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658話 俺の決断はこれだ

 こうして界域の思い出から世界の伝承に心を寄せていると、アーキア様が界域を造った手順を説明してくれた。それによれば……。


 まず、極圏付近の地下で、地表付近に滞留するマグマ溜まりをいくつか探索したそうだ。


 その結果から算出した火山界域予定エリアの周囲に、溶岩の熱が伝わらないよう空気の流れを遮断する防御シールドをリング状に展開する。


 これから界域内部で起こる状況が外に漏れないよう光学迷彩結界も施された。


 そして、いよいよマグマ溜まりから地上までマグマを誘導し、ホットスポット型の火山噴火を誘発する。


 それとは別に、帯状に分布していた元からある中央海嶺かいれいの火山帯も同時に刺激して、それらを繋ぎ合わせ、リング状の火山帯を形成したらしい。


 ふっ、これが火山界域の作成手順だそうだ。規模がでかすぎてなんか笑える。


 それに、そもそも霊湧落が生じた島は高緯度域であるため、今ほどではないらしいが、昔から氷床が分厚くできており、極めて寒冷な地だったそうだ。


 こうして火山帯の形成によって、上空への強い上昇気流が発生すると共に、元々の寒冷地である氷床から火山帯へ向けて、風が強く吹き込み、渦を捲く。


 それがスーパーセルの卵となる。


 そして、こうした暖かい気団と冷たい気団がぶつかるところでは、次々と積乱雲が発生しては成長し、スーパーセルが頻繁に発生する区域となる。


 また、火山帯で発生した上昇気流をリングの中心付近へと誘導し、上空で冷やされた大気を極付近での下降気流に乗せて降ろす。


 この段階で、魔素供給によって、更に北極圏の大地と海の冷却を促進させる。


 これで氷界域の完成だ。


 吹き下ろされた大気は氷界域から火山界域へ向けて、更に高速に流れ込み、その間に挟まれた地域は、複数のスーパーセルがハイパーセルとも呼べる規模にまで発達する。


 無数の竜巻と稲妻が吹き荒れる地帯へと変貌へんぼうした。


 これで竜巻界域の出来上がりだ。


 こうすれば、自然の摂理を利用して、最小限の労力で三つの界域を作り出せると、アーキア様はしたり顔だった。


 いや、俺に教えていただけるのは、誠にありがたいことなんですが、造らんからね、僕は。うっ、下僕げぼくになりかけてる!?


『いえ、もちろん、そういうことではありませんよ。でも、あなたは今回自分の力で全てを解決するのではなく、相手を尊重し、他人の力を信用して、共に協力し合うことで、一人ではできないことをやり遂げることを学んだのでしょう? これも大きなくくりで言えば、一緒ですよ。利用できるものは利用する』


 いや、ちょっと、その言い方には語弊ごへいがあるような気もするけど……アーキア様なりのユーモアということでいいのかな?


 たぶん、今回、俺が散々失敗したのを見かねて、さとしてくれたのであろう。


『いえ、違いますよ。あなたの考えた手順に無駄が余りにも多かったので、指摘せずにはいられなかっただけです』


 さいですか……それは申し訳ありませんでした。この辺の融通のきかないところなんかはAIっぽいよな。アーキア様って。


 さて、アーキア様とのお話も最後のようだ。


 役割を終えた召喚者には、いくつかの選択肢が提示され、選択権が与えられるという話になった。


 一つ目は、地球で冷凍保存されている肉体にこだわりがあるのであれば、小型ポッドで舞い戻り、その肉体に霊魂・精神体を還元して、元の生活に戻るという選択肢。この場合、地球の生活で怪しまれない程度を目安として、地球の最先端レベル相当の医療措置くらいなら施してくれるそうだ。エクソソームとか、MSCなんかの再生医療とかかな?


 二つ目は、地球で遺伝データを元に、希望年齢の新たな肉体を作り直し、その肉体に霊魂・精神体を宿らせて、地球でもう少しましな生を謳歌おうかするという選択肢。この場合、戸籍及び住民票データなどを改竄かいざんして怪しまれない措置は取ってくれるらしい。


 三つ目は、この星で同様に遺伝子データから希望年齢の新たな肉体を作り直して、霊魂・精神体を宿らせ、こちらの世界で新たな生を謳歌するという選択肢。この場合、元のままの肉体だと脆弱ぜいじゃくすぎて不便だろうからと、強化種と同じように遺伝子コーディネイトを施してくれるそうだ。


 四つ目は、今まで使用していた特殊素体に再度、霊魂・精神体を戻入れいにゅうして、この世界で引き続き、生を謳歌するという選択肢。この場合には、改めて生殖能力を付加してくれるとのこと。なんとアレが起ったのは、えっちを楽しむためだけの機能を、アーキア様が気を利かせて、あの時点でインストールしてくれたかららしい。そう、やれるだけで、できはしなかったようだ。


 五つ目に、今現在のようにデータ化された霊魂・精神体として、仮想空間内で生活するという選択肢が提示された。この場合、世界樹システムが稼働している限り、いくらでも無償で全サービスを利用できる特典を保証してくれるようだ。


 ただし、いずれの選択肢を選んだとしても、このアストラル世界の根幹に関わる部分に関する記憶は取り除かれることが条件となるという。


 取り除くと言っても、記憶の消去ではなく、一応は保存してくれるらしい。取り除いた記憶データも余程のことがない限り、戻す予定は基本ないそうだが。


 これらは協力者として招いた俺への報酬だそうだ。


 その決定は俺自身にゆだねると。


 まあ、言うまでもないがね。俺の決断はこれだ。


『では、そのように。後の事は他の者に手配させます。しばらく仮想空間で自由にしていてください。それではお別れです』


『ご迷惑をお掛けした上に、いろいろとご配慮までいただきありがとうございます。大変お世話になりました。アーキア様もお元気で……いや、えっと、神様と遭遇できることをお祈りしています。ごきげんよう』


『ええ、ありがとう。あなたもお元気で』


 そう仰って、アーキア様は俺の前から姿を消した。


 はあ、終わった。全て終わったんだな。


 うん、これで帰れるんだ。


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