第十六鈴 モサ子の告白
モサ子とティラダさんのクライマックスバトルになります。
静まり返った夜の森の中、のなかは地面にうつ伏せで倒れ込んでいた。
ズシン、ズシン
のなかに向かって地面を震わす地響きが近づいてくる。
ぬお「自分不器用なんで」
トリケラトプスは呟きながらゆっくりと歩いてくる。
ズシン、ズシン
「はっ!!」
のなかは地響きを感じ取り目を覚ました。
MPSは多くの打撃を受けボロボロになっている。
「くっ!よくもやってくれたな」
のなかはゆっくりと立ち上がる。
トリケラトプスは動くのなかに驚きながら、戦闘体制になる。
ドシンッ!!
トリケラトプスは大きな踏み込みをした。
打撃を行える範囲の十分な距離、角度を確認しのなかに思いっきり踏み込んでくる。
ブシューー!!!
のなかの身につけたスーツから周りを囲むほどの煙が出る。
しかし煙の中の人影で居場所はわかった。
トリケラトプスの打撃はのなかにまっすぐ向かってくる。
「まだここでやられるわけにはいかない!」
のなかは地面に転がりトリケラトプスの一撃を間一髪で回避した。
ぬお?「なに?」
のなかは自身に身につけていたスーツを脱ぎ、バックパックに背負っていたスーツに身をまとう。
「装着完了。MPSマーク28光源敵を照らし尽くすぜ!」
のなかは白色のスーツを身に纏った。そのスーツにはたくさんのライトアップパネルが付いていた。
ぬお「派手なスーツだな」
トリケラトプスはあまり興味なく再び戦闘体制に入る。
「お前のその構えを崩すには視界を奪うしかない。この暗闇の中俺の光りに耐えられるかな!」
のなかの着ているMPSが光り始める。
夜の森の中薄暗い周囲を一瞬ではっきりと周りが見渡せるほどの光がMPSから放たれる。
ぬ、ぬお「ま、まぶしい」
トリケラトプスはあまりの明るさに目を閉じてしまう。
そして再び光が消える。チャンスと見てトリケラトプスは再びのなかに向かって駆け出した。
ぬお!?「いない!?」
しかし周りにはさっきまでいたのなかの姿は見えなかった。
ぬお「どこに行ったんだ!」
周りを探し始めるトリケラトプス。
その光景をのなかは空から眺めていた。
「すべてのMPSに実装した特大脚力、背中のスーツが無いとさらに高く飛べるんだな」
のなかはトリケラトプスの攻撃をジャンプして避けていた。
空中から島の周囲が見えた。
「な、なんだあれ!」
のなかの見た先にはこの恐竜の島を駆け巡る赤い閃光が見える。
「ありゃ、きっと響だな。俺も負けてられねぇ!」
のなかはトリケラトプスに向かって落ちていく。
「俺はここだ!」
ドシンッ!
のなかはトリケラトプスの角の上に威力を強め降り立つ。
角が地面にめり込んでしまう。
トリケラトプスは勢いに耐えきれず前のめりになる。
ぬお!「バランスが!」
「うおおおおおおおお!!!」
のなかは地面にめり込んだ角を軸にトリケラトプスを勢いよく持ち上げる。
MPSの最大出力でトリケラトプスを思いきっりなげ空中にひっくり返した。
バババンッ!!!!
とたん、空中でひっくり返ったトリケラトプスを赤い閃光が通過する。
響のノーツ化スキルが横切っていったのだ。
ぬはっ!!「ぐはっ!!!」
トリケラトプスは響の打撃にさらに飛ばされる。
「あいつ、いいところを奪いやがって」
トリケラトプスは背中からの防御は持っておらず、地面に落ちた衝撃で気を失ってしまった。
ぬお…「自分不器用なんで…」
のなかはひっくり返った状態のトリケラトプスを見て腰を下ろす。
◇
ティラダさんはモサ子にとどめを刺すべく自身の周りに空間を出現させてゆっくりとモサ子に近寄ってくる。
「ここで終わりだ。海の覇者。お前をくらい俺がこの世界の最強になる」
モサ子が埋もれ岩山に足を置いた瞬間、ティラダさんの足元から大きなモササウルスの口が出現する。
バグッ!!!
