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4話 つうか、むしろ、ぴんぴんしてるし

〔勇者アリエル side〕


 やばっ! 呪韻か?! 呪縛する気か?


 んっ!? いや、なにも……変化はないか。


 くっ……だが、こちらも打つ手が無い。


 とりあえず、「必殺のぉ~」と、必殺技を放つ前振りをしたものの、そのまま途方に暮れた。


 突然、「やめろっつってんだろ! この馬鹿!!」と怒鳴られたのに対して、反射的に「バカじゃない!」と言い返したまではよかったが、「──な!?」


 ……動けなくなった。だってぇ……。


 立ち上がった奴は男だったんだもん……あそこが……ほら、ぶら下がったあそこが──。


 ──んっ!? やはり呪縛の類だったか? 奴が訳の分からないことをほざいた瞬間、身体がびくっと震えて、呪縛が解けたみたい。危なかったぁ。


 とんちんかんなことを言い出した奴に対して、「……死んでないし……死ぬようにも見えない」、「つうか、むしろ、ぴんぴんしてるし。傷だって治ってるし」と、事実を突きつけてやった。


 それにしても、魔王ともなると、ここまで不死身なのかよ。


「あれ?! 斬られたよね?」


 おいおい、なに言ってんだ? 魔王は痴呆ちほうか? えらくじじいなのか?


「ああ」と適当に返事しつつ、再び「必殺のぉ~」と叫んで、まずは考える、考える……くそっ、なにも浮かばねえ……とりあえず、やつの魔法は止められた……こうなったら、すきをついて、いったん引くか? ──いや、だめだ。目を離した隙に、なにしでかすか、分かったもんじゃない。


 でも、このまま黙ってたら、やばい。時間稼ぎを。何か……誰か……。


「やめろって!」


 う~む、とにかく、会話を続けるしか──「魔王、死すべし!」


「魔王じゃないけどね」


 ふん、魔王じゃないなら、なんだと言うんだっ!


 うん、怯んだそぶりは一瞬たりとも見せちゃならない。ありったけの声で叫ぶしかない──「魔王、滅ぶべし!」


「人の話、聞けよ! まったく」


 人だとぉ!? どの口でぬかす。


 できることなら、こっちだって、そうしたいよ。人ならねっ!


「おまえは人じゃないだろうがっ!!」


「人ですぅ!!」


 乙女か! つうか、姿、形だけ人族を真似てれば、ばれないとでも本気で思ってるのか?


 第一、「人にあんな膨大な魔力を扱えるものかっ!」


「できちまったんだから、しょうがないだろうがっ! そもそもが俺の力じゃねえし!!」


「な!? 借り物の力だと? 背後に……更に凶悪な存在が!」


 嘘だろうっ!? えっ、ほんとなの?


 これほどの魔力を扱えるやつが、まさかの下っ端?


 大魔王、もしかして魔神とかがいるってこと!?


「とりあえず、この近くに俺が今住んでる村里があるから、付いて来な。えっと……おまえ、名前は?」


 え、なにを馬鹿な……ふん。


「魔王に名乗る名はない! あっ、村人を人質に取るつもりか?」


 卑怯ひきょうな! これほどの力がありながら──まだ油断せずに、弱者を盾にするつもり?


「俺はいとう たかしだ。えっと、【いとう】が家名で、【たかし】が名前。……俺は名乗ったからな」


 家名持ち! 爵位持ちなら、魔の貴族か、やはり魔の王族だ。


 はぁんっ!! 隷属させる気か!? 魔族を【真名】で呼ぶものか。


 おまえなんて(仮)扱いだ。念のためな。


「ふん! (仮)魔王タカシ……なんちゃらよ。私は勇者、アリエルだ!」


 しまったぁ。余計なこと考えてたら、つい、こちらの素性すじょうを明かしちまった。


「里の人たちに俺の素性を証言してもらうから、いいから付いてこい!」


 さては、どこかに仕掛けた罠へ誘導するつもりだな。


「嘘を言うな! この近くにはエルフ様の集落しかないはずだ」


 そうだ! 聖樹様の御力を借りよう。


「その村里が俺の住んでるところ、な、ん、だ、よっ」


「はん! 語るに落ちたな。私でも門前払いなのに、魔族、ましてや魔王をエルフ様が受け入れるはずもない!!」


 いや、待てよ。ふふふ、いいぞ。【エルフの郷】まで誘い込んで、囲んでしまえば、まだ勝機はあるか。


「もう、黙って付いてこい!」


 しかし、こいつ。何をこんなに苛立ってる?


「良かろう。だが、エルフ様に何か良からぬ事をしようとするそぶりでも見せたら、その場で叩き斬るからな!」


 覚悟しろよ、魔王。たこ殴りにしてやる!


「はぁ~、置いてくぞ」


 自ら火の中に飛び込む虫め!


 絶対に一泡吹かせてやる。


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