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Fantasia Destiny Online  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第四章 古の災いの竜へ反逆の祝福を
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秘剣

 ヨミが踏み込んでくるのに合わせて唐竹に振り下ろされてきた長刀を、片手剣を水平に構えて受け止める瞬間に傾けて受け流す。

 前に一度使ったからか、妖鎧武者はすぐに刀を返して切り上げてきたが、ヨミはそれを体を傾けることで髪の毛を少し散らすだけに留まった。

 刀を振り上げてがら空きになった胴体に向かって片手剣を振るうが、後ろに下がるために『隼』を使われて距離を取られる。


「第二形態になっても一個前の技が使えるのな。……組み合わせ次第でとんでもない連撃してきそうで怖いな」

「竜顎!」


 再び地面を抉りながらの超高威力の突進攻撃を繰り出してきたので、ヨミは血壊魔術『クリムソンドレイク』を放って迎撃する。


「はっは! 竜には竜がよく効くっていうよねぇ!?」

「竜道!」

「首ぃ!」


 てっきり切り上げオンリーかと思ったがそういうわけでもないようで、水平斬りを放って斬撃がそのまま飛んできた。

 咄嗟にしゃがんで回避して、そのまま低い姿勢で走り出すと振り抜いた状態からまた竜道のエフェクトをまとわせる。


「竜道」

「胴体!」

「竜道!」

「首!」

「竜道!!」

「首ぃ!」


 竜道を連続起動して、あれ自体どの体勢からでも放てる万能型戦技なのだと知る。なので同じ戦技で戦技連結という離れ業ができるようだ。


「いいねいいね! ますます欲しくなったじゃないか刀戦技!」


 刀の熟練度に応じて戦技の習得が可能なら、刀スキル自体は有しており熟練度はほぼ最大まで上がっているので、もし倒した時点で妖鎧武者の使う戦技が使えるようになっていれば、すぐに奥義まで行ける。

 ただそう簡単なものじゃないだろうし、刀スキルとは別に流派みたいなのがあって、その熟練度が上がったらそれに応じて戦技の習得、といった形だろう。

 どっちであってもやりがいはあるし、楽しみだと胸を躍らせていると、余計なことを考えてしまい反応が若干遅れて喉に長刀が突き立てられてクリティカルされる。


 HPがなくなって力なく地面に倒れている間にも体を念入りにバラバラにされてしまうが、攻撃が止んですぐにストックを消費して即時再生して復活する。


「倒したと思った? 残念生きてましたぁ!」

「竜劫!」

「ジャストパリィだオラァ!」


 復活してすぐに攻撃してくるんじゃねぇ! と繰り出された唐竹割をパリィしようとしたが、それを見越してか若干タイミングをずらされてパリィしようとした片手剣ごと捻じ伏せられながらバッサリと体を斬られてまた即死する。

 これは復活したらすぐに退避だなと反省しつつまたストックを消費して復活し、立ち上がらずにそのまま影の中に落ちて離れ、血液パックで十秒チャージしてバフ確保と共にHPとMPの回復を行う。


「竜道!」

「それジャブ感覚で撃ってくるな!」


 間合い無視の剣戟とかズルいぞともっと大きな声で叫びたいが、ブリッツグライフェンの形態の中に間合い無視のものがあるので、ズルいではなくポンポン撃つなと叫ぶ。

 くるりくるりと回転しながら連続竜道を回避して、溜まったエネルギーを全部消費して全放出を開放する。


「『ウェポンアウェイク・全放出(フルバースト)』───『雷禍(レビン)剣撃(カラドボルグ)』!」


 起動している時間が短ければ短いだけ威力と射程が増える、ヨミの持つ間合い無視の大火力。

 一撃の威力や使いやすさは両手斧や大鎌などと比べると弱いが、両方の射程よりもずっと離れた場所から高い威力の攻撃を食らわせることができる点はトップクラスだ。

 もちろん離れた場所からの大火力は砲撃型だったり弓矢型の方が高いのだが、剣士同士の戦いでそれを使うのは野暮だ。


 間合いを無視して放たれたヨミの雷の斬撃を妖鎧武者は竜道で迎え撃つが、流石にグランドウェポンの各形態の最大火力技はその程度では抑えきれないようで、竜道が弾かれて妖鎧武者に斬撃が直撃する。

