第5話 試練!中間試験!
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高校に入って3か月が経った6月の頭、俺は頭を抱えていた。中間試験である。
「あと2週間か…参ったなぁ」
登校中に俺がそうこぼすと、
「どうかしたんですか?」
と隣からもう聞きなれた声が聞こえてくる。雅さんだ。
一緒に登校する友達がいないということで、連絡先を交換したよしみ(?)でここ最近は雅さんと途中まで一緒に登校している。
「いやぁ、その、中間試験が近くて、でもそんなに勉強してないので参ったなと」
「ああ、なるほど。うちもそろそろなんですよ」
雅さんは俺の言葉を拾ってくれて話題にしてくれるすごく優しい人だ。
背中まである長い黒髪を後ろでポニーテールにして、ただでさえ可愛いと評される紅樺女子学院のブレザーの制服を完璧に着こなしている。この容姿とセットで。
天は二物を与えずというが、実際に与えられた人を前にすると、説得力が無くなる。
「でもうちの試験は変わってて、男性の先生の教科は大体簡単に作られているんです。それで…」
クスクス笑いながら、話している雅さんに俺は見惚れてしまった。
「って、ごめんなさい。私ばっかり話して」
あわあわしている雅さんに、「いいですよ。いいもの見れましたし」と言うと、はい?と言って首をかしげてしまった。
・・・
そんなこんなで時は過ぎ、いよいよ中間試験の日がやってきた。試験は5日間続く。「俺」はできる限りのことはしたが後は運任せである。
「始め」
号令が出され試験1日目の最初の教科が始まった。
・・・
5日後試験がすべて終わり、午前中で帰ることになった「俺」は、学校の最寄り駅のホームにいた。
「帰ったら、ゲームするぞ~」
と、解放感に浸っていると、
「あ!」
後ろから声をかけられた。
「雅さん⁉」
「は、はい。奇遇ですね」
「そ、そうですね」
あまりに突然だったため、テンパってしまった。いや、雅さん相手では「俺」はいつもテンパっているな…。
「今、帰りですか?」
雅さんが聞いてきた。
「は、はい。試験終わったので」
「お疲れ様です」
雅さんから労いの言葉をもらえただけで満足だ。
「そっちも、今帰りですか?」
「はい。私も試験今日までで」
一瞬「私も労って!」みたいな視線が雅さんから向けれた気がしたが…気にしないでとりあえず労っておこう。
「お疲れ様です」
「いえいえ。ありがとうございます」
えへへと笑う雅さんはいつにも増してきれいに見えた。そんな時、
ピンポンパンポ~ン
アナウンスがなった。
「お客様にお詫び申し上げます。ただいま線路の故障により、運転見合わせとなっております。運転再開時間は未定です。お急ぎのところ大変申し訳ございません。繰り返します…」
電車が止まった。
こうなると俺はバスで帰らなくてはならない。しかし、通常の40分増しの時間がかかる。
「電車、止まっちゃいましたね」
雅さんが他人事のように言った。
「そうですね」
なんとなく「俺」もあわせて他人事のように言ってみた。内心かなり焦っているけど。
「あの、帰れますか?」
雅さんは本当にやさしい。自分よりも「俺」を気遣ってくれる。
「はい。バスで何とか…」
「え?バス出来たらすんごく遠いってこの前行ってましたよね⁉」
「いや、運行再開のめども立たないらしいし…」
その時またアナウンスがかかって
「運行再開は、1時間後の12時45分からです」
だそうだ。
「あの!」
雅さんに呼ばれた。
「はい?」
「あの、もしよかったらなんですけど、私の暇つぶしに付き合ってくれませんか?」
「と、言うと?」
そして、雅さんはとんでもない(「俺」にとってだけ)を言った。
「‘‘お茶‘‘しませんか?って言ってるんですが…?駄目ですか?」
「俺」K.O…。
続く
次回
僕が、私が、払います。