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Fantasia Destiny Online  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第四章 古の災いの竜へ反逆の祝福を
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再戦 4

 焼き溶かされぐずぐずに腐敗し、足場の悪い中を疾走する。

 現時刻はそろそろ深夜十二時を回ろうとしている頃。よい子は既に寝ている時間だし、ヨミも本来ならとっくに寝ている時間だが、こうして活動していると吸血鬼であることも相まって本領を発揮する。

 FDOの中は、空が大分茜色に染まり一部が夜になりつつある。このまま空が黒く染まり、星と月が出て来てくれればこちらでも本領を発揮できるが、我がままなんて言っていられない。


 ぐんと加速するように強く踏み込み、首にできている傷目がけて大鎌を振るうが差し込まれた左腕で受け止められ、少しスライドした腕で刃を掴まれて固定される。

 動かせないと分かるや否や速攻で斬赫爪から手を離し、『レイヴンウェポン』で大鎌を作り上げつつそれに『ブラッディクラッドウェポン』を使って強化。

 バーンロットが掴んでいる斬赫爪を放り投げるのに合わせてもう一度接近し、懲りずに首を狙うも、大剣で弾かれてしまう。


「そこまでして我の首が欲しいか、吸血鬼」

「もちろん! いくら最強の竜王だといっても、所詮は生物! 心臓を潰せば、首を落とせば、お前は確実に死ぬ! まあ、お前は人形に過ぎないから本当に心臓があるのかも怪しいし、首を落としても死ぬかどうかも怪しいけどね!」


 体の発条を使って強く鋭く振るい、少しでもバーンロットより早く攻撃に出て出鼻をくじく。

 相手よりも攻撃の始動を早くすれば、どれだけ強い相手であろうとも防戦を強いられる。それは妖鎧武者と透治、カナタのおかげでよく知っている。

 バーンロットはヨミよりも筋力が上だし、正直どう攻撃を仕掛けても弾かれてばかりだが、弾かれていい。

 重要なのは、バーンロットに攻撃をさせないということだ。


 袈裟懸けに振り下ろせば左腕で弾かれて、右手一本で持つ大剣で胴体を薙ごうと構えられるが、動き出すほんの一瞬前に体を捻り回転を加えながら跳躍して上下逆さまになり頭の真下を大剣が通過していき、回転の勢いを乗せた薙ぎ払いを首に叩き込む。

 着地するとヨミの細い首を狙って左腕が伸ばされてくるが、同じ手を食らうものかと影に落ちてバーンロットの影から飛び出し、後方に血の破城槌を作りそれに鎖を巻きつけてから、振り上げた大鎌で背後から右の肩口に振り下ろす。

 甲高い音を立てて防がれ、振り向かれる前に大鎌戦技『アトラクトクレセント』で大鎌を引きつけながら斬り付けようとするが、当然のように斬り裂くことができずに引っかかって止まる。


 ほんの僅かの硬直が発生し全ての行動が一瞬だけ取れなくなるが、バーンロットが振り向きながらまた首を狙って左手を伸ばしてくるのを見越して、硬直が解除される瞬間に影の大鎌を手放し、破城槌に巻き付けていた鎖を巻き取り、指先が喉を掠めていくだけに止める。

 また首を絞められて苦しい思いをしていたかもしれないと、指が掠ったところに手を当ててゾッと震え、ブリッツグライフェンが接続されている斬赫爪を手元に呼び戻す。

 八割以上エネルギーは溜まっているが、やるなら満タンがいいだろうと全放出を控え、斬赫爪をしっかりと構える。


 バーンロットが大きく翼を広げて、力強く羽ばたかせながら突進してきた。

 そういえば、こいつが大剣戦技を使ってきたところを見たことがないなと思ったが、この強さで戦技まで使ったらそれこそ反則だろう。

 恐らく使ってこないものだとは思うが、警戒しておくに越したことはないだろうと頭の隅に置いておく。


 突進と共に繰り出された突きをギリギリで回避し、翼の付け根に向かって大鎌を振るうがそこも高い鱗で覆われており、その硬さじゃ物理的に動かないだろとツッコみを入れつつ、反撃の首狙いの薙ぎ払いを後ろに下がって回避。

 振り抜かれるのと同時にヨミから踏み込んで、大鎌を袈裟懸けに振るうが変わらず大鎌は鱗に阻まれてろくなダメージが入らない。

 あの時のようにダメージがほぼ通らない、なんてことはなく微々たるものではあるがじわじわと削れているので、そこで己の成長を実感できるがバーンロットが硬いことに変わりはない。


 振り抜いた大剣を戻すように振るおうとしてくるのを、勢いが乗り切る前に叩くことで地面に落とし、右肩の蹴りを入れて少しだけバランスを崩してから『ソウルディバイダー』を胴体にお見舞いする。

