第四十三鈴 奇光種を探して
タイムリープのスキル能力者の勇者ハリオはノーツ化スキルの響を倒す為、時間を遡り確実に倒せるアイテムを求めて冒険に出るのであった。
(もう何十回、何百回繰り返しただろうか)
ハリオは街を歩きながら響との戦いを思い出していた。
(…やっぱり俺は響に勝ちたい。あの気持ちは本当だ。俺の求めている戦いの全てを響は持っていた)
ハリオはいつものようにモサ子を落とす穴を村の住民に依頼して自分の次の行動を考えていた。
「…トラップも魔法も物理技も響には効かない。…別の方法を試すか」
ハリオは村の外に旅に出ることを決めた。
「な、ハリオ!?魔王を倒すにお前はいったいこんなところで何をしているんだ!?」
ハリオは井戸に向かって出たり入ったりを
繰り返していた。
「お、ルマージか?ちょっとある場所に向かう途中でな」
「行くってどこにだ!?」
「『地獄の砂流』だ」
そう言った途端ハリオの姿が一瞬のうちに消える。
「はぁ!!?きえた!?いったいなんなんだお前は!?」
村にルマージの叫び声が響くのであった。
◇
この世界には魔王の支配によって砂漠化が急激に侵攻してしまったエリアがあった。無限に続く砂漠のエリア。一度踏み入れると決して帰ることのできない場所。この世界の人々にはその場所は『地獄の砂流』と呼ばれていた。
ギギュルルルッ!!!
砂漠の上に魔力が風を打つように集中して流れ込みそこからハリオが現れる。
トンッ
何事もないようにハリオは砂漠の上に飛び降りる。
「裏魔法成功。このエリアまで来るまで長い道のりだからな。ひとっ飛びで来れるのは最高だぜ」
ハリオは慣れない砂漠の上を歩きながら行き先の見えない砂嵐の中を歩いていく。
バシュ!バシュ!バシュ!
突然ハリオの周りを囲むように緑色のカマキリの姿をしたモンスターが飛び出してくる。
ギィギャァアア!!!
カマキリのモンスターは咆哮をしてハリオに襲いかかる。
「あまりこのエリアは来てなかったからな。懐かしいじゃねぇか」
モンスターは腕のカマを振り上げて攻撃をしてくる。
ヒュン!
ハリオはカマキリのモンスターを全く見ずに攻撃を避ける。
ヒュン!ヒュンヒュヒュヒュヒュン!
「いつも同じ動きだ。ほんとにつまらない」
ハリオはカマキリの攻撃を避け続けそしてモンスターが一直線に並ぶ様に位置を調整していた。
「じゃあ決めるぜ」
ビュン!
風を切る音。モンスターには全く攻撃など当たっている様子はない。
「一撃っていうのはこうやって決めるんだぜ?」
ハリオは自分の武器のレンガをポーチにしまった。
バンッ!!ババババンッ!!!
カマキリのモンスターの胴体は無惨に弾き飛ぶ。ハリオの放った一撃は目に見えない速さで、そしてその衝撃をまるで感じさせないほど鋭い攻撃であった。
「一撃で決める爽快感。いいね!この感じだったら無双ができそうだな」
ハリオはそう言って後ろを向く。
ギィギャァアア!!!
砂嵐が消え去る砂漠の上を埋め尽くすほどのカマキリのモンスターが何万と立っていた。
「この数!嬉しいね。これなら早めに奇光種とも出会えそうだ!!」
ハリオは向かってくるカマキリのモンスターに立ち向かった。
ビュン!
バン!!
一撃。
ビュン!
バン!
一撃。
ハリオは繰り返される無限の戦いに飽き始めていた。
「まだまだだ。奇光種!さっさと出てきなよ!」
ハリオは延々とカマキリのモンスターを鎮圧していく。この戦いはハリオにとってもう何億回と繰り返された戦いだった。
「同じタイミング、同じリズム、同じ攻撃。寝ながらでも戦えるな」
カマキリのモンスターの死骸が山のように増えていく。
「待て…もう半分まできたのか…!?」
ハリオは焦りを感じていた。
「奇光種…今回はいないのか!?」
どんどんと倒されていくカマキリのモンスター。
そのモンスター達は意志がなく目の前の獲物を捕まえるように次々と群がってくる。
「実はな。最近魔法も覚えたんだ」
パチンッ!
ハリオはモンスターに向かって指を鳴らした。
「エクストリームエレメントブラスト!」
炎水雷が混ざった魔法がハリオから放たれる。
カマキリのモンスターは次々と焼かれ跡形もなく消えていく。
ハリオの魔法は空気中の魔法を使っている為、限界はない。
ババババババババババババン!!
残り半分いたカマキリのモンスターは全員綺麗さっぱり消え去った。
「…ま、待てよ!しまった!やってしまった!これじゃあ奇光種がいたことも分からないじゃねぇか!!!」
ハリオは自分の失敗を後悔する。
ドドドドドド!
地響きが鳴り響く。
「あー…あいつか。」
ギィギャァアア!!!
