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Fantasia Destiny Online  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第四章 古の災いの竜へ反逆の祝福を
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番外編 今年も一年ありがとう

 クリスマスイベントを楽しみ、そこから忙しくなりあっという間に迎えた年末。

 年末年始は配信をお休みすると前もって伝えてあるので、FDOにはログインせずに年越しそばを食べてから自宅のリビングでのえると一緒にくつろぎながら、放送されているテレビをぼんやりと眺める。


「なんか、あっという間に一年が過ぎ去っていったねー」

「本当だよ。勉強しまくって苦労して受験に受かって入学できたと思ったら、いきなり女の子になって。一週間かけてやっと立ち直ったらのえるにFDOで配信者やってみればって唆されて始めて見たらとんでもないことになって」

「むっ。唆すなんて心外。なんだかんだで詩乃ちゃん配信者適性高くて、普通に楽しんでたじゃん」

「そこは否定しない」

「それに、とんでもないことって要は変態さんがたくさん集まって来ちゃったことでしょ? それはどう考えても、ヨミちゃんがあんなこと(メスガキムーブ)をしたのが悪いんじゃない」

「うぐっ……」


 今ではすっかり詩乃の黒歴史でもある、アマデウス戦でのメスガキムーブ。

 もとより男の頃から相手を煽り散らかして怒らせ、動きを悪くして仕留めるということは何度かやっており、貧弱な煽りボキャブラリーを駆使してどうにか煽っていた。

 女の子になってから、小柄で中学生とかにしか見えないくらい幼い見た目になったことで、これで煽ったら絶対にウザいだろうなと思ってやってみた結果がこれだ。

 自分の容姿と声でメスガキなんてやったらどうなることか、想像に難くないだろうに好奇心でやってしまった。

 その結果、メスガキ好きな変態紳士が集まってきて、コメント欄にも日々メスガキを求める紳士から懇願されるようになった。


 のえるから、メスガキをしたらお仕置きをすると言われ、実際にゴスロリファッションショーが詩乃の部屋かのえるの部屋で開催されたり、見た目が色白で清楚なこともあって、お嬢様コーデさせられたうえでお出かけに連れ出されたりされている。

 自分でももうやってはいけないものだと分かっているのだが、PK相手だとどうしても抑えきれずに出てきてしまうことがあり、最近ではのえるもちょっと諦め気味なのかお仕置きは数回に一回の頻度になっている。


「全くもう。まあでも、グランドクエストに参加してクリアしているガチ勢としても知られたから、可愛いヨミちゃんを愛でる人、ぽんこつをかましちゃうヨミちゃんが見たい人、魔王って呼ばれる所以のすごいプレイヤースキルのヨミちゃんが見たい人ってそれぞれの視聴者層に分かれているから、それはいい結果かもね」

「そうかなぁ……。あと、のえるがボクと一緒にいるのが見たいっていうリスナーもいるよ」

「みんな言葉にはしてないけど、大体何が目的なのかは分かってるけどねー」


 のえるは同年代の中でも、圧倒的に発育がいい。恐らく学年ではトップ、学校全体で見ても最上位クラスに大きい。

 それでいて美容にも気を使い、肌は乳白色ですべすべしており、髪の毛もさらさらで雰囲気も温厚で優しく性格もその雰囲気と同じで優しい。

 勉強も詩乃が普段から見ていることもあってかなりできるし、料理も得意。それで美人さんとなれば、もてない理由なんてない。


 最近は告白されることはなくなったが、詩乃が告白を全部断り続けて高嶺の花や学校のアイドル的な立ち位置になってから、じゃあいつも一緒にいる優しそうなのえるはどうだとこぞって男子がのえるに集中した。

 のえるも異性から好意を持たれることは嬉しいことではあるが、付き合うつもりはないときっちりと断っている。

 詩乃も同じような文言で断っているが、詩乃はできるだけ相手を傷つけないように優しくお断りするが、のえるは繰り返し告白されることを防ぐために思春期男子のガラスハートを粉砕している。


 配信中も、大人しそうな見た目とは裏腹に溌溂として元気な女の子という印象をリスナーに与えており、結構な数のガチ恋勢が生まれて他リスナーに迷惑をかけそうなことがあったが、一刀両断することで厄介なことになる前に防いでいた。

 ちなみに、初期はちゃんと鎧だったが最近は騎士服になって鎧を着なくなったこともあり、激しく動くとそれはもう見事に跳ねている。それを目的で見に来ているリスナーもそこそこいる。


「ほんと、色々あったねー。ヨミちゃん吸血鬼さんになっちゃうし、血を吸う時すっごく甘えんぼさんになって、でもちょっと……ううん、かなりSっぽくなっていじめてくるし」

「あ、あれは……のえるの反応が可愛いから……」

「最近は噛み付く前の行為がもっとえっちな感じになってきたもんね」

「うぅ……」


 毎回自制しているのだが、最終的に息を乱したのえるの姿に本能が理性に負けてしまい、ついついいじめてしまう。

 調子に乗りすぎて首筋にキスマークを付けてしまい、そのまま学校に行った時にとてつもない騒ぎになったこともあったが、ノエルが虫刺されだと言ってどうにかして誤魔化してくれた。本当に誤魔化せたかどうかは別として。


「来年も、またみんなでたくさん楽しく遊べるよね」

「そうだね。でも再来年は受験生だから、頻度は落ちちゃいそうだね」

「リスナーさんたちみんな寂しがるだろうね」

「SNSとかで発狂する人とか出てきそう」

「詩乃ちゃんの声には、人を狂わせる周波数があるんじゃないかって噂されてたね」

「マジで最近そうなんじゃないかって思えるくらい、リスナーに狂ってる人いるから冗談に聞こえなくなってきたよ」

「専スレの人たちとかすごいって、空がお腹抱えて大笑いしてたよ」

「あの鬼畜ガンナーめ。あいつ女性人気すごいから、あいつのファンを一か所に集めてその中に放り込んでやろうか」

「お腹が空いてるライオンの群れに新鮮なお肉放り込むような真似はご遠慮ください」


 くすくすと笑い合い、詩乃がのえるの肩に頭を寄せて、体を預ける。


「初詣は行く?」

「行くっていうか、強制連行イベントだろそれ。どうせのえるかお母さん辺りが、振袖を用意してるだろうし」

「今年は私とおばさまで用意しました」

「ほらやっぱり。……ま、せっかく女の子になって目いっぱい可愛い格好できるんだし、振袖は着ないと損だよね」

「そう来なくっちゃ」

「もちろんのえるも着るんだよね?」

「もちろん。私もちゃんと自分の分の振袖を用意してあるよ。明日までのお楽しみに」

「うん、楽しみにしてる。……のえるはボクがどんな振袖を着るのか知っているのが、ちょっと悔しいけど」


 どうせなら詩乃ものえるが着る振袖を選んでやりたかったが、当日になるまでのお楽しみだと思えば、不思議と明日が待ち遠しくなってくる。


「明日からお正月かー。元旦は初詣に行ったり、みんなで集まっておせち食べたり色々するだろうから、FDOにログインしている余裕はないかもね」

「たまにはそういうのもいいよね。元旦くらいはリアルで一日過ごさせろってリスナーにも言ってあるし」

「ちゃんとリプライ欄にも、元旦は家族と一緒に過ごしてくれって書いてあったね」

「時々、元旦も配信しろって言ってる過激派もいたけどね」

「もし元旦にまで配信したら、私が怒るからね」

「分かってる、絶対にしないよ。でも写真くらいは上げようか。龍博さんのおかげで、FDOのアバターを現実のボクらの体にあてがって、リアルでもFDOのアバターの姿でいられるようになったからさ」


 恐らく美琴が言ったのか、あるいは他の配信活動をしている配信者にお願いされたのか、クリスマスが終わった後にナーヴコネクトデバイスに新機能が追加された。

 それはFDOに限定されていたが、その中のアバターをARで自分にまとわせることで、リアルでもFDOのアバターの姿になることができるという機能だ。

 この機能が追加されたおかげで、リアルでの配信も可能となった……のだが、実装されて自室で試した時以外で一度も使っていない。


 もちろん便利な機能だ。アバターの姿はリアルモジュールでそのままではあるが、リアルモジュールであることは明かしていないのでアバターをARでまとうことで、顔バレを防ぐことができる。

 流石に化粧品配信なんてやったらそのままなのがバレるので、ファッション配信や料理配信などに限定されるだろうが、配信の幅を広げることができるのはありがたい。

 せっかくこの機能が追加されたのだし、それを使って振り袖姿のままアバターをリアルに転写して、集合写真を撮ってSNSに公開するのもありかもしれない。


「いいねー。絶対美琴さん辺りにコメント集中しそうだけど」

「ボクはのえるとイギリス組に行くと思ってる」

「それなら詩乃ちゃんもかもね。銀髪でぱっと見外国人だし、めちゃくちゃ似合う振袖用意したから」

「それは写真撮って上げてからのお楽しみだね。……あ」


 少し前からごーん、ごーん、という鐘の音が鳴り始めており、テレビも年越しまであと数秒だとカウントしていた。

 十、九、八、と今年が終わり来年が近付くにつれて、のえるの手を握る手に少し力が入る。

 いつものことなのに今年はいつもと少し違う。のえると一緒に年を越せることが嬉しくてついつい力が少し入り、のえるにくすりと笑われる。

 そして、ゼロ。


「あけましておめでとう」

「おめでとう、詩乃ちゃん。今年もよろしく」

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