第11話、白いアイツは初めて見た
はい〜魔界編ラストです〜
グリント城、巨大な泡のような防御壁がワイバーンの消滅と共にはじけて消えていた。
先に到着していたミュランダの横にふわりと着地する。
「これが…グリント城」
その本当に城っぽい城はどこぞのゲームで出てきたりするイメージとピッタリだった。
「パパ行くよ」
「あ、うん」
ミュランダがすたすた歩いて行くので、遅れないようについて行く。
「まずあの人達の体を探そう」
「心当たりがあるのか?」
城門を抜けて城に入って行く。
「うっわー広いなぁー」
声が木霊するくらいの広いグリント城、城の中は豪華絢爛というより何もない質素な神殿のような造りだった。
「あれ?こんな扉無かったのに…」
入口から真っ直ぐ進んだ広間の一番奥に巨大な血のように赤い重々しい扉…というより門があった。
(きっとグリントが魔術で見えないようにしていたのでしょう)
「じゃあこの先に…」
(あの方々の体が保管されているかもしれません)
「汝…」
「ミュランダなんか言ったか?」
ミュランダは首をぷるぷる振り、驚愕の表情でゆっくりと門を指さす。
「汝等…門を開ける者か…?」
良く見ると赤い門にドラゴンの模様が刻まれていて、口をパクパク開け閉めしている。
「ここを通してください、どうしてもこの先に行かなきゃいけないんです」
「…出来ぬ」
「何でだよ」
マキがスルっと俺の体から出る。
「我は魔王グリントにより造られた門を守護する者…魔王グリント以外は何人たりとも通す事はできない…」
マキは近くにある柱をペタペタ触っている。
「そこをなんとか!」
「たとえ主を失っても…」
ドゴォォォォン!!
マキは何を思ったのか触っていた柱を拳一つで粉々にする、そして笑顔で
「通して下さぁ〜い」
「「……」」
俺とミュランダは放心する。
「我は門…魔王グリントとは何の関係もありません」
えぇえええっ!?意思弱っ!
「いや…生まれた時からここに居るんですけど…居たくて居る訳じゃないし…時給も悪いし…グリントはウザいし…」
すっげぇ悪口言い出した!!
「じゃあ通してくれるんですねぇ〜?」
バキバキっと柱の破片を握り潰すマキ。
「はいぃっ!勿論好きなだけ通って下さいっ!」
バダン!!
物凄い速さで門が開く。
「ありがとぉ〜」
と、つーと門を指でなまめかしくなぞるとマキは門を通る。
「はい!またおこし下さいっ!」
そんなマキの後に続く俺とミュランダ。
「「お疲れ様です」」
と言いミュランダと俺は軽くお辞儀をして門を通過した。
「私にかかればこんなもんですよぉ〜」
「「そ、そうだね…」」
ミュランダと苦笑いで答える。
門の奥は薄暗く等間隔に松明がついていた、通路というより石畳の洞窟という感じだった。
「何か陰気くさい所ですねぇ」
「それにちょっと寒いかも」
「湿っぽくもあるな」
三人それぞれ感想を述べてカツカツと石畳を進んで行く。
「それにしても、かなり長いみたいだなこの通路」
奥は何も見えないし、声の響く具合から大体の予想を言ってみる。
「そうですねぇ〜」
「なんか薄気味悪い」
「あー疲れたなー」
文句を言いつつもグリント城の深部へと繋がるだろうと思われる通路を進んで行く。
〜10分後〜
「なぁいつまで続くんだよ…」
「知りませんよぉ」
「パパったらもう音を上げるの?」
「いや、そんな事無いけどさ…」
それでも進む。
〜それから20分後〜
「…いつまで続くのよ」
「さぁ?」
「なんだミュランダ、疲れたのか?」
「ちょ…ちょっとね!でもまだまだいけるよ」
ミュランダが元気だとでも言うかのようにガッツポーズをする。
「あ、そう」
そして進む。〜更にそれから30分後〜
「いつまで続くんですかねぇ〜?」
何故かマキは疲れてないように見える。
「…」
「…」
「二人共無視ですか!?」
