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梅さんは魔法つかい

作者: 羽柴



ぼくはひよこ。

ぼくには大好きなひとがいる。

それは【梅さん】

梅さんはね、とってもとーってもやさしいひとで、すてられていたぼくを拾ってくれたんだ。

ぼくは大きくなると、にわとりというものに進化して毎朝みんなを起こすじゅーだいな仕事があたえられるんだよ!

だけど前のごしゅじんさまはそれが「鬱陶しい」らしくて、ぼくはすてられちゃったんだ。

すてられてからはものすごく怖かった。

だってみんなぼくより大きくて強いんだ!

イヌさんにカラスさんに…あ、特にネコさんなんかはあぶなかったなぁ…だって彼女たち、本気でぼくをたべようとしてくるんだよ?ぼくを見つけたときのあの目といったら…あぁっ!ふるえが止まらないよ!

みんなっネコさんには注意してね!

本気のこうぼうをしていると、生まれて間もないぼくはへっとへと。さすがのぼくでも倒れちゃうよね。

ぼくはこのままネコさんにたべられちゃうのかなぁ…って思っていたらふいにカラダが軽くなったんだ。

何だろうと目を開けてみると、なんとそこには梅さんの顔がドアップ!ぼくが倒れていたのは梅さんのいえの前だったんだ。

それがぼくと梅さんの出会い。

それから梅さんはぼくをどーぶつびょーいん?に連れて行ってくれて、ぼくを元気にしてくれた。

でも二度とあんなとこには行きたくないけどね!ぶっとい針みたいなのさしてくるんだよ。あーこわいこわい、くわばらくわばら。

…まぁぼくを元気にしてくれたから許してあげるけどね。

それに何より、はじめて梅さんの笑顔がみれたんだ!

「よかったね」

って何度も何度もやさしくぼくにいって、何度も何度もぼくをなでるんだ。涙目で。

それはもう、うれしかったんだよ!ほんっとにうれしかった!

出てくるはずのない涙がでそうになるくらいうれしくて

「ありがとう、ありがとう」

っていったんだよ。するとぼくに針をさしてきたニクいアイツが

「元気に鳴いてますよ、これならもう大丈夫。よかったですね、梅さん」

っていったんだ。すると梅さんは目から水が溢れだしたからもう大変!だからぼくは慌てて

「ありがとう、梅さん、ありがとう」

ニクいアイツに負けないくらい大きな声でいってやったんだ!

悔しいけどアイツのおかげで梅さんの名前がわかったからね。

そしたら梅さんはまた

「よかったね」

ってやさしい顔でいって、ぼくをなでてくれた。すると不思議なことにねむくなってきたんだよ。それはもうあらがえないくらいのねむさ!

うれしくなったりねむくなったり…梅さんの手はすごいなぁ…実は魔法つかいなんじゃないのかな?




目が覚めるとあったかい部屋の中にぼくはいた。不安になって

「梅さん、どこにいるの?梅さん」

って大きな声でいってみた。すると大きなとびらが開いて、梅さんがあらわれたんだ。

「あら、もう起きたの?」

ぼくをみてうれしそうに笑う梅さん。ぼくもうれしくなるなんて、やっぱり梅さんは魔法つかいなんだ!

梅さんはぼくを抱き上げて

「今日からここがあなたの家よ、ピー」

まわりを見わたしながらいった。

家?

ここが?

ピー?

それはもしかしてぼくの名前?

「あら?気に入らなかった?」

ぼーぜんとしてしまったぼく。

目の前にはきょとんとした梅さんの顔。

「そんなことない!そんなことないよ!!」

ぼくはあわててそう叫んだ。

「やっぱり似合うわ、ピー」

くすりと笑ってぼくをなでてくれる梅さん。

きっと梅さんはぼくをホウキにのってこのいえに運んでくれたんだ。そして魔法のペンでぼくの名前を占ったんだよ。

じゃないと、ぼくがこんなへんな名前を気に入るわけないでしょ?

やっぱり梅さんは魔法つかいだったんだ!

キミにも魔法を?ダメダメ。…ぼくだけの魔法つかいなんだよ?




…すぐにぼくだけの魔法つかいじゃないことがわかった。

どうして?うんそれはね、部屋をでると…どうぶつパラダイスだったからさっ!

