第三十五鈴 孤独な少年
地上の毒人たちの細胞を吸収して最強になった優徒に対して響、のなか、モサ子とDライダーズは最後の作戦に出たのであった。
優徒は紫色の翼を生やした大柄な男に変身して地上から舞い上がる自身の毒を吸収していた。
「この地上の毒の細胞全て取り込めばもう僕に敵はいない。僕は神と同じ存在になる」
太陽に手をかざす。
「今日は神の誕生日だ」
そう呟いているとしたからひょっこりと響が出てくる。
「そんな神様いやだな」
「響さん。もう諦めてよ。僕を倒すことはできないってわかっただろ?」
「私諦めだけは悪いの。これってもしかしたら私のスキルなのかもしれない!」
「…何が目的?」
「優徒さんを倒す前にどうしてこの世界を征服したかったのかなって気になって」
「目的?僕は自由を手に入れたかっただけだよ」
「地上に向かう前、優徒さん私が学校にいたら救われていたって言ってなかった?」
「ああ、言っていたよ。他人の為に人助けするなんて信じられなかったからね」
「…そう。何か困っていたの?」
「ああ、どこにも行き場のないどん底って感じだよ」
「毒の吸収は順調?」
「本当に何が目的なの?響さん」
「私はあなたの毒の吸収を止めるつもりはない。もし時間がかかるなら話てよあなたの考え」
「君が何を考えているかさっぱりわからない。でも僕を止める気がないのはわかった」
優徒は静かに語り始めた。
「教えてあげるよ僕の記憶を」
◇
母親は僕が小さい頃に他界して僕は父親独り身で育てられていたんだ。父親は頑張って働いていたけど、僕を養うほどの給料はもらえていなかった。
小学生のとき給食代も払えず、特別に先生の給食を分けてもらっていた。
それは他の生徒には知られないはずなのに、噂はすぐに広まったんだ。
「あーー!!!ゆうとくんまた先生の給食盗んでる!!」
「わ!本当だ!いけないんだ!盗人だ盗人だ!」
「え、ち、違うよ僕はそんなこと」
他の生徒がそう騒ぎ、僕は助けを求め先生に目を向ける。
「…あ」
先生は迷惑そうな目を僕に向けていた。
そう給食を分ける行為つまり先生の分をもらっているのは事実であり。先生の給食はその分減っている。
まるで生徒達は先生の言葉を代弁するかのようだった。
「うわ!ゆうとくん体当てないでよ!汚い!」
「お前ゆうとのバイキンこっちにつけるなよ!」
「汚い!きゃーー!!」
洗濯は自分でやっていたけど洗剤が買えなかった僕の身なりは少し匂っていた。
僕の体に触れてバイキン扱いする生徒はたくさんいた。
高校生になった時、父親は警察に捕まった。
お金が払えなくなった為余儀なく万引きを行い捕まったと聞いた。
僕は学校でも家でも孤独になった。
「優徒お前くせえんだよ!早く消えろ!」
学校に行くといつも罵倒される。
「お前がくるとクラスの雰囲気悪くなるんだよ!」
僕は空気も変えていたみたいだった。
「きたねぇ手で俺のプリント触るなよ!バイキン移るだろ」
僕は有害な毒なんだ。
でもおかしい話だよ。僕は頑張って生きているのに、どうしてそんなバイキン扱いされなきゃいけないんだよ。
気がついた時僕はその生徒に殴りかかっていた。
否定したかったんだ。彼らの思う僕の存在を。
僕自身が苦しむこの世界を。
学校の帰り道、遠い記憶母親と父親に連れて行ってもらったショッピングモールに寄った。
懐かしかったんだ。家族と出かけたあの思い出、記憶、全て呼び返してきたんだ。
僕は本当に情けなく感じて泣き崩れたよ。
人間の世界は残酷で自分の思い通りに何もうまくいかない。
僕は自分に力を求めた。この世界の中心になれるそんな力を。
ーーーチリン
鈴がなり、気づくと僕の胸の中に鈴が入って行ったのがわかった。
鈴は僕の心臓についていた。
気持ち悪い感覚と共にドラゴンヘッドの頭の建物の中に入った。
そして気づいたんだ。
これが力だ。
神様が僕に与えてくださった力なんだ!!
◇
「あらゆる毒人達の目を通して君達を観察してきた。その後のことは監視カメラの通りだよ」
「そんな辛い過去があったんだね」
「響さん、わかってくれるのかな。君はそんな僕がいたら助けてくれたかな?」
「…わからない。でも私は弱いものイジメは許さないから。きっと助けるよ」
「そんな都合のいい人間は響さんだけだよ」
優徒は空を見上げてつぶやいた。
「僕はもう止められない。このまま最強の存在になって神血を持ったドラゴン達も倒す。そして響さん達のちからも奪って別の世界も倒しにいくよ」
「そこは、よくわからないな」
「え?」
「他の世界侵略する必要なくない?私達は別の世界の侵略をしようとしてる魔法使い達を止める為に旅をしてるんだけど、優徒さんもそれに参戦するってわけ?」
「そうだよ。君達みたいに邪魔してくる部外者を排除する為にね」
「そっか…そしたら、私はあなたを倒す。それが私にとってのあなたへの救済」
「…僕の細胞も充分吸収できたみたいだ。僕もそろそろ本気だそうかな」
優徒は立ち上がり響を見下ろす。
「優徒さんあなたは間違ってる。それを力を持って証明してあげるよ」
ーーーチリン
響も立ち上がり譜面の円盤が浮かび上がる。
バンッ!
