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第12話 

エリア25。ここ一体を支配していた魔王ラコンが勇者によって倒された。今は人間の所持するエリアとなった。


 エリア25は人間の手によって開拓されていた。


 そこに魔王であるアゼンが500もの軍を引き連れやってきた。


 全ては、この場所で散ったラコンのため。


 「おいおい、何勝手に人様のエリアに、人間どもが、好きにやってるんだ?」


 アゼンは開拓作業をしている人間に叫んだ。

 

 「魔人だ!魔人が攻撃しに来た!逃げろ!

安全な場所に避難しろ!」


 人間はアゼンの軍の姿を見て焦り逃げ出すのだった。


 逃げ出す人間の向きと反対に進む2人の人間がいた。


 「皆んなは安全な場所に避難してね!」

 「やはり、計算どうり攻撃しにきたな」


 1人の人間は軽く2メートル越える身長とその大きい体が特徴的な大男。


 もう1人の人間は小柄な白衣姿の少し老いた男だった。


 アゼンはその2人を見て確信する。


「テメーらがラコンを攻撃したんだな?」

「ラコン……?ああここ一帯を支配していた魔人か?ラコンというのか……名前すら知らないうちに殺されてしまったよ…」


 白衣姿の男は、笑みを浮かべて言う。

 嘲笑っていた。


 「魔人君よ、私がいるからには好き勝手にさせないぞ!」


 大男は胸を張って言った。


 「フッ…フフ…やはり、魔人はやけに仲間思いだからな、待ち構えていたらいずれ来るとは思っていたよ…」


 「テメーは勇者か?」

 「いいや、私は勇者ではない!残念だったな!」


 サラマンは大きく胸を張って言った。


 「ァ?じゃあ勇者はどこにいる?」

 「勇者はもういなくなったさ…」


 「因みに言っておくと私も勇者ではない」


 白衣の男が指を上に差しながら言った。


 「じゃあテメーらを殺せば勇者が来るかもな?」

 「確率としてはありえるな…」


 白衣の男はパンと1発手を叩いた。

 それが、合図だった。


 その音と同時に、サラマン、白衣の男の後ろから兵隊の姿がぞろぞろと見えた。


 「チッ…準備万端だったわけか」

 「勿論だろう、お前のような馬鹿な魔人が来ると思っていたからな」


 「上等だ」


 アゼンは自身の拳をゴキゴキと音を立たせる。


 「お前ら人間共を殺しつくせ!」

 「兵よ、仕事だ……」


 アゼンと白衣の男は言った。


 一斉にアゼンの軍と人間側の兵隊はぶつかり合った。


 「魔人は君に任せるよ、よろしくサラマン君」

 「任せてください!」


 白衣の男は兵同士が争い合う方へ向かった。


 アゼンとサラマンは対面する。

 

 アゼンは風船が爆発したように魔力を解放する。


 「人間…二つ聞く…」


 「なんだい?」


 「ラコンは死に際に何か言い残していたか?」


 「さあ?そんなこと言う間もなかったんじゃないかな?」


 「そうか…じゃあ、ラコンを殺した勇者は誰だ?」


 「僕のことを倒せたら教えてあげよう!」


 「そうか…じゃあさっさと死んどけ!」



 ザインは一直線にサイモンへと飛び込んだ。


 


