番外編 プレゼント
【ついに始まる】みんなでいちゃ付くバカップルを爆破していこうぜ【爆発イベント】
1 無名のクリボッチ
クリスマスなのに一緒に過ごす恋人のいない我らクリボッチによる、クリスマスだからと人気のないところでいちゃ付くバカップルを爆破して回る実況スレです。
節度と礼節のある発言をしつつ、日頃の恨みを込めて条件にかかったバカップルを爆破していきましょう
2 無名のクリボッチ
>>1 スレ立てサンクス
3 無名のクリボッチ
去年もそうだったが、今年も中々に酷いスレタイだな
4 無名のクリボッチ
公式がバカップルを爆発させるために、ブラックサンタ陣営に無限爆弾を持たせるのが悪い
5 無名のクリボッチ
そもそもブラックサンタって悪い子供を誘拐するっていう都市伝説じゃ……
6 無名のクリボッチ
ワイらからすれば、恋人がいないのにいちゃ付くカップルは悪い子供だ
7 無名のクリボッチ
妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい
8 無名のクリボッチ
高校生ワイ、好きな子ができて思い切って告ろうと思ったら既にサッカー部キャプテンと付き合ってて絶望。二人ともFDOやっててイベントにも参加しているので、リア充爆殺イベントに参加
9 無名のクリボッチ
>>8 おぉう……
10 無名のクリボッチ
それは辛いぜ……
11 無名のクリボッチ
ワイは通ってる進学校に超可愛い小柄な女の子がいて一目ぼれしたけど、ガチ百合っ子で告白できない模様
12 無名のクリボッチ
>>11 よくぞ踏みとどまった。百合に挟まりたいと考えていたり、百合を引き剥がそうと考えていたら貴様も処刑対象だ
13 無名のクリボッチ
>>11 その百合の話、kwsk
14 無名のクリボッチ
小柄な美少女が百合って……最高じゃねぇか……
15 無名のクリボッチ
気になってリア充しか爆発させられねぇ
16 無名のクリボッチ
なおヨミちゃんは昨日のイヴの時点でノエルお姉ちゃんとイベント参加している模様
17 無名のクリボッチ
シエルきゅんもヘカテーちゃんに連れ回されてるのを見かけたな
18 無名のクリボッチ
ノエヨミの二人は見てて癒されるし、もはや公認の百合バカップルだから。付き合ってるかどうかは知らんが
19 無名のクリボッチ
噴水の前で楽しそうにツーショしてるところに出くわしたけど、マージで可愛かった。あと尊かった。二人から許可貰って二人が並んでるところを撮影させてもらった
20 無名のクリボッチ
シエルきゅん……なんで小学生のガチロリに好かれてんだよ……
21 無名のクリボッチ
まああいつ身長クソ高いしプロゲーマーでクソ強いし、ゲーム内もリアルもクソイケメンだから。あれ、死ねばいいのにって思ってきちゃった
22 無名のクリボッチ
>>19 言い値で買う。いくらほしい
23 無名のクリボッチ
>>19 わしにも一枚、いや百枚くれ
24 無名のクリボッチ
一千万、いや全財産出す。だからそれを売ってくれ!
25 無名のクリボッチ
グランドクエストに参加できたワイ、入手したグランド素材を融通するから売ってくれ
26 無名のクリボッチ
いくらだ。いくらほしい。例え百億でも買うぞ
27 無名のクリボッチ
残念ながら、二人を撮影するに当たって販売するのも掲示板にアップするのもなしッて条件を付けての撮影だったから、売ることはできん。つまり、このワイだけが独占しているということだ! せいぜい悔しがれ愚民どもぉ!
