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78話 まったく、野暮天なんだからっ!!

〔妖精スプライト side〕


 ──よかったぁ! やっと離れていったあの人族……もう来なくていいから、一生どっかに行ってて!! シッシッ。


 ふふふ、これで、あたしの時代が再びやってきた。


 丁度良いことに独りで海岸にやってきては、海を眺めて喜んだと思ったら、途端に思案し出したあいつ──その後ろから声かけた……びっくりさせようと思って。


『だったら飛べばいいじゃない!』


 全然、普通に応答されたのが悔しくて、突拍子とっぴょうしもないことを口にしていた。


 ふっ、人族が飛べるわけもないのに……でも、話しているその瞬間にある悪戯が浮かんだ。


 それを実行するために、あいつの前に風の精霊を連れて戻って、思わず本音ほんねがでちゃって焦ったけど、それらしく理由を付けて、そそのかしてやるつもりだった……。


『たぶん、いけるはず』なんて嘘。ほんとはちゃっかりちぎりを結ぼうとしただけ。


 こちらから契約しようと持ちかけてやったのに、なかなかに渋い反応だったけど……。


 あたしは四大妖精なのよぉ。分かってるのかなぁ、分かってないんだろうなぁ。


 まあ、だからこそ、あたしだって、こんなにも回りくどいことをしてるんだし。


 その腹いせと言ってはなんだけど、ふと思いついた方法で遠くの海まで盛大にぶっ放してやろうかと思っただけ。


 怪我けがをしないようにちゃんと風で面倒はみてあげるつもりだったけど……『なのに……なんで!? ……なんで、こいつはこんなにも上手に空を飛べてるの?』と、あたしの頭の中は混乱しまくりだった。


 下手したら、あたしが危うく置いていかれそうなくらいの速さで飛んでるときさえあった……。


 いやいや、元々はあたしの抜群のひらめきのお陰だから……違わないけど、違うか。


 でも、そのお陰で大空を一緒に飛ぶことができて、はしゃいでる無邪気なあいつを見たときに胸の辺りがきゅんっきゅんっしちゃった……でも、それは内緒ね。


 やっぱり、この人はあたしに相応ふさわしいと思ったのも、束の間、妖精を連れて、妖精に会いに行くって、どういうこと? まあ、相手は半妖精だったけど……半妖精ではあるんだけども。


 ああ! ずるい。あんなに優しく撫でてぇ……耳まで生やさせてぇ……まったく、野暮天やぼてんなんだからっ!!


 このときばかりは、いつか精霊の力が尽きて、空から落ちたらいいのに、と思っちゃったのも内緒ね。


 いいなぁ! あたしも……でも、身体なんて無いから……。


 怖いし……死ぬのは嫌だし……でも、ずるいな。その子だけ……うらやましい……羨ましすぎる……でも、やっぱり……。


 そう悩んでいるうちにやってきた──あいつと一緒の初めてのライブ……その食事を見たのが、だめ押しだった。


 あいつったら、何かとあたしを気遣きづかって食事をしてくれていたから……。


 あぁ、なんかここに居てもいいんだって、安心できたし……。


 気持ち良さそうなこの人の頭が目に入ってきちゃって……その上で、じっとしてたら、なんだか眠くなってきちゃったの。


 そのとき、朧気おぼろげな意識の中で、何かが繋がった感覚が……あたしの中の壊れた何かがあいつと引き合うように。


 そのとき願ったの。──が欲しいって。


 ──翌朝、あまりの動きにくさに目がめ……。


 そう、こうしてあたしは肉のからだを手に入れた。



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