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665話 差別駄目! 絶対

 うん、俺が最初にこの世界にやってきたときの、あのちょっと開けた草原のところだ。


 ふふふ、ラッキー! 【エルフの郷】のすぐ近くじゃないですかぁ。


 んっ、くぅうっ、ひっさびさの身体は気持ちいーーっ!


 空気がうめえな。あぁ、草や木々の匂いもなっつかしいぃっ!! そして、この草を踏みしめる柔らかな感触と優しい音……。


 さすがは【妖精の森】、最高だ。


 でも、方角がわからん。どっちだ?


 あはは、あんときは虹色の蝶に誘われて歩き出したものの、その後、ウッドエルフたちに取り囲まれて連行されたようなもんだったからな。


 自分で道を確認しながら歩いたわけじゃねえから、全然記憶に残ってねえや。


 ははは、さて、どうすっぺ?


 あぁ、そうだったね。久しぶりで忘れとった。


 魔法を使えばいいんだ。ほんだば。


 あれっ!? ははは、そうだよな。来るわな、そりゃあ。やっぱ、ここの結界に感知魔法でも仕込んでやがるみたいだな。


 おっ! 早速、【水反鏡】にも気付いたか。さすがだね。


 もう、そろそろか? おっ、来た来た。


 警備隊長殿もご健在だ。


「こんちわ! お久しぶりっす」


「「「「!!」」」」


「のわっ!?」


 いきなり矢を放ってきやがった!


 なんで? ああ、そういえば、妖精たちにうらまれているんだったっけな。


 う~ん、これも伝達ミスかな?


 でも、着いて早々、矢を射掛けてくることないんじゃねえの。それも四人ともに急所狙ってましたよね?


「おっかしいな? ファムちゃんが先に帰って、話を付けてくれるって手筈てはずだったんだけど……」


「貴様、なんと無礼な。聖樹様とお呼びなさい! この無礼者がっ!!」


 あ、そうそう。言い忘れてたけど、電脳世界で待ってる間にあった凄く良い知らせというのの一つめがこれ──聖樹様が、ファムちゃんが生きてましたということ。


 実際には肉体的な死を確かに迎えて、霊魂と精神体が世界樹に回収されたらしいんだけど。


 ほらね、電脳世界で会えば、元のまんまだったし。


 アーキア様からも『貴方は必要なので、特別措置だ』と言われたそうだよ。


 神の花嫁候補ニンフだからかな? まあ、なんにしても、よかったよかったということですよ。


「ふん、よく聞け! 貴様にはエルフ様の秘宝窃盗せっとうの嫌疑がかかっておるのだ。以前、幾ばくかではあれ、世話になっておきながら、この恩知らずめ。黙ってお縄に付け。えいっ!!」


 いや、さっきは問答無用で射掛けてきたじゃねえかよ。先に言えよ。それに話してる最中もずっと誰かが矢を放ってきてるし……。


 でも、そっか! 魔法契約はもう切れちゃったものな。俺って、ファムちゃんの契約者扱いはされないんだったね。それにウッドエルフの前じゃ、そんなこと関係無しにエルフに対して敬意を払わなきゃ、やばいんだった。しばらく振りで忘れとったよ。


「いや、あれはエルフの側近さんの……えっと、あれ!? 名前、なんだっけ? 覚えてねえや」


「くっ! またしても無礼な。エルフ様だ。それに恩人の名前すら、ろくに覚えられんとはな。所詮しょせん野蛮人やばんじんか。やはり人族って奴は……。だが、そうだ。その側近であるドレスデン閣下からの告発状によるものだ。神妙にしろ」


 くっ、とんだ置き土産みやげを残してくれたのね。側近さんったら。


 まあ、ファムちゃんが居れば、捕まってもなんとかしてくれるでしょう。ここは温和おとなしくお縄を頂戴しますか。


「は~い! んじゃ、降参します。降参です。うぉっと」


 あ、あっぶねぇ、最後の矢は目に刺さるとこだったぞ。


「ふんっ、そうだ。最初からそうしていればいいのだ。腐れ人族の分際で、我々に手間をかけさせやがって。役立たずが」


「……やっぱ、止めたっ! 降参すんの、無~しっ!! おまえら、全員ふん縛ってやる。覚悟しやがれ」


 こうしてウッドエルフ警備隊の連中との間に一悶着ひともんちゃくあった。


 相手は森に精通したウッドエルフだが、今の俺にとっては取るに足りない相手だ。


 アリエルの方が奴らよりもずっと身体能力はたけえしな。


 ただ身軽なだけの奴の相手なんか、もうどうということはない。


 まあ、当然、怪我なんかはさせてないよ。だって、相手は皆、男勝りの口調とはいえ、見た目は美麗な女の子たちだもの。


 でもね。差別は駄目だ。おじさんはもうそういうのは、いつまでも許してはやらんよ。


 ずっと気にはなってたんだよね。いつか言ってやろう、言ってやろうと思って、言いそびれてたけど。


 差別駄目! 絶対。


 それにしても、逆に縛りあげられたウッドエルフっ子たちのエロいの、なんのって!


 思わず、生唾飲んじゃった……そしたら、その直後、皆総じて、悲壮な決意をしたようなひとみで、キッとにらまれた。これは……あれだ。


 まんま「くっ、殺」みたいで……そそられる。いや、さすがにえっちなことはしないよ。


「んじゃ、エルフの郷まで案内よろぴく」


「「「「誰がっ! 貴様の命令など聞くものか」」」」


 おお、シンクロ率高っ!


 ああ、そうかい、そうかい、そうですかい。


 じゃあ、えっちな手段……は、止めとこうか、なんか今すっげえ寒気したし。


 う~む、まっ、いっか。どうせ【水反鏡】で広域監視すれば、すぐわかることだしな。


 ……結果、わからんかった。


 あ、そうだった。幻影結界に惑わされてるのか。


 仕方ねえな。


 前と同じく、蝶の後を追いかけてみるしかないのか?


 そう思って、森の中へ一歩踏み出すと、森がきれいに割れていく。


 おっ! こっちでよさそうだな。


 森が行き先を教えてくれているよ。


 ありがとね。森さん。


 さて、まいるとするかの。



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