第四十六鈴 戻れない時間
タイムリープスキル保有者の勇者ハリオはノーツ化スキルの保有者響に敗れた。時は経ち、響と勇者ハリオは魔王討伐に向けて旅に出るのであった。
響がハリオを気絶させてから数日が経ったある朝。
「響!!」
ハリオは宿のベッドから飛び起きたのだった。
「びっくりしましたよ。ハリオ様。体調は大丈夫ですか?」
ギルド受付のメムがベッドの隣で看病をしていた。
ハリオは自分の置かれている状況を整理する。
「…俺はいったい?確か響との戦いで」
「覚えていないのですか?響さん達と一緒にゴブリンの討伐に行って大型ゴブリンの攻撃で気を失ったんですよ」
「は?そんなわけ」
「お、ハリオ目が覚めたのか!」
「ハリオ体調大丈夫?」
そこにのなか、響が部屋に入ってくる。
それに続いてモサ子もとてとてと部屋に入ってくる。
「響!俺は…お前に…」
ハリオは響を見て自分が負けたと言う現実が突きつけられる。
「ほらほらハリオ、ハリオはゴブリンに頭殴られて気を失ったんでしょ?大丈夫?」
響はハリオの勇者と言う肩書きを守る為自分に負けたと言うことを伏せたのであった。
「響…くっ、そうか。そうだったな。そんな俺を連れて帰ってくれて、お前達には感謝している」
ハリオは響達に話を合わせた。
「それよりも、ハリオ体調良くなったなら一緒に魔王の討伐に行こうよ!」
モサ子はワクワクしながら声をかける。
「魔王の討伐?」
「そうですよ。ハリオ様。もうすでにルマージ様は『地獄の砂粒』に向かわれております。1人で心配なのでぜひハリオ様もご一緒にお願いします」
ギルドの受付担当メムも続けて言う。
「そうだったな。魔王の討伐は勇者である俺の最終目的だ」
「そして響様一行も無事に冒険者として認められましたので、改めて魔王討伐クエストを受けていただけると助かります」
「村の近くで果実の栽培や、モンスター討伐のクエストをコツコツ行ってきた甲斐があるぜ」
「これで魔王を倒せばこの世界を救えることができるね」
「うん!早く魔王を倒しに行こう!」
元気よく答えるモサ子。
「わかった俺も準備をしよう」
勇者ハリオはベッドから起き上がり着替えを始め、響達は宿の一階でハリオを待つことにした。
◇
数分後ハリオが階段から降りてくる。
「待ってたよ。ハリオじゃあ、一緒に魔王を討伐しに行こう!」
響がハリオにそういうと、ハリオの表情が変わる。
「…俺はお前に負けたんだな」
「え、」
響は戸惑う。話を作ってるのもあり他の人にバレてしまうのが心配であった。
「そうだ。ハリオお前は響に負けた」
のなかは直接的に伝える。
「ちょっ!のなか!」
その言葉を聞いてハリオは悔しそうに歯を食いしばる。
「…もう一度だ」
「え?」
「もう一度、俺はお前と戦う!」
ハリオは響達に闘志を向けてそう言う。
「ちょっ!ハリオ!」
「待てハリオ!」
ーーーチリン
ハリオを止めようとするのなかと響。しかしハリオの耳についている鈴はしっかりとその音色を響かせてスキルを発動していた。
「俺はもう一度、お前達とであった時間に意識を巻き戻す!」
ハリオはそう叫んで意識を過去に飛ばす。
「ハリオはまた過去に意識を飛ばしたのかな?」
モサ子は固まったままのハリオを見てそう呟く。
「実際に過去にとんだ後のハリオの様子なんて分からないからね」
「あれか?このまま固まった状態で過去から意識を戻すことができるのか?」
響とのなかも固まったままのハリオをみて呟く。
「…なぜだ」
ハリオは声を出した。
「お、戻ってきた」
「なぜ意識を戦い前に戻せないのだ!」
「なんだ?ハリオのスキルが不調だぞ」
「もしかして、私の頭突きのせいかな?」
ハリオは意識を飛ばそうと背筋をピンッとしてスキルを発動しているがこの宿で目覚めた時の記憶までしか戻せなかった。
「まさか、あの気絶が原因か」
ハリオはこのスキルを取得してから負けたことがなかった。もちろん敵の攻撃を受けて気絶することなんてなかったのだ。
「気絶して目覚めるとそれ以前の自分の過去に戻すことができないのか…」
ハリオは自身のスキルを限界まで試していたつもりであったが、欠点があるなんて知らなかった。巻き戻せない人生にハリオは深く失望した。
「俺の人生はいったい…」
ハリオはその場で崩れ倒れる。
「ハリオこんなこと言うのもなんだけど、巻き戻しが当たり前っておかしいよ」
「そうだぜハリオ。お前が求めてる戦いの高揚感っていうのはそのスキルが邪魔してたのかもしれない」
「そうだよハリオ一緒に魔王倒したらきっと楽しいよ!」
響一行はそう言ってハリオを励ますのであった。
「そうだといいんだが…」
ハリオの自信は一気になくなり、小動物の様に響達の後ろについていく。
「…なんだ村に活気があるぞ」
ギルド建物の外に出ると村の人々は以前と違く活き活きとしていた。
「いったい何があったんだ?」
「いや、私たちも知らないんだけど、村の人達が感じていた頭痛っていうのがなくなったんだって」
