表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/667

88話 思わず変な声が出ちまった

 さてと、防具系で残ってるのは、あと【ニケの冠】と【イリスの翼靴よっか】か。


 この二つも防具だけど、装着している部位が部位だけに、さすがに攻撃を当てて試すのははばかられるな。


 盾とかの防御無しに頭へ攻撃がやってくるのはさすがに怖いし、足でも反射的に避けちゃいそうでもあるから。


 それにしても、どちらもギリシャ神話繋がりか。


 神話によれば、どちらも有翼ゆうよくの女神で、使者として働いているといわれのある神々──俊敏になったり、回避能力が上がる性能が付与されているのだろうか?


 スプライトに少し攻撃させて、回避できるか試してみよう。


 速度特化なイメージがある風系の魔法を避けられるのであれば、文句なしに役立ってくれそうだものな。


「おーい! スプライト。ちょっとは魔力に慣れたか?」


「うん! だいぶつかめてきたよ。このじゃじゃ馬」


 だったら、もうちょっと高度な制御とかも、いけるかな?


「んじゃ、風魔法で威力は弱め、スピードが速めのやつって、なんかある? あったら、俺を目がけて撃ってくれないか」


「あるにはあるけど、速度速めると、自然に威力も強くなっちゃうよ。どっち優先? 威力、それとも速度?」


 まあ、そりゃ、そうだわな。う~ん?!


「最初は威力弱めの方から、徐々にスピードアップする方向で」


「わかった。やってみる……ちゃんと避けてよね」


 なんだ!? 心配してくれてるのか? おっと、集中集中っと。


「風の妖精シルフが命ず、疾風共しっぷうどもの者のきびすを捕えよ!」


 おいおい、いきなり詠唱魔法かよ……つうか、詠唱もできるのね。


「うひゃっ!」


 あっぶねえ! 思わず変な声が出ちまった。これで威力弱めなのか? 結構な速さだなぁ。


 おっと! ……一度詠唱すれば、後は無詠唱でいけるのね。そりゃそうか、風妖精だしな。それくらい自由自在だろう。


 次次やってくる……ふんっ! ……なっ……考え……てる……暇……がっ……ない……よっ! くっ……。


「ス……ストップ……止めてぇ! もういいーーっ!! ……はぁ……ふぅ……はぁ……ひぃ……はぁ、ふぅう」


 よし! 予想通りだな。俺が今まで体験したことのないほどスピーディーに動けてる!! 視界の移り変わるのが速いこと速いこと。


 本来なら動体視力がついていけそうもないのに、眼球運動なんかにも補正がかかっているみたいだ。まだ目の周りの筋肉がぴくぴくしてる……。


 とっさに機敏な動きで、自在に方向転換できるのも、実戦向きと言えるな。


 それにも増して、何回か回避し損なったはずの攻撃が、偶然バランスを崩して避けることができてしまった。


 偶々にしても、これは?! ……勝利の女神に関係した仕掛けが何かあるのか?


 う~ん、どうにも情報が足りない。今は結果だけ受け止めておくしかないか?


 さあ、いよいよ、最後に残ったのは二つ。


 実はどちらも考えるのが嫌で、後回しにしていたものだ。


 マントの方がまだましかな?


 この【獣王革のマント】は、【妖精女王の森】の近くで倒された獅子王らしいけど……。


 ギリシャ神話に登場する英雄ヘラクレスに倒されたライオン──俺は獅子座生まれだから、その由来となったのをどうしても想像してしまう。


 そのライオンは、ヘラクレスの膂力りょりょくであっても、刃物が一切通らないことから、絞め殺された野獣だったはずだ。


 メネアのライオン──その毛皮に包まれた者は不老不死を授かるという伝説が……俺の不死身との関係……いやいや、無いはず。そうだよ! マント貰う前から俺は不死身だったんだから。これはだいじょうぶ、大丈夫。


 ……ギリシャ神話続きで、少々毒されすぎたか。


 でも、最後のは、なぁ……【テュルソス】──あのディオニュソスの杖か。


 極め付きのオリンポス十二神だ。酒と豊穣ほうじょうの神だったよな。樹木の守護者でもあったはず……。


 これって、聖樹様が持ってなくて、本当にいいのだろうか? 俺なんかに渡していいもんじゃないだろうに。


 ギリシャ神話の中では、乳や蜜、清水とかも湧く杖だったとか。


 ……今まで、はしゃいでしまっていたのは、こいつを思い出したくなかっただけかもな。ディオニュソスの狂気を。


 マニアとか、マイナスという言葉の語源となった、驚喜と狂気を引き起こす神がまとうオーラを。


 女性から狂信的な崇拝を受ける神……そして、その杖を。


 どうしても考えざるをえない……もしかすると……いや、もしかしなくても、スプライトやユタンちゃんとの同伴契約は、この杖が引き起こしたものなんじゃないかと。


 俺自身ではなく、こいつが原因かもしれないと思うと、どうにも気が滅入ってくるんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