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92話 凄いな。それなんの工事!?

 完成した【歩いてくボックス】──結局、なんだかんだで、この名前に落ち着いた。


「ユタンちゃんが一生懸命……歩いて、てくてくてくてく……テクノロジー詰め込んで……テクテクテクテク……それを見ていた僕ちゃん、くすっと笑っちゃう~……僕くす……な箱~♪」


 俺が小さな声でぼそっと口遊んでいた歌を聞いていたスプライトが、時間が経つに連れて、くすくすと笑い出していた。


 うん、あまりにもバカバカしすぎて、かえって、二人とも気に入ってくれたみたいだ。


 町の近くまではユタンちゃんが転がしてきたんだけど、さすがにこのまま門をくぐる勇気が俺には無かった。


 人が近寄りそうのない場所を見つけて止め、隠蔽魔法【光学迷彩】を施した上で、そのまま放置した。


 盗まれたら、ユタンちゃんががっかりするのは目に見えてる。なので、一応、防犯用に風魔法を応用して、雷の結界魔法【スタンフィールド】をかけておいた。


 スプライトにコツを訊いたら、上機嫌になってくれた。


 さてと、今日はみんなで朝から随分とがんばったから、さすがに腹もぺこぺこだろう。


 もうそろそろ、宿に帰って、飯にでもするか。


 門に近づくと、なんだか行列がいつもより長い。


 しかも、入郡許可証待ち用の出入口はともかくとして、普段は素通り同然の通用口ですらも、列ができていた。


 一人一人【メダリオン】と名簿を突き合わせて、確認しているようだ。


 なにがあったのかを門衛に尋ねている人もいたが、無下むげにあしらわれている。てんで相手にされていない様子だ。


 聞き耳を立ててみたが、それらしいことを噂している連中もいない。


 俺たちの番になったので、メダリオンを見せて、チェックを受ける。


 確か、メダリオンの色のチェック、それと数字を台帳と照らし合わせるのだったな。


 耳族になった妖精を二人も連れているので、相変わらず、こいつかって感じで、嫌な顔されたけど、問題なく入場できた……はて、本当になんだったんだろうか?


 さあ、気を取り直して、とにかく飯だ。


 部屋には戻らず、食堂へ直行する。


 俺たちが入った瞬間、「「「「おおぉーっ!」」」」という歓声が湧き上がった。


 なんだよ!? 俺待ちか。まあ、違うよね……もちろん、当然、耳族待ちだよね。


 そうだった。忘れとったぁ……この鬱陶うっとうしい連中のことを。


 外に飯食いに行くか? でも、こいつらも追いかけてくるだろうしな。


 二人とも腹減ってるみたいだし、今回は仕方ねえか。


 ユタンちゃんが隣のテーブルにある料理を指をくわえて、じっと凝視していた。食べたいんだよね?


「ユタンちゃんも、あれを食べてみる?」


「オムライ」


 へぇーっ、あれって、オムレツじゃなくて、オムライスだったのかぁ。そういえば、長粒米ちょうりゅうまいがあるとか言ってたもんな。


「すみませんっ! 三人分お願いしゃーすぅ」


 おっほぉ~っ、ユタンちゃんじゃないけど、俺も心躍おどるよ~。


 炒飯チャーハン用には長粒米が合うからなぁ……ぱらっぱらっになるから……まあ、しっとり系の炒飯とかも好きなんだけどね。


「ふたりしてウキウキしてるけど、そんなに美味しい物なの?」


「「さあ?」」


「なんで知らないのに、そんなに浮かれてるのよ!?」


「いや、だって、こっちの世界のオムライスって、初だもの」


「えほん」


 ユタンちゃんも絵本で見たことがあるだけで、食べたことなかったらしい。


 おっ、きたきたぁ~っ!


「今度は舌……火傷やけどすんなよ」


「わかってるわよ。でも、あたしだけ冷めるの待つの、やだなぁ」


「だったら、ふうふうすれば? ふぅーって息を吹きかけると、少し冷めるぞ」


「へぇーっ、そうなんだ! やってみようっと」


 俺はまだ食べずに観察しようっと! かわい子ちゃんのふうふうが見られるから……しかも、こんな至近距離で。


 おいっ、あれ!? 普通に食べ出しちゃったぞ。熱くないのか?


「なに? なにか変なとこ、あった?!」


「いや、熱くないのかと……」


「ふうふうしろって言ってくれたじゃない」


 えっ?! してないよね? ……うん、してないよ。ふうふうって……あれっ?! 俺って、記憶でも飛んでたのか?


「ほらっ、こうして、風風ふうふうって」


「……」


 あっ! こいつ……風妖精だった……口をすぼめなくても、風を起こすことなんて、簡単にできるんだ……ずるいよん。はあ……んじゃ、俺も食べよっと。


「なんだよ?!」


「おいひい」


 スプライトが指をピストルの形にして、小刻みに何度もほっぺをつついているから、なにかと思えば……おいおい、それって、俺が気づくまでやってたのかよ? 目を輝かせちゃってまあ……かわいいから、いいけどね。


 それにしても、ユタンちゃん、凄いな。それなんの工事!? 身体とそれほど変わらない大きさのオムライスをがっしがっしと掘り起こすようにして食べてるよ……。


 スプーンが大きすぎるよね、やっぱり。……スコップ、いや、シャベルみたいだもんな。専用のカトラリーを用意してあげた方がいいな。


 ……でも、問題なく食べきれそうだな。こりゃ。


「うん、今日はいっぱい身体を動かしたもんな。いっぱいお食べ」


「おむ らいふ」


 ふふふっ……なんかそれ、すごいな! 人生かけてる感が出てるよ。うんうん。



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