「魔王の魔力が弱まったのかもってみんな話してるよ」
響とモサ子は説明をする。
「魔王はまだ討伐してないのにいったいなぜ」
そこに村の人々が、ハリオを見て駆け寄ってくる。
「おお、勇者ハリオだ!」
「ハリオ様よ!」
勢いよく駆け寄ってくる村の人達に戸惑うハリオ
「お前達魔力による頭痛は大丈夫なのか?」
「はい!大丈夫です!」
「てっきりハリオ様が魔王を討伐してくれたのかと思ってました!」
「強力な魔力を持ったモンスターを倒してくれたと聞きました!村の人々みんなハリオ様に感謝してます!」
ハリオが聞くと村の人達はハキハキと受け答えをする。
「そ、そうか。魔力による影響が弱まったなら良かった。この後、俺は冒険者と共に魔王の討伐に向かう。討伐後この村は今よりも平和な場所になると誓おう!」
「「おおおーー!!!」」
村の人々は叫びをあげる。
「ハリオ様期待しております!」
「奇行な勇者なんて言って申し訳ございませんでした!」
「ハリオ様どうかこの世界に平和を」
それぞれがハリオに応援の言葉を伝えそしてハリオを村の外まで見送った。
◇
村の外で手を振る人々。それに答える様に響達も手を振りかえす。
「すごい応援されてるね!私も頑張らなくちゃ!」
「いや、応援というか勘違いだろ。ハリオはまだ何もしてないぞ?」
「あ、確かに」
「寝てる時に実はなんかやってたりして」
「夢遊病か!」
響とのなかが会話しているがハリオはずっと思い悩んでいた。
「どうしたのハリオ?」
モサ子がハリオに聞いてみる
「村の井戸があるだろう?あそこは村のみんなの元気なくずっと放置されていたんだ。今回の魔王討伐も裏魔法を使って瞬間移動で向かおうと思ったのだが、さっきの様子だと井戸も機能していてそれも使えないなって思ってな」
「井戸?裏魔法?瞬間移動?」
知らない単語が飛び交いモサ子は混乱する。
「ハリオ、それってバク技でしょ?」
「バク技?はて、なんのことだ?」
響の質問にハリオは明るさまにごまかした反応をする。
「そういうのバク技っていうの!どういう原理か分からないけど、瞬間移動とかいろんな工程をスキップしてるところ!」
「ああ。だが、これは俺の生み出した裏魔法だ。俺はこれで最速で魔王の討伐もできる」
「いい?ハリオ!私と一緒にいる時にバク技は許さないよ!」
響はハリオの裏魔法(バク技)に対して相当怒っていた。
「どうした響そんなに怒って」
「昔やってたオンラインゲームでバク技を使ってたプレーヤーを思い出してどうしても許せないの」
「はぁ、そうなのか」
「勝負はいつだって真っ向勝負。魔王討伐も真っ正面から立ち向かうよ」
「響かっこいい!」
「いや、こういう時は先を急いでハリオのチート能力でも借りた方が」
「のーなーかー!」
「…わかった。ハリオこの通りだ。裏魔法を使ったらお前は響に殺される」
「スキルも封じられ、裏魔法までも使えないとは、俺はもう戦力外だな」
ハリオは再びため息をつく。
「とりあえず、魔王討伐に行こうぜ。まず向かうのは、えっと…」
「『地獄の砂粒』だ」
ハリオが言う。
「俺も何度も戦ってきたが、そのエリアのボスに会うかは運次第だ」
「可能だったら出会いたくないな」
「え?なんで?せっかくだし戦おうよ!」
「うん!そのボス食べてみたい!」
のなか以外はみんなやる気満々であった。
「変わったパーティになったな」
「元はと言えば、お前が魔王を討伐しないからこうなったんだぞ」
「なんのことか」
ハリオはのなかに文句を言われる。
こうして響一行と勇者ハリオの4人は『地獄の砂粒』へ向かったのであった。
◇
時を同じくして獣化のスキル保有者ミルは魔王城に到着していた。
「ここが魔王城!やっぱりが魔力が段違いで感じるの」
ーーーチリン
ミルはハムスターの姿になり城の中に侵入する。
「なんなのここ。大きなゴブリンがたくさんいるの」
ミルは見つからないように音を立てずに慎重に進む。
「私のスキルを使えば余裕なの!」
廊下を渡りモンスターが近くにいる時は物陰に隠れ少しずつミルは進んでいく。
「魔力が強くなっているの!あとちょっとなの!」
ミルは柱を登り視界が見えにくい天井付近を進んでいく。
「おいそこの侵入者。大人しく出てきなさい」
廊下にミルをガン見するマントをつけた魔物がいた。
「ひぃいい!!見つかったの!!」
ミルは叫びをあげながらその場を逃げるのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回の章は3部構成になっておりまして、タイムリープの話の第一部が終了し、魔王への討伐の旅の第二部がはじましました。果たして魔王討伐はできるのでしょうか。
次回地獄の砂粒編です。ハリオのタイムリープ時に出てきましたが、今回はしっかりと戦っていきます。(みんなチートスキルなのでしっかりではありませんが)お楽しみください。