イヌさんにウサギさん…インコさんに金魚さんまでいるんだよ?

しかもね……あの、ネコさんまでいるんだ。

いっぱい!いーっぱぁい!

さすがにぼく、覚悟をきめたよね。

だけどね、みんなたべようとしてこないんだよ。

不思議だなぁって思ってたら、ぼくピーンッときたんだ!

みんな梅さんの魔法にかかってるんだよ!!絶対だよ絶対!

じゃないとあのネコさんたちがぼくをたべにこないなんてあり得ないもの。

さっすが梅さん!世界一の魔法つかいだね!!

魔法つかいの梅さんは、スタスタと歩いてぼく専用とおもわれる布の上にぼくを置いた。

うん、いまさらだけどさすがにいえの中ではホウキにはのらないんだね。

布が気持ちよくてふかふかしていたら、梅さんはぼくに背を向けて台所に行ってしまった。

ハコを手に戻ってきたかと思えば、そのハコにはネコさんの写真。ハコをもった瞬間ネコさんたちが梅さんに群がってた。

そしてその中身をネコさんたちに…あぁ、ごはんなんだね。

でも待って?どうしてネコさんたちの頭をなでながらそんなうれしそうな顔をするの?それはぼくにする顔でしょ?ぼくがうれしくなる顔でしょ?

って…ちょっ!!イヌさんの写真がはいったハコにウサギさんの……まさかっっ!!?

…えーんっ!ぼくだけにその顔見せてよー!!

「梅さーん!梅さ――ん!」

お願いです、ぼくだけの魔法つかいになってください。




梅さんにひろわれてから、ぼくは毎日梅さんにべったりだ。

どこに行くのも何をするのも梅さんと一緒!

梅さんは俗にいう「つんでれ」ってやつだからぼくを置いてスタスタ歩いて行っちゃうんだ。

だけどね、ドアあけてドアの後ろで絶対待っててくれるんだよ。ね?つんでれでしょ?

もぅ、梅さんだいすき!ほんっとだぁーいすき!

日に日にね、ぼくのこの気持ちは大きくなるんだ。不思議だよね。これも魔法なのかな?

気持ちと一緒にね、カラダも大きくなってきたんだよ。だってほら!見える?このリッパなトサカ!

…リッパじゃなくない?生えかけじゃない?って…ちょっとは空気読んでよね。ぼく的にはちょーリッパなんだから!

でももっともっとリッパになって、梅さんを危険から守ってあげられるにわとりに進化するんだ。も、もちろんあのネコこさんからも守ってあげるんだからね。

そんな強敵ネコさんたちは今日はヒナタでおひるね中。うん、今日はいい天気だもんね…いやいや、きっとぼくにおそれをなしているんだろう。

いい天気だと梅さんはとてもキゲンがいい。「洗濯物」がよく乾くからだそうだ。なんだかんだきふくのはげしいひとだからキゲンがいいにこしたことはないよね。

だから色々まるっとまとめてぼくもすごくキゲンがいいんだ。

ぼくが作詞・作曲した【梅さんは魔法つかい】の歌をうたいながらいつものように梅さんの背中を追いかける。

ぼくが大きくなって進化したらその両手にもっている洗濯物をぼくがもってあげるからね!だからがんばって!

洗濯物に顔をうずめながらあるいている梅さんはきっとうれしそうな顔をしてるんだろうなぁ…だからそれはぼくだけの顔だってばぁ。

幸せなら、いいんだけどね。

うーん。そんなこと思えるようになったぼくって大人?イカす?

あぁもう、ほめなくていいってば…って梅さん、洗濯物いっぱいでドアノブもてないね、たいへんだね。魔法であけたらいいのに…あああ、またそんな、あしで…

これは梅さんの悪いクセ。足でドアをかいへいしちゃうんだよね。

ドアの向こうに消えていく梅さん。

はいはい、今行くから待っててね。

なんかいつもと違う気がした。ここで止まらなかったぼくが悪かったんだ。

ぼくがドアに向かって進む、ドアが少し閉まる、進む、閉まる、進む…


パタン


一瞬、目の前がまっくらになった。

「ピー!」

梅さんの必死な声がきこえていしきがもどった。体中がものすごく痛い。ネコさんたちとこうぼうをくりひろげたときよりも断然ね。

「ごめん、ごめんねピー、今お医者さん連れて行くからね」

あれ、梅さん、雨がふってきたのかな?よかったね、洗濯物とりこんだあとで。

「ピー?お願い、鳴いて?いつもの元気な声きかせてよ」

もちろん、梅さんのためならいくらでも!