たたっと走って振り向き、腰に手を当てて膨れっ面で俺とミュランダをジロっと見る。
「しょーがねぇだろ…」
「何がですか?」
「だからさ…」
ゴゴゴゴ
「さっきから!ずーっと一緒の景色!歩いても歩いても進んでるのかどうかもわかんねぇし!!」
ゴゴゴゴ
「もう嫌ぁ〜歩けないぃ〜」
ぺたりとミュランダがへたりこむ。
「つーか何でお前疲れてねーんだよ!!」
「そりゃ魔機ですからね」
「理不尽!こういう時だけそういうの理不尽!」
ゴゴゴゴ
「あれ?なんか音が近付いて無い?」
「え?」
ゴゴゴゴ
3人とも振り返って聞き耳を立てる、歩いてきた方から何かが近付いて来るような音がする。
「修様なんでしょう?」
「僕が知る訳無いじゃないっすか」
「こーゆー時って鉄球か水だって相場は決まってるよね」
「お前何でそんな事知ってんだよ…つーかどこの相場だよ」
えへへと頭を掻くミュランダ。
「いや褒めて無いからね、疑問をぶつけただけだからね」
「なんか光ってません?」
ゴゴゴゴ
進行方向とは逆、今まで歩いてきた道の奥が何故か白く明るい。
「光よ!」
急にミュランダが手を掲げ光弾を飛ばす、光弾はふわ〜っと光の尾を引きながら飛んで行く。
「お前さ…そんなの使えるなら最初から…」
光弾が目標にぶつかったのか、カッと物凄い閃光を炸裂させる。
「ぎゃあああっ!目がああああっ!」
「パパっ!?何で目を閉じなかったの!?」
「いや聞いてねーよ!ヤバい!視界が真っ白!近くでフラッシュ焚かれたみたいに!」
ゴゴゴゴ
「あ…」
「ひっ!」
とマキとミュランダは声を上げてその場から走り出す。
ゴゴゴゴ!
「ちょっ待って!何これ!見えないから待って!」
ゴゴゴゴ
「あー!グリントこういう気持ちだったのか!ごめんグリント!つーか普通置き去りにする!?」
ようやく目が元に戻ってくる、
目をごしごし擦り霞む視界の中で集中して近付いてくるものに目を凝らす。
「…え?」
ゴゴゴゴ!!
「…でかいし、白いよ?」
ゴゴゴゴ!!!
「ゴっ…ゴキブリだぁあああああ!!!!」
それに気付いた瞬間、今までに無いどんな戦いの時よりも全力で走り出す、さっきまでの疲れはもう頭に無い。
「ぎゃあああっ!!気持ち悪いぃいいい!!触角がああああ!触角があああああ!」
ゴゴゴゴ!
依然追いかけて来る白いジャンボゴキブリ。
「無理無理無理無理無理ぃぃぃい!!虫は無理だってぇえええ!!」
ミュランダとマキに追い付く。
「てめーらあああっ!よっくも先に逃げやがったなぁああああ!!」
がっとマキの肩を掴む、全力で走りながら、むしろ半べそをかきながら。
「修様あぁっ!あれはさすがに無理ですよっ!!私達女の子なんですよっ!」
「知るかぁああ!!男も女も関係ねぇえええっ!!あれは人類の敵なんだよっ!!」
「ひぃいいいっ!!白いよぉ!テカテカだよぉ!気持ち悪いよぉ!!」
ミュランダは泣きながら凄いスピードで走る。
「「「あれ?」」」
気付けばジャンボゴキブリの姿も無く、その巨体が移動する音も聞こえなくなっていた。
「…撒いたか?」
「わかりませんよぉ」
「ひっ…ぐずっ…」
バサッ!!
バサバサバサバサッ!!
「ぎぃやああああああっ!!」
「いっやああああああっ!!」
「きゃあああああああっ!!」
飛んだ、滅多に飛ばないゴキブリが飛んだ、地を高速で移動するのも恐怖を感じるが、畏怖の象徴たるそれが飛んだ時の恐怖は三人に悲鳴を上げさせるには充分だった、そしてまた走り出す、全力で、半べそをかきながら。
「飛んだあああっ!!気色悪ぃいいいいいっ!!」
「私は馬、何よりも速く走れる馬、だからゴキブリよりも速く走れる、絶対追い付かれない、私は馬馬馬…」
「大丈夫かあああああっ!?目を覚ませぇえええ!!現実を見ろおおおおっ!!」
「ゴキブリ嫌い!ゴキブリ嫌い!ゴキブリ嫌い!ゴキブリ嫌い!ゴキブリ嫌い!ゴキブリ嫌い!」
バサバサバサバサ!!
