表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/667

50話 吸血昆虫には効かんらしい

 【エルフのさと】を出発してから丸二日ほど経ったが、依然として、人が住んでいる気配のあるような地域には未だ出ていない。


 【妖精の森】を抜けるまでは道程みちのり渓谷けいこく沿いだったので、つい山の中を移動している気になっていたのだが、どうやらすぐ近くに海があるようだ。


 風に流され、時折ときおり、潮風のような香りが漂ってくるようになった。


 森が深いせいもあってか、全くもって、今の今まで気が付きもしなかったのだが……。


 当初、おおむね北西に向かっている渓谷沿いに妖精の森を抜けた後は、更に北にも広がっている妖精の森を右手に見ながら、ほぼ北に進路を取り続けている。


 それも、いつの間にやら終わりを告げたようだ……明らかに肌で違いを感じるほど、そこはごく普通の森の雰囲気へと変わっていた。


 あぁ、そうか。潮風を感じるようになったのは、結界が途切れたせいか!


 これまで北東方向に細長く続いていた妖精の森があったせいで、結界が壁のように作用していたようだ。


 妖精の森の結界には幻影の効果の他にも、大気をコントロールするような効果もあったのかもしれないな。


 今、改めて思い返してみると、結界の中では風の流れが穏やかだった気もする……まあ、今となっては確認しようもないけど。


 アリエルの話だと、この先、どうやら北から北東にかけて大きな湿地帯が広がっているそうだ。


 これからの進路としては、そこを西へ迂回うかいするように、北西方向の小高い丘陵の方へいったん出てから、北へ進むことになる。


 その丘の道からは、湿地帯をはさんで海岸線がよく見えるらしい。


 しばらくの間、疎林そりんの中を進む。緩やかな上り坂を経て、なかなか見晴らしの良いところに出た。


 あぁ、なんかまぶしい! 光が強い。


 これまでずっと緑と土とかげの世界を進んできただけに、まばゆいばかりに青く輝いている世界に、少しばかり頭痛を覚える……。


 ひたいに手をかざし、しばらく経って目が慣れてくると、そこには──光に満ちあふれた楽園のような雰囲気を漂わせた、見るからに南の海が広がっていた。


 心まで吸い込まれそうな美しいコバルトブルーに輝く遠浅とおあさの海──その周辺部だけがちょっとだけターコイズカラーに縁取ふちどられており、更に遠く背後にはあざやかな藍色あいいろに染まった深そうな海を配しているところも、なかなか素敵だ。


 うん、思っていた以上に暖かい地域のようだな。


 何気なく、今まで辿ってきた経路の方向を振り返ってみると……。


 これほどまでに距離があるにもかかわらず、まだまだこの位置からでもどっかりと偉容をほこる世界樹がそびえていた。


 しかし、いったいどれ程の高さがあるのだろうか?


 スカイツリーをはるかに超えている高さに加えて、その幅の広さも圧巻だ。


 遠くに離れるほど、その巨大さがきわだってくる感じすらある。


 実は今、水魔法の練習がてら、目の前に水のレンズを作って、宙に浮かべ、望遠鏡代わりにし、世界樹をながめているところだ。


 いや、本当にどんなんなってるんだろうと思ってね……う~ん……あれ!? なんだろう? ……おいおい、って! あ……まさか……。


「なにしてんだよ? 置いてくぞっ!」


「ん?! あぁ……ちょっと、ちょっと待っておくれよ! おまえさん」


「次の野営地はまだ先だぞ。のんびりしてっと、また虫に集られるから、早くここを抜けたいんだよ! さっさとしろ」


 こっちの小芝居もそっちのけ……なんでもアリエルの話だと、この湿地帯周辺にはブヨの大群がくそうだ。


 それも普通のブヨと違って、夜も活発に活動するような吸血鬼みたいなやつが。


 そんなとこで寝たら、朝には大変な思いをする──というか、したらしい……エルフの郷へ向かう往路の際に、アリエル自身が。


 ご愁傷しゅうしょう様。


 無駄に神聖魔術を使って治療する羽目になったと、怒り心頭のご様子でした。


 あれだけ凄い破魔のネックレスも、吸血昆虫には効かんらしい。


 俺も都会育ちだけに、分かるよ、その気持ち。昆虫苦手なんだよね……。


 子どもの頃は、昆虫なんてへっちゃらというか、積極的に昆虫採集までして、むしろ格好いいとすら思っていたはずなのに……どうして大人になったら、こうも生理的に受け付けなくなってしまうのか?


 大学の講義で、昆虫の体液循環とか、外骨格とか、地球上に発生した経緯的な話を聴いてから、昆虫をどうしても地球外生命体としか見れなくなった節がある。


 あれがきっかけかも……うぅっ、想像しただけでも、気持ち悪っ!


 それとも、人間以上にすぐ増えるところに同族嫌悪的なものを感じているのだろうか?!


「えっ!? ちょっとぉ~アリエル、待てって!!」──はやいよ! 早すぎるよ~!! ス○ッガーさん。


 おいおい、本当にどんだけ速いんだよ、あいつ。


 やっとのこと追いついて、問い質してみれば、まさかの瞬動アイテムの使用とは……。


 身体に相当負担がかかるのか、すぐに息もえで、へばってたけど……。


 あの体力バカにしか見えないアリエルですら、これだ。


 それって、普通の人には絶対に使えないだろう。欠陥アイテムなんじゃねえの? 普通の人なら死ぬべさ。


 それはともかく、そんなこんなでやってきました最後の野営地へ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