地面から砂で体ができた大きな鳥が出てくる。
「『大砂鷹』このエリアのボスを起こしたみたいだな」
大砂鷹はハリオに勢いよく突進してくる。
「悪いな。お前に用はない。」
ーーーチリン
ハリオはタイムリープの力を使い意識を地獄の砂流についた時に巻き戻した。
「魔法を使うと奇光種だと分からないのか。面倒くさいが地道に一体一体倒していくのがいいみたいだな」
ハリオは再びカマキリのモンスターとの戦いを始める。
シュン!
バンッ!
一撃、一撃。続く敵の流れを波打つように倒していく。
バン!ババババババババンッ!!
ハリオはモンスターを無双していく。
ドドドドドドドドド!!!
モンスターを倒しながら地響きが聞こえてくる。
「ちょっ、待てよ。まさか大砂鷹もお出ましかよ」
ギィギャァアア!!!
「まさか、さっきの時間逃げたの怒ってるのか?…そんなわけはないか」
大砂鷹は竜巻を出現させながらこっちに向かってくる。
ドュルルンッ!
光輝く音が聞こえる。
ハリオはその音がする方を向き目でしっかりと確認する。
「見つけた!!奇光種!!」
そこには緑のカマリキリの中に混ざって赤色のカマリキリのモンスターが光を放ちながらいた。
「待ちわびたぜ!この時を!」
ハリオは一目散に奇光種に向かって走っていく。
ビシュルルルルル!!!
しかし大砂鷹の放つ竜巻によってハリオは奇光種を見失ってしまう。
「邪魔をするな!」
ハリオはパチンと指を鳴らし砂漠のある一点に向かい魔法を放つ。
ギュオオオオオ!!!
その魔法が向かった先でプチンッという音が聞こえ、大砂鷹と竜巻は消滅した。
「どこだ!!どこに行った!?奇光種!!」
ハリオは辺りを見渡したが奇光種はどこにもいなかった。
「まさか、さっきの魔法で巻き添えに…」
ハリオの背後からカマリキリのモンスターが襲いかかる。
「もう一度だ」
ーーーチリン
ハリオはタイムリープを使いこの戦いの始めに戻る。
「さぁ、今回は姿を見せてくれるのか奇光種」
ハリオは再びカマキリのモンスターとの戦いを始める。
ドドドドドドドドド!!
そして再び戦いの最中に地響きが聞こえてくる。
「今度は1番に倒してやるよ!大砂鷹!!」
ハリオはある一点にレンガを投げる。
ビュンッ!!!
レンガの投げる先でプチッと音が聞こえて大砂鷹は消えていく。
「さぁ!奇光種!出てこい!!」
ドュルルンッ!
奇妙な音が響きわたる。奇光種特有光が反射した音が聞こえた。
「きたーー!!!!お前を待っていた!!」
ハリオはカマキリのモンスターの腕のカマを使ってカマキリのモンスターを次々に倒していく。
「レンガに比べるとスムーズにはいかないが…倒せる!!」
ハリオは奇光種の元にどんどんと近づいていく。
「いただいたぜ!奇光種!!」
ハリオは赤色のカマキリのモンスターの腕を切り刻んだ。
ギィギャァアア!!
カマキリのモンスターは悲鳴をあげて倒れる。
「これだ。この奇光種のカマにある猛毒。これで!これで俺は響に勝てる!!」
ハリオはこの世界で唯一完治のできない猛毒を持っている奇光種のカマキリモンスターのカマを手に入れた。
◇
数日後ハリオは響と出会う。
「さぁ!響!戦いを始めようか!」
「まるで心待ちしてたみたいな言い方だね。まさかこの戦いも繰り返してるの?」
ハリオの楽しそうな声を聞き呆れている響。
「さぁ!どうかな!」
ハリオは弓を用意していた。その矢の先にはカマキリのカマが付いている。
「なんか変な武器だね」
ビュン!
弓矢は風を切りそして響の顔面目掛けて飛んでくる。
ーーーチリン
タンッ!
響はノーツ化スキルを発動して弓矢を弾いた。
「まだだ!」
バフッ!!
弓矢には火がつけられていてそこから煙が一面を包み込む。
「響…お前がどんな能力者も人間だ。だからな毒だけには抵抗はできない。そしてこれはこの世界で一の猛毒…俺の勝ちだな」
ハリオは猛毒の煙に包み込まれる響を見て勝ちを宣言する。
「へっ…」
響は煙の中からゆっくりと歩いてくる。
「へっ…へくしょんっ!」
響はくしゃみをしていた。
「は?」
「…ごめんね、ハリオ。私に毒の攻撃は効かないんだ」
「いったいどういうことだ!?」
「スピリットダイブモード。私の意識を細胞サイズで体の中に召喚して自分の体の中に入った危険なものを全て弾ききる技」
「チートすぎる!意味がわからない!」
「じゃあ、今度はこっちの番だよ。オンステージモード!」
響はアイドル衣装に変身してハリオの懐に入った。
「は、早い!」
ハリオはレンガを準備するが、間に合わない。
タンッ!!
「ガハッ!」
ハリオは溝を弾かれ宙に飛ばされていく。
「まただ。…本当に戦い甲斐が…ある!」
ーーーチリン
ハリオはタイムリープの能力を使い再び意識を過去に飛ばすのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
珍しい色のモンスターと巡り合うとテンションが上がりますね。
次回もハリオの冒険が続きます。お楽しみください。




