第二十六鈴 地上の世界
大型ドラゴン バジル・バトスの討伐にて健二の兄の意識がドラゴンに吸収されていたことが分かった。
健二の兄はバジル・バトスの記憶から地上での毒の発生した場所を響達に教えるのであった。
天空の王国の住民ケセパサ達が乗る船がバジル・バトスが倒れている浮島に近づいてくる。
「皆さん大丈夫ですか?」
船の先頭の優徒がこちらに気付き手を振っている。
「優徒さん、助けに来てくださったんですね!」
響は優徒に礼を言う。
優徒達が乗る船は戦闘用ではなく救助船であった。
近くの浮島に止まり様子を確認しにケセパサ達も降り始める。
「仲間を虐殺した敵」
「仲間を殺したドラゴン」
ケセパサ達は睨みつけるようにバジル・バトスを睨みつける。
「みんな落ち着いてくれ、バジル・バトスは毒を発生させていない。逆に毒の発生源の手がかりがあるんだ」
健二はバジル・バトスの魂に関して伏せてケセパサ達を落ち着かせた。
「王様言っていた。こいつが毒の元凶だって」
「王様言っていた。こいつを倒せば毒も収まるって」
ケセパサ達の怒りは収まりはしなかった。
『なに、ドラゴンの行動を許してもらうには難しいな』
バジル・バトスは大きく翼を広げて雷を身体にためはじめた。
「みんな!危ない!!」
「気をつけろ!!」
雷をためるバジル・バトスから全員離れた。
バチバチと雷をためるバジル・バトスを前にDライダーズは黙って立っていた。
「健二さん?」
響は足を止めている健二達Dライダーズに声をかけた。
「兄貴は俺たちに地上への手がかりを教えようとしてるんだ。…響、申し訳ないがここから先地上への探索を響達にお願いしてもいいか?」
「てっきり一緒に向かうものかと…」
「地上に飛び交う毒は強力だ。救出に向かうにも万全な準備がいる」
「え、それって私達もやばいんじゃ…」
「わずかな希望だが、異能力者なら毒にも対抗できるのかもしれない。響達の戦いを見てそう思った」
「まぁ、そもそも俺はスーツを着ているしな」
自慢げにのなかは言う。
「私達が地上に捜索で降りるのは雲が晴れた天気の時だけ。今の天候で毒の中に向かうのはリスクが高い。ごめんね、響ちゃん。私達は行けない」
麻耶は申し訳く響に頭を下げる。
「みんなわかった。ここから先の地上には私達で向かうね。任せといて!毒の発生原因突き止めてくるから!」
響はみんなに宣言をする。
「ま、待って響さん。どうしてこの世界とは無関係な響さん達がそこまでするの?」
優徒は響に質問した。
「困ってる人がいたら助けてあげたいから」
響は真っ直ぐに答えた。
「かっこいいな響さん。…もし響さん達が僕の学校にいたら僕は救われていたんだろうな」
「学校?私も学校には馴染めなかったから、多分優徒さんと同じですよ。と言いますか現役高校生です!」
「えぇ!?そうだったんですか?ここの世界での活躍を見ていたら全然そう見えなくて。」
「でもこの世界ではじめに私達を助けてくれたのは優徒ですよ。お互い様です」
「そ、そうだったかもしれないですね」
バチバチッ!!
