第三十一鈴 モニターに映る男
地上の人々をゾンビ化させた毒を体に取り込んでしまった響は、自身の魂を具現化して細胞の中に召喚した。響の体中の毒は響の奏でるリズムと共に消滅していくのであった。
ショッピングモールの個室に響とモサ子は毒を吸い込んでしまいのなかは二人を見守っていた。
突如響は目を覚まし体を起こした。
「あ…私…毒に勝てるっ!」
「なんだとっ!?」
響の答えにのなかは驚くのであった。
「響!一体どんな技を使ったんだ!?」
「えーと分かんないよ。私はただノーツを弾きたい気持ちでいっぱいだったから…」
二人の隣でモサ子が苦しんでいた。
「ううう…」
「…無理な話かもしれないが…モサ子を助けることはできないか?」
のなかは響に真剣に問いかける。
「…そんなことわからない…。ノーツが見えればいいんだけど…」
そう言って響はモサ子の毒人に噛まれた腕を触れる。
ーーーチリン
「え?」
響はモサ子に触れた瞬間、モサ子の体の中のノーツが見え始めた。
曲が流れ始める。
「これってもしかして、私、モサちゃんの体に入れるかもしれない!」
「言ってる意味がわかないが、どうにかできそうなのか?」
響はのなかの問いにまっすぐな表情で答える。
「やってみる!」
響は目を閉じてモサ子の体に流れている毒のウイルスに重なったノーツに集中する。
(弾く。全て弾いてモサちゃんも助ける!)
響は強く願いそして目を開ける。
「…は!入れた!」
響は再びスピリチュアルダイブモードになりモサ子の細胞の中に入り込んだ。
「モサちゃんって恐竜だよね。私の時と中の構造がちょっと違うんだ!」
響はモサ子の体の中を見渡す。
そしてそこに多くのノーツが密集しているのが見えた。
「いた!あれがモサちゃんを苦しめてるウイルスだね!」
響は勢いよくノーツに向かって泳ぎノーツを弾いていく。
タタタタタタタタタタタタタタタタ!!!!
毒のウイルスは油断していたのか思ったよりも素早く弾き飛んでいく。
タタタタタタタタタタタタタタタタ!!!!
途中にモサ子の形をした白い塊が集まってきた。
「わ!何この子達!」
白い塊はすりすりと響に近寄って戯れている。
「もしかして、モサちゃんの抗体細胞たちかな?」
モサ子は元々モササウルスであり今はスキルの能力で人間化している。
体の中もスキルの影響でメルヘンチックであった。
「モサちゃんの細胞ちゃん達、一緒にモサちゃんを救ってくれる?」
響はモサ子の抗体細胞たちに呼びかけ抗体細胞は手を上に突き上げた。
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!!!
毒のウイルスを弾き続ける。
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!!
いつもであればノーツを弾く響は楽しんでいるが、今回はモサ子の命がかかっていた為真剣にノーツを弾く。
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!
ほんの短時間で毒はモサ子の体の五分の一を閉めるほど侵食し繁殖していた。
「モサちゃん!今助けるね!」
タタタタタタタタッ!!!
モサ子の抗体細胞も必死に毒に喰らい尽くし毒の機能を停止させている。
「これでラスト!」
タンッ!!!