優徒の右からの強烈なストレートパンチを響はノーツを弾いて流す。
バババンッ!
響はそのまま優徒の腹部に2発、そして顎に1発弾く。
「効かないよ。君の攻撃」
「優徒さんの攻撃も無意味だから」
二人は上空に飛び上がり鍔迫り合いになる。
バババババババババババババババッ!!!
優徒の連打を難なく弾き飛ばす響。
しかしその1発1発が重く深く響の弾きがどんどんと押されていく。
「響!時間稼ぎサンキューな!」
下からのなかの声が聞こえる。
「なに?時間稼ぎだと?」
優徒は下を見る。
そこには天空の王国から生えた巨大なモササウルスの顔があった。
「あれは一口化け物か!」
「モサちゃんの巨大化だよ!優徒さんが力蓄えてる間に巨大化してもらってたの!」
「しかし!あの怪物は僕の毒で殺すことができる!食べられたところで内側から僕の細胞になってもらうだけだ!!」
優徒と響の上から黒い影が見える。
「バジル・バトス!このままくらいつけ!!」
そこにはバジル・バトスに乗った健二と麻耶がいた。
「Dライダーズ!毒人化させたはずなのに!」
「お前の毒に負けるわけないだろ!!」
バジル・バトスは優徒を口で咥えるが、優徒は手と足で口を押さえて食べられないように耐える。
「負けてたまるか。俺の力で倒されるわけにはいかない!!」
響はそんな優徒の上に乗る。
「優徒さん…あなたの辛い思いをしたのもわかる。でも世界を自分で染めるってそれはエゴだよ。私地上を見てきたけど、あなたの作った世界は汚かった」
「響さん!!じゃあ僕はどうすればよかったんだ!!誰も助けてくれない世界で!!僕はどうすれば!!」
タンッ!
響は優徒のノーツを弾くその勢いで優徒はバジル・バトスの口の中に落ちていく。
「仲間を作れば良かったんじゃないかな?きっとあなたの気持ちもわかってくれる人もいるし、しっかりと指摘してくれる人もいる。きっとあなたの行動を正してくれる人もきっといたよ」
「仲間…仲間か…ああ、ずっと一人だったから思いつかなかった」
バクッ!!
優徒はバジル・バトスに喰われた。
「よし!優徒を捕らえたぞ!!」
「モサちゃん!準備して!」
天空の王国から生えたモササウルスは大きく口を開いた。そのサイズはバジル・バトスを丸呑みできるサイズであった。
「ちょっと、待って!だれか私たちを助けて!!」
バジル・バトスの上に乗った健二と麻耶が手を振って合図をする。
「ヤベェ!忘れてた!!」
のなかは下から飛んでいくがスピードが足らず間に合わない。
「だれか!!!」
ビュンッ!!!
のなかの横を風を切る音が聞こえる。
「あれってもしかして良のドラゴン?」
良は地上で響達を導いたがその後毒を浴びた動物達に襲われていた。しかし良はドラゴンの目を持っていた為、人間の体を捨てて、ドラゴンに意識を移していた。
『二人ともまたせた』
「良!?おまえなのか?」
良は健二と麻耶を背中に乗せてバジル・バトスを離れる。
『健二、Dライダーズ、この世界を頼んだぞ』
頭に聞こえるバジル・バトスの声。
バジル・バトスは神血を持っているドラゴンが優徒を呑み込みそのままモサ子に呑み込まれることで毒の効力を無力化してスキルを封印する策を提案した。
「バジル・バトス、俺たちにとっての永遠のライバル…安らかに眠れ」
バジル・バトスはモササウルスの口の中に落ちていく。
「いただきまーす!!!」
モサ子は大きな口で優徒を飲み込んだバジル・バトスを呑み込んだ。
ーーーチリリン
鈴と鈴が重なる音。
モサ子は霧状になって消えた。
「あれ!!?モサちゃん!?」
「どこ行ったモサ子!?」
あたりを見渡す響とのなか。
そこに霧の塊が集まって少女の姿が浮かび上がる。
「あーー!美味しかったーー!!」
「モサちゃん!!」
二人の前に満足気な笑みを浮かべるモサ子がいた。モサ子は毒のスキルを習得したのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
優徒さんはエゴの塊でできた人でした。強力な力を持ったとしてもそれを正しく使うことは難しいことです。
この世界は一般人が最強のスキル保有者になって暴走した物語を描いてみました。
次回はこの章の締めになります。お楽しみください。




