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Fantasia Destiny Online  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第四章 古の災いの竜へ反逆の祝福を
224/301

欲しいものが中々見つからないのは大体物欲センサーのせい

 翌朝。

 早速のえるにメッセージを送り顔を洗って朝食を食べて歯を磨き、今日も今日とて吸血鬼にとって暑い日が続くので、外に出る予定もないし薄着でラフな部屋着に着替え、ログインした。


「お待ちしておりましたー」

「ノエル!?」


 フリーデンに戻ったとばかり思っていたノエルが、宿の外でスタンバイしていた。


「昨日の配信を見てたから、どれだけヨミちゃんが刀戦技を楽しみにしているのかは知っているけど、そういうことはちゃぁんと自分の口で言いに行かなきゃだめよ」

「で、でも、」

「でもじゃありません。エマちゃん今頃すっごく寂しがってるはずだよ? 昨日今日でFDOの中の時間はちょっと早めだから、ヨミちゃんが思っているより長い間離れ離れなんだよ? 最近のエマちゃんとステラちゃんのヨミちゃんへの甘え具合は知ってるでしょ?」


 エマはもう言わずもがな、ステラも最近はエマがべたべたくっついているとステラも負けじと、しかし恥ずかしいからか腕にそっと自分の腕を絡めて胸を押し当ててくる。

 フリーデンの中にいれば、どこに行くにも後ろをカルガモみたいについてくるし、ゴルドフレイ討伐作戦の少し前からフリーデンの町人からは微笑ましい目で見られている。


「あと言わなくてももう気付いてるでしょうけど、エマちゃんヨミちゃんのことが好きすぎるあまりちょっとヤンデレ化しかけてるからね」

「い、いやいや、そんなわけないでしょ」

「一応特徴として、独占欲が強く嫉妬深い、依存しやすい、一途で献身的ってあるみたいだけど」


 嫉妬深いかどうかは分からないがヨミに対して独占欲を持っているのは確かだし、お姉様と言ってずっとくっついてくるし、他のことには目もくれずに一途に慕ってくれている。

 今ノエルが言ったヤンデレの特徴に当てはまってはいる。


「というわけで、今から一回フリーデンに戻って自分の口でちゃんと説明して理解してもらってから、刀戦技の捜索をしよ。その方が、何も言わずに長いこと留守にして戻ってきた後、エマちゃんの暴走がなくて済むと思うよ」

「……ねえ、ボクってもしかして誰かしらを暴走させるヤバい能力でも持ってんの? ノエルもシズもボクがこんなになってから割と暴走気味だし、エマなんて一番分かりやすいし」

「可愛いのにカッコいい時があるのがいけないと思うなー。でも、私はそんなヨミちゃんが好き」

「あ、ありがとう」


 ノエルに好きと言われて思わずどきりとしてしまう。そんな意味じゃないと分かっていても、そう言われるのは嬉しいことだ。

 朝から晩までの刀戦技解読条件探索は一部予定を変更して、ノエルと一緒にフリーデンに戻りエマたちにちゃんと説明することになった。


 言うまでもなく早く帰ると言いながら数日留守にしていたため、ギルドハウス内のヨミの部屋のベッドの上でうつ伏せになり、枕をぎゅっと抱きしめていたエマがヨミを発見すると同時に爆速で突っ込んできて、三十分くらい離れてくれなかった。

 落ち着くまでこうしていようとじっとしていたら、アリアと一緒にステラもやってきて二人も一緒にくっついてきた。ノエルもそこに便乗した。

 意図せずになぜかハーレム状態となり、温かいし柔らかいしいい匂いがするしでちょっといっぱいいっぱいになり、唯一の精神的癒し枠のアリアのことを撫でて色々と誤魔化していた。



 結局一時間半予定をずらしたヨミは、エマをきちんと説得してからヒノイズル皇国に戻って来た。

 ノエルも探索を手伝ってくれると申し出てくれて、久々に二人きりの探索だ。

 リスナーからの意見とかもほしいし、前回の配信も終わる時にまた配信をすると言っていたので、告知をしてから配信を始めた。


「こうして二人きりで森の中を歩いてると、ピクニックデートみたいだね」

「ふぇぁ!?」


 ほんのりと頬を赤くしたノエルが右手をヨミの左手に指を絡めて恋人繋ぎをしてきて、ちょっと悪戯笑顔を浮かべながらそんなことを言う。


”ガタッ”

”女の子同士のデート。これは実にてぇてぇ”

”もう付き合ってるだろってレベルでいちゃ付いてるフレイヤちゃんとリタちゃんとは別ベクトルで、百合百合てぇてぇが堪能できる”

”こういう方面でヨミちゃん防御力低くてノエルお姉ちゃん火力高いから、巨乳お姉ちゃんにからかわれるロリっ子っていう構図が楽しめる”

”相変わらずお姉ちゃんには弱いようで”

”つまりヨミちゃんはネコ”

”ノエルお姉ちゃんがちょっと恥ずかしそうにしてるのもよきよきのよき”

”ノエルお姉ちゃんに弱いヨミちゃん……。実に眼福でございます”


