


ミュランダはグリントの裏切りの台詞に言葉を無くす。


「貴様!どうやら最低のカスのようですね!!ミュラちゃんは下がっていて下さい!」


「…わっ私も戦いますっ!」


マキはストールを縦に構え、ミュランダは短剣を2本取り出し隙の無いよう構える。

 

「良いだろう、力の別れた魔機と出来損ないの我が作りし天使の模造品よ…我が爪で切り裂いてくれるわ!!」


しかし魔王は構えない、以前杖を持ったまま動かない。


「舐めてると…ケガしますよっ!!」


下半身に力を込め大地を蹴る、目にも止まらぬ速さでマキはグリントに突進する。


ガギィィン!


「なっ?」


マキの力を込めた一撃をグリントは片手の人差し指と中指で止める。


「非力だなっ!!」

 

そのまま剣を持ったマキを軽々と持ち上げ投げ飛ばす。


「くっ!」


宙で身を翻し、軽く着地するとまた力強く地を蹴りグリントに詰め寄る。


マキはこの時勝利を確信していた…グリントは自分自信の事しか見ておらず魔法型のミュランダを目にも止めていない、むしろ見させない動きを自分がしていた。


(気付いてない!)


「悠久なる時の流れよ…」


(こいつはミュラちゃんの詠唱に気付いてない!!)


「でやぁ!!」


「甘い!!」


マキの攻撃はグリントにすぐに受け止められるが、グリントの雷を帯びた必殺の一撃もマキは紙一重でかわす。


「今、時の呪縛を解き放つ…大地を滅する神の(つぶて)よ…」


「いつまでも貴様の踊りに付き合う気は…無いっ!」


グリントが杖を刀の抜刀のような構えをとり思いっきり振り抜く。


「居合い!?」 

とっさにトュッティを出し真横にチャージショットを放つ、その反動でグリントの神速の抜刀から発生した鎌鼬(かまいたち)を避ける。


ズドォォン


マキのいた場所の後ろに生えていた椰子の木が綺麗に5、6本一刀両断されていた。


「ほう、これをかわすとはな…さすが深淵の神が作りし…」


マキの髪の毛が何本かはらりと白い砂浜に落ちる。


「うるさい!!」


ガキィン!カキィィン!


「今、クロスハートの名の元に、かの者を滅する炎を召喚する…」


ミュランダの周りに白い魔法陣が浮かび上がり高速で回転し始める。


「ママぁー!!離れてー!!」


ミュランダの合図に反応してグリントを蹴り飛ばしその場を飛びすさる。


「禁呪!裁きの炎ブラッディメテオ!!」


その瞬間、空に巨大な魔法陣が現れて真紅の隕石が大量にグリントに降り注ぐ。



「ぐぅおああああああ!!」


「追加です!!」

 

爆炎でに包まれたグリント目がけて、取り出したトュッティとガルアスをチャージして放つ。



ドォオオオオオン!



グリントを中心に三種の魔力が混ざり巨大な爆発を巻き起こす。



「やっ…たの?」


「わかりません…」



グリントのいた場所はごうごう紅蓮の炎を上げている



「いってぇえええええ!!」


「「あっ」」


「しゅっ修様!」


「パパっ!」

 

「ぐごぉおおおお!いてぇえええええっ!!でかい!たんこぶがびっくりするくらいでかいよ!?大丈夫これ!?」


「生ぎでだんでずねぇぇ良がっだぁぁ」


「パパぁぁ」


マキとミュランダが駆け付けて涙声ですがりつく。


「勝手に人殺してんじゃねぇよっ!あれ?ほらこれ血!血ぃぃぃっ!!尋常じゃないくらい頭が痛い!」


「あはっ…」


「ぷっ…」



「「あっはははははは!!」」

 

緊張の糸が溶けたのか、砂浜でバタバタ転げ回る俺を見て二人とも笑いだす。


「ちょっ笑ってんじゃねぇよ!!お前これで学校行ったら、片桐君…あっ間違えた、なんだたんこぶか…ってなるだろうが!!」



「「きゃははははは!」」




その時



ウゥオオオオオオオ!!



大地を揺るがすような爆音が轟いた



「貴様等、ゴミの分際で」



 

めらめらと燃える炎の中から黒い影が浮き上がる



「よくも…」


浮き上がった影は先程のグリントとは違う巨大な影



「よくもやってくれたなああああああ!!!!」



魔王の咆哮がびりびりと伝わる声だけで纏わりついていた炎をかき消す。


「なっなんじゃこりゃあああああ!!」


そこにいるのは自分にたんこぶの原因を作った老人では無く巨大な鷹、二本足で立ち翼を羽ばたかせ尻尾は二匹の蛇。

 

「貴様等をなぶり殺しにしてくれるわ」


落ち着いているが、心底怒りを込めた声、心臓を鷲掴みにされるような声


「くくっ…」


「何がおかしい?哀れな人間よ、恐怖で気がふれたか?」


「お前は俺達に絶対勝てない!!」


マキが力強く頷く。


「俺の口から言うまでもない…マキ!教えてやれ」


「はい!修様」


ミュランダが驚きの眼差しで俺を見つめる。


「魔王グリントあなたは致命的なミスをしました」


「何ぃ!?」


「普通なら魔王の第二形態だったら、もっとこう今までのボスが色々くっついた化け物だったり、逆に無駄の無いスレンダーな感じになるのです!」


(ちょっちょっとマキさん?)


「それに比べてあなたは鷹です、この前戦ったガルーダと特徴が被ってます!」


(何を言ってんの?)


マキはグリントの前にずいっと躍り出て言った。

 

「そんな使い捨ての駄キャラが私達主人公に勝てるハズがありません!!」


日が落ちかけた夕焼けの砂浜でマキを除いた、俺、ミュランダ、魔王グリントは凍り付いた、いろんな意味で。


「マキは…」


「ママは…」


「この娘は…」



「「「馬鹿だ!!」」」



マキは依然として威圧的な態度を崩さず胸を張って腕を組んでいる。



「いや違うからね、そういう事言ったらダメだからね」

 

ずるずるとマキを元の位置に引きずる。


「え?違うんですか?」


「あったりまえだ!どんな理由だよ!バカじゃないの!?」


「えぇ〜自信あったのにぃ」


「ママー?パパが言いたかったのはもうすぐ夜になるのにグリントが鳥に変身したって事だと思うよ?」


「そういう事!」


正解を言い当てたミュランダの頭をくしゃっと撫でる


「えへへ」


「なんで夜で鳥だとダメなんですか〜?」

 

「鳥っつーのは暗いと目が見えないの!だから夜は飛ばないの!」


「へぇ〜…なるほど!」


その頃には完全に夕日が落ちていた。


「マキやるぞ!」


「了解!」


「私も戦いますっ!」


マキは俺と同化する、ミュランダの背には青い翼がバサッとひろがる。



「ちょっ!暗くて何も見えない!え?ウソでしょ?」


慌てる魔王グリント。


「さっきの不意打ちの仕返しだな…」


 

(なんかかわいそうですねぇ)


「うっせ!こーゆー場合はしょーがねぇの!」


両手にトュッティとガルアスを取り出す。


「ごめんなさい魔王グリント様…私これからはこの人達と共にゆきます…」


「ちょっタイム!ターイム!何にも見えないから!明日も見えないから!!待ってホント!明日まで待って!」



(せめて一撃で)



トュッティとガルアスの装飾が光だす、マキがチャージした時よりも眩い光。

 

「決めます!」


魔法陣がミュランダの周りに広がる。



「嫌あああああ!!まだ死にたく無いぃいいい!!」



「いっけぇえええ!!」


「ブラッディメテオ!!」



トュッティからは極太レーザー、ガルアスからは巨大な火球がそれぞれグリントに向かって飛ぶ、そして真紅の隕石が大量に降り注いだ。


「グギャアアアアアアア!!」


爆炎の中でのたうち回る黒い巨大なシルエット。


「ラストぉ!!」

 

目一杯の魔力を巨大な魔の妖刀フレスベルガスに注ぐ、そして形成される巨大な刃。


「グゥオオオアヅイィイイアヅイイイ!!」


大地が割れるような悲鳴をあげるグリントに絶大な魔力を込めたフレスベルガスの一撃を全力で叩き込む。



悲鳴がぱたりと止んだ。



「ふっ…つまらぬ物を切ってしまった…」


(別にかっこよくないですよ?)


「うっせ!」


「貴様等…」

 

魔王は一つだけ言いたい事があった…どうしても死ぬ前に。


「一撃って言ったのに…二回攻撃し…」


「うるせーよ!、良し今すぐ楽にしてやる!」


フレスベルガスを振り上げる。


「違う違う!これだけ言わせて!お願い!」


「なんだ?」


「私はこの世の闇、光あるところに闇もまた同時に存在するのだ、そう私は何度でも蘇る!貴様等のした事は所詮無駄に過ぎないのだ!」

 

「最後の最後で魔王っぽい事言ってんじゃねぇえええっ!!!!」


「ぎゃああああ!!!!」



魔王グリントの最後だった。


急に力が抜けて浜辺にどさっと腰を下ろす。


「ふぃ〜」


吊られて残りの二人もその場にへたりこむ。


「疲れましたぁ〜」


「もう魔法使えないよぉ〜」


空を見上げると満天の星空だ。


「修様…どうするんですか?魔王を倒してしまいましたよ?」


「え?何が?」

 

「そーだよパパ!どうするのこれから?」


「さっさと帰って寝ようと思ってんだけど?」


「修様、そーいう事じゃなくて…」


「魔王を倒したって事はね…」


「うん、倒したって事は?」


恐る恐る尋ねる。


「修様はこの魔界の…」


「パパはこの魔界の…」



「「魔王になっちゃったんですよ!?」」


えええええええええ!?


「取り消しって効くかな?」


「「無理です」」



「うそだああああああああぁぁぁぁ!!!!」




夜の浜辺に俺の悲痛な叫び声が轟いたのだった。



とゆー訳でミュランダが意外に活躍する回だったんですが…いまいちキャラが定まりませんねこの子は(汗)

まぁ魔界突入した訳ですが…人間界に置いてきたキャラ達ゴメン、いつ出していいかわかんないよ(泣)

 親友の割りに出番無い昌弘、クラスメイトの割りに出番無い嘉奈、保険医なのに…って保険医はいいか…

 とゆーか魔王よわー!!グリントよ安らかに眠れ(合掌)

次は魔界辺2日目です、みんなファイト!

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