第二十八鈴 ゾンビモール
地上を覆う毒の原因を探す響達は手がかりがあると言われているショピングモールの電気の復旧を行おうとする。
電気復旧には三つの建物の電圧機のレバーを同時に下ろす必要があった。
響とのなか、モサ子の3人はフードコートの個室で作戦会議を行なっていた。
「いいか。作戦は以上だ。あとは合図に合わせてレバーを引くんだぞ。」
「わかった、私が東の『ツバサの森』のレバーだね」
響は建物を指を刺して言う。
「私が、のなかといっしょに、ここ南の『ツメの森』のレバーに行って待機する」
モサ子はちょっと考えながら言う。
「そうだ。そして俺は西の『エンカの森』のレバーだ。このトランシーバーで連絡を取り合って3人同時にレバーを引いてショッピングモールに電気を復旧させるぞ」
「ちょっとスパイみたいで面白そうだね」
「響、お前もふざけはじめるなよ」
のなかは響を叱る。
「…一つ心配なのが、異能力者との戦いだ」
「大丈夫。その時はすぐに呼んで。私がフルコンで決めるよ」
「私もバグって食べちゃうね!」
「たのもしいな、お前達」
「よしじゃあ、ここに座ってても何も始まらない。早速行こうぜ」
3人は席を出る。
「じゃあ響お前は東だな。2階専用通路から向かってくれ」
「わかった!じゃあ、二人とも気をつけてね!」
「響もね!」
手を振って去る響にモサ子は手を振って返す。
響が行ったのを確認してのなかとモサ子も歩きだす。
「俺はまずお前と一緒にこの『ツメの森』のレバーを探しに行く」
「よろしくねのなか!」
モサ子は笑顔で応える。
静まり返った建物の中二人の足音だけが響きわたる。
「ねぇ、のなか。のなかは好きな人とかいないの?」
「なんだよ急に」
「私のなかと響のおかげで大好きなティラダさんと一緒になれたから、恩返しがしたいなってちょっと思って」
「好きな人というか、大切な人はいるな」
「だれだれ〜??」
「さりす姫だ。俺のいた製造の国の王女だ」
「へ〜!そうなんだ!ねぇ教えて!どうして好きなの!」
「だから、好きじゃない!大切な人なんだ!幼い頃から一緒にいてな。俺を気にかけてくれる優しい人だ。幼い頃ある実験が失敗して家族が行方不明になって俺はずっと隣に居続けようと努力したんだ」
「のなか優しいね!のなかにそう持ってもらえてきっとさりす姫も幸せだね!」
「だがな、今現状俺はさりす姫から離れているんだ」
「あ、そうだった!」
「この世界を救ったら俺はさりす姫から命じられた空間スキル保有者の無力化に専念する。この旅をする上でもモサ子の協力は必要だ」
「うん!私頑張るよ!あとのなかのさりす姫への想いの為にも頑張るね!」
「ありがとうなモサ子…ってなんか弱み握られた感じがする!?」
のなかとモサ子が話している間に目的の電圧機に到着した。
「お、これが電圧機だな。試しにレバーを下ろしてみるか」
ガチャンッ…ガゴン
「やっぱりダメみたいだね」
「そしたらここからは作戦通り、俺は西の『カエン』の森のレバーに向かう。モサ子、トランシーバーの使い方は大丈夫か?」
「オーバー!うん!大丈夫だよ!オーバー!」
「初めにオーバーは必要なくないか?」
『オーバー!のなか、モサちゃん!無事に南のレバーについた?』
「あ、響だ!オーバーうん!ついたよ!オーバー」
「響!そっちは大丈夫か?オーバー」
『今のところは大丈夫だよ』
「じゃあ私はここの南のレバーで待機でいいんだっけ?」
「ああ、よろしくなモサ子。電気の復旧を済ませてすぐに合流するぞ」
のなかはモサ子を南の建物に残して西の建物に向かった。
「そしたら、みんなから連絡待つまで座って待ってようかな」
モサ子はちかくのベンチに腰をかける。
「あれ?のなか?戻ってきたのかな?」
モサ子の見る先に黒い人影がゆっくりと歩いてくる。
「どうしたののなか?」
薄暗い中モサ子はその人影に近づく。
「あ…あ…」
人影が呻き声をあげる
「え?のなか…じゃない…」
モサ子は周りを見渡すと薄暗い隅からどんどんと人影が立ち上がるのがわかった。
「な、何これ!?」
◇
ーーーチリン
通路を歩いている響に音楽が流れ始める。
「…ノーツ?」
タンッ!