 防御40%無視という破格の効果によってぐっとHPを減らすが、二本目を削り切るのはまだまだ長い道のりだ。


 すぐに離れて反撃を食らわないようにして、ぐっと姿勢を低くするのを見て左腕を前に伸ばして血を大量消費し、『クリムソンドレイク』で血の龍を作り攻撃する。

 バーンロットが大剣を盾にしてそれを防ぎ、そのまま押し切ってしまおうとしたが、血の龍が左右に真っ二つにされて舌打ちする。

 一度『ブラッドイグナイト』を解除してから、失った分の血は『ブラッドクリエイト』でMPを消費して補充し、再度血を燃やして強化を入れる。

 通常ならゴリゴリMPが削れて行くが、MP特化にしてMP量も回復速度も段違いになっているため、無茶な使い方をしない限りMPが尽きることはない。


■■(イグドラゴ)───■■■(ブレズルイン)

「まぁたそれかぁ!?」


 全身を覆っている鱗アーマーのようなものの隙間から、強烈な炎が漏れ出てくる。

 またそれを使ってくるのかと叫びながら前に踏み出し、フルフェイスヘルムっぽい何かの口と思しき線から大きく開くのをしっかりと観察する。

 口が開くのを確認して炎が一瞬でもそこから見えた瞬間影に落ちることで、攻撃を誘発させつつ影に潜って回避する。

 相も変わらずとんでもない火力をしている。そしてなにが恐ろしいかと言えば、最初の時よりもさらに火力が上がっていることだ。


 ただでさえとんでもない火力をしているのに、これ以上(ひと)形態で超火力にしてどうするんだと愚痴を零しながら、地上に置きっぱなしにしている血の塊によってできている影から姿を見せる。

 また後ろから飛び出したら首を掴まれて、お腹を突き刺されてから内部から焼き腐らされるコンボを食らって即死するので、これと戦っている時はこうやって影を落とすためのものを残すのが正解だと、息を長く吐く。


「ちょこまかとよく逃げる。影があればどこでも潜れるのだな」

「そりゃ、こんなでも吸血鬼の真祖の血縁なんでね」

「影をなくすことなどできない。ゆえに貴様が影に逃げることを防ぐ手段はないが……貴様が影に逃げる前にその首を掴み、縊り殺せばいいだけの話」

「おー、怖い怖い。潜る時は慎重にタイミングを計らないとね」


 もしかしてこいつには、女の子の首を絞める趣味でもあるのかと思ったが、こちらの戦意を削ぐには痛みや苦しみなどが有効だ。

 回数制限こそあるが、復活できて疑似的に不死身な存在ではあるが、痛みや苦しさがないわけじゃない。それを使ってこちらの戦意を削ごうと企んでいるようだが、そう簡単に絞殺されるわけにはいかない。

 窒息する苦しさは、ノエルの胸に抱き寄せられて何度も経験しているからなおさらだ。


 また全身から炎を噴射したバーンロットが、その炎を大剣にまとわせてから炎が消える。

 よく見れば大剣の周りに陽炎のようなものが揺らめいており、これも前戦った時に見たなと冷や汗を流す。

 確かあの時は、大剣が地面に触れたらその前方十数メートルが消し飛んだ。

 今はあの時よりも力が増している状態なので、十数メートルなんかじゃ済まないだろう。

 触れるのなんてもってのほかだ。なにがなんでも意地で回避しまくるしかない。


 まずはあれがどれくらいの威力があるのかを知るために、振り下ろし攻撃を誘発させるために接近する。

 正確に狙う必要もないのか、かなり雑で適当に振るわれた大剣が薙ぎ払われ、姿勢を低くして回避するも剣身から感じる体を焼くような熱に顔をしかめ、HPがそれだけでいくらか削れる。


 直撃したら即死、ガードしても武器ごと消滅するかもしれず、回避してもスリップダメージ。

 離れたらトンデモ火力のブレスで森ごと破壊され、遠中近全ての距離対応されている。

 それでもヨミは笑みを絶やさず、大剣を避けながら果敢に攻撃を入れ続ける。


 回避行動も防御も取らずにヨミの攻撃を体に受け、ダメージを受けながら大剣を振り上げる。

 思い切り跳躍して回避すると、振り下ろされた大剣が地面にほんの少し刃を触れさせた瞬間、前方百メートル近くが消し飛ぶ。

 規模が大幅に増している、だけでなく消し飛んだ部分がしっかりとぐずぐずに腐敗しており、仮にあれを食らって即死を免れてもその後に強力な腐敗を食らって、どの道死ぬだろう。


 能力が二つもあることがここまでめんどくさいことなのかと呆れ、本当の意味での本体との戦いがどんなものになるのかが楽しみになる。

 きっと地獄のような激戦になるのだろうなと思いを馳せて、影の鎖を伸ばして消し飛んでいない無事な場所に向かって巻き取り移動する。

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