第10話、ミュランダの秘密
今回もミュランダが活躍します!出生の秘密もわかります!
常夏の魔界、グリントという魔王が治めていた世界。
母さん、僕は高校二年生で魔王になってしまいました。
「それで魔王って何するの?」
夜の浜辺で大の字になって倒れている3人
「さぁ?」
首を傾げるマキ。
「あ、見て!何か来る!」
ミュランダの指さした方向から小さな赤い光が列になってゆっくりと確実に俺達がいる所へ向かって来る。
「敵か!?」
「いや、敵意は感じられません」
「空からも来た!」
ゆっくりと右足を引き身構える、赤い集団の上空からも赤い光がちらほらと増えだす。
赤い集団が俺達の百メートル手前でぴたりと止まり、赤い光が一つだけ僕達の方に近付いて来る。
「何?何が起こるのこれ?」
「わかりません、一応気をつけて下さい、修様、ミュラちゃん」
こくりと頷きミュランダも一歩下がり身構える。
そして両者沈黙。
先に動いたのは赤い光だった。
「…魔王グリントを倒したのは…あなた達ですか?」
赤い光は、ごっと燃え上がると人らしき形になったがその赤い光は酷く弱々しかった。
「あ、あぁ俺がとどめをさした」
「…本当に…ありがとう」
「え?いやどういたしましてってあんたら何者だ?」
「…私達は…この魔界に住んでいた…者達です…」
ミュランダの顔が暗くなる。
「住んでいた…って?」
「我々は…この魔界で平和に…暮らしていました…」
人の形をした赤い朧気な光はゆっくりと限られた力を振り絞るように語り出す。
「ある日…栄えていた…この世界に…魔王グリントという者が…現れま…した」
「おっおい!お前大丈夫か!?」
急にテレビに入る砂嵐のようなノイズが赤い光から発せられる声とは言えないような音に混ざり出す。
「グ……が……こ……」
「もうやめて!!私が…私が説明するから!」
「……」
「ミュランダ?」
「これ以上話したら…あなた…消えちゃうんでしょ?」
「……」
赤い光が一歩下がる。
「あのね…昔この辺りは凄く栄えていたの…」
ミュランダがか細い声で語り出す。
「え?どう見たってただの何も無い綺麗な島と広い海しかありませんよ?」
「確かに…」
「この魔界は以前は人間界の文明と同じくらいに栄えていたの…でもある日、グリント様…グリントがこの魔界を襲ったの…」
「それで、今はこんな風なのか…」
「うん…グリントは元々いたこの魔界の魔王を殺して魔王になったの…」
「今の修様みたいにですか?」
「状況は同じだけど…グリントはそれからこの魔界に住む人達の肉体を奪ったの…魂だけを体から追い出して…」
「それじゃここにいる赤い光達は…」
「そう…その人達の魂がグリントが死んだから力を取り戻したんだと思う…」
「…」
「グリントが何故魔界の民の体を集めたと思う?」
「魔界を自分一人の世界にしようとしたからですか?」
「ううん…魔術を使った人体実験をする為…」
「そんなっ!」
「正確には天使を蘇らせる為の…生け贄」
「天使ってあれか?良くおとぎ話とかに出て来る神様の使いみたいな?」
「それは人間の世界の話…天使は…こことは違う場所にある天界という世界で造られた…兵器」
と言う事はマキと同じような存在なのだろうか。
「天使は大昔の戦争で活躍した天界の虐殺兵器です、私も何度か戦った事があります」
マキの声にはいつもとは違う冷たい響きがあった。
ミュランダは話を続ける。
「今はもうこの世には無いと思われていたんだけど…その残骸を運悪くグリントが見つけてしまった…」
「それを複製しようとした訳か…」
「そして造られたのが…私」
「え?」
「私はグリントに造られた天使の模造品…作り物なの失敗作のね…」
俺とマキはミュランダの一言に言葉を無くす。そしてミュランダは赤い魂に近付いて跪く
「本当に…ごめんなさい…ごめんなさい…私さえ…生まれなければ…あなた達が…こんな目に…あうことなんて…無かった…ごめんなさい…私なんていなければ…ごめんなさい…」
ボロボロと涙を流しながら声にならないような小さな声で赤い魂達に許しを請うミュランダ。
「…あなたは…悪く…ありません…悪いのは…グリント…」
わっと砂浜に泣き崩れるミュランダ
「おいマキ」
「なんでしょう?修様」
