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Fantasia Destiny Online  作者: Lunatic/夜桜カスミ
第三章 蒼穹を駆ける金色の星に慈愛の怒りの贈り物を
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ご褒美はいやらしくない

「あ、あ、あ、あの、詩乃ちゃん……!?」

「逃げちゃダメだよ。言ったでしょ、お仕置きするって」


 最後までノーザンフロスト側と吸血鬼たちが打ち解けることがなかったどんちゃん騒ぎのバーベキューパーティーが終わり、ノエルにキルしてもらいPKから一般プレイヤーに戻ってから現実に戻って来た詩乃とのえる。

 速攻でのえるを呼んだが十分待っても来なかったのでこっちから押しかけて、自室のベッドの上で枕を抱いて悶えていたところを捕獲した。

 逃げようと抵抗されたが吸血鬼の力にただの人間が勝てるはずもなく、あっさりとベッドの上に仰向けで抑え込まれてしまう。

 両手首をしっかりと掴んでお腹の上に馬乗りになり、少し息を乱しているので何かものすごくイケナイことをしている感が半端じゃないが、決してそういう踏み込んだ関係じゃない。何ならまだ付き合ってすらいないし。


「数十万のリスナーに500人のプレイヤーの視線がある中であんな風に甘噛みして、ただで済むと思わないで」

「だ、だってだって! 詩乃ちゃんの方がたくさん甘噛みしてくるから!」

「そうだね。言い訳はしないけど、でもそういうことするのは二人きりの時だけで、あんな人目がある中じゃやらないよね。なのにのえるはあんなことをして、ボクの配信の変態リスナーを喜ばせた。あいつらに餌を与えるなって言ってるのえるが、餌を与えたんだ。メスガキムーブしてのえるがボクに怒る様に、ボクだってのえるにお仕置きする権利はあるよ」


 どうにかして吸血行為から逃れようと必死に舌を回すのえるだが、詩乃はそれを真っ向から打ち返す。

 だんだん退路を塞がれて追い詰められていき、顔を赤くして、少しずつ涙目になっていくその様は、詩乃の嗜虐心を刺激して思わずぞくりと震えてしまうほどいじらしかった。


「えーっと、えーっと……!」

「もう逃げようとしたって無駄だよのえる。これからのえるは、ボクに美味しく頂かれるんだから」

「言い方!? 言い方もっとどうにかして!?」

「じゃあ、美味しく食べられる?」

「余計に酷くなってる!? わざと!? わざとだよね!?」

「さあ、どうだろうねー」

「ひゃあ!? やっ、な、舐めちゃや───ひぅっ!?」


 少し長い舌で、いつも噛み付いている詩乃から見て右側の首筋を、ちろちろと舐める。舌先でくすぐる様に肌を濡らすと、ぴくりとのえるの体が震え、逃げようと抵抗する。

 もう十何年も幼馴染として付き合っているのだ。本気で嫌がっている時くらい分かる。


「ねえ、ダメダメって言ってる割には形だけの抵抗しかしてないじゃん」

「へっ!?」

「前回噛んだ時もなんか変な声出してたし、実は噛みつかれて痛くされるのが好きなの?」

「ち、ちがっ……!?」

「否定されても説得力ないなぁ~?」


 思わずリアルでもメスガキっぽくなってしまったが、今は自分が優位に立てているためそれに気付かない。

 顔を真っ赤にして否定するのえるの上にもたれかかるようにして、首筋を引き続き舐める。

 心拍数がかなり上がっているようで体が火照っており、肌には汗がじんわりと滲んでいる。それを舐め取ると、何度味わっても慣れることのない素晴らしすぎる甘美さを享受する。頭が痺れるような甘さに、すでに頭がくらくらする。