 ◇◆◇◇◆◇


 僕達はアゼンの元へ急いだ。


 移動方法はいろいろあったが僕達はエリア25の近くに魔道具と呼ばれるもので向かった。


 コロンが出してくれた大きな絨毯に僕達は乗って向かった。


 「そういえば勇者ってたくさんいるの?」


 僕はネインに聞いた。


 「勇者は各地に複数人存在しますね」

 「複数…1人ではないのか」

 「はい、1人1人が強力な力を持っています」

 「魔王よりも強い?」

 「相性によりますが、平均的に勇者の方が強いと思います」


 じゃあ早くアゼンの元に行かなければ。アゼンを過小評価してるわけではないが、勇者に、やられてしまうかもしれない。


 「アゼン無茶するなよ」


 僕はそう呟いた。




 ◇◆◇◇◆◇


 「さあ!全力でかかってこい!」


 低い体制で大きく手を広げてサラマンはアゼンに言った。


 「死ね!」


 勢いよく、アゼンの拳がサラマンの腹部に突撃した。


 ………が、勢いはサラマンの体の強さで止まってしまった。


 びくともしない…まるで、巨大な岩を殴っているような感触だった。


 「チッ!」


 アゼンは一旦距離をとるために後ろへと飛んだ。


 「なんて硬さだ……クソ……」


 どちらかというとアゼンの拳の方がサラマンの体の硬さによりダメージを受けた。


 サラマンの体は岩のように硬かった。

 魔力によりサラマンは自身の筋肉を強化し、硬化しているのだ。


 「今のが全力かい?」


 サラマンは自身の腹部を手で払いながら言った。まるで効いていない。


 「んなわけあるか!」


 再びアゼンはサラマンに突撃する。


 アゼンはまた腹部に拳を入れると次次に拳をサラマンに振るう。


 連撃だ。

 アゼンは一撃で効かないのであれば、連続ならばダメージを与えられると考えた。


 だが、サラマンは一向にびくともしない。平然とアゼンの拳を受けている。


 「オラオラオラオラオラ………!」


 「それだけかい?」


 サラマンはそう言ってアゼンの右拳を手で掴み連撃を強制的に止めた。


 アゼンはサラマンに掴まれた拳を引き離そうとするが掴む力が強力で離せなかった。


 「は、……離せ!クソが!」

 「君の全力はその程度なのかい?」


 サラマンはアゼンの右拳を掴みながら、顔を近づけて言う。


 「だったらこれでも喰らえよ!」


 アゼンはサラマンの顔にゼロ距離で左手の手のひらを向ける。


 「死ね!」


 アゼンは手のひらから魔力破をアゼンの顔へと放った。


 「流石にくたばったか?」


 が、煙が晴れてアゼンの目に映ったのは傷一つないサラマンだった。


 アゼンの右拳を掴む力も一瞬たりとも緩むことも無かった。


 「嘘だろ……」


 アゼンは驚きを隠せなかった。


 「ぜ……ゼロ距離の……俺の全力の、魔力破を…受けたのに無傷…」


 「ガッカリだよ、君の全力はこの程度だったんだね。よしわかった。もういいよ。終わりにしよう」


 サラマンはそう言った瞬間、アゼンの腹部に強力な拳を放つ。


 「グッ………カハ……」


 拳の威力によってアゼン大きく後ろへと吹っ飛ばされる。


 とてつもなく、強力な拳打だった。


 アゼンはそのまま横たわって腹部を手で押さえて悶絶した。


 「私はとてもガッカリした!失望したよ!」


 サラマンは叫び、嘆く。


 「私は君に期待したんだよ、少しでも私を楽しませてくれるかもってさ……でも、君はつまらない。そう!つまらないんだ!」


 サラマンは自身の強化された筋肉を試したかった。たが、自身が満足いくまで試せていない。そのことに、腹を立てているのだ。


 そして、自身の期待を裏切ったアゼンに怒りが芽生えた。


 サラマンはゆっくりとアゼンの元に歩み近づく。


 「私の期待を返してくれよ……いや、もういい。」


 アゼンはなんとか立ち上がる。

 立ち上がったはいいものの、それが精一杯だった。


 サラマンはアゼンの目の前に立つと、おもいっきり右拳をアゼンへの頬と放った。


 また、アゼンは後ろへと殴り飛ばされた。


 「いいか!パンチとは、拳とはこう殴るんだよ!」


 アゼンはもう意識が朦朧としていた。


 「君の拳は何も感じない!痛くもない!そんなのものは拳術でもなんでもないだよ!」


 サラマンは横たわるアゼンに近づき上から見下ろしながら言った。


 その声もアゼンには聞こえない。