「俺はこの人達を助けたい」
「偶然ですねぇ〜私もです!」
にこっと笑顔で返すマキ。
「よし!それでこそ俺のパートナーだな!」
「そんな一生一緒にいてくれだなんて…」
ポッと赤くなるマキ。
「えぇえええ!?どう解釈するとそうなるの!?」
マキの気持ちを確認した後、泣いているミュランダを抱き上げそして立たせる。
「ミュランダ…俺はこの人達を助けたい、お前はどう思う?」
「わっ…わだじもっ…だずけっ…だいっ……」
「よっしゃ!絶対俺達でなんとかするぞ!」
わぁっとミュランダの泣き声が大きくなる。
「ちょっと修様〜?余計泣いちゃってるじゃないですかぁ〜」
ジロリと半目でこっちを見るマキ。
「う…ごめん」
「ち…違うの…ずっ…パパとママが…ぐずっ…私が…作り物だって…知ったら…もうやざじぐしてぐれないがど…うっ…」
「ミュラちゃん…」
「バカだなぁ」
馬鹿と言われてムッとするミュランダ
「作り物だろうが何だろうがお前は俺の娘なんだからさ」
「うわぁあああぁん!」
ミュランダがまた盛大に泣き出す。
「修様が柄にも無い事言うからですよぉ〜」
「ははっ確かに柄じゃなかったかも」
マキと顔を見合わせて笑う
「新た…な…魔王よ」
「何?あ、魔王って呼ぶのやめてくれ何かくすぐったいから」
「あなた…は…おかしな…人間だ…」
「うるせーよ」
「なぜ…我々…を…助ける…」
「俺がそうしたいからかな?」
「おかしな…人間…だ」
「はははっほっとけよ」
「我々か…ら…も…頼み…たい…」
赤い光が集まってくる。そして微かな声でそれらは言った、(助けて欲しい)と。
「おう!絶対元の体に戻してやるからな!!」
俺はマキと同化し歩き出す。
「んで…実際何をすれば元に戻してやれるんだ?」
(情報不足ですね)
「ウソ!?さっきカッコいい事言っちゃったよ?」
「あ、あの!」
ミュランダが走って追いかけて来る。
「あの人達がグリントの城へ行ったら良いって言ってた!」
「ん〜どこにあるのその城?」
「パパっ!何の為に私がいると思ってるの?」
そう言いバサッと青い翼を広げる。
「わかった、連れてってくれ」
背中から機械のような翼を広げる。
「ついて来て!」
「行くぞ!」
そして夜の浜辺から青と白の光が飛び立った。
「あの…新しい…王…は…」
「何か…が…違う…」
「今まで…の…王と…は」
「違う…何…か」
赤い光を帯びた魂達は飛び立った光に小さな希望を見た気がした。
〜グリント城付近の空域〜
「グリントの城ってあの島から結構離れてるんだな」
「元々あの島は魂を閉じ込める為の島だから…」
「そっか…」
(タブーに触れる減点5点です)
「何の点数だっ!?」
(秘密です)
「見えてきたよ!」
暗くて良く見えないが海の上にぽつんと黒い巨大な影が見える。
「あれがグリントの城だよ!」
「あれが…ってどう見ても…巨大なシャボン玉にしか見えないんですけど?」
巨大な泡のような物に包まれた城がそこにはあった。
(修様、あれは侵入者を阻む防御壁です人間の世界で言う所のバリアです)
「あ、そうなの?」
「あの防御壁はただの防御壁じゃないの!生きてるの!」
「え?生きてる?」
丁度グリント城の目の前に来た時だった。
キシャアアアアアアア!!
「なっなんだぁ!?」
泡ぐにゅぐにゅ歪み形を変えていく。
「…トカゲ?」
巨大な青色のトカゲしかも足が6本、トンボのような羽が4枚生えている。
「違うよ!ワイバーン!」
「わいばーん?」
(機動性に優れた爬虫類と昆虫が混ざった魔獣です)
「げ…昆虫…」
「パパどうかしたの?」
(修様まさか…)
「わー!わー!わー!」
「ん?」
ミュランダが首を傾げる。
「さ、さっさとたっ倒すぞ!」
「なんか声が裏返ってるよ?」
「そっそんなことないってあはははは」
「変なパパ」
キシャアアアアアアア!!
「ひっ!来たっ!」
(男の癖に虫が…)
「うっうるせーよ!!」
ワイバーンが青白い炎を口を大きく開けて吐きだす。
「炎よ!」
ミュランダが手をかざし魔方陣を発生させその中心から紅蓮の炎を発射する。
ドォオオオオオン!!
青白い炎と赤い炎がぶつかりあい相殺する。
「あーもうやけくそだ!」
ワイバーンの下に一気に飛び込みストールを振り上げる。
ガィィィン!!