響は最後の毒のウイルスを弾ききった。
「モサちゃん、これで回復してくれればいいんだけど」
響は上を向く。その足元にモサ子抗体達が集まってくる。
「モサちゃんの抗体細胞ちゃんたちもありがとう!」
響の声にモサ子の抗体細胞はにっこりとする。
ーーーチリン
曲が終わり響の体は消え始める。
「じゃあ私は戻るね!」
手を振る響に抗体細胞はしょんぼりとした表情を見せる。
◇
「響!おい!また気を失ったのか?大丈夫か!?」
モサ子の手を握ったまま再び眠りについた響にのなかは声をかけていた。
「…う、うるさいよ、のなか」
「響!よかった!心配させるな!」
のなかは響の意識が戻ってホッとする。
「お前が毒を倒したっていう方法でモサ子を助けようとしてくれたのか?」
「うん、魂の具現体。小さな私を細胞サイズで召喚できるみたい」
「とんでもねぇスキルだな」
「…ううう、響?」
響とのなかが話していると突然モサ子が声を上げる。
「モサ子!」
「モサちゃん!大丈夫!?」
「うん。なんかよくなってきた気がするよ。夢の中で響がね、ビュビュビュビューンって私の体の毒を倒してくれたの!」
「モサ子!心配かけやがって!…ごめんな危険な作戦立てて」
のなかはモサ子を抱きしめた。
「のなか、私こそ油断して噛まれちゃってごめんね」
モサ子はのなかの腕の中で謝る。
「響も心配かけちゃってごめんね。響だよね。私を助けてくれたの」
「そうだよ。モサちゃん戻ってきてくれてよかった」
響は涙を流しながらモサ子を抱きしめる。
「えへへへ。私ずっと一人だったから、こうやって誰かに助けられるのって嬉しんだね」
「あたりまだろ。お前は俺たちの仲間なんだから」
「そうだよモサちゃん。これからも一緒だよ」
「ありがと二人とも!」
モサ子は幸せの顔をしてにっこりと微笑んだ。
◇
「では、気を取り直して次の作戦だ」
のなかは机を元に戻し、3人は椅子に座った。
「まず、俺達はここに地上を埋め尽くした毒の発生源を調べにきた。そしてゾンビ達に襲われながらも建物の電気の復旧に成功したってわけだ」
「そうだったね」
「大変だったよ〜」
「実は俺が向かった電圧機の下のフロアにモニター室があったんだ」
「…あ!監視カメラの記録!!」
「そうだ。それを見れば毒の発生時の状況が分かるはずだ」
のなかはみんなに自信を持って話す。
「いったいこの毒なんなんだろうね」
「発生現場分かれば手がかりが見つかるはずだ。ひとまず、モニター室に案内するぞ」
3人はフードコートをでて西の『エンカの森』という建物に向かう。
相変わらず、外には毒人達が徘徊している。
「私、毒には勝てるけど、可能であれば噛まれたくないな」
「私も!気をつけて行くね!」
響とモサ子は構える。
「遠距離攻撃なら任せろ!」
のなかはMPSマーク43 換毛機を装着し直してドローン攻撃を行う。
ビーーーーッ!!
ドローンのビーム攻撃が毒人達に効いていく。
「道ができたぞ!みんな行くぞ!」
「ありがとうのなか!」
3人はのなかが切り開く道を走っていく。
その途中のなかはケーキ屋さんで生チョコレートのお菓子を手に取った。
「のなか?それ食べるの?お腹壊すよ」
「まぁ、食べはしねぇよ」
そんな会話をしながらモニター室に到着する。
「監視カメラのデータはどうだ?…よし!動きそうだ!」
のなかは電気が復旧して監視カメラのデータも復旧していることに喜ぶ。
「…でものなか、毒の発生した日付も時間もわからないよね?ずっと見るつもり?」
その質問を待っていたかのようにのなかはチョコレートのお菓子を出す。
「これを使う」
「なに!?それ!?美味しそう!」
モサ子は一目散に食べようとする。
「ちょっ!食べる用じゃない!賞味期限を見るんだ」
「賞味期限?」
「生チョコレートの賞味期限は持って2週間、その間のカメラを見て回る」
「あ、なるほどね」
生チョコレートの賞味期限はML12.02.12と書いてあった。のなかはその日付を入れ検索をかける。
「この時間帯はすでに毒に襲われたあとだね」
「もう2〜3日戻ってみる?」
のなかは2前に時間を戻す。そこには毒が黙々と発生している映像が見えた。
「あ、来たな」
「やっぱりここのショッピングモールが発生源だったんだ。でも、どこからだろう?」
3人は毒の流れてきた方向を確認する。
「もしかして建物の中心から?」
のなかはドラゴンモールの中心の建物の監視カメラのモニターに切り替える。
「ん?なんだこれ?」
その映像は黒く染まっていた。
「これって毒なんじゃないかな?少し戻ってみて」
そう言われてのなかは映像を巻き戻す。
そこには逆再生のため1人の人間に毒の煙が吸い込まれているのが見える。
「こいつか?」
映像を通常に戻すと男の身体が煙状に浮き始め空中に舞っていく様子が見える。
「…待て。この角度で顔が分かるかもしれない」
のなかは別画面の角度のモニターに切り替える。
「マジか」
霧状になった男に3人は驚く。
「すぐに天空の王国に戻らなきゃ!」
響はそう言って外に歩き出した。
最後まで読んでいただきありがとうござます。
ショッピングモールのお話は次回で最後です。ゾンビはショッピングモールで暴れているイメージがありましてどうしても世界観が崩れてしまう形になりました。
次回天空に戻ります。