 いや、聞き取れなかった。

 薄れゆく意識…気を失うことだけはしてはならないとアゼンは強く思っていた。


 サラマンはアゼンの胸ぐらを掴み宙へと立たせる。


 そして、アゼンの顔を何発も殴った。 


 アゼンの目に映るのは紛れない化物だった。


 アゼンは人間と戦うのがこれが、初めてというわけではない。だが、今までの人間とは明らかに別物。


 まさに、別格。

 アゼンには、サラマンが化け物と見えた。


 「まだ終わってなかったのかい?」


 サラマンの後ろから小柄な白衣姿の少し老いた男は言った。


 「シララギさんの方はもう終わったのですね」

 「ああ、運動にもならなかったよ」


 アゼンは意識が朦朧とする中、目を凝らして辺りを見る。


 そこに見えたのは無惨にも倒れている仲間達だった。


 アゼンが率いてきた軍は全滅したのだ。


 「お、……お前ら……ク…」


 アゼンはその事実を信じられなかった。

 あまりにも、あっけなく、やられてしまった仲間達。


 「さっさとそいつを殺してしまえよ、サラマン君……君は敵を遊ぶ癖があるからね注意しなきゃいけないよ……敵は容赦なく駆除するのがベストだ」


 シララギはサラマンに注意をした。

 油断は禁物と。


 「すみません。私の癖でしてね。弱い者イジメは気持ちがいいんですよ。でも、もう殺します」

 

 そう言ってアゼンを向こうへと雑に投げた。


 アゼンは、勢いのまま転がり倒れた。


 …がなんとか立ち上がる。しかしそれが精一杯だった。アゼンにはもう魔力も力も尽きてしまった。


 身体共にボロボロだった。


 たが、アゼンは諦めるわけにはいかなかった。ラコンや、仲間の死への怒りがアゼンを支えた。

 

 サラマンは魔力を右拳へと込める。とてつもない魔力が拳へと集中する。


 そして、サラマンはアゼンの方へと拳を放つ準備をした。


 「最後に何か言い残すことはあるかね?」


 シララギはアゼンへと言った。


 「て、……テメーらはなんで俺ら魔人を殺すんだよ……なんで普通に生きてただけで殺されなきゃならないんだよ!」


 アゼンは最後力を振り絞り叫んだ。

 アゼンからすれば、ただの疑問だった。


 アゼンが生まれた時から人間と、魔人の戦争は始まっていた。


 そして、ただ普通に暮らしていたが、人間により、家族を殺された。今回は友を、仲間をも。


 アゼンには、大切な人が殺される理由がわからなかったのだ。


 「フフッ」


 シララギはボソッと笑った。


 「これは失礼……あまりにも浅はかな質問だったのでついね」

 「な、……何がおかしいんだ!」

 「魔人は危険だとされているから駆除するに決まっているではないか?」

 「危険じゃない!俺らはただ普通に生きてただけだ人間には危害なんて加えてねーよ!」

 「まあ、君達は危害を加えてないかもしらんがな…他の魔人が、人間にとって危険なら君達と危険と、なるのだよ」

 「ふ、ふざけんな!俺らは関係ない!人間共に危害を加えるつもりはなかった!」

 「そんなことが信じられるはずないだろ。じゃあ君は例えば危険な猛獣がいるとしよう。その猛獣は危害を加えたことがある。その猛獣意外の猛獣が猛獣自身で私達は危害を加えませんとかほざいても信用ならんだろ?危険なものは徹底的に駆除する。それが1番安全に解決するとは思わないか?」

 「人間だって俺たちに…」

 「だが、先に人間を滅ぼそうとしたのは貴様ら魔人だろ?今から何百年も前に人間を滅ぼそうと攻撃してきたのは貴様ら魔人なんだよ。その時から人間と魔人はエリアが分かれた。昔からずっと、今までずっと争ってきた。そろそろこの争いに終止符を打たんとな。さあ、サラマン君もうやってしまいなさい」

 「わかりました」


 アゼンはそっと目を閉じる。

 

 (悔しいがあの化物を倒すことはできない)


 「ごめんな、ラコン、皆んな…」

 

 

 どうすることもできない。

 仲間の無念も晴らせないこと、自身の力のなさへの怒り。


 様々な感情がアゼンの中を駆け巡った。


 その瞬間サラマンの拳がアゼンへと激突した。


 ……と思われたが。


 「ふう、間に合った」

 

 サラマンの拳はアゼンの目の前に現れた元人間の魔人に受け止められた。



 

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