「つっ!固っ!」
ストールを思いっきりぶつけた衝撃をもろに受けてよろめく、その隙をついてワイバーンは尻尾を俺に叩き付ける。
「ぐああああっ!!」
とっさに後ろに飛び尻尾の直撃を避けるが、腹部にもらった一撃は俺を海に叩き落とす。
「雷撃!!」
バチバチバチバチ!!
ミュランダは修真を追うワイバーンに向けて雷を放ち修真への追撃を阻止する、感電し一瞬ふわりと力を失うがワイバーンはすぐに気を取り戻す。
「あなたの相手は私なんだからね!!」
キシャアアアアアアアッ!!
と一声上げるとワイバーンはミュランダに向けて巨大な炎ではなく、小さめの炎の弾を多数吐きだす。
(くっ!持久戦!?こっちの体力が少ない事をわかってるの!?)
ひらりひらりと炎弾をかわすが、いかんせん炎弾の数が多かった。
「痛っ!」
一発、また一発とミュランダに炎弾が直撃し、激痛にミュランダは目眩を起こし青い翼がぱぁっと散り散りになり落下して行く。
「パ…パ…」
ワイバーンが巨大な口を開け敵を噛み砕かんとミュランダに迫る。
「パパぁあああっ!!」
自分の視界を支配していたワイバーンの鋭い牙が並んだ口が突然ミュランダを外れ見当違いの方向に通り過ぎる。
「大丈夫かっ!?」
修真はふわりとミュランダを受け止めて再びワイバーンを追いかける。
「パパ!」
「雷使えるか?」
「え?うん、でもそんなにワイバーンに効かなかったよ?」
「あそこに雷を撃つんだ」
指差したワイバーンの頭部に黒い剣が、いやワイバーンの目にストールが刺さっている。
「アイツ固いけど、どんな生き物でも目を攻撃されたら唯じゃすまないからな」
ミュランダは感心しながら、手をワイバーンに向ける。
「スピードあげるぞ!」
「いつでも撃てるよ!」
ぎゅんとスピードを上げて落ちて行くワイバーンを追う。
「今だ!」
「雷撃ぃ!」
バリバリバリバリバリッ!!
ストールから電撃が走りワイバーンを中から焼いていく。
キシャアアアアアアア!!
ミュランダの電撃が止み、素早く俺はストールを回収する、そして黒い煙を上げてワイバーンはゆっくり海面に向かって落ちて行く。
「熱っ!!ストール熱っ!!」
(雷を浴びたんだから当たり前ですよ)
マキが呆れた声で言う。
ドパァアアアアアン!!
ワイバーンの巨体に見合った水しぶきを上げる。
「あーあ、服びっしょびっしょだ」
服から海水が滴り落ちる。
「あのっパパ?」
「ん?」
「はっはずかしいよ」
(あ)
良く考えたら俺はミュランダを俗に言う(お姫様抱っこ)をしている。
「も、もう大丈夫だから…」
「えーっと、ごめんごめん」
バサッと青い翼を広げてミュランダは再び宙に浮かぶ。
(ずるいですっ!私もして下さい!)
「いやっ!今のは不可抗力だって!」
(あーあ自爆かぁ…)
「わかったから!今度するから!自爆はやめてっ!!」
(やたっ!)
俺は、はぁっと為息をつく。
「あの、パパ?」
ミュランダが頬を赤らめ足をもじもじしている。
「まさか……トイレ行きたいのか!?なんで来る前に行かなかったんだ!」
「違うわよっ!!パパの馬鹿!!」
バチーンとひっぱたかれる。
「あのさマキ…」
ひっぱたれた頬を擦りながら尋ねる。
(なんでしょう?)
何故か怒ったミュランダは先にグリントの城の方に向かって飛んで行く。
「俺…なんか間違った事言ったっけ?」
(鈍感)
「パパの馬鹿!…でもちょっとかっこよかったな」
クスッと笑いミュランダはなんだか、むず痒いような恥ずかしいような暖かい気持ちでいっぱいになったのだった。
今日のパパはかっこよかったと。
そして三人は魂だけになってしまった魔界の人々を元に戻す為にグリントの城へ突入するのだった。
はい、ミュランダがだんだん修真達に心を開き始めたなぁって思います(笑)
まだわかりませんが、多分次くらいで魔界編も終わりかと…あくまでも多分ですが…(汗)
人間界においてきたキャラ達が懐かしいな(笑)
次は魔界編グリント城です。
読んで下さった方ありがとうございます!次もできれば読んでやって下さい(笑)