バジル・バトスは地上に雷撃の柱を放つ。
『自分の反省を行動で示す。この雷の柱の先が毒発生の場所だ。俺の意思が持つ間に向かうのだ』
バジル・バトスの体に囚われた龍一の意識は残りわずかな時間の中で地上への道を示してくれた。
「よし急いで、いくぞ響!」
「うん!」
響とのなかは声を掛け合って雷の先に向かおうとしていた。
「…僕が先導するよ」
みんなの中で静かに立っていたDライダーズの良が声を開いた。
「良!?」
健二達みんな驚きを隠せない。
「おま、喋れるのか。それよりも危険だぞ!」
良はずっと無口であったがここで話し始める。
「僕はドラゴンの目を使い自分のドラゴンとシンクロしている。バジル・バトスのように時期に僕の魂もドラゴンに吸われてしまう。」
「そんな、良…」
「僕の意思がまだある限り最後まで人間らしく行動したい」
良は真剣な顔で答える。
「わかった、良さん先導お願いします!」
響とのなかはモサ子の上に乗り、先導する良の後ろについていった。
地上への道は雷の柱が示してくれている。
「頼むぞ!良!響!のなか!モサ子!」
飛び立つ響達に健二は声をかける。
『健二、長い間、すまなかったな』
バジル・バトスの中の龍一が健二に謝罪をする。
「こっちこそ、もっと早く討伐して気づけてればよかったんだ。でも家族がいるってだけですごく安心する。残り少しの間かもしれないがそれまで一緒に居させてくれ」
健二はそう語った。
◇
重力が肌を引っ張るように響達を締め付ける。
「地上って結構遠いんだね!」
「俺はさっき地上近くまで落ちていたがな!」
「のなか!それ自慢にならなよ」
「ただの事実だ!」
響とのなかが話している間に紫色の雲は晴れ地上の景色が見えてくる。
そこには天空の王国とは似つかない現代風な街並みが見えてくる。
「高層ビル!普通の住宅街!すごい!私のいた世界に似てる!」
響は自分の住んでいた街に戻ってきた感覚になり喜んでいた。
「響の世界ってこんな感じなんだね!すっごい楽しそう!」
モサ子も一緒にはしゃぎ始める。
「お前達。よく見ろよ。人がどこにもいない。Dライダーズや優徒達、みんなが言っていたとおりだ」
「ほんとだ。みんなどこにもいないね」
人々が毒の攻撃にやられてから家の外に出なくなったこともあり、街は突然人がいなくなったような殺風景な景色であった。
バジル・バトスの雷の柱が消えた。
「…見えてきた。ドラゴンモール」
良は雷の指す先にあった大型商業施設を指差す。
広い道路沿いに沿った大きな建物が三つ三角形の位置で配置されていた。
その真ん中の公園には大きなドラゴンの頭のオブジェクトが置かれていた。
「これがバジル・バトスが言っていた。ドラゴンモール、毒発生の場所」
「近くに降りてみよ」
良と響達は広い道路の上に降り立つ。
「建物のなか、危険じゃないよね?」
響は少し不安になっていた。
ーーーチリン
響のスキルが発動する。
広い道路脇からものすごい勢いで大量のムクドリの群れが響達に襲いかかる。
「みんな私に隠れて!」
響には激しい曲が鳴り響くその曲に合わせノーツを丁寧に弾いていく。
タタタッツタタタッタタタ!!!
ムクドリは弾かれたノーツの衝撃でどんどん倒れていく。
「さすが!響!」
「おい見ろよ!こいつらの目紫色に光ってやがる」
地面に倒れるムクドリ達の目は怪しい紫色をしていた。
ガサガサ!!!
道路沿いの草むらから犬や猫動物たち群れが飛び出してくる。
響達を敵と見るような威嚇の眼差しであった。
「ここの世界に来てから、動物ばっかりだな。地上は動物に支配されたのか!」
「この目の光、様子がおかしいよね」
響も動物達の紫色の目に違和感を感じた。
「……ここは任せて」
向かってくる動物達の群れに良が前にでる。
「良。すまない。無茶はするなよ」
「良さんありがとう…気をつけてね!」
草むらから増え続ける動物達。
「みんな!私の背中に捕まって!」
モサ子はモササウルスの姿になり空間スキルを使って響とのなかを連れてその場を離れる。
「モサちゃんありがとう!」
「だとしてもとんでもねえところだ。生きて帰れる気がしねぇな」
響とのなかはモサ子の背中に捕まりドラゴンモールの入り口に向かった。
「…行ったか」
響達が飛び立ったのを確認して良はドラゴンにまたがり動物達に立ち向かった。
一匹、一匹確実に正確にドラゴンの斬撃が当たる。
しかしその数は無限に湧いてくる。
いつしか良の姿は動物たちの群れに覆われて見えなくなった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
天空の王国の後編スタートです。
天空が舞台だったので周りが開けた場所が多かったのですが、ここからは狭く息苦しい場所での冒険になります。
次回もお楽しみください。