 少なかったHPが大きく減りレッドゾーンまで突入し、そのまま終わるかと思ったがミリ残しで耐えられる。


「今ので倒れてくれたら一番楽なんだけどな」


 口ではそう言いつつも、本心は今の攻撃で倒されてしまうようなつまらない展開にならずに済んで安堵している。


「認メ、ヨウ……。貴様、ハ、我ガ秘剣、ヲ……使ウニ値、スル強者……ダ……。我ガ全テ、ノ……一刀……竜ヲ断ツタメニ磨キ上ゲタ窮極ニ……我ガ全テヲ、賭ケヨウ」


 あと一発、そんなものに付き合わずに避けられない範囲の攻撃をばら撒けばそれだけで決着が着く。

 確実に勝つならそれがいいだろう。だが、


「んなつまらんことやっちゃ、ゲーマーの名が廃るってもんだよ!」


 片手剣形態から大鎌に変形し、影魔術『シャドウクラッドアーマメント』で大鎌そのものを大幅に拡張。


「やってやるよ妖鎧武者! 『イクリプスデスサイズ』!」


 回復しきっているMPを全部消費して極大魔術を発動。大鎌に影がまとわりついていきさらに大型化し、禍々しい命を刈り取る形となる。


「征クゾ……我ガ秘剣……『牙竜天征(ガリョウテンセイ)』……!」


 左腰に刀を置き抜刀術のように構えた妖鎧武者が、膨れ上がったエフェクトでまた龍を形作り、地面がえぐれるほどの強さで蹴って突進してくる。

 ヨミも地面がえぐれるほどの強さで踏み込んでいき、妖鎧武者が三日月を描くように長刀を振るってくるのに合わせて、特大大鎌を振るう。


 大爆発染みた衝突音が森に響き、地面が捲れる。

 最大威力で使うためにバフ系の魔術を再起動せずにしてしまったが、吸血バフもあるし何よりノエルには劣るが素で高い筋力をしているので、大きく重い武器とその遠心力での一撃があればどうにかなると持っていた。

 だが現実は、力ではこちらがやや勝っているが相手も結構耐えている。

 どこまでもこいつは化け物だなと楽しそうな笑みを浮かべ、あと少しで効果が切れそうな奥の手を意地でも当ててやると思い切り体に力を込める。


「絶対に……お前に勝ってやるぁああああああああああああああああああああああ!!」


【強い■■を確認。魔■■の■■が進行。■■率:11%】


 どこかで見覚えがありそうなウィンドウが視界の端に現れるが無視。

 急に力が少し増した気がしたので、とにかくがむしゃらに振り抜こうと力を目いっぱい込めると、ビギッ! という音が妖鎧武者の長刀からした。

 その直後に急に抵抗がなくなり、特大の大鎌に振り回されるように振り抜いた。

 長刀をへし折られた妖鎧武者は、無防備な胴体に極大魔術で作られた暗影の大鎌を食らい、真っ二つにされながら吹っ飛んで地面を転がった。


「わっ、ちょ、待っ……きゃん!?」


 振り抜いた勢いで盛大にバランスを崩したヨミは、どうにか転ばないようにと抗ったが敵わず、べしゃっと倒れてしまい可愛らしい声をあげる。

 今の絶対にリスナーに聞こえているし、絶対にそれを聞いたリスナーは歓喜しているだろうなと耳を赤くしながらのそりと起き上がる。


「見事、也……」


 胴体を分断されてHPを失った妖鎧武者は、ただ一言それだけを残してポリゴンとなって消えていった。


”ヨミちゃんの勝ちだ!”

”ナイスゥ!”

”やっぱ強いよヨミちゃん。そんなヨミちゃんを数回キルしたあれも大概だけど”

”ヨミちゃんの命のストックゴリ押し作戦が強すぎる”

”何がともあれ、これで刀戦技習得可能か!?”

”最後のあの超ヤバそうなのヨミちゃんが使うと思うと……濡れちゃう……”

”早く見せて早く!”


「もうちょっと余韻に浸らせてよね。……お?」


 倒したことでドロップアイテムを入手する。

 それは『夢籠りの長刀』と『晴翔流剣術書』と書かれており、インベントリから出してみると妖鎧武者がさっきまで使っていた長刀だった。

 さっきへし折ったんだけどなと苦笑するが、かなりリアルでもこれはゲームなのだしこういうことがあってもいいだろと割り切り、少しだけ鞘から引き抜いてみる。


「おぉ~。え、めっちゃ刀身綺麗じゃん。ってか待って、刃紋がめちゃくちゃ龍の形してるんですけど。なにこれ超カッコいい」


 刃紋の形が気になりすぎたので全部抜いてみたら、想像以上のものがあって興奮する。

 最初は使う戦技が鳥の名前をもじったものだったりしていたが、ちゃんと意識して刀を見ていれば本当は竜が入った名前の戦技を使ってくると分かるようになっていたのかもしれない。


 レアエネミーとはいえ何度リポップするだろうし、また次戦う機会があれば刀に注目しておこうと決めて長刀をインベントリにしまい、次のアイテムの剣術書を取り出してフレーバーを開く。


『【晴翔流剣術書】


晴翔流剣術の全てが書き記されている指南書。書かれている内容を読み解くことで空を自在に翔る鳥、果てには竜すらも墜としうる剣術を習得可能。


解読条件:???』


「おぉおおおおおおおおおおおい!? 解読条件不明とかおかしいだろぉ!?」


 せっかくあの激やば剣術を覚えられるとテンションが上がっていたのに、強烈な肩透かしを食らう。

 リスナーたちも流石にこれには同情したようで、慰めるようなコメントが送られてくる。


「ちくしょう……。早くこの晴翔流剣術覚えて、刀戦技でハッピーになりたいよう……」


 だが当分はお預けである。

 こういう謎ときもRPGの醍醐味ではあるし、最初からあんなものを習得できたら苦労しないので、楽しみを残してくれたと思えばいい。

 いいのだが、やはりちょっと苦労した分早くあの超絶カッコいい戦技を使って戦いたいという気持ちが雁首をもたげる。


 肩透かしを食らいやる気が一気に萎えてしまい、今日はもう時間も時間だったので適当に終わりの挨拶をしてから配信を切り、波寄町に戻ってからログアウトする。


「……~~~~ぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁ! 早く刀戦技が使いたいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」


 一分二分とくらい自室の天井をぼんやりと見つめてから、じわじわと湧き上がって来た使いたいという衝動が抑えきれず、ベッドの上で体をくねくねさせる。

 たっぷり数分間悶絶してから、すぐにフリーデンに戻ると言ったが何の成果もなしに戻るもの嫌だし、エマたちには少し悪いが最低でも剣術書の解読条件が判明するまではヒノイズル皇国に残ることにした。

 ゴールデンウィークは明日が最終日。時間は有限なので明日朝一でのえるに頼んで、エマたちに帰ってくるのが予定より遅くなるということを伝えてほしいという旨のメッセージを送り、自分はひたすら探索しようと予定を立てて、さっさと寝てしまおうと瞼を閉じた。

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― 新着の感想 ―
技名からなにからほぼシャンフロなんだけどこれ大丈夫?
なんか某墓守の既視感ががが… まぁ、おもしろいからいいや!
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