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6話 導かれるように

「ふぁ~、変な夢、見ちまった……んっ?」


 翌朝、目覚めると、そこがいつもの自宅の寝室ではなく、職場のデスクでもなく、森深い山奥なのに気づいた……。


 ……うん、結構な時間、ほうけてしまった。


「ゆ、夢じゃなかったのかよ?!」


 見慣れない樹木、草は……まあ、普通というか、そもそも見分けはつかないか……いや、見たことない種類の草もある!?


 旺盛に生い茂った枝葉におおわれた樹木──それらに囲まれているにもかかわらず、光が程良く降り注ぐ不思議な森だ。


 深い森の中にあって、下草も枯れず、管理された里山のように、随分ときれいに繁茂はんもしている。


 地面に揺らめく葉の影がことのほか美しい。


 日本中を旅したわけではないが、写真やテレビなどで見た日本でよく見かける里山であったり、杉林などの風景であったりとは明らかに違う。


 どっかの国に、来ちまったんだろうか?


 あれ、いつからだ? う~む、どうやって、ここまで来たんだ?


 混乱していて……正直、なにがなんだかわけが分からない。


 熱帯のジャングルとも違うし、ヨーロッパ辺りの広葉樹の森とも、林業のために針葉樹へ転換されたような森とも、また違う。


 あえて言うなら、屋久島の縄文杉・大王杉くらいのぶっ太い樹木がそこらじゅうにあって、それなのに、それがあたかも平均的な普通の木のように佇んでいる……凄く異様な光景だ。


 更に不思議なのは、屋久島ほど降水量が多くて湿った印象でもないのに、森全体を大量の水が潤沢じゅんたくに流れているような音?! ……というか水の気配をそこはかとなく感じる。


 どこぞ?


 いくら考えてみても、正解に辿りつけそうにない。


 それにしても、こんな山奥で一晩過ごしておいて、よくもまあ、野生動物に襲われなかったもんだ。


 こんだけ豊かそうに見える森で、肉食動物がいないなんてこともないだろうに。生態系はしっかりしてそうだしな。


 はあ、運が良かっただけか?


 今更、どっと冷や汗が吹き出してきやがった。


 うわっ、藪蚊やぶかがすんげぇいるぅ! あれ!? そういえば、久々にモスキート音なんて聞いたな。


 でも、なんでだ?! 全然刺されてねえ。いつもならあれほど蚊に刺されやすい体質なのに……。


 それに、なにか暖かいものに触れたような……。


 あれっ?! 夢か?


 しばらく考えてみたものの、らちがあかない。


 このままいくら待ったところで、誰も助けにきてくれそうにない。


 しかも、放っておいても、この状況が改善することは……うん、なさそうだ。


 とりあえず、森から抜け出して、誰か人を探そうと思い立ち、歩き出す。


 しばらくすると、色鮮やかなちょうが、虹色にじいろに輝く鱗粉りんぷんを辺りに漂わせながら、目の前を通り過ぎていった。


 蝶に釣られて、足が自然とそちらに向かう。


 へえ、さっき目覚めたところは、この森の中では、かなり開けた場所だったようだ。


 でも、こうして少し歩き出すと、木の根が我が物顔って感じだ。


 地中から張り出した根が上へ、下へ、斜め上、斜め下へと縦横無尽に地面を覆い尽くしている場所が多い。やっとそのことに気づいた。


 それでいて、俺の足取りをさえぎることなく、邪魔になっている感じがちっともしないのが、なんとも不思議……。


 いつの間にか、木々のざわめき、鳥のさえずりといった森の音が消え、森閑しんかんの静けさだけが進むべき道を示しているかのようにも感じる。


 音のない深閑しんかんがシーンと耳に響いているはずなのに──どこかにリズムがあるような静寂せいじゃくの歌のようなものに心が誘われる。


 ──それでも歩き疲れて、また一服していた。


 すると、辺りに人の気配があることに驚いた。


 というか、既に大勢に囲まれていた。



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