響は迫り来るノーツを弾く。
「人が襲ってきた??」
そのノーツで弾いたのは背後から噛みつこうとした人間であった。
「いったいどういうこと?ここ人いたの?」
響は戸惑いながらも弾いた人をみる。
顔色が薄い紫色になっており、響がノーツで弾かれた場所がじわじわと人間の肌の色に戻ってきている。
「ケセパサの王様と同じ感じ。もしかして、ここのショッピングモールってたくさん人がいたの!?」
むくりむくりと人影が立ち上がる。
「あ…あ…」
その人影達は両腕をこちらに伸ばし響達を捕まえようとしている。
危険だと感じた響は急いでトランシーバーでみんなに呼びかける。
「のなか!モサちゃん!気をつけて!毒でやられた人達が襲ってき…」
『ゾンビだー!!!』
トランシーバーからのなかの叫び声が聞こえる。
『わわわわ!!!たくさんの人に追いかけられてるよ〜!!』
モサ子も走りながら声を上げる。
「みんなのところにもいるんだね!気をつけてこの人達私に噛みつこうとしてきた!」
『毒だ!毒の効果だ!この世界に来てたから何度か戦ってきていた紫の目の動物達と同じだ。こいつらは誰かしらに操られて俺たちを襲おうとしてる!』
「じゃあ、捕まったら終わりだね」
『こんなたくさん人いて一緒にレバーなんておろせないよ〜』
『モサ子頑張って待っていてくれ!響はどうだ?』
「私も周りを囲まれちゃった…」
響の道を防ぐように毒に操られた人達は響の前にたたずむ。響の後ろからもぞろぞろと毒の人達は集まってくる。
「任せて、レバーのとこに行くよ。襲ってくる人は全員フルコンで弾く」
毒の人達は響に襲いかかる。
『俺ももう少しでレバーの場所に着く!またタイミングをみて連絡するな!』
のなかからの通信が切れ、響は行く先の毒人達に集中する。
彼は響を掴もうとして、掴んだ先を噛もうとしてきている。
響は人相手のノーツの動きが久々であった。
「近距離…そして確実に弾く!」
タタタンッ!
頭を襲ってきた毒人の攻撃を両腕、頭の順にノーツを弾く。
「上から?」
他の毒人の体を這い上り上から毒人が響に襲いかかる。
タタタタタンッ!
頭、腕肩にノーツが見えて順に弾いていく。
「かまってあげてたいけど、私も急いでるから、その道力ずくで開けさせてもらうよ」
ーーーチリン
響の衣装がアイドルの衣装に変わった。
「オンステージモード!私のリズムで弾くよ!」
響の足の元に出現している譜面の円盤が青から赤に変わり中に浮いて毒人達に突撃していく。
ダダダダダダダダダダダダッ!!
毒人達は響のノーツに弾かれた中に飛ばされていく。
◇
のなかの目の前にも多くの毒人が立っている。
「あ…あ…」
「俺はまず場所を探すところからスタートなのにな」
毒人達はのなかに襲いかかる。
「今着ているMPSマーク19爽凛は空中戦専用…ここで人型と戦うには向いてない…」
のなかはスラスターがついたボードにのり距離を取る。
スラスターの威力に毒人達は吹き飛ばされる。
のなかは1階から2階にボードに乗って逃げた。
「スペアのスーツを解放するぜ」
ガシャン!
MPSの動体の扉が開きのなかがスーツを脱ぐ、
のなかの胸に鈴が描かれた鉄の板が見える。
ーーーピカッ!
鈴のパネルが光りそれと同時にスーツはコンパクトに折り畳まれ四角の箱の形になりスラスターに寄って宙で方向変換する。
「さあ、マルチで戦闘スタイルを変える。俺のスキルをお披露目だ!」
のなかがずっと背負っていた四角箱はスペアのMPSであった。足を入れリュックを背負うようにスーツを装着する。
ガシャン!
「MPSマーク43 換毛機ドローン攻撃で道を開く!」
のなかは黒と赤がメインのスーツに着替えた。
スーツからは小さな丸いドローンが飛び交う。
「製造の国を襲った怪物からインスパイアされたスーツだ!標的が多いと戦いやすい!」
毒人達は2階に這い上がってくる。
「いけ!マシュロイド!奴らの動きを止めるんだ!」
ドローン達は毒人達の周りにぐるぐると飛び交い、ピッタっと止まってビームを放つ。
「あ゛…あ゛…」
ビームは皮膚に火傷程の軽症を負わす程度ではあるが、確実に毒人達に聞いている。
「よし!今のうちだ!電圧機を探すぞ!」
のなかはドローン達を退却させつつ2階の従業員廊下を調べ始める。
「ここは違ったか。確かマップを見るとここの一階にはなく、可能性として2階と3階だったが、上の階みたいだな」
ガチャ
のなかはあたりの部屋を開けて確認する。
「ん、待てよこれは…モニターがたくさんある…」
のなかが入った部屋は監視カメラのモニターが設置されている部屋であった。
「電源さえすれば、手がかりが見つかるな!」
のなかは喜びながら、部屋を出る。
「おっと、あんまりうかうかしてられなかったな」
のなかが出た先に毒人達がたくさん集まっていた。
「ゾンビども!悪いが道を開けてもらうぞ!」
のなかは手を合わせて前にグッと伸ばす。
それに合わせてドローンがの中の腕の周りに円をかきながらぐるぐると回る。
「くらえ!マシュビーム!」
のなかはマシュ丸の破壊ビームに影響を受けたビームを放つ。強力なビームは毒人達を吹き飛ばす程の勢いであった。
ビーーーッ!!
「ゾンビども道を開けろ!!」
叫ぶのなかの後ろから毒人が首元にかぶりつく。
カキンッ!
「悪いが、俺のスーツはそんな噛みつきじゃ壊れないぜ!」
ドローンのいったいがのなかに飛びついた毒人にビームを放つ。
「あ…!」
毒人を振り解き、のなかはマシュビームで開けた道を歩み始める。
「あの中央のエスカレーター!あそこから3階にいける!」
のなかは止まったエスカレーターを駆け上がり
3階についた。
『のなか〜!まだ〜!!」
突然トランシーバーからモサ子の声が聞こえる。
「悪い、モサ子!大丈夫か?もう少し耐えてくれ!」
『わかった!けど、私、今気づいた!この人達毒持ってるから噛みつけないし私逃げるしかないみたい!』
『モサちゃん大丈夫?のなか私はレバーの場所についたよ』
「響か!了解した!モサ子、響!もう少し待ってくれ!すぐに連絡する!」
そう言ってのなかはマップに電圧機のマークがある場所に向かう。
「やっぱり映画館の中なのか!」
赤いマットが敷かれた廊下の先に電圧機が設置されていた。そしてその前に大柄の毒人が一人立ちはだかる。
「相手をしてる暇はないんだ」
のなかはドローンを飛ばしビームを放つ。
ビーーー!ビーーー!
「!?効いてない!?」
ビームは確かに当たってはいるが大柄の男は何事もないようにこちらに歩みを続ける。
「くそ!寄生した先の人間によって強さが違うってことかよ!」
大柄の毒人は大きく振りかぶってのなかの顔を殴りかかってくる。
ガキンッ!
のなかはその拳を両腕で受け止める。
「戦い方も他のやつとは違う!」
大柄の毒人は、さらに振りかぶり攻撃を仕掛けてくる。
「マシュロイド!いけ!」
攻撃が出るわずかの間にビーム攻撃を仕掛ける。
ビーーーー!!
毒人が煙で見えなくなる。
ブンッ!
その煙の中から大きな拳がのなかの目の前に飛んでくる。
どごーんっ!!
「ぐぁ!!」
のなかは吹き飛ばされた。
のなかをかばうようにドローン達はのなかの前に飛んでくる。
「くそ。ラスボスレベルの相手だな」
のなかは揺れる頭をゆっくり起こして状況を確認する。
「電圧機はすぐそこなのにな…そうだ!ドローンを使ってレバーをおろせないか!」
のなかは超えられない相手に策を考えた。
「目の前にはレバーがある。その事実は変わらない!二人も今同じように耐えているんだ!」
のなかは大柄の毒人にドローンを使ってビームを放ちながらトランシーバーで響とモサ子に連絡をする。
「すまない!二人とも!だいぶ待たせた!今レバーを見つけた!」
『のなか!待ってたよ!』
モサ子が元気よく答える。
「とても申し訳ないが、簡単にレバーを下せない状況なんだ。悪いが俺の合図でおろしてもらってもいいか?」
『わかったよ!のなか!』
『うん!私も大丈夫だよ!』
のなかは大柄の毒人に気づかれないようにレバー近くにドローンを飛ばす。
「3、2、1、よし!いまだ!!」
ガシャン!
のなかのレバーが落ちて一時的に建物内に電気が流れる
『ガシャン』
トランシーバー先でもレバーが落ちたのが音でわかった。
『レバー下ろしたよ!』
響が答える。
『うわーーー!』
モサ子の叫び声がトランシーバー越しに響く。
「どうした!?モサ子!?」
のなかはトランシーバーに叫ぶ。
『う…噛まれた…ごめんレバー下ろせなかった』
ガゴンッ
モサ子の声に応えるかのようにレバーが元の位置に戻る。
「…失敗したか」
のなかはその場で立ち尽くす。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
毒人はゾンビと同じイメージです。
次回もお楽しみください。




