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37話 決して枯れたわけではないんだよ

 まあ、歯にきぬ着せぬ物言いだから、実際にはキャバクラとかで働くのは、もしかすると無理なのかもしれないけどね。


 それでも、人を引きつける不思議な魅力は満点だ。


 そもそも、今現在、近くに人家も無く、町まで辿り着く間に、何回も野宿しなくちゃならない状況なんじゃないのか?


 いくら強いとはいえ、見知らぬこんなおっさんと夜を一緒に過ごすのって、不安じゃないのかね?


 まあ、この世界に来てからというもの、正直、身体の中心付近の方は、全くもって微動だにしないのだけれど……。無反応を決め込んでいるのだけれど……。


 その代わりに、妄想的なものは酷くなっている気がしなくもない。


 う~ん、あこがれの異世界転移からの旅立ちで、ちょっと舞い上がっているのかもな。


 それとも、これも肉体が希薄になったせい? いや、精神体が濃密になった影響なのか?


 これって精神衛生上、あまりよろしくない状況と言えるんじゃね?


 ま、まさか! あの……イ……イン……駄目だっ! はぁ~……口にできない。


 口にした瞬間に、もう二度と男に戻れない気がしてきた……まだ四十代だぞ……若すぎやしