第27話 メリークリスマス ~ささやかなプレゼントと共に~
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俺―――早乙女 雄日は今、クリスマスを迎えようとしていた。去年のクリスマスは朝田さん(姉さんの彼氏)のご厚意で、彼らと一緒に過ごしたが、途中で気まずくなった俺はそそくさと帰ってしまった。
「全く、人がいることも考えろよな……」
「ん……なぁに~……? どうかした~?」
ただいま絶賛お寝ぼけ中の彼女は俺の彼女の雅 優華である。
現在時刻、日本標準時にして、23時59分、俺たちは同じベットの中にいた。残念なことに全く間違いは起きず、俺も彼女もまだ‘‘未経験‘‘である。(つまりは、‘‘やらしいこと‘‘は何もなかったってこと!)
「ごめん、起こしちゃった?」
「いいよ。それよりあと何分?」
「あ、一分切ってる!」
俺たちは、クリスマスカウントダウンをしていた。言い出したのは優華である。
優華はベットからむくっと起き上がると、眠気眼をこすっている。その姿が、愛くるしい猫にしか見えないのは俺だけではないはずだ。
「おはよ。あと、メリークリスマス♡」
「うん。メリークリスマス」
この後、「んじゃ寝るね」と言って、優華はさっさと寝てしまった。
と、思ったのだが
「……ん!」
どうして俺は、寝ぼけた彼女にキスされてるんだろう?しかもこれで5回目……。
「あのー優華さん?」
「なぁに?」
「ちょっと多すぎでは?」
「嫌なの……?」
そんな訳ねぇだろ!最高ですよ?極楽ですよ?しかし…………
「いや、そんなことはないんだけど、」
「だけど?」
「…………何でもないです。」
「よろしい」
暴走した優華を止める方法が思いつかないまま、俺はされるがままとなった。(唇が変になるかと思った……)
・・・
12月25日の朝、改めてクリスマスがやってきた。
「ほはよ~」
あくびをしながら優華は言った。
「うん、おはよ。今日は俺が作るから、リビングでゆっくりしてて」
「えー悪いよー」
「いいんだよ」
ぷくーっと膨れた優華の頭を撫でて、俺は台所に向かった。
・・・
作ると言っても、パンを焼いて、果物を切って、ヨーグルトを出すだけなんだがな。後は……まぁサラダ作るぐらいか。
俺は指針が定まるとすぐに作業を開始した。
数分後、
「おまたせー」
「うん。って、雄日は朝パン派なんだ」
あ、聞き忘れた!
「嫌だった?」
「全然!むしろ新鮮でいいなって」
「よかった……あ、イチゴジャムいる?」
「いる!」
ダイニングの机に並んで座った俺たちは、談笑しながら朝食を食べた。
「優華、ほっぺにジャムついてる」
「え?どこ……ってデジャブってるのは気のせい?」
「うん。今回はマジ」
「とって~」
「はいはい」
俺は、優華の頬のジャムをぺろっとなめ取った。
「もう!」
「ごめん。つい」
「ついじゃないわよ!」と優華が顔を真っ赤にしている。うむ。今日もかわいい。
・・・
「で、今日はどっか行くの?」
「あ、渡したいものがあってさ」
「?」
優華が小首をかしげる。
そんな優華を横目に俺は、さっき取って来た箱を取り出す。
「はい。メリークリスマス♪ 優華」
「これって……!」
俺が、かねてから用意していた、赤と白を基調としたブレスレット(12月上旬くらいに、頑張って買った)だ。ちなみにペアルックで俺も同じものの色違いを持っている。
「ありがとう!ほんっっとにありがとう!一生大事にする!」
「大げさな……」
俺がそう言うと、優華が、首を割と激しく横に振る。
「大げさじゃないもん!」
いやー、これじゃなくて、2年後に渡す予定の奴を大事に受け取って欲しいんだけど………まぁ先の話は良いか。
「それじゃあ私も……」
「あるの⁉」
どうやら、優華も何か用意してくれたらしい。「取って来る!」と言って、荷物の所へ行ってしまった。
「はい、これどうぞ。メリークリスマス♪なんちゃって」
えへへと笑って、差し出して来たのは、少し大きな縦長な箱だった。
「開けて良い?」
「もちろん!」
一応許可を取って開けると、そこには、マフラーが入っていた。
「ありがとう!」
「じゃあ、‘‘お礼‘‘してくれる?」
え?なんだろ?
「俺にできることなら……」
「………ぷっ!あはは!冗談だよ~だ♪」
コノヤロ……よし、仕返ししてやろう!
「なんだよもー……すきあり!」
「…………え?」
俺は不意打ちで、またキスをしてやった。後から、恥ずかしさやらなんやらが込み上げてきたが、今更後戻りなど出来るはずもなく、優華の体を抱き寄せた。
「や、やられた……」
終わった後、優華は残念そうに座り込んだ。
どうやら、俺をからかって、‘‘完封勝利‘‘をおさめたかったらしい。いや、完封勝利ってなんだよ!
・・・
結局、この日はどこも行かず家で二人でのんびりしていた。まるで夫婦みたいだとは言えなかった。それは2年後まで取っておこう。
こうして、今年のクリスマスは幕を閉じたのだった。
・・・
12月26日、優華を駅まで送って、俺は家にいた。
朝早くに、『階段上ったか? 俺は上ったぜ!』と中倉からライムが来たときは驚いた。仲睦まじいこって……って早いだろ!俺らまだ16だぞ!
とまぁ、そんな下らんことはさておき、俺には可及的速やかにかたずけなければならない案件があった。
「冬休みの宿題、終わってなかった……」
続く
次回
年越しまでには宿題を!