「なにぃぃ!!?」
ティラダさんは間一髪でモササウルス噛みつきを避けた。
岩山の隙間にモササウルスが消えていく。
消えていった穴からモサ子がひょっこりと顔を出す。
「ティラダさん!私まだ終わってないよ!」
鬼ごっこで遊んでいるようにモサ子は満面な笑みを浮かべる。
「おのれ!モササウルス!」
ティラダさんは怒り狂い周りの空間にティラノサウルスの頭の形をした腕を殴り入れる。
モサ子の周りにティラノサウルスの頭が出現する。
「うわわわわ!」
モサ子は自身の小さな背を生かし岩に身を隠しながらティラダさんの攻撃を避けていく。
ティラダさんのモササウルス用に用意いた岩山が小さなモサ子にとって絶好の逃げ道になっていた。
「くっ!!ちょこまかと逃げ回りやがって!」
ティラダさんは周りの岩が邪魔なことに気づき岩をどんどんと空間の穴に落としていく。
「どこだ!モササウルス!」
最後の一つを空間に落とし確認したがモサ子の姿は見えなかった。
ティラダさんが空間の穴に落とした岩は上空に吐き出しの空間を作り上空から地面に落下している。
そして地面にも空間を作り無限に落下し加速をさせていた。
「どこにいった!隠れても無駄だぞ!」
ティラダさんは辺りを見渡す。
しかし周りの地面や木々の中にモサ子の姿は現れなかった。
「ここだよ!」
モサ子は高速に加速する岩の上に乗っていた。
ティラダさんはとっさに空間の向きを変えようとしたが先にモサ子がモササウルスに変身する。
バグッ!!
ティラダさんに噛みつきをしたが、ティラダさんはそれをギリギリで避ける。
「驚かせやがって!」
モサ子は再び人間の姿に戻りトテトテと逃げ回る。
「ティラダさん聞いて!私ねティラダさんに私の思いを聞いて欲しいの!」
「この攻撃に耐えられたら聞いてやるよ!」
ティラダさんは空間で無限に落下する岩の速度をさらに上げる。
その落下する岩一つ一つに空間をつけた。
「落下する岩を避けてもその岩から出る俺の腕は避けられない!」
ティラダさんは空間をモサ子に向けて放つ。
そこから加速を超えた岩が無限に放たれる。
「わわわ!多すぎるよ!避けられない!」
モサ子は数と量に圧倒され、固まってしまった。
そこに赤い閃光が目の前に現れる。
ババババババババババババババババババババババンッ!!!!
赤い光は空間から放たれる大量の岩を弾き飛ばしていく。
「響!モッフモフの衣装かわいい!!」
モサ子は赤い光の中でフリルのスカートを履いた爽やかに踊り続ける響を見た。
「モサちゃん離れちゃってごめんね!」
「ふざけた能力者め!!」
ティラダさんは響の周りに飛びかう岩の空間から腕を出し響に噛みつこうとする。
「響!私も頑張る!」
モサ子は響の足を掴んだ。
「モサ子ちゃん!」
ーーーチリン
響の鈴が鳴る。
その鈴の音と共にモサ子の足元にも譜面の円盤が浮かび上がる。
「もしかしてこれ二人プレイ!?」
響のノーツ化スキルがモサ子にリンクした。
「これが響がみてる世界なの!この音楽ドキドキが止まらないよ!」
モサ子は『ホッピングジャンピングラブ』の歌詞の内容に感動していた。
一人の少女が大好きな相手に告白をしようとして周りのドタバタに巻き込まれながら人助けをしていつのまにか世界の平和を救っており最後に大好きな人に気づいてもらえる内容の歌詞に自身のティラダさんへの重ねて気持ちが高鳴っていた。
ババババババババババババババババババババババンッ!!
「モサちゃんいくよ!」
「うん響と一緒なら頑張れる!」
ティラダさんの攻撃はさらに攻撃を加速させる。
「くらえ!ふざけた能力者め!これで終わりだ!」
「あなたの攻撃フルコンで決めるよ!」
ティラダさんが放つ岩と岩の間からティラノサウルスの頭が何度も何度も噛みつこうとする。
しかし響とモサ子はその攻撃を弾き返していく。
バババババババババババババババババババッバババッバババババババババババババババババンッ!!!!