28 無名のクリボッチ
ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
29 無名のクリボッチ
そんなのって……そんなのってねぇよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
30 無名のクリボッチ
いやだああああああああああああああああ!? 欲しい……欲しいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
31 無名のクリボッチ
頼む……頼むぅ……! 後生だから、絶対にどこにも流出させないから、売ってくれよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
32 無名のクリボッチ
誰一人として、配信アーカイブを見返せば疑似ツーショ写真が撮れることに気付いていないのである
♢
十二月二十五日、クリスマス当日。本来の意味からかけ離れ、家族と過ごす時間から恋人と過ごす時間となった聖夜。
また一年を通してこの日は最も恋人同士が愛し合う時間となるため、聖の六時間なるものが存在しているという。
ヨミもノエルも未成年だし、お風呂に何度も入って裸は見慣れているが、お互いにそんな大人の階段を上る覚悟もないので日中は普通にお出かけして過ごした。
「クリスマス当日のイベントはもう始まってるんだよね?」
「だね。基本は普通だけど、一部は結構な地獄絵図みたいだよ」
「うわ……」
「女の子同士のペアなら襲撃はされないみたいよ」
「なんでぇ……?」
昨日のイヴの時点で、イベント詳細を読んで女の子同士のペアであれば襲撃は受けないし、されてもしてきた側にくそ重いペナルティが課せられるとあったので、やっぱりスタッフに色々ぶっ壊れてしまった人がいる。
今頃どんな地獄絵図になっているのだろうかと気になるがちょっと見たくないなという気持ちもあり、少しログインするのをためらうが昨日ノエルと集めたポイントで入手できる景品が欲しいので、意を決してログインする。
そしてすぐに、やっぱり来ないほうがよかったかもしれないと後悔した。
「これは……」
「もはやテロだろこれ」
ログインしてノエルと一緒にセーブポイントの宿から出たら、獣人族のカップルが目の前で、自爆特攻してきたブラックサンタプレイヤーに爆発させられていた。
爆発の威力と規模は、なにがあってもカップルだけは逃がさないと言っているように広く、ヨミたちは巻き込まれる範囲内にいたが絶対防御が発動してノーダメージだった。
カップル諸共粉微塵になったようで、煙が晴れるとそこにはブラックサンタも残されていなかった。
ちゃんと特攻を仕掛ける側も消し飛ぶんだなと、とりあえず手を合わせておいた。
「こんなイベントされたら普通は批判が行くようなもんだけど、どうなの?」
「あくまでこんな爆破攻撃を仕掛けるのって一部のプレイヤーだけで、基本はちゃんとクリスマスイベントやってるみたいだし、爆破される側もなんだかんだで楽しんでるみたい」
「なんでぇ……?」
意味が分からなかった。
しかし清し聖愛の町を歩いて中央広場にある聖樹に向かっている時に、なるほどと理解はした。
ノエルの言う通り、無差別に自爆特攻が仕掛けられているわけではないようだ。自爆を仕掛けるにも、孤立しているカップルのみに絞っているようで、人通りが多いメインストリートでは一度もテロが起きていないという。
道中にリオンとシェリアがいたので二人にも聞いたが、二人ともふざけて人気のないところに行ったらそこでいきなりブラックサンタ十人から追いかけ回されたが、メインストリートに戻ったらそのままどこかへ走り去っていったそうだ。
「ちゃんと仕掛ける側にもルールがあって、爆破されるのは何も知らずに人気のないところでいちゃ付こうとしたバカップルと、やられると分かってて楽しむためにあえて人気のないところに行ったカップルってことなんだね」
「何も知らない人からすれば理不尽だけど、知ってて爆破されに行く人は逆にブラックサンタ陣営にえぐいダメージ入れてそう」
離れたところで、複数の爆発音が重なって聞こえた。また誰かが犠牲になったか、ブラックサンタを犠牲にしたようだ。
「このことさ、シエル知ってるかな」
「あの子のことだし、事前に情報は集めてるとは思うよ? でも、ヘカテーちゃんに連れ回されてあの二人はカップルっていうよりも兄妹みたいな感じじゃない? ヘカテーちゃん小学生だし」
「流石にカップル判定は喰らわないか。いや、でも結構ヘカテーちゃんのファンいるし、過激派がシエルだけを排除しにかかるってことも」
「ないと思うよ? あってもシエルなら速攻で排除できるだろうし、ヘカテーちゃんも血の盾で防御できるし」
