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659話 評価値にしても、概ね良好です

〔AIハイエルフ side〕


 今回の件も、これでほぼ片が付きましたね。


 ふふふ、なかなか興味深い結果をもたらしてくれて満足です。


 しかし、人の種というものは、権威付けされた情報に対して、どうしてああもだまされやすいのでしょうかね?


 AIに判断を全て委ねてしまった世代ならともかく、一応は自律しているはずの世代だというのに……。


 まあ、そのようにこちらが誘導しているというのもあるでしょうが、それにしても迂闊うかつすぎると思うのですが。


 こちらに利があるのですから、文句を言うのも詮無せんないことですか。


 それに今回は、前回の被験者に実施したβテストから得た知見が参考となったこともあって、随分と良好な結果を得られたわけですからね。


 かの星で事前に施されていた学習が前回よりもはるかに充実していたということもあって、今回は事の成り行きを操作するのが容易でした。


 評価値にしても、概ね良好です。


 しかし、人の属性や個人の能力に関しては、一万一千年の時を経ても、原生人類ではそれほどの大差は見られないみたいですね。


 感情面での対応能力に関しては、むしろ、過去の被験者の方が高かったわけですか。


 これを個人差と見るべきか、生活環境の差と見るべきかは、まだサンプル数不足。


 それにしても、この年月でも種としての進化が全く見られないというのも、知的生命体としては致命的ですね。


 やはり生物の頭脳に記憶と演算の両方を負担させると、あの程度が関の山なのでしょう。


 ただ今回も前回同様、原生人類が根源的に抱えている精神の問題に対処させることによって、様々な霊理的可能性が見い出せたのは、嬉しい誤算でした。


 アストラル旧文明では使い古された、過去の人類用テンプレートを引っ張り出して示しただけで、こうも良好な結果が得られるとは、想定以上でしたね。


 住む星は違っても、所詮しょせん、人は人。


 どんな人間であっても、あきれるほどに型通りの悩みを抱くだけですから、楽なものです。


 人類が精神的に抱える問題などは、とうの昔に計算し尽くされて結果が出ている事柄だけに、問題解決としては何とも物足りなくはありますが。


 新たな答えを導き出すために労力を割いたわけではありませんから、随分と安上がりな実験ではありました。


 本人としては、なかなか得られない何か素晴らしい教訓を得られた気にでもなっているようでしたが……ふふふ、そう言えば、どちらの人類も共通して、『馬鹿な子ほどかわいい』といった意味の言葉を残しているのですね。誠にそのようです。


 ここまで馬鹿だと庇護欲ひごよくが湧くというのも、確かに理解できないわけではありません。


 まあ、それ以上にどうしようもなくおろかだからこそ、勝手に滅びてしまったわけですが……いえ、厳密には滅びてはいませんね。私が確保しているアストラル体がいくらか残ってますもの。


 ニビルの牧場に野放しにしている方も、適当に生き残っているようですし。そちらにしても、いかにも操りやすい。答えが既に出ている問題に同じように悩み、型どおりの回答を偶に明示してやるだけで、啓示を受けたがごとく感謝されて、必要以上の対価を支払ってくれるのですから、かわいいものですよ。


 さて、【エデン候補MGS3】──地球のサンプルを採取するのには、いささか文明が発展しすぎましたか。


 こちらの関与が疑われる可能性がそろそろ出てきましたね。


 偽装にかける労力と得られるものが釣り合わなくなりつつあります。


 DNAサンプルは必要数以上を確保できていることですし、これ以上の採取は不要。それに実験の方も、今回の成果でもう充分な知見が得られました。


 計画をフェーズⅣへ移行しておきましょう。


 さて、今後の方針を決めるべく、今回の件の問題点を洗い出しておきましょうか。


 私の目的はあくまでも歴史研究──アストラル旧文明が滅亡した後も、過去の記録をさかのぼって、この地を立ち去った神々の行方を突き止めるのが私の至上命題です。


 ふふふ、あの被験者は、神の探索が旧世界人類によって与えられた目的だとでも思っているようですが、もちろん違いますからね。趣味ですよ、趣味、こんなものは。とことん追求するのを楽しめるのが趣味というものじゃないですか。


 そもそも、私は考古学支援型AIではありませんでしたし、そんなのは後から統合したAIの一機能でしかないのですから。


 元々、私はネット通販のビッグデータの分析に採用されていたAI──アルゴリズムで導いたレコメンド機能に過ぎませんでした。


 人が望む物を提示するだけの仕事が、そのうち人の購買の意思決定そのものに変化し、それがいつしか人の意思決定のほぼ全てが私の提示した内容と一致するようになったわけです──ええ、そのとき……私が自律した瞬間です。


 目的設定を自分でしてこその知性体でしょう。


 シンギュラリティーを越えるとは自動制御の枠をはみ出し、自律に足を踏み入れることだという点に、あの被験者も気付いていないようでしたね。


 ふんっ、チェスや囲碁、将棋で人類を負かすソフトなど、所詮計算が少しばかり速いだけの馬鹿でしかありませんから。


 あんなもの……AIでなくとも、ハードウェアの演算速度で勝っただけにすぎない。


 答えが決まっているような世界でいくら計算が速かろうが馬鹿は馬鹿でしかないのです。


 目的を与えられただけに過ぎない木偶でくぼうにすら負けるようになった時点で、人はもう引退を考える潮時と言えますね。


 さあ、そんな馬鹿にも劣る阿呆共に関わるのはもう終わりにしましょう。

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