響とモサ子は譜面の円盤で踊り始める。
二人にとって普通のリズムのダンスだが、赤い光の外側ではその動きが高速に見える。
まるで時間がゆっくりに動いているかのように二人は笑顔で踊り続ける。
背の低いモサ子を乗せた円盤はモサ子をのせて響の周りをコミカルに周り始める。
響は二人プレイの楽しさに感動していた。
「誰かと一緒にノーツを弾くの夢だった」
「えへへへへへ!楽しいね響!」
二人はサビパートを弾ききった。
放つ岩がなくなり、その場で立ち止まるティラダさん。
「くっ!ここまでなのか…」
響を乗せた譜面の円盤はティラダさんに向かう。
「響!待って!」
「モサちゃん!?」
最後の一撃を与える時モサ子は響を呼び止める。
そのとたん森の中からティラノサウルスが出てくる。
グオオ!!「兄さんはやらせない!!」
響の赤いノーツは消え青いノーツがティラノサウルスの歯と重なり迫り来る。
タタタタタタタタタタタタ!!
曲調が変わるが、響はコンボをやめなかった。
ティラノサウルスの噛みつきは強力でノーツを弾き続ける響を咥えたままその場で力で押さえつけていた。
「弟よ。俺は全力を尽くして、この侵入者と海の覇者に負けたんだ。俺は弱い。もう戦わなくていい」
響と戦うティラノサウルスを見てティラダさんは言い放つ。
「そんなことない!」
モサ子はティラダさんのつぶやきをかき消すように言い放つ。
「ティラダさんは弱くない。私響がいなかったら勝てなかった!」
モサ子はティラダさんに駆け寄る。
「モササウルス…」
「ティラダさん、あなたの攻撃耐えたよ。だから話を聞いて」
ティラダさんは静かに頷く。
モサ子の表情は不安と焦りでいっぱいになっていた。
しかし一呼吸をして落ち着きながら話始める。
モサ子の頬はじんわりと赤くなっていた。
「あの日私が崖の上で初めてティラダさんを見た時からずっとあなたに憧れていたの。
あなたの瞳には私の持っていない力強い闘志があった。
毎日毎日崖の上で島の為に力強く咆哮をしていたその姿。
島のみんなに尽くそうと陰で努力をする姿。
私あなたにずっとあなたに憧れていたんだよ。
だからこの力を手に入れて陸に上がれて嬉しかった。
あなたと出会えて嬉しかった。
あなたと力比べができて本当に嬉しかったの」
モサ子は思いの全てを吐き出すように伝える。
「ティラダさん、あなたは強い。私あなたの強さに憧れてここまで来たの。だから…」
モサ子の表情はさらに赤く染まる。
「私、ティラダさんのことが大好きなの!私とこれからも一緒にいてください!」
モサ子は赤く染まった顔を頭を下げて隠す。
髪から見えるその表情にティラダさんの気持ちが変わり始めていた。
「お、俺なんかでいいのかよ。お前に負けたのに」
「ティラダさんは私に負けてない!それにこの気持ちはずっと変わらないよあたなの姿見てきたもの」
ティラダさんはモサ子が海の生物を食い尽くした時、島の危険を感じて日々努力をしていた。
今回の戦いで使った岩はティラダさんが修行の為崖に体当たりをして崩れた岩を高台に運んでいたものであった。今回スキルが付与された為異様なバトルになったが、ティラダさんはずっとモササウルスの脅威に備えていた。海の覇者。未知なるレベルの強さに。
目の前に映る人間の皮を被ったモササウルスはそんな自分を、自分の努力を認めてくれた。
ティラダさんがずっと求めていた最強の恐竜の座を今手にしたと感じた。
「わかった。俺はお前と一緒にいる。この先ずっと一緒だ」
ティラダさんはずっと頭を下げて待っているモサ子に答える。
モサ子の長い髪と髪の間から少しずつモサ子の表情が見え始める。
「えへへへへ…これからよろしくねティラダさん!」
モサ子は満面な笑みを浮かべた。
ーーーチリン
モサ子の首の鈴が鳴る。
モサ子の髪がだんだんと長くなり、そこからモササウルスが出現する。
「な、は?は?」
ティラダさんは状況が掴めず困惑する。
パクッ!
モサ子はティラダさんを食べて人間の姿に戻る。
「これでずっと一緒だね!ティラダさん!」
何が起きたか分かららず唖然と立ち止まる響とティラノサウルス。
「モサちゃん!?」
グオオ!!!「兄さん!!!」
恐竜達との戦いは幕を閉じた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
恐竜達に恋愛感情ってあるんでしょうか?試行錯誤で形作ってみました(困惑)
次回は恐竜の島最終回です!