第3話 魔法使いの小娘
「やい!デーモン!魔王の座は、この私ナタネ様が頂くぞ!覚悟しろよ!」
そう生意気に僕に言い放つ小娘。
何だこのムカつく小娘は?
魔法を放ちそうな杖、大きな黒い帽子、黒い服…イメージ通りだ。
見た目はザ、魔法使いって感じ。
何より、背が小さい。
子供か?
あのムカつくチビ魔法使いはナタネという。
僕の魔王の座を奪いにチャレンジャーとして闘いに挑んできたのだ。
この闘いに僕が負ければ魔王としての地位はナタネに奪われてしまう。
魔王なんていう地位は別に譲ってもいいと思っていたが、こんな小娘には譲れない。
「どうした?怖気付いたか?」
そう言って胸を張り仁王立ちで僕に挑発してくるナタネ。
てっきり魔法使いっていうから、もっと強そうだと思ったのに、まさか、ただのチビな小娘がでてくるとはね。期待外れだ。
「さあ?戦う気があるの?それともビビっちゃたの?デーモン?」
いちいち癇に障る奴だな。
よし、僕の力を試してみよう。
「かかって来いよ、チビ魔女」
僕はナタネを煽った。
さっきまでの好き放題言ってくれたお返しだ。
「そうこなくっちゃね…ようやく戦う気に…って!チッ…チビですって?!」
チビ魔法使いは頬を膨らませた。
おお、怒らせちゃったかな?
「もーーーう!私を怒らせたわね…覚悟しなさい!」
チビ魔法使いは杖を構える。
戦闘体制か。
「デーモン様お気をつけて下さい」
ネインが心配そうに僕に言った。
「心配ない安心して見ていろ」
カッコつけて言ったが、1番心配しているのは僕だ。
「ああ…デーモン様!!今日も、カッコいい!!!素敵です!」
目を輝かしながらラヴァが僕に言った。
さっきも聞いたようなセリフだな…
「死なない程度に頑張ってね」
レーンが頭の後ろに手を組みながら言った。
やめろよそういうこと言うの!
フラグになってしまう。
「さあ、始めようか!」
僕はとりあえず、構えた。
「いいでしょう。消し炭になっても知らないわよ」
さて、どうしたものか…
僕、死ぬ前の世界でも格闘技とか経験ないんだけど……。
でも、バトル漫画とかは好きだったから、結構知識はあると思うんだけど……と、思った次の瞬間のことだった。
「詠唱、炎の燈よ力しめせ、火炎玉!」
チビ魔法使いの持っていた杖から火の玉が僕に飛んできた。
間一髪横に逃げたので当たりはしなかった。
うわ、あぶね!
当たっていたら、火傷とかしそうだな。
火の玉…いや、魔法か。
これが魔法…
本当にあるんだ…
正直、この目に見るまでは魔法なんてものは半信半疑だったが…本当に魔法が存在する世界のようだ。
「チッ、よくかわしたわね、でも安心するのは早いわよ!」
そう言うと、チビ魔法使いは炎の玉を僕に向かって連発してきた。
「火炎玉!火炎玉!火炎玉!火炎玉!……」
「うわっと」
僕は、火炎玉が当たらないように横に走って逃げ続けた。
馬鹿みたいに、連発しまくりやがって…
さて、どうするか…
まてよ…この世界は、魔法の世界だよな?
じゃあ、僕も魔法みたいなものが打てるでは?
物は試しようだ。
「ちょ、調子にのるなよ」
僕は、手に力を込めた。
正確にいうとただただ力んだ。
大体この手場合って、力めばなんかいい感じになるものだよな?
「ハァーーーー!」
すると、手に紫色の玉みたいなものができた。
何だこれ?
よくわからないが、何かができた。よしこれで、反撃だ!
「さあ、どうしたの?一度も反撃していないけれど?降参するなら早いうちにしなさいよ!」
あいからわらず、馬鹿みたいに、僕に向かって火炎玉を打ってくる。
僕は走りながら、その力んだらできた紫色の玉を、チビ魔法使いに向かって投げた。
「オッラァ!これでも、くらえ!」
紫色の玉はチビ魔法使いの上を大きく通り越しまった。
「あっ!」
クッソ、そういえば球技(特に投げる系)苦手だった!
「ふっ…どこに向かって投げてんのよ」
「クッソ!ミスった」
と、次の瞬間だった。
その大きく小娘を通り越した紫色の玉が、地面に着いた時。とてつもない爆発が起こった。
「うわ!」
「きゃっ!」
爆風がとてつもない。
目に砂が入ってしまった。痛てて…
「な…なんて、魔力なの……し、信じられない」
チビ魔法使いは、震えて僕の方を見ていた。
「久々に見たけど、やっぱりすごい魔力だね」
「当然でしょう、デーモン様は世界1のお力を持っているのよ?」
ラヴァとレーンはそう話した。
マジか…ちょっと力んで、できた玉が、こんなにも威力があるなんて。
さすが魔王…
「クッ、どうやら本気を出すしかないわね」
そう言ってチビ魔法使いは、空に3メートルぐらい浮いた。
そして杖を振る。
「魔法詠唱!滅び、そして朽ちろ。永遠の無を、そこに示せ!」
チビ魔法使いの上に円状に赤い光が見える。
おいおい…明らかにやばそうだが?
