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Fantasia Destiny Online  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第四章 古の災いの竜へ反逆の祝福を
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反逆の旗印:赫の章 3

 防御性能は、自分自身を強化しまくるゴルドフレイよりも圧倒的に上。

 しかもそれが能力によってもたらされたものではなく、素の鱗の強度によってのものだ。

 もしこれにゴルドフレイと同じような能力があったらと思うと、あまりにもクソゲー過ぎて笑いが出てしまいそうだ。


 鬱陶しいと尻尾が振り払われたので下に落下するように回避し、数十メートルもある巨体からは想像もできない速度で追いかけてきたバーンロットに背を向けて、翼のスラスターを吹かせて高速移動する。

 無論バーンロットも同じように巨大な翼を力強く羽ばたかせ、ぐんぐん加速して接近してくる。


接続(L)───氷塊(I)、強化、拡大(E)細分化(F)、形成、(L)増殖(I)一斉射出(F)術式再起動(R)多重化(M)!」


 呪文を唱え魔術を発動させる。

 高速移動するアーネストの周りに氷が生成され、それが呪文を紡ぐたびに形を変えていき大きくなる。

 唱え終わる頃には大きな氷の槍となっており、いつでも射出できる準備はできた。


 どうにか姿勢を変えてバーンロットの方を向き、一度翼のスラスターを切って慣性に従って前に進みながら、自分の周りに待機させてある氷の槍を一斉に射出。

 すさまじい速度で放たれた氷の槍は真っすぐバーンロットに向かって行くが、硬い鱗の前に氷など、たとえ非常に分厚いものでも薄氷と変わらないのだろう。

 当たった端から砕けていき、HPバーを見る限り一応ダメージは入っていないわけではないが、せいぜい1とか3とかのカスダメだろう。

 小さく舌打ちをしてからスラスターを再度吹かせ、複雑な起動を描きながら飛翔して、連続で起動し続けている魔術を放ち続ける。


 術式の再起動の技術はトーチから教えてもらった技術だ。

 アーネストも魔術はかなり使える方だが、剣術とかそっちばかりに偏ってスペックを活かし切れていなかった。

 そんな時にヨミという、剣術や武術などの物理と魔術を併用してくる吸血鬼が現れて、それに敗れた。

 それ以降もっと自分のスペックを活かすためにと今までより魔術に力を入れて、自力で習得できないような魔術スキルはトップクラスの魔術師であるトーチを頼った。


 ノタリコン詠唱術スキルも習得して、初級の魔術であれば使用可能。

 今回使った術式再起動は、トーチの教えもあって中級全般と一部上級魔術に使用できる。

 術式再起動は名前の通り、魔術を連続起動させる技術だ。一回使ったら終わってしまうのが普通の魔術だが、この術式を組み込むことで一々呪文を唱えずとも、自分から解除するまでずっと魔術が起動し続ける。

 余程広範囲高威力だったり、ぶっ飛びスペックのものでない限りはリキャストタイムがないゲームだからこそ、存在できている特殊技能だ。

 その分習得はかなり難しいが。


 目くらましとか少し動きを鈍らせる程度になってくれればいい程度の期待しかしていなかったが、大して効果もなさそうなので魔術を解除する。

 HPバーを見れば、一本目がちょっぴり減っている程度だった。この調子だと、一本目を削り切るなんて不可能だ。


「まあこの硬さでHPバーが35本ある時点で頭おかしいとしか言えないんだけどな……!」


 アーネストたちグローリア・ブレイズが挑み続けているウォータイスですら30本だ。それも十分製作者や運営の正気を疑うレベルの多さだが、バーンロットはそれよりもさらに多いと来た。

 竜王最強でこれだけあるなら、全ての元凶である竜神とかだと40本50本ありそうで非常に楽しみだ。


『逃げ回ってばかりではないか! あの吸血鬼は逃げずに果敢に挑んで来たぞ!』

「……言ってくれるじゃないか!」


 偶然でしかないかもしれないが、アーネストに対してヨミを比較として出すのは非常に効果的だ。

 ヨミに負けているという事実がある以上、アーネストはどうしてもヨミに勝ちたい。

 タイマンで勝利したいのもそうだが、それ以外のことでもヨミに勝ちたい。

 なので、ヨミはバーンロットに勝っているがそれはあくまで人形のあれなので、ここで本気形態のバーンロットを追い返すことができたら、ヨミにもできなかった偉業を成し遂げたとして勝ち誇れる。


 まだ神翼族の固有スキルの第二段階まで行けないので、ストックしてあるバフ系魔術を一気に解放。

 左の手首に金色のブレスレットをはめ込んで、アクセサリースキルを発動。2分間という時間制限付きだが、ゴルドフレイと同じように金色のエネルギーを使って自分の攻撃全般を強化する。