なんだかんだで防御は硬いようなので、心配するだけ損かもしれない。
そうと決まれば、もう心配することもないので聖樹に向かって歩を進める。
相変わらずあちこちから爆発音が聞こえてくるが、洗礼を受けている人かブラックサンタの断末魔だと思えばなんとも思わなくなってきた。
そもそも自分たちは襲われる心配もないし、襲われる人たちの大多数は赤の他人なので気にしない。
「ふぉっふぉっふぉ。お嬢さんたちはどんなプレゼントが欲しいのかな?」
聖樹の下に辿り着くと、十メートルくらいのデカい真っ赤な服に真っ白なおひげのサンタクロースが、めちゃくちゃデカいトナカイとそりに乗って、めちゃくちゃデカい袋を持ってそこにいた。
「いやデカくない?」
「おっきいね」
「ふぉっふぉっふぉ。多くの子供たちにプレゼントを渡すためには、袋もデカくないといかんからな」
「あ、そっすか」
まさか返答されるとは思わなかった。そんなシンプルな脳筋的理由でデカかったのかと、困惑して首をかしげる。
考えるだけ無駄だと思ったので開いたウィンドウに視線を下ろし、二人でたくさん集めたポイントで何を交換できるのかを吟味する。
クリスマスの定番の大きな靴下プレゼントパックやスノードーム、キャンディケイン、ローストチキン(レッグ・丸鶏)、ブッシュドノエル等々、クリスマスの定番セットがたくさんあった。
ノエルと掛け合わせてブッシュドノエルを買うのは決めたが、他には何がいいだろうかとスクロールしていると、雪の結晶の形をしたヘアピンがあった。
ノエルは自分の方で何を選ぶのかを悩んでいる真っ最中だったので、今のうちにとヘアピンをかごの中に入れておく。
雪結晶の髪飾りというらしいそれは、能力付きのアクセサリーのようで寒い地域でそれを付けていると、寒さを無効にしてくれるのだという。
ノーザンフロストには何度か足を運んでおり、その都度厚着をしなければいけないので、丁度いい。ただポイントが結構ごっそりと減るようだが、無駄な買い物ではない。
「買い終わった?」
「うん。そっちも?」
「もち。……ノエルには色々お世話になってるし、その、プレゼント買ったんだけど」
「ヨミちゃんもかー。私も、いつも助けられてるから、プレゼント買ったの」
「じゃあ、せーので交換する?」
「いいね、そうしよ」
包みに入った雪結晶の髪飾りを取り出すと、ノエルも同じくらいの大きさの包みに入ったものを取り出す。
「「せーの」」
はい、とお互いにプレゼントを差し出す。差し出された包みを受け取り、表示されたウィンドウを操作して包みを開ける。
「あれ?」
入っていたのは、雪結晶の首飾りというノエルにあげた髪飾りと同じデザインのチョーカーだった。
手に取って見てみると、これも髪飾りと同じ効果があるらしく優れた耐寒性能を有している。
「あはは! 同じデザインの違うアクセサリー贈り合っちゃったね」
髪飾りを受け取ったノエルはけらけらと笑ってから、慎重な手付きでそれを取って自分の手で髪飾りを着ける。
「どう?」
「うん、よく似合ってるよ」
「えへへ、ありがと。あ、ヨミちゃんにそのチョーカー着けてあげる」
「……うん、お願い」
ノエルにチョーカーを渡してから後ろを向き、長い銀髪を上げる。
そっとノエルの手がヨミの細い首に触れて、少し冷たくて体をピクリと震わせる。
チョーカーが首に巻かれてノエルの手が離れたので、上げていた髪を下ろす。
「うん、やっぱりヨミちゃんによく似合ってる」
「あ、ありがとう。これ、大事にするよ」
「はい、大事にしてくださいな。私も、これとっても大事にするから」
嬉しいのかにこにことずっと笑みを浮かべ、何度も髪飾りに指を触れさせる。
二人で集めたポイントで購入したものだが、ここまで喜ばれると集めた甲斐があったなと嬉しくなり、一歩ノエルに近付いてから髪飾りに触れている手を取って手を繋ぐ。
「まだイベントが終わるまで時間があるし、この町を見て回ろっか」
「うん! えへへ、FDOでもヨミちゃんとデートだ」
「あ、あまりデートって言わないでよ」
「えー、でもどう考えてもそうじゃん。何なら昨日と今日のお出かけもまさにデートだし、誘ってきたのはヨミちゃんだったじゃん」
「それは、そうだけど……。あー、もう! ほら、行くよ! 昨日はずっとポイント集めのための撮影しかしてなかったし、回れなかった場所を制覇するよ!」
とても恥ずかしくなり顔を真っ赤にしたヨミがノエルをぐいっと引っ張り、ずんずんと大股で歩く。
引っ張られたノエルは耳まで赤くなったヨミを見てくすりと笑い、少しだけ歩く速度を上げて隣に立ってから歩幅を合わせて、しっかりと手を繋いで二人でシャンシャンという鈴の音と時々爆発音のクリスマスの町を歩いた。