「っ、っ、っ……! の、ノエルぅ~……!?」


 散々メスガキはするなとかリスナーが歓喜するような餌を放り込むなと言っている側が、自ら池にいる鯉たちにやるように餌を放り込んで来た。

 じとーっと睨み付けるとくすくすと笑われて、ヨミは頬を膨らませむすっとしてそっぽを向いた。

 繋がれている手も振り払おうとしたが、それはなんだかもったいない気がしたのでそのままノエルが自然と離すまでそのままにしておくことにした。

 なんかコメントが超加速していっているが、もう知らない。


 まずは聞き込みから始める。

 あの戦技を使う妖鎧武者は二回とも、あの松の森の中で現れた。なので恐らくは、この波寄町の周辺に現れるレアエネミーなのだろう。


「剣術道場? さあ、この辺りじゃ聞いたこともないな」

「妖鎧武者って怪異自体、常に戦い続けて常に成長し続けるやつだから、戦技を使ってくるのは珍しい話じゃないと思うけどな。嬢ちゃんから聞くまで、妖鎧武者が戦技使うなんて聞いたこともなかったけど」

「晴翔流剣術? 知らんなあ。天翔流なら聞いたことあるけど」

「波寄町自体結構小さな町だし、漁業が盛んで冒険者もたくさん立ち寄る場所とはいえ田舎なのは変わらないし、もうちょっと栄えた場所に行った方が分かると思うよ」


 行商人っぽいNPCから、その行商人から色んな商品を取引しているお店を構えているNPC。

 波寄町の衛兵NPCから井戸端会議をしていたおばさまNPCまで、手あたり次第話しかけて情報収集をしたが何一つとして情報が集まらなかった。


「おのれ物欲センサーめぇ……!」

「いやいや、あのおばあちゃん言ってたけど、漁業で栄えてても大都市ほどじゃないし本当に田舎よりの町だから、そういうのはないと思うよ」


 早く戦技が欲しいという欲求のせいか、全てをないはずなのに全てのゲームで必ずあるとされる物欲センサーのせいにする。


「でもものの見事に誰も知らないって言われちゃったねー。何か隠してるとかそんな感じじゃないんでしょ?」

「心理戦はシエルの方がボクより得意だからあいつほど精確には読めないけど、少なくともあの反応はマジで知らない人の反応だった」


 一応名前が非常に似ている天翔流剣術という流派が存在しており、その総本山が不尽御嶽(ふじみたけ)の近くにあるそうで、旅行中にアーネストから聞いた話の信憑性が増した。

 まだほとんど何も埋まっていないマップを開いてどこだどこだとスワイプしまくりながら探すと、めちゃくちゃ内陸の方にあった。リアル日本でいうところの富士山がある場所くらいだろうか。


「いや遠いわ」

「徒歩で行くとしたら、マップとか埋めながらになっちゃうし何日かかかっちゃいそうだねー」


”このゲームマップクソ広いからなぁ。探索のし甲斐もあるからいいけど”

”是非とも二人でおててを繋ぎながら徒歩で向かってくださいませ!”

”ひたすらに美少女二人の百合デートが見たいんですっ”

”目的地かもしれない場所が遠いと分かったら途端にこれだよ百合豚ども。あ、シャッターチャンスは絶対に逃がさないので撮影の許可ををををををを”

”ヨミちゃんのがちっちゃいし、魔王なんて言われちゃいるけどゴスロリ風のドレス着ててちょっとお姫様っぽさもあるし、ノエルお姉ちゃんはかっこかわいい騎士服着てるから、絵面は女騎士と護衛対象のお姫様になる”

”二人がどんな格好をしても最高の百合になるの最高だな!”

”全く、百合は最高だな”


「何を期待してるんだおどれら」

「ヨミちゃん、お口が悪いよ?」

「こんなん見せられて口悪くならないわけがない」

「ヨミちゃんの見た目と声でお口が悪いと、それはそれで変な人に刺さると思うよ」

「もう何もしゃべれない」


 何をどうしても、自分の見た目のせいで必ず特定の誰かにぶっ刺さるため、どうしてやろうかと悩む。

 恐らく黙り込んでも、一応中身が極度の戦闘狂なだけで戦いが絡まなければ清楚と言われているし、静かにしていたらただの清楚系と言われるだけだ。


「もうヨミちゃんのありのままでいいんじゃない?」

「それが一番困る。ボクのありのままって、要は今のちょっと口が悪い時のことだからね」

「……たまーに、ああいう口調で来られると私もどきっとして嬉しいし、ちょっとお口の悪いヨミちゃんも好きだよ」

「……っ、わ、分かってて、言ってるだろ……」


 じゃれ合いの中で言う感じの好きではなく、本気でそう受け取れかねないような顔をされながら好きと言われると、どうしてもこちらも意識してしまい顔が赤くなる。

 からかうために言っていると分かっているので本気にしていないが、からかい目的だと分かっていても嬉恥ずかしい。

 結局二人でまたリスナーを喜ばせるようなことをさせてしまい、ノエルがその元凶だったので恋人繋ぎされている手を離して先を行く。


「あーん、待ってよー!」


 すたすたと先を歩いていくヨミを、ノエルが追いかけてくる。

 身長の差でどうしても歩幅が向こうの方があり、すぐに追いつかれてしまい先を行かれないようにと腕を絡めてきたが、ひっそりと感じるノエルの体温といい匂いを堪能できるので、たまにはいいかとあっさりと機嫌を直した、実にチョロいヨミであった。

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