『金色か! いいぞ、我を倒すために王の力を存分に使え!』

「言われなくてもぉ!」


 空中で急制動をかけてから一気にバーンロットに向かって加速。

 バーンロットもより一層翼を強く羽ばたかせてぐんと加速し、アーネストをやすやすと丸呑みできるほど大きな顎を開ける。

 こういう場合口の中に直接攻撃をぶち込めば大きなダメージを入れられるのを知っている。

 とにかくアーネストは、一つでもヨミに勝ちたいという気持ちが強いのでどんな手段を使ってでも勝つことを選ぶ。


「『ウェポンアウェイク』───『湖光の聖剣(アロンダイト)』!」


 こういう超大型モンスターに飲まれたら問答無用の即死なので、それを避けつつダメージを入れるとなると、攻撃は限られる。

 直接攻撃はすぐに除外して、固有戦技ぶっぱを選んで再び急制動をかけて勢いを殺してから固有戦技を開放。

 特大の白光の奔流を放ち、バーンロットは回避もせずにそれを真正面から受ける。

 狙い通りに口の中に直接ぶち込むことができたのだが、もとからかなり強力な竜特効攻撃で、ヨミから譲り受けたアンボルトやともに討伐したゴルドフレイの素材で強化しさらに倍率に補正がかかった固有戦技を弱点となる口の中に打ち込んだ。

 それなのにHPの減りは、先ほどよりも大きいがそれでもかなり鈍い。


「元のスペックで防いでやがるのか───」


 愚痴を一つ零そうとした瞬間、一気に『湖光の聖剣』が真っ赤な炎で押し返される。

 そして理解する。スペックゴリ押しで防いでいたのではなく、ダメージを最小限に抑えるためにバーンロットも攻撃を行って相殺していたことを。


 攻撃を中断して一気に最大速度まで加速させて下に落下するように回避。

 強力なGがかかって、そして回避しきれずに左腕が炎に飲まれて、熱と痛みに顔を歪ませる。


 直撃こそ免れたが、食らったのは腐敗の炎だ。

 焼け焦げた左腕からじわじわと赫の腐敗が広がっていくのを見て、ためらいなく腕を切り落とす。

 動きが一瞬だけどこで止まってしまう。そこにバーンロットが急接近し、反応が僅かに遅れたアーネストは突進を回避しきれずに受けてしまう。


 ぶつかった時の衝撃でHPが3割削れ、至近距離でバーンロットの体から溢れる腐敗の霧と炎の熱でスリップダメージを受けじわじわ減っていく。

 これは非常にまずいと舌打ちをして、『略式展開(フラッシュキャスト)』を使用して回避。

 急いでインベントリを開いて再生の結晶という、欠損を即座に修復するアイテムを使って失った腕を回復し、同時に取り出した浄化結晶で蓄積していた腐敗ゲージを打ち消す。


「腐敗に対する耐性を上げていないとはいえど、少し触れただけで結構たまったな。……こういう時、ヨミみたいな腐敗に強い吸血鬼なのが少し羨ましいな」


 アンデッドという種類そのものが腐敗に強いこの世界。

 吸血鬼は魔族という種族に分類しているが、さらに細かく分けると吸血鬼もアンデッドに含まれる。

 そのため腐敗に対する耐性が極端に高いので、こういう状況だとアーネストより自由に動き回れる。


 腕が再生し腐敗もなくなったので両手でしっかりとアロンダイトを握り、バーンロットが振り返ったところを狙って一気に加速。

 まずは目を潰してやると剣を突き出すが、顔を少しずらすことで突きを回避されて(きっさき)が目の下の鱗にぶつかって火花を散らす。

 ふいに硬いものにぶつかった感触が剣から腕に伝わり、僅かに体が硬直する。そしてその一瞬を逃さずにバーンロットが顔を大きく振って押し飛ばし、姿勢が崩れたところを狙ってブレスを吐いてくる。


 再び『略式展開(フラッシュキャスト)』を使うことでどうにか回避ができるが、転移系をこの技術で使うとMPをめちゃくちゃ食うし効率も悪いので、連発できない。

 あと使えてもせいぜい二回かそこいらだろうと冷や汗を流しつつ、楽しくなってきたと獰猛な笑みを浮かべる。


【プレイヤーネーム『アーネスト』が■■■を■■。■■率:3%】


 視界の端に何かが映り込んだ気がするが、そんなもの知るかとバーンロット以外の情報の一切を遮断し、戦いたいという本能に任せて接近する。

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― 新着の感想 ―
おや?今度はアーネストがナニカを獲得した?
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