第十四鈴 恐竜達のいるところ
恐竜達とのバトル第2戦目です。ずっと不憫なのなかがいます。
昼下がりの海、穏やかな波が浅瀬に打ち上がる。
雲ひとつ無い空、恐竜の鳴き声さえ聞こえなければ、とても優雅な時間であった。
響とのなかは海辺で走り回るモサ子を見ながら木陰に座っていた。
「ねぇのなか。私達帰れるかな」
不安そうに響はのなかに問う。
「わからない、あのモサ子の説得が上手くいくとも正直考えられないからな。でも俺たちにはもう頼れる相手なんてこの世界のどこを探したっていないんだ」
モサ子を眺めながらのなかはつぶやく。
「ティラダさんに俺たちの事情を説明して仲間になってもらおう」
のなかは立ち上がる。
「さ、そろそろ向かい始めるか」
のなかの呼びかけに答えるように三人はティラダさんのいる高台裏に向かうのであった。
大きな葉っぱをかき分けながら進んでいく。
響は至る所から視線を感じたが、ノーツの発動が起きない為敵意の無いことが分かった。
「この島の恐竜達、みんな私達を監視しているんだ」
「まじかよ。全然気づかなかった」
のなかは周りに警戒し始めた。
「大丈夫。このまま進もう…あれモサちゃん?」
モサ子は響の裾を握っていた。
「私ドキドキしてきた」
「モサちゃんきっと大丈夫。あなたの思いきっと伝わるよ」
ちょうど日が落ち始めて夕方になった。
三人は約束の高台裏についた。
そこには一人の長身で筋肉質な男性が立っている。ティラダさんだ。
「ティラダさん、約束通りきたよ!」
モサ子はティラダさんに呼びかける。
「来たか海の覇者、モササウルスそして侵入者ども」
ティラダさんの目がギロっと三人を睨みつめる。
「お前達をここに呼んだのは意味がある」
「話があるんだよね!実は私もあるの!」
ティラダさんの話にモサ子も割って入る。
「ティラダさんも私達の仲間にならないかな?ティラダさんの能力はすごくて、響とのなかに必要で、それで私もティラダさんと一緒にいたいなって思ってて…」
「はあぁ??俺がお前達の仲間になるだと?何をほざいてやがる。俺は今日ここで決着をつけにきたんだ」
ティラダさんは手を大きくあげる。
「俺がこの世界の王になる。海の覇者お前を喰らってな!」
高台上の崖からたくさんの岩の塊が転がってくる。
「まぁそうなるわな。どうする?響?」
「とどめは刺さないで相手を倒す。もちろん真向勝負でね!」
ーーーチリン
響の足元に譜面の円盤が浮かび上がる。
しかし響に早く近寄って見えるノーツは転がってくる岩ではなかった。
「森の中!くる!」
パキケファロサウルスの大群がものすごい勢いでかけてくる。
中には頭の頭蓋骨にひびが入っている個体もいる。
一度響と戦ったもの達であった。
グオグオ!「頭突きこそ最強!」
「同じテンポのノーツいくらでも弾いてあげるよ!」
響はバチを手に出しパキケファロサウルスを弾き始める。
バババババババババババババババン!!!!
響は一体一体力強く大きな巨体のパキケファロサウルスを弾き飛ばす。
バババババババババババババババババババババババババン!!!!
しかし数がものすごく多い。
響は弾き続けるが自身で弾く衝撃で後方に押し負ける。
「響!!」
「のなか岩がこっちにくるよ!」
のなかとモサ子に大きな岩が迫り来る。
「くそ!俺のスーツで耐えられるか!」
「くたばれ!海の覇者そして侵入者ども!」
ティラダさんは岩に押しつぶされる二人を見るため高台に移動していた。
あと数センチ岩がぶつかる瞬間モサ子の髪が伸びモササウルスに変身した。
モサ子の下から上に伸び上がる変身の勢いで岩は空高く打ち上げられる。
「助かった…ぐあああああああ!!!」
のなかはモササウスの変身に巻き込まれ一緒に宙を舞う。
「のなかごめん!」
地面に降り立ってモサ子は人間の姿に戻りのなかに謝罪をする。
野中は森の奥に落下していった。
空に舞い上がった岩はモサ子の周りにドスンドスンと地響きを上げながら落下する。
「食えないものであれば、丸呑みを行わず打撃を与えられると思ったが、やはりこんなでは倒せないかモササウルス!!」
ティラダさんは呟きながらモサ子に迫る。
◇
「うわわわわああああああ!!!!」
のなかは森の樹々にぶつかりながら落下していく。
「いっって!この世界にきて俺は何回落下してんだよ。かっこつかねぇな」
ゆっくりと立ち上がるのなか。
その前に一頭の恐竜が待ち構えていた。
ぬお「自分不器用なんで」
それはのなかがこの世界にきた時に出会したトリケラトプスであった。
「お前か…」
のなかは覚悟を決めて構える。
「あんときは、油断したが今回は違うからな!」
のなかは腰についた刀を取り出し構える。
「MPSマーク28剣神改再戦に挑む!」
のなかの刀がトリケラトプスの瞳に狙いを定める。
「奴は俺の動きを見て攻撃をしてくる。視界さえ奪えば俺にも勝機はあるはずだ」
のなかは目を疑った。間合いをしっかりと取っていたはずのトリケラトプスはもうすぐ近くにいた。
ぬおおおおお!!「こてえええええ!!」
トリケラトプスは片方の角でのなかの腕を叩く。
のなかは構えていた左腕が刀から離れた。
どしん!
力強い踏み込みだった。体制が崩れたのなかにもう一撃を繰り出す。
のおおおお!!!「めええええええええん!!!」
ガキン!
鈍い音が響く
トリケラトプスの面の一撃をのなかは防いでいたのだ。
「空きありだ!!!」
のなかは面の一撃を流しトリケラトプスの残心の勢いと合わせて刀をトリケラトプスに刻み込む。
ざざざざざっざ!!!
残心後こちらを振り向くトリケラトプスのまぶたに傷が入っていた。
皮膚が厚くトリケラトプスは平然としている。
「やっと一撃入れられたと思ったが、やっぱり厳しいか」
ぬお「自分不器用なんで」
トリケラトプスは再び攻撃徹する。
大きな一歩で一気に間合を攻めてくる。
ぬお!「めん!」
「ぐう!!!」
のなかは刀で防ぐ。
しかしその後の体当たりで後ろに突き飛ばされていく。
トリケラトプスは連続で打ち込んでくる。
ぬお!!ぬお!!「めん!!めん!!」
のなかは刀で防ぐことはできたが打撃後の突進で後ろに突き飛ばされる。
「ぐはっ!!」
のなかは背後の木にぶつかった。
ぬお!ぬお!ぬお!「めん!めん!めん!」
背後に下がれないのなかに対してトリケラトプスは容赦なく攻撃を繰り返した。
容赦なく相手に打撃を連続で打ち込む。その光景はまるで剣道の打ち込み稽古であった。
「く、くそ!全く攻撃できる体制にならない。これじゃ、ただのサンドバックじゃねぇか」
のなかはトリケラトプスの連続打撃攻撃にスーツが耐えられないのを察した。
ぬお!ぬお!ぬお!ぬおおおおお!「めん!めん!めん!めえええええん!」
トリケラトプスは残心を決めた。
ぬお「自分不器用なんで」
トリケラトプスの振り向く先にのなかは倒れていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
恐竜の島クライマックス入りました。連続して続くバトルをお楽しみください。