「もう我慢できない。もういいよね? いただきます」

「ちょ、ま───あぅっ!?」


 がりっと、小さな牙を白い柔肌に突き立てて噛み破る。

 びくんっ、とのえるの体が大きく跳ねて体をよじらせるが逃げられない。逃がさないと、両手首をしっかりと掴んでいるから。

 噛み傷から血が溢れてきて、それを啜る。天上の蜜のような甘くまろやかな血を口いっぱいに含み、ゆっくりと味わうように嚥下する。


 吸血衝動がある時は理性が吹っ飛んで血が欲しいという本能のみで行動していたが、今は衝動に飲まれているわけではない。

 本能の赴くままに血を吸うとのえるを辛くさせてしまうので、引き際は弁えている。今日は増血魔術で無理やり長時間吸血を行うわけだが。


「ぁ、ゃぁ……! だ、ダメぇ……!」


 耳元で、熱い吐息を漏らし甘い声でやめてと懇願するのえる。その声が、吐息が、あまりにも嗜虐心を刺激してくるので、理性がなくなりそうになるのを必死にこらえる。


「はぅ……!? そ、そんなに強く、噛んじゃ、やぁ……!?」


 理性がなくならないようにと堪えていると、噛む力が自然と強くなってしまったようでのえるが今までで一番強く抵抗する。

 それはそれでまたぞくぞくと、吸血行為による快楽とは別の気持ちよさを覚えてしまうが、とりあえず噛む力を弱くして血を啜る。


「痛い、のにぃ……あたま、とけそう……」


 徐々にのえるの呂律が怪しくなってくる。

 抵抗も弱くなっていき、息も荒くなってきたのでそろそろかと口を離す。

 体を起こすと、とろんとした顔ののえるが、焦点の合っていない目で天井を見上げていた。


「……のえる、それわざとやってる?」

「へ……? なに……?」

「鐘を打つ要、流れる赤き鉄。失われれば落とし、満たされれば残る。流れ出た赤き鉄を、その器に注ぎ満たす」


 増血魔術を使い、詩乃が飲んだ分の血を回復させる。

 ほっと安堵したような顔をのえるがするが、まだ終わりじゃないぞと行動で示す。


「な、なんで!?」

「エンドレス吸血って言ったじゃん。お腹いっぱいになるまで血を吸ったらどうなるのかも気になるし」

「む、無理無理!? もう無理だよー!?」

「いただきまーす」

「ひゃあああああああああ!?」


 顔を真っ赤にして涙目になったのえるがやだやだと、首を噛ませまいと抵抗するが、自業自得だったとはいえ今までのお仕置き分含めてきっちりとお返ししてやると言って、再びのえるの柔肌に牙を沈めた。



「ごめんなさい」


 十分近くのえるの匂いと共に吸血をした後、のえるはブランケットを体に巻き付けてベッドの隅で涙目になって睨み付けており、詩乃は猛省して土下座していた。

 ぐったりしたのえるを見てすぐに調子に乗りすぎたと反省してずっと謝り続けているが、これはそう簡単に許してはくれないだろう。


「もう、ダメって何度も……何っ度も言ったのに……。詩乃ちゃんのケダモノ……」

「反論の余地もございません。でも言い訳をすると、」

「聞きたくないです。ちゃんと反省して」

「はい」


 すっかり不機嫌モードだ。自業自得なのでどうしようもないが、ここまで不機嫌になるとどうすれば機嫌が取れるのか分からない。

 しかしだ、のえるに遮られたがここまでのえるをいじめてしまったのは、のえるにも原因がある。

 反応が一々淫靡で、色っぽくて、耳元で囁くように名前を何度も呼ばれたりされたら、理性も飛ぶ。

 特に血を飲んでいる間はどうにも吸血鬼としての本能が強くなる傾向にあるので、それも相まって暴走してしまった。


「……ひざまくら」

「え?」

「ひざまくら、してくれたらゆるす」


 ちょっと下っ足らずな呂律で、頬をぷくっと膨らませながら言う。


「そんなんでいいの?」


 もとより吸血後にするつもりでいたので、これといった恥ずかしさはない。むしろそれでいいのかという不安が出てくる。


「それでいいの。詩乃ちゃん、膝枕今までしてくれなかったから。昔はよく私がしてあげてたのにさ」

「あの時は本当に、弟ポジに甘えてた節があるからなあ……。とりあえず……はい、どうぞ」


 ベッドの上で正座してぽんぽんと自分の太ももを軽く叩くと、ブランケットを外して床に放り投げてから、詩乃のお腹の方に顔を向けながら横になる。

 詩乃にとって最近はかなり暑い日が続いているのでニーソは履いておらず、のえるの柔らかな髪の毛が少しくすぐったい。


「……これやっばいかも。寝心地最高……」

「そ、そりゃどうも。ボクとしては、どうせなら太ももだけじゃなくてもうちょっと胸もあってほしかったけど」

「大きいと苦労するだけだよ? 余計な視線を受けるし、足元見えないし、肩凝るし、欲しいデザインの服で自分に合ったサイズとか見つからないし」

「それを言うなら、ボクだって結構無遠慮な視線を太ももとかお尻に向けられるんだけど」

「むっちむちだもんね」

「わひゃあ!? き、急に揉まないでくれます!?」

「詩乃ちゃんにめちゃくちゃにされた仕返し」

「うぐっ……」


 それを出されるの反論できないので、大人しく太ももを揉まれる。

 もっちもっちと触られるのがなんだかもどかしく、ちょっともじもじとしてしまう。


「ちょっとお尻も触ってみたいかも」

「そ、それはちょっと……」

「ぶー。じゃあ、こうしてやる!」


 がばっと抱き着いたのえるは、そのままお腹に顔を埋めて来た。びっくりしたが、うんと昔にのえるにしてもらった時にこの行動をやった記憶が微かにあるし、最近のえるに抱き着き過ぎている気がするので、ちょっぴり恥ずかしくなりつつも柔らかな髪を梳くように頭を撫でる。


「もうちょっとびっくりして慌てるのかと思ってた」

「これでも結構びっくりしたほうだよ。ここんとこボクがのえるに抱き着き過ぎている気がするから、まあ、そのお返しというか」

「抱き着く回数で言えばどっこいどっこいじゃない? むしろ私の方が多いと思う」

「じゃあ、のえるの首を舐めたり噛んだりしたお礼ってことで」

「……詩乃ちゃんのえっち」


 ぎゅっと再びお腹に顔を埋めるのえる。顔を覗かせている耳が真っ赤になっており、可愛いなと指先でつんつんと赤くなった耳を突っつく。

 この後夕飯を食べてお風呂に入った後、エマとステラにも膝枕をするのでこれはいい練習になりそうだ。これをのえるに言ったら、ちょっと怒られそうなのでお口チャックする。


 数分間ずっとお腹に抱き着かれたまま頭を撫で続けていると、ゆるゆると力が抜けたので手を止めると、のえるが仰向けになる。


「今後、ステラさんどうするんだろうね」

「本人はフリーデンに居続けたいってさ。できるなら、ボクの側にいたいとも。国の復興はしないのかって聞いたら、したいけど、大切なものがまた奪われるのが怖いからまだ当分はしないって。エマは復興する気満々で、そこにステラを巻き込むつもりみたいだけど」

「エマちゃんらしい……今ステラさんのこと呼び捨てにした?」

「本人から呼び捨てにしてくれってさ。圧がすごかった。多分のえるの方から呼び捨てのタメ口でいいかって聞いたら、普通にオッケーしてくれると思うよ」

「ほんと? あとでログインした時に聞いてみよ」


 誰よりもステラのことを気にかけていたので、そういうところは気になるようだ。


「ところで、さっきメスガキになってなかった?」


 ひゅっ、と喉が鳴った。

 急いでのえるから離れようとしたががっしりと腰に腕を回されてしまい、逃げられなくなる。


「あ、あの、のえるさん……?」

「なーに? これから詩乃ちゃんのことをくすぐりの刑に処す予定なんだけど」

「くすぐり……!? そ、そのぉ……お、お手柔らかに……」


 速攻で逃げられないと悟った詩乃は大人しくのえるに押し倒され、くすぐりの刑を決行される。

 脇の下から内もも、お腹など体中をフェザータッチされながらくすぐられ、涙を流し息ができなくなってちょっと痙攣するまでそれは続いた。

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