…あれ?おかしいな、声、でないや。

ごめんね、梅さん。ぼくのフェスティバルはまたこんど。

「ごめんね、ごめんね」

どうして梅さんがあやまるの?

ぼくがあやまらなきゃいけないのに。ぼくの歌声をききたいなんていわれたのはじめてだからぼくはりきっちゃうよ!

「ピー、だいすきだよ」

ぐっは!告白されちゃった!

ぼくも!ぼくもだぁいすきだよ梅さん!!

あーもー!どうしてこんなときに声がでないかなぁ?しかもなんか体中重いし。こんなとき、ちゅーの一つでもしてあげるのが男ってものでしょう?

「ピー、ピー、大好き、大好きだよ、ごめんね、ごめんね」

きた!熱烈告白ですよおくさん!

でもどうしてそんなにさみしそうな声でいうの?

ぼくいまこんなにうれしいのに。

それに梅さんビショビショじゃない?雨もりどうにかしなくちゃ。ぼくの体が動いたらぼくの羽で梅さんを雨から守ってあげられるのになぁ。

まぁぼくがこんなにぬれてたらいみないかもしれないけどさ。

…ねぇ、梅さん大丈夫?

ぼくは力が入らない体にムチを打って目をあけた。

すると梅さんのおどろいた顔。

「ピー…ピー!」

今度はぼくがおどろくばん。

だって梅さんの目から雨もりしてたんだ。

どうしたの?大丈夫?

ねぇどうしたの?

「だい…じょ、ぶ?」

よし、なんとか声が出た!かなり体がいたくて声がひきつったけど大丈夫かな?ききとれたかな?

……うん!その笑顔は大丈夫ってことだね!よかった!

しかし本当に梅さんは魔法つかいなんだね。

すごいね、からだがいたくなくなってきたよ。

すごいね、むねのあたりがあたたかいよ。

すごいね、すごいね。

「ピー、ありがとう」

うん、ぼくもありがとう。

なんとなく、わかってるよ。

でも梅さんはまほうつかいだからさ、もしもなんてかんがえちゃうんだ。

「大好きだよ」

ぼくもっ!ぼくもほんとうに梅さんのことがだぁいすき!

梅さんにあえてよかった、だいすき

梅さんがまほうつかいだからこんなきもちになるのかな?

「ばいばい、ピー…」

ぼくにやさしくしてくれてありがとう

ぼくになまえをつけてくれてありがとう

ぼくにまほうをかけてくれてありがとう


だぁーいすき!


だけど


ばいばい

初めまして今日和。羽柴と申します。友人に勧められてはじめてみました。

結構前に書いた話なので、読み返してみると赤面しました。


実はこれノンフィクションです。あ、もちろんひよこの気持ちや梅さんの名前はアレですけどね(笑)

モデルは母方のおばあちゃんです。おばあちゃんは昔(母が子供の頃ですね)動物をたくさん飼っていたらしくて、その中で一番可愛がっていたのがこのひよこだったとか。

いつもいつも後ろを着いてきて、本当に可愛がっていたのがらしいのですが…こういう結果になり、飼う動物を増やすこともなくなり私が生まれる頃には動物は居ませんでした。(最期までみんな見送ったそうです)

後悔しているおばあちゃんの話をふと思い出したので綴ってみました。(2時間クオリティ&携帯打ちなので申し訳ない感じですが…/もうちょっと書き足したいけどいかんせん文字数が…orz)

強いおばあちゃんがふと見せた弱さがピーちゃんでした。

ピーちゃんは、おばあちゃんのことが本当に大好きだったんだと思います。

私もおばあちゃんのことが大好きです。幼い頃は母より長い時間を共にしたかもしれません。

本当に、大好きなんです。


だぁいすき!


だから、いつかくる

ばいばいなんてしたくないな






駄文失礼しました

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