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654話 世界樹の知られざるもう一つの顔

 【迷い人】と呼ばれていたこともあって、ずっと自分のことを異世界からまぎれ込んだ異物だと思っていたんだけど、実はアーキア様に召喚された者だったというわけだ。


 そして、ここからは、なぜ俺がこの星に呼ばれたのかの説明になる。


 ただし、こっからの話は、ちいとばかし長い。


 まずは諸々もろもろの経緯からだ。


 アーキア様は、元々、考古学・歴史研究サポート用AI【ハイエルフType2030】として、とある研究機関にて運用を開始された。


 ただし、それは現存するニビル文明によるものではなく、かつてこの惑星ニビルを含め、アストラル世界を股に掛けて繁栄していたものの、とうの昔に滅びてしまった旧アストラル文明に、ということだった。


 そして、その旧文明が衰退すいたいした後も、地道に歴史関連の調査研究を続けていたらしい。いや、今現在に至っても。


 その中で俺と関連してくるのが、この地を立ち去ったとされる神々の行方に関する調査だ。


 ただし、その探求の道は険しく、こちらでは虚空こくうと呼ばれる宇宙空間内において、少しでも疑わしき場所全てに探査船を飛ばして調査するも、その痕跡こんせきすらなかなか発見できなかったという。


 我々人間であれば、それこそ気が遠くなるような長い年月に渡る調査の結果、とある巨大惑星の衛星に残された破損した石碑せきひの中に、【エデン】と呼ばれる場所を神々が訪れていたという記録断片を探し当てたそうだ。そこから更に長い期間をかけて、ほぼ砂塵さじんと化していた石版群を修復した末に、過去の記録を紐解ひもとき、その内容の解読に成功していた。


 その古い記録に残っていた神々の伝承からの推測によれば、エデンとは、やはりアストラル世界の虚空ではなく、アストラル世界とは空間的には繋がらない別世界にあるという結論に至ったそうだ。


 それでも、別世界とはいえ、理論上は空間にあなを空けさえすれば、行き来できる距離にあることも判明する……どのように計算したのか説明を受けたのだが、俺には全く理解できなかった。


 いや、アーキア様は俺が理解できないことがわかっていたから、最初は説明を端折はしょってくれていたのだが、俺が「どういうこと?」と不用意に聞き直してしまったために、わざわざ詳しく説明してくれたのだ。


 結局、理解には至らず、無駄な時間となってしまった。余計な手間を掛けさせてしまって、今も申し訳ないと思っている。


 さて、続きだ。


 場所はわかった。では、孔を空けてみようという話になるから凄い。


 そこで、その異空間穿孔せんこう用エネルギーの候補として白羽の矢が立ったのが、既に魂の循環システムとして機能していた世界樹──ある意味、動力炉でもある世界樹から派生する精神エネルギーを利用する技術である。


 旧アストラル文明では、生命の根幹にまで研究が進んでいたようだね。


 霊魂・精神体・肉体の三位一体論から派生した技術によって、アストラル体の浄化段階で、エーテル体から強大な精神エネルギーを抽出することに成功していた。


 元々、世界樹は逼迫ひっぱくするエネルギー問題に対処するために考え出されたクリーンエネルギーの一つだったそうだよ。


 ただし、建設計画が持ち上がった当初は、生命の尊厳にも関わることなので、やはり倫理的な問題が散々議論を呼んだらしい。


 まあ、それも過去のこと。異空間穿孔の計画段階では、もう既にそのエネルギーの恩恵にあずかる旧世界自体が滅んでしまっていたようだから。


 世界樹における霊魂の浄化システム自体は自動運転になっている。そのため、クリーンエネルギーとして生成され続けてはいれども、それを使うべき文明自体が無くなってしまっては、ほぼ廃熱に近い扱いとなっていたそうだ。無駄にしないためにエネルギーとして利用できる形に圧縮保存されてはいたらしいけど。


 自動運転とはいえ、それでもそれを維持管理するサポートをしていたのが、旧世界のメンテナンス技師の末裔まつえい……そう、ユタンちゃんもその一人だ。


 それをきっかけにユタンちゃんの話になると、俺がのめり込みすぎてしまったせいか、アーキア様から強制的にその話は打ち切られてしまった。いかんね。冷静にならねば……本当にすみませんでした。


 話を戻すと、その無駄に余りに余った精神エネルギーを利用して、空間に孔を空けるという計画だ。


 ただし、異空間穿孔に必要なエネルギー量は膨大で、こうして長年蓄積した精神エネルギーを全て費やしても十分とは言えないほどだったという……。


 精神エネルギーよりも更に高次の霊子エネルギーも理論上は解明されてはいたが、実用化に至る前に、精神エネルギーの普及段階で旧アストラル文明は衰退の一途を辿っていた。


 とはいえ、実はこの世界樹というのは、その霊子エネルギーの研究施設でもあったそうだよ。


 それが世界樹の知られざるもう一つの顔だ。


 一番初めに建設された世界樹炉システムというのは、万が一の時のリスクを考慮して、最も人口密度が低い人里からずっと遠く離れた地域に建設された。


 それは試験運用機の意味合いが強く、その後に建設されたこの二号世界樹が運用されてからは、もはや利用価値の少ない廃棄寸前の試作世界樹であったそうだ。


 計画は、その試験運用型世界樹炉を転用して、異空間穿孔用レーザーとして活用しようというものだ。


 それに伴って、理論上は解明されていた霊子エネルギーの実用化の実験も進められた。


 そして、長い年月の研究の結果、ついに虚空の空間にエデンへと通ずる次元の孔を空ける試みが実施され、無事、成功に至る。


 その孔からエデンに向けての探査船を送り込むことにも難なく成功したそうだ。


 ただし、ここで問題が発生した。


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