その時俺は進行方向に光を見た。
「おい!見ろ!出口だ!扉があるぞっ!」
「私は馬、私は馬、私は馬…」
「馬じゃねぇええ!!二足歩行の人間だろうがあああっ!あっ!ちげーよ!!お前人間じゃかった!ごめん!俺、お前が何かわからないっ!!」
「白いゴキブリあははっ…あはははははは!!」
「ミュランダああああっ!!正気に戻れぇええええっ!!」
ドガっと扉を蹴り飛ばし中に入る三人。そして全力で扉を閉める。
「…くっ…はぁっ…はぁっ…ひどい目に会ったな…」
「…ぜぇ…ぜぇ…もうああいうのはっ…二度と嫌です…」
「…うっ…うっ……あたし…汚れちゃった…お嫁に行けない…」
ふぅっと一息ついて辺りを見回す。今までとは違うちょっと小さめの部屋
「あれ?なんか壁にスイッチありますよぉ?」
「おいっ!むやみに押す…」
パチ
ぱぁっと部屋に明かりが灯る。
「人の話を聞けよ!」
「まぁ結果オーライですよぉ」
「沢山機械があるねぇ〜」
確かに光が灯った部屋にはモニターやらなんやら機械が沢山あった。
「これはまた凄い設備ですねぇ〜」
マキが感心しながら手前にあったキーボードのような物をカタカタ押し始める。
「おっおい!使い方分かるのか?」
「いえ、全然」
「なら触るなよ!」
「面白そうだったのに…」
今度はミュランダがカタカタ押し始める。
キィィィン
モーターが動き出すような音が鳴る。
「何?何したの?」
「わかんない!」
「ってお前もかよ!!」
「修様!壁が!」
ゴゴゴゴ!
今まであった壁が床に沈んでいく。
「だから!なんでわかんないのに触るの!?」
「結果オーライですよ?修様」
「そうだよ」
「お前等なぁ…」
壁が無くなり更に広くなる空間を恐る恐る進む。
「暗くて何も見えませんねぇ〜」
「光出す?」
「却下!」
キィィィン!
「何?お前等!今度は何したの!?」
「私は何にもしてませんよ!?」
「私もしてないよ!」
ぶんぶん首を振る二人。
ぱぁっと広い部屋に光が灯る。
「…これは」
夥しい数の機械に挟まれた円柱型の水槽のような物があった。
「…中に魔界の人の体が入ってます!」
「…なんかホラーだな…」
水槽に人が入っているのは正直見ていて気分が悪い、というより不気味だった。
「これにどうやったら魂を戻せるのかな?」
まじまじと水槽を見つめながらコンコンと叩いているミュランダ。
カタカタ
「ってお前は何やってんの?」
またキーボードのようなものを押し始めたマキの頭をがしっと掴んで笑顔で聞く。
「どうやら…破壊すれば良いみたいですね…」
「お前…使い方わからないって言ってなかったか?」
「ええ、さっきまではね…私自信が機械に近いような物ですから、ちょっと触れば大体の事は理解できます」
おい、何でもありだな
「まぁいいや、それで…壊しても大丈夫なんだよな?」
「はい、この水槽のような装置は肉体と魂の間に造られた人工の壁のような物ですから、直接肉体にダメージを与えなければ大丈夫です」
「じゃあこのガラスみたいな部分だけ割って中身を引きずり出せば良い訳だな?」
「その必要は無いです」
カタカタカタカタ
そう言ってまたキーボードのような物を押し始める、キーボードを打つスピードが半端じゃない。
カタカタカタカタカタカタカタカタ
ビー
赤いランプが点滅し水槽のガラスが次々と消えていく。
「お前…すげぇな!」
「このくらい朝飯前ですよ!」
機械を触っていた時の無機質な感じとは対照的な明るい笑顔を見せてガッツポーズをとるマキ。
「んでこの体さ…あの島まで持って帰るの?」
「凄く大変そうだね、何往復しなきゃいけないのかなぁ」
ミュランダは苦笑い
「ん〜ちょっと待って下さいねぇ〜」
再びキーボードを打つマキ、気のせいかさっきよりもキーボードを打つスピードが上がっている、むしろ手が4本に見える。
「えい」
そう言ってマキがエンターらしきパネルを押す。
ガシャン!
装置の消えたガラスの部分を今度は機械が蓋を閉じる。
ドシュー!
そして次々に装置の下部からジェットを出し飛んでいく、
全て飛び去った頃には天上が蜂の巣になっていた。
「はい、全部あの島に送りましたよぉ〜」
「凄かったね!ロケットが沢山ドシューっドシューって!」
「わかった、わかった…でも本当に凄かったなぁ」
とマキの方を振り返るとマキのシルエットがいつもと違っていた、見間違いでは無かった、本当に手が4本生えていた。
「うわっお前気持ち悪っ!!手が4本生えてる!!」
「あわわわわ!違います!ウソです!これはウソなんですっ!!」
しゅるっと有り得ない二本の手が消える。
「いーや見たね!4本生えてたもん!つーか言い訳がウソってなんだ!意味不明だわ!」
「ママ凄いねっ!どこかの超人か三つ目の武闘家みたい!!」
「アホか!そういう事言ったらダメだから!!」
「もがもごっ」
手でミュランダの口をさっと塞ぐ。
「さぁ修様、最後のお仕事です」
「え?魔界の人達の体は無事に戻ったからもう帰って良いんじゃないの?」
「最後にもう一つだけあの装置があるみたいなんです…」
そういうとカタカタとキーボードを打ち出す。
「さっきの装置はある一つの物を中心にパイプで繋がっていました…恐らく、その中心の物に魔力を送る為のパイプで…」
キーボードを打ちながら説明を続ける。
「その中心にある物…」
カタッとエンターらしきパネルを押す。
「それは恐らく…」
ゴゴゴゴ
と床からさっきの二倍はあるりそうな同じような装置がせり上がって来る。
「グリントが回収した…」
その円柱型の水槽にはミュランダそっくりな少女が入っている。
「…これが」
「そう、天使です」
ゴボゴボと泡が出続ける水槽の中身、白髪のミュランダに瓜二つの少女。
「本当だ…私に…そっくりだね…」
「ミュランダ…」
ガラスにぴたりと手を当てて悲しげに自分の元を見るミュランダ。
「破壊…しましょう」
「え?」
マキがさっきの無機質な表情で言った、ミュランダは手が震えていた。
「そ、そーだよ!その方がこの魔界の為だし!」
ミュランダは笑顔で言った、その笑顔はいつもの屈託無く笑う笑顔とはかけ離れていた。
「いや、でも…」
「修様ができないなら私がやります、この天使はほぼ完璧に近い状態まで復元されています」
「…」
「こんな物を放置しておいたら、いつ他の物が悪用するかわかりません」
「なぁ…ほぼって正確にはどれくらいなんだ?」
「機動に必要な魔力が50%ほど足りていません」
「わかった、魔力が足りないんだな?」
「50%と言っても我々の魔力じゃ到底満たす事はできません」
マキが無機質な声で言う。
天使の入っている装置に両手で触れる。
「ダメです!修様がそんな事しても機動させる前に私が破壊します!」
マキがストールを片手に構え走り出す。
ガキィィイン!
「なっ?修様!?」
そのマキをフレスベルガスで止める。
「何故邪魔するんですか!」
「お前バカか!!」
驚いた表情で後退りするマキ。
「なんでもかんでも壊せば良いってもんじゃないだろ!!」
「修様が何を言っても私はこの天使を…いや…最悪の兵器を破壊します!」
「お前さっき見て無かったのか?」
「え?」
「お前がこいつを壊すって言った時のミュランダの顔を!!」
飛び出しそうな感情を押し殺した笑顔、そんな悲しい表情だった。
「でも…私も兵器だし…天使は危ないし…」
「家族にそんな顔させちゃ駄目なんだよ!」
そうだ…そうだった…
「それにお前…」
私、何て事をミュラちゃんの前で言ってしまったんだろう…
「こいつの…」
ミュラちゃんにあんなに悲しい笑顔をさせたなんて。
「ミュランダの母ちゃんだろうが!!」
その瞬間マキの目から涙が溢れる、家族を気遣えなかった悔しさ、ミュランダに言った自分の言葉、その時ミュランダの表情の意味、そしてそれらに気付く事ができなかった悲しさ、いろんな感情がこもった涙だった。
「兵器がそんな涙流すかよ…」
マキは自分の事を兵器だと思っていた、実際はそうだが修真にも兵器として見られていると思っていた、たとえ表面上は仲が良くても本当は偶然から始まった兵器とその宿主という利用関係、だが修真は違った…兵器の自分を人間として家族として見ていた、修真を心のどこかで裏切っていた自分に腹が立った…そして涙が出た。
「うあああああああん!」
盛大に泣き出すマキ。
「うわっ!ちょっと!ゴメン!言い過ぎた!マジでゴメン!」
「ミュラぢゃんゴメンねぇえええ!!」
と言ってミュランダを抱き締めるマキ
「え?わっ!ちょっと!ママ…ぐるじ…」
「ごめんなざぃぃいいぃ!!」
ぎゅっと抱き締める力を強めるマキ。
「おいマキっ!ミュランダが死ぬ!死ぬって!」
「修様も…ごめんなざぃぃいいい!!」
「おぼぇっ!!ぐるじ…ギブっ…ギブっ…」
「あだじ…もう…兵器だがらなんて…言いまぜん…」
マキはぐずっと鼻を啜りながら言う。
「いや、その…なんつーか…ありがとう」
軽くマキを抱き締める。
「あの…パパ?」
「ん?何?」
「あの…ありがと」
「おう、なんつってもこいつはミュランダの唯一の肉親だからな」
「パパ…」
そうして三人で天使の入っている装置に両手を当てる。
「良し!んじゃ魔力送るぞ!」
「はい!」
「いつでも良いよ!」
両手に力と意識を集中する。
「せーのっ!」
「ちょ!ちょっと!」
「なんだよ?」
「せーのでやるんですか?」
とマキがどうでもいい質問をしてくる。
「駄目なの?」
「いえ、別にそんな事ないですけど一応確認です。せーのの、のでいくんですか?それとものの次で行くんですか?のって何ですか?」
「普通のでいくだろ?」
「私のの次だと思ってた」
「どっちにします?」
どーでもいいわ!
「んじゃマキが決めれば?」
「じゃあ3、2、1でやりましょう」
「わかった」
「良いよ〜」
そして再び両手を当てる。
「じゃあいきますよぉ〜?3、2」
「ちょっと待って!」
今度は何だよ。
「1でやるの?0でやるの?」
「馬鹿か、0なんて入れたら4秒だろうが!つーか天丼かよ!」
「ん〜困りましたねぇ」
「だああああっ!めんどくさいっ!せーのっ!!」
そして三人で魔力を放出する。
「ぐおおおお!!何これえええ!?物凄い吸い取られてるんですけどおおお!?」
まるで掃除機に吸われるかのように自分の中の魔力が減っていく。
「あ、あたし…ちょっと…キツイかもっ…」
ミュランダの顔が苦痛で歪む。
「でもっ…これだったらなんとか…いけそうですよっ」
「よっしゃあ!!お前等!こういう時は楽しい事考えろ!!」
「おねぇちゃんができる!おねぇちゃんができる!」
「良いよー!ミュラちゃん良いよー!」
「修様が私だけに優しい!修様が私だけに優しい!」
本人の前で言うか普通?
「浅ましい!マキちゃん浅ましいよ!」
「じゃあ修様何考えたんですかっ!」
「…スーパーの大安売り」
「パパちっさ!望みちっさ!」
「修様って夢がないですね!」
「お前等がバクバク馬鹿みたいに食いまくるからだろうがあああああ!!!!」
「きゃああああ!修様!魔力入れ過ぎっ!!」
そして一瞬の閃光の後、ドカン…と爆発を起こした。
「あーあ超痛い、体全部痛い」
吹き飛ばされた床で呟く、髪の毛がアフロになっているのは言うまでもない。
「絶対パパのせいだ…」
これまたミュランダが呟く。こちらも髪の毛が盛大に爆発している。
「修様って感情が高ぶると危険ですね…」
こいつは何故だか傷一つ無い。
「お前等が余計な事言うからだろーが」
そこで我に帰る。
「つーか天使は!?」
ガラッ
瓦礫の山から天使の少女が出て来る。
「成功したのか?」
ひたひたと素足のまま歩いて来る。
「やったな!ミュランダ!」
「うん!うん!」
「良かったですねミュラちゃん!」
三人でわいわい抱き合う、そして天使が口を開く。
「だだっだっだだ」
「は?」
ミュランダは目を丸くする
「だだっだっだだ!」
「何これ?故障?」
「たたたぁ〜たぁ〜たぁ〜」
「歌ですかね?」
「たたたぁ〜たぁ〜たぁ〜たぁ〜」
「あーこれどっかで聞いた事ある気が…」
「あいるびーばぁっく」
「何が天使だよ!」
と言ってゴツンと殴る。
「頭部にダメージ、今後の行動に支障が無い程度のダメージ、行動続行可能、新しい任務を要求する」
「はい?」
急に訳の分からない事を言い出した!
「つまり、主である修様に命令を要求しているのですよ?」
「んーとじゃあ…せーのっ!」
「「「家族になって下さい!」」」
三人同時にそう言った、しばらくして天使が口を開く。
「任務の内容が不明瞭である、任務の説明を要求する」
「お前名前は?」
「個体ナンバーはT425638…」
「名前無いみたいだね…」
「強いて言うなら、ポチです前の主がそう呼んでいました」
「「「却下で」」」
「任務の説明を要求する」
「だああああっ!もうっ!とりあえずついてくりゃ良いんだよ!」
「任務の内容を確認」
「後の事は後で説明するから!」
「任務了解」
「一件落着…ですかね?」
「そうみたいだな」
「長かったねぇ」
ガラッ
上を見ると天上の一部が崩れて落ちてくる、それは新しい家族の一員の真上から。
「「危ない!」」
「ポチィイイイイ!!」
咄嗟に飛んで天使を抱き締める。
ドガァーン!
ギリギリで瓦礫が当たらなかった。
「個体判別呼称確認、名称ポチ」
「し、しまったあああああああ!!!!」
マキとミュランダは口をあんぐり開けて俺とポチを見ていた。
こうして新しい家族ポチが加わったのだった。
〜魔界の島〜
「魔王片桐、本当に感謝しています!」
「いや、苗字かよ!つーか魔王はやめてってば」
無事魔界の人々の体に魂も戻り、グリント城も俺達が城を出た後崩壊した、というか正確には城を壊すかどうか相談している最中にポチが飛んできた蚊を殺す為に放った一撃(どう考えても目からビームが出ていた)でグリント城が粉々になったのである。
「本当に何とお礼したら良いのか…」
「いや…別に良いってば!そんな大した事してないし!」
「しかしですね我々は魔王片桐に…」
「修様ぁ〜?」
「パパぁ〜?」
「速やかな帰宅を要求」
「あ、ゴメン!あいつらが呼んでるわ、もう行かなきゃ!」
「しかし!あなたは私達の魔王じゃないですか!?」
「えっと…また来るからさ!それまでお前がみんなをまとめて頑張って!これ魔王命令な!」
「そっそんな!」
「それじゃ!今日学校あるからさ!またな!」
魔界の人々に手を振り別れを告げ、そしてゲートの用意した扉で自宅に帰る。
帰って来た我が家…が時計は夕方の5時をさしていた。
「おい、てめーら」
「おっかしぃですねぇ」
「あっれ〜」
マキとミュランダが首を傾げる。
「2秒って言ったから魔界に行ったんだぞ!学校サボっちゃったじゃん!」
「何故でしょう…」
「魔王が変わった為時間の進み方も変わった」
とポチが言う
「あーなるほど!そういう事ですかぁ〜」
「まぁ…いっか!」
なんだか疲れたから今日は早く眠れそうな気がする修真だった。
「修様ぁ〜ご飯まだですかぁ〜?」
「パパお腹減ったよぉ」
「空腹、食べ物を要求する」
「あーはいはい今作るから!」
「修様ぁ〜一緒にお風呂入りましょ〜?」
「入ろ〜?」
「入浴同伴を希望」
「ば、バカか!三人で入って来なさい!!」
「ちぇっ」
「そんな事実際言う奴初めて見たわ!」
そして三人が風呂に入って静かになる。
俺こき使われてない?
「きゃあああああああ!!」
「どっどうした!?」
バンっと風呂のドアを開けるとそこには浴槽に右手の親指を立ててゆっくりとお湯に沈んでいくポチがいた。
「溶鉱炉に叩き落としてやろうか?」
「たたたぁ〜たぁ〜たぁ〜♪」
「だだっだだだ!」
「お前等も歌ってんじゃねぇよ!!つーか逆だから!」
とこうして夜はふけていった。
新キャラですよ新キャラ!もう誰が誰だかわかりません! はい、次回はほのぼのまったりな日常かなと思いますポチの乱入も含めてね(笑)
という訳で良ければまた次回も見てやって下さい!