表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

次は愛の嫌がらせ


「あ、お手紙入ってる」


学園には生徒一人にひとつづつロッカーが与えられている。

私は持ち物を取られたりするから、基本はロッカーを使っていないのだけど、嫌がらせでゴミを入れられたりもするので、一応毎日中身の確認だけはしている。


放置すると臭っちゃうしね。


メリア嬢とマレリア嬢に絡まれるようになってから、ここのところロッカーに手紙が入るになった。差出人は不明。

アンとロベルタが顔を顰める。


「ローズ様、お手紙は私たちが一緒にいる時に開けてくださいね」

「うん、わかってるよアン」


封筒を開けて中身を確認する。


『本日の昼休み、校舎裏でお待ちしております。愛を込めて』


なんとも物騒な手紙である。

いや、普通の令嬢ならドキドキするのかもしれないけど、クリスという婚約者がいる私にとってはこんな手紙物騒でしかない。ちなみに差出人の名前は書かれていない。


これは彼女達が考えた新たな嫌がらせの方法らしい。


私が会いにいけば、令息が待っていて愛の言葉を吐かれる。それを適当な令嬢に目撃させて「クリス様がいながら他の男によそ見する女だ!」と罵る。


手紙を無視して会いに行かなければ、どこぞの令息に「ローズ嬢は約束を破ってこなかった!確かに愛を誓いあった仲なのに!」と言わせる。そして「クリス様という人がいながらなんとふしだらな人なんでしょう」と指を刺す。


なぜわかるのかというと、会いに行ったこともあるし、無視したこともあるからだ。


「今回も無視でいいよね?」


「はい、そうしてください。こちらは私たちで預かりますね。しかし、最近はローズ様を他の令息とくっつけるような動きになりましたね」

「クリスが不機嫌になっちゃうから嫌なんだけどねえ」


はあ、とアンとロベルタと三人でため息をつく。


二人は私のことをクリスに報告しているから大変だろうなあ。なんだか申し訳ない。

とりあえず、どこの誰だか知らないけれど、手紙を出した人は数日以内に学園からいなくなるだろうな。良くて休学、悪くて退学、最悪は貴族社会からいなくなる、くらいかなあ。


クリスに過激な報復を我慢させてはいるけれど、それでも、私に愛を説く令息だけは我慢できない。嫌がらせが目当てなら尚更。私が止めても聞かないだろうな、むしろ「なんで庇うの」とさらに怒るのが目にみえている。


手紙を出しているのはマレリア嬢に逆らえない、身分の低いまたは弱みを握られた令息あたりなんだろうけれど。


クリスを手に入れるため、または私を貶めるためだけに身分の低い学生たちの未来を潰さないで欲しいなあ、とは思いつつ私は私で別に学園を去った彼らを助けようともしないので、私も案外クリス以外には冷たいのかもしれない。


***


「クリス、今日もお疲れ様」

「ローズ、会いたかった」


放課後、いつものように公爵家の馬車に乗る。


一日好きにしていい日以外も、こうして私を家まで送ってくれる。馬車に乗るとすぐに膝の上に乗せられ、後ろから抱きしめられる。


「今日も手紙届いてたんでしょ」


耳が早すぎる。


「そうだね。でも会いに行ってないよ」

「当たり前だよ。はあ、ローズは俺のなのに、思ってもないくせに愛してるとか本当に腹がたつ。クソだな」


クリスはここ最近忙しそうでいつもより少し余裕がなさそう。そんな状況で私に変な愛の告白の手紙が届くものだから余計にイライラしているようだ。


「クリスはここ最近忙しそうだね、よしよし」


頭を撫でてやるとはあーと長い息を吐く。


「殿下からちょっと頼まれごとがあって。断ろうかと思ったんだけど父上も気にしててね。今ちょっと色々調査してるんだ」


殿下、と聞いて私はメリア嬢にいつもくっついている側近候補たちのことを思い出す。


私は王太子殿下とは挨拶程度の関わりしかないから、人となりをあまり知らない。


側近候補がメリア嬢にぞっこんだから、てっきり殿下もメリア嬢寄りなのかと思ったけれど、クリスが頼まれごとを引き受けるくらいだからそうじゃないようだ。


もしメリア嬢側だったら、たとえ王族といえど、クリスは断るだろうから。


「クリスは今日も忙しい?すぐ帰っちゃう?」

「いや、今日できる事は終わらせたから大丈夫だよ。どうしたの?デート行きたい?行く?」

「ううん、クリス大変みたいだから、うちでゆっくりお茶でもしない?膝枕してあげるよ」

「する!!!」


馬車の外にも聞こえそうなくらい大きな返事で笑ってしまう。まったくもう、こういう素直なところは可愛い。


「俺もローズに話しておきたいことがあって」

「なあに?」

「男爵邸に着いたら話すよ」

「わかった」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