第十一鈴 丸呑みのスキル
モサ子初登場です!
ダイナミックなスキルをお楽しみください!
ドスンッと島のはずれの森の中に物音が響き渡る。
「のなかごめんね!」
のなかは響に空中で弾かれ地上に落下した。その後を響は譜面の円盤にのりながら降りていく。
「う・・・MPSがなかったら即死だったぜ」
のなかはよろよろと立ち上がり響に向かってガッツポーズをした。
「島の外れに来たみたい。木の隙間から海が見えるよ」
響が指差す方に青く光る海が見えた。
「この島から出られそうだな」
のなかは嬉しそうに歩き出した。
「異能力者は世界に一人はいるはずだ。きっとこの世界にも人間は存在しそいつの能力で恐竜達がいるに違いない。早くこの島から出て俺たち以外の人間を探しにいくぞ」
のなかの後ろを響がついていく。
樹々が開け大きな青色が一面に広がってくる。海の波は白く光り、その水の清らかさを光の輝きで感じられる。
「海だ!」
のなかと響は海の美しさに感動する。
ブオオオ!「なんであなたがここにいるんですの!」
感動しているのも束の間恐竜の叫び声が浜辺に響き渡る。
浜辺の波が届く距離にラキオサウルスがいた。
「まじか。ここにも恐竜がいるのか」
気まずい声のトーンに対して響は驚くものを発見した。
「のなか!!あれみて!人だよ!恐竜の足元に人がいる!」
「なんだと!?」
のなかはまじまじと恐竜の足元を見る。
そこには白い髪の少女の後ろ姿があった。髪が長く地面についている。
体に合わないサイズのブカブカの服を着てブラキオサウルスの周りをうろうろしていた。
ブオオオ!「いやですわ〜!!」
ブラキオサウルスは怖がっているような悲鳴をあげる。
「ねぇねぇ教えてぇ〜!ティラダさんどこにいるの?ねぇ教えてよ!
小さい髪の長い少女はブラキオサウルスに語りかけている見たいであった。
「あいつだ。きっとあいつがこの恐竜の世界を作った張本人だ」
のなかはブラキオサウルスと少女に向かって早歩きで歩き出した。
その後を響が追う。
「おい!お前!そこのお前だ!言葉は通じるか?」
のなかの質問に少女はこちらに気付き足をあげその延伸力でこっちに振り向く。
おぼつかない足取りに歩くのが慣れていないのがわかる。
その足に鈴が雫の形をした鈴があった。
「わぁ!今の私と同じ形をしている生物がいたんだね!」
少女はのなかと響を見て興味津々な笑みを浮かべる。
「生物?なんのことだ。その鈴を持っているってことはお前も異能力者だな。お前の能力はなんだ?お前がこの世界の恐竜を操っているのか?ここはいったいなんなんだ?」
のなかは少女に近づきながら質問をする。
質問攻めになった少女はたくさんの質問にポカーンと固まってしまった。
ブオオオ!「侵入者も来ましたわ。私もう終わりですわ〜」
ブラキオサウルスは怯えながら鳴いていた。
「えへへへ。私ねモサ子。食べるのが大好き」
ーーーチリン
満面な笑みを浮かべる少女。とたんに少女の足についている鈴が鳴る。
その瞬間少女の白い髪が一気に流れるように増え始め少女の姿が見えなくなる。
多くの髪の量が地表に流れていくのと同時に少女の髪の形がどんどんと恐竜の頭の形になっていく。
恐竜の口は少女の髪から飛び出す勢いで顔を出し伸び続ける髪は水しぶきのようにうねりをあげる。
バグッ!
近くにいたブラキオサウルスは少女の髪で形成された恐竜の口に胴体を噛まれる。
ブオオオ!!!「いやですわ〜〜〜〜!!!」
ブラキオサウルスはそのまま少女の変身した恐竜の大きな口に飲み込まれる。
「こいつはモササウルスだ」
少女の髪は全てモササウルに変身し上空に全身が飛び出す。
モササウルスの約18メートルの巨体が姿を見せる。
「でっかい!!」
のなかと響は目の前に起こったことに驚きを隠せない。
上空に飛び出したモササウルスは大きな巨体が地上に落ちるとともに髪の毛の形状に変わり、髪の毛の中から再び人型の体が出てきた。
「よろしくね!」
人型に戻ったモサ子はブラキオサウルスを食べれたことが満足だったのか響とのなかに満面な笑みを向ける。
「な、なんなんだこいつは!」
のなかは後退りをしながら叫んだ。
「えっとあなたはこの世界の人間なの?それとも恐竜?」
「私はね、みんなにモササウルスって言われてるよ!だからモササウルスのモサ子だよ!」
「モササウルスか。あの海洋最強の恐竜か」
のなかと響はモサ子の話を詳しく聞き始めた。
「のなか、私ね、製造の国で戦った大きな怪物の正体が鈴の影響で怪物化したポメラニアンだって話したっけ?もしかしたら、スキル保有者は人間に限らないんじゃないかな」
「なるほどな」
納得したのなかはふと思い出したように叫び始める。
「待て待て待て!そしたらこの世界は本当に恐竜だけの世界ってことになるぞ!!この島を出たところで俺たちを助けてくれる奴なんて誰もいないってことじゃねぇか!!」
のなかが叫んでいる間、響はモサ子の頭を撫でていた。
「でも、モサちゃんすごいねあんな恐竜一口で食べちゃうねんて」
「わーい!ありがとう!」
「お前達和んでる場合じゃねぇ!!」
のなかの叫びに二人はそっちのけで自己紹介を始める。
「私は能塚響。響って呼んでね」
「ひびき?ひびき!ひびき!」
モサ子は名前を頑張って練習し始めた。
「こっちの変なスーツを着てるのはのなかっていうの」
モサ子はのなかの方を向く。
「変なスーツ!変なスーツ!」
「お前!俺の名前はのなかだ!変なスーツじゃねえ!」
モサ子はしょんぼりしてしまった。
「もう!のなかモサちゃんいじめちゃダメだよ。多分食われるよ」
「うっ」
響の一言でのなかは凍りつく。
「私の響すき!のなか嫌い。」
モサ子は響に撫でられながらブツクサ呟く。
「わ、わりぃ!!もうあんな強い言い方しないから!」
「ところでモサちゃん。この世界で私たちが話せる相手はモサちゃんだけなんだ。モサちゃんの人間化した力とかなんか知ってることあったら教えて欲しいな」
響は優しくモサ子に聞く。
「えへへへへ、あのねあのね、私ね、ある日海で泳いでたらチリーンって音が聞こえていつのまにかガバーッて食べる力が身について、いつもだったらだべれないような子達もパクって食べれるようになって、海の友達みんなも食べちゃって、地上に上がりたいなって思ったらこの人型?の形に変身したんだよ。」
「全くわからないな」
モサ子の説明をのなかはバッサリと否定する。
「やっぱり私のなか嫌い」
モサ子はぷくーっと頬を膨らませのなかを睨む。
響は冷静にモサ子の説明を考えていた。
「モサちゃんの能力は相手を丸呑みする能力なのかもしれないね。変身は丸呑みするにあたり形状を変化させるいわゆるサブ能力なのかもしれない。空間スキルの魔女のスキル発動に約100人の魔法使いの力が必要なのと同じかも。スキル保有者はスキル以外にもそれ以外の特殊能力が備わっているのかもしれないね」
響は戦ってきた相手の能力や力、製造の国のさりす姫の説明を思い出しながら話た。
「なるほどな」
「えへへへへ!私すごいでしょ!!」
照れながらモサ子は頭をかく。
「つまり私たちスキル保有者も形状変更させて恐竜になれるってこと!?」
目を輝かせながら響は語った。
「なんだよそれ。どこの怪獣映画だよ。俺はやだぞ」
のなかは呆れた顔で答えた。
「ところでモサ子お前がこの島に来た理由はなんだ?」
のなかの質問にモサ子は少し照れながら話始めた。
「えっとね、私、実は会いたい相手がいるの。」
もじもじと体を動かしながらモサ子は言う。
「えっとえっとね。その相手はね。すっごくかっこよくて。大きくて、迫力がすごくて、」
ガサガサ!!
モサ子が話をしている間に森の茂みから多数の恐竜の足音が聞こえる。
「よう!よう!よう!侵入者ども!よくも俺様の島をド派手に荒らしてくれたじゃねぇか!!」
恐竜の群れの中から人間の声が聞こえた。
「変なもん食わせやがって、俺を楽しませてくれたのはいいけどな!!島のみんなに被害が及ぶようであれば容赦はしねぇ!」
ブラキオサウルス、ドロマエオサウルス、パキケファロサウルス、ティラノサウルスが森の中から出てくる。暗い影の中から出てきたティラノサウルスの頭には約180cmの大型の男がいた。上半身裸体に固い皮で出来た羽織を着ている。ツンツンとした髪の毛が荒々しく風になびきこちらを見つめる目はまるで獲物を捉えるかのような鋭い目つきをしていた。
「よくきけ!侵入者ども!この島一の最強の生物!生態ピラミッドの頂点!この島を取り締まる王座の者!お前達を倒すのはこの俺!ティラノサウスのティラダさんっぁ、この俺のことよ!!!」
ティラノサウルスの上に乗った男はそう叫んだ。
響とのなかは固まっていた。
「は?」
「ティラダさん!!!!」
固まる二人の間を元気よくモサ子が走っていく!!!
「その目その風格ティラダさんだ!!うぐっ!!」
モサ子は走った勢いで転んでしまう。
「なんだあの小さいやつは。あんなやついたか?まさか仲間が隠れていたとはな」
ティラダさんは不思議そうにみたが、すぐに部下達に指示を出した。
「ドロマエさん達よろしくな。おらおら!先手必勝ぶち込んでいっちまうぜ!!」
ギャウギャウ「あ゛??あんなちいさい生物一口でいっちまうべな?」
ギャウギャウ『あ゛あ゛!!!」
ドロマエオサウルス2頭は転んだモサ子に一心不乱に突撃していく。
グオオオ「さすが兄さんだ。判断が早い。」
ティラダさんを乗せたティラノサウルスがつぶやいた。
「うううう転んじゃった」
モサ子はゆっくりと立ち上がる。
「モサちゃん!」
「モサ子!!」
響とのなかが心配し声を出すがドロマエオサウルスの口はもうすでにモサ子の目の前にいた。
「えへへへ、私ねモサ子、食べるのが大好き」
ーーーチリン
モサ子の形状が変わった。長い髪が周りに広がりそしてそこに約18メートルのモササウルスが出現する。
ギャウギャウ「あ゛??突っ込んでいったのにこりゃ逆に食われちゃったんじゃね!?」
2頭のドロマエオサウルスはモササウルスの口の中に吸い込まれてくように消えていく。
パクッ!!
丸呑みしたモササウルスは上空に少し浮き地上に落下すると同時に髪の毛のが舞い、人間の形状に戻る。
食べれたことが満足で満面な笑みを浮かべるモサ子
「よろしくね、ティラダさん!」
恐竜達はその場に凍りついたのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
モサ子登場しました!これにて主人公三人組揃いました!初期から登場も考えていたのですがここでの登場となります。三人のドタバタ劇ついに始まりました。次回もお楽しみに!