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87話 うん、これで理由が立った!

 さてと、次だ。次……えっと、これは、山羊やぎがわのガントレットだったっけな。


 今度は皮革製品かぁ。RPGなんかだと、ほぼ初期装備に位置する物なんだろうけど、いったい全体、どの程度の強度があるんだろうか?


 まあ、さっきと同じぐらいの強さの魔法だったら、そこそこいけるかな。


「んじゃあ、さっきと同じの、行くぞ!」


「おっけー」


 OKってことか? まあ、おかしくは……ないのか? 俺にわかりやすく変換されてると思えば。


 いや、そんなことよりも、集中だ。


 さっき、石礫いしつぶてが顔をめがけて飛んできたときには、さすがに肝を冷やした。


 なので、今度は顔をガードするように、あらかじめ左上腕を掲げておいて、事前に準備した上で、同じ土魔法を放ってみた。


 先ほどの焼き直しのように、放たれた石礫が跳ね返されてくる。


 今度は油断していなかったのと、十分な距離を取っておいたので、しっかりと左腕の前腕部分で受け止めることができた……はずだったのに。


 またしても予期せぬ展開が。ははは、確かに展開してます。透明な大盾が……光り輝くいくつもの多角形に縁取られた格子が集まった、きれいな盾が。


 おいおい、なんだよ!? これって……すげぇーな。やっぱ、【アイギス】の名は伊達だてじゃねえってことか?


 しかも、もう一つ胴鎧もセットみたいだしよぉ。


 まあ、あらかた予想がつくから、実験を省略してもいいかもしれないけど……。


 まあ、物は試しだと思い直し、ガントレットを外した状態で、今度は胴鎧の性能を試すことに。


 いや、スプライトさん、そんなにがっかりした目をしないで。後でどうするかはきちんと決めるから。


 さて、今度は胴体の方向に向かって、土魔法が跳ね返ってくるようにスプライトにも協力してもらって、射角の調整を試みる。


「【ストーン】!」


 ヒュイーン、パシンと石礫が再び跳ね返されてくる。おっ! 上手くいった。


 これも、まあ、いい感じ。


 気持ちやや下めになってしまったせいで、ちょっと息子が縮み上がりそうな気がしたんだけど、相変わらず、無反応な様子を尻目に、石礫の挙動に注視する。


 おっ、見えた! こっちも透明な正六角形か……それがいくつも連なったうろこか、甲羅と表現すべきバリアが……石礫が胴鎧と接触する直前の空間に輝いて防いだのを今度も見逃さなかった。


 先ほどと同様、一瞬にして、消えてしまったが。


「うん、これもスプライト行き決定だな」


 そう俺が口にすると、「えっ!? これもって。二つもあたしに……いいの? やったぁ!」と、ささやかにこぶしを握り締め、にまにまと上機嫌になったスプライト。


 なにがそんなに嬉しいのやら? まあ、とんでもなく良い防具であることは認めるけど。


 RPGとかなら、職種なんかによって装備できる物が決まってたりするけど、見た目はまんま革鎧と革のガントレットだ。相当軽いし、これなら大概の人が装備しても問題ないだろう。


 美の均整が極限まで追求されすぎていて、どうにも華奢きゃしゃそうに見えるスプライトであっても、平気なはずだ。


 ユタンちゃんにはセーフティービットがあるし、あの子自身の回避能力と合わせれば、物理攻撃に関しては、充分シャットアウトできる可能性もある。いや、もちろん、そうでなくては困るわけだが。


 魔法系の防御に関しては、そもそも、精霊さんの守護結界があるわけだから、誰の心配もしていない。


 となれば、基本防具類は、スプライトに装備変更ということになるな。


 うん、これで理由が立った! ……むふふ、ふふ。


 【アイギス】は、革鎧と言っても、そんじょそこらの、むさ苦しくて、くっさいのとは、わけが違うんですよ、あーたぁ。


 さっき宿屋でこの革鎧を装備し直した際に、スプライトにはやや大きめかなと思っていた。


 そのため、この辺の隙間すきまをどうしようかと、いろいろと触っているときに、この鎧の秘めたる機能に気が付いたのだ。


 武器屋の親爺おやじさんが言っていたサイズの自動調節機能って、これのことだったのかよ!? そんな生易しいものじゃないぜよ。


 むふふ……そう、このボタンを押すと、なんと! なんとですよ。このように変形し、装備者の身体形状に合わせて、ジャストフィット!! するわけなんですよぉ。


 ライダースーツみたいな? とにかく、ボディーコンシャスなナイスな服装になるわけです、これが!


 はあ、スプライトが着れば、そりゃあ、もう……また違った楽しみがぁぁぁ。


 まあ、これも後のお楽しみにとっておこう。



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