なんか、必殺技みたいなの打ってきそうな雰囲気ですけど?
「これが、私の究極魔法よ!受けてみなさい!まさか、避けるなんてないわよね?魔王さん?」
えっ?あ……ああ、避ける満々だったんだけど、そう言われたら、男しては避けることはできない…
避けるとは、逃げることだ。逃げるなんて、僕のプライドが許さない。
いいだろう、受けてたとう。
だけど、耐えられるか?
まあ、もし死んだっていいや。
もう、一度は死んでる身だ。今更死ぬことは怖くない。
「さあ!来い!」
僕は大の字に手を広げた。
「フッ…終わりよ!ジ・アルドラ!」
僕に赤いビームみたいなものが、飛んできた。
耐えて見せよう!
僕は小娘の魔法を受けた。
とてつもなく爆発が、起こった。
◇◆◇
「ハァ、ハァ…さすがにやったわよね?」
ナタネは息を切らしながら言った。
ナタネは魔力を最大限に放出した。
ナタネは究極魔法を使用した。
究極魔法とは、魔法攻撃の中の必殺技、奥義みたいなもの。
「あなた様!」
ネインが、デーモンに向かって行こうとした。
「待ちなさい!ネイン!」
ラヴァはネインに呼びかけた。
ネインは立ち止まってラヴァの方を振り返った。
「で…でも、あなた様が!」
ネインは一度止めた足を再度、デーモンへと進むのを再会しようとした。
「まーネイン、大丈夫だと思うよー」
レーンは冷静にそう言った。
「デーモン様はあの程度ではやられないわ、ほら、見てみなさい」
煙の中から、無傷のデーモンの姿が3人の目に映った。
「う?あれ?何も痛くないぞ…?」
デーモンは自身に痛みがないことに、驚いた。
「は?……う、嘘よね、最大火力の究極魔法を、直撃したのに……」
ナタネが、目を見開いてデーモンを見る。
ナタネは無傷のデーモンの姿が信じられなかった。
「さ、さすがです!あなた様!」
ネインはホッとした。
◇◆◇
あー驚いたな。
明らかにやばそうな魔法をくらったのに、無傷だなんて。
すごいや僕の体。いや、デーモンの体か。
「嘘よ、嘘!かわしたわね!だって、直撃したなら無傷なはずはないわよ!」
チビ魔法使いが、めちゃくちゃ驚いてる…
自身の1番の必殺技で、無傷だったら驚くのも当然か。
「嘘…じゃあない。君の魔法を受けたよ。でもご覧の通り、僕は無傷だ。」
僕は余裕をみせた。
「クッ……」
チビ魔法使いは、ガッカリと肩を落としていた。ショックなんだろう。
まあ、チビ魔法使いもこれで万策尽きただろう。
できれば、もうお終いにしたい。
チビ魔法使いも、1番の必殺技を無傷で受けられたなら、諦めざるおえないだろう。
これ以上の争いはしなくていい。
「で……?どうする?まだ、続ける?君がさっき言ってた言葉をそのまま使わせてもうらうよ。降参するなら、早いうちにね?」
ああ…なんだか、スカッとした気分。
さっきまでのチビ魔法使いのうざい言葉で、蓄積されたストレスが全て吹き飛んだようだ。
「クッ、う、ううう……わ、わかったわよ!…今回は手を引いてあげる!」
チビ魔法使いは無理矢理意地を張ったように言った。
まあ、戦わないならなんでもいいんだがな。
「あんた…なかなか強いわね。噂とは大違いよ…なんで、最弱の魔王って呼ばれているのかが、わからないわ…」
「さ、最弱の魔王?!」
なんて酷い異名だ…
最弱だって?
悲しくなるな…今は僕自身がそう言われている本人なのだから…
「そんな、酷い異名をつけた奴らは僕の実力を知らないだけだろ?」
「そうかもしれないわね…でも、何か結果を出さない限り、あなたはずっと言われるわよ?最弱の魔王って…」
何回も言うな!
なんか傷つく…
よし、決めたぞ…
「僕はいずれ最強の魔王になる…せいぜい今のうちに笑っておけ!」
僕は最強の魔王を目指す…絶対に今の僕の異名を変えてみせる。
「フッ…最強の魔王ね…この先の試練に抗えるといいわね」
「この先の試練?」
「……のちに知れるわよ…まあ、頑張りなさい…」
そう言って、チビ魔法使い小娘は箒に乗って飛んで行った。
なんか、最後は曖昧だったな…
それに、何か引っかかる。何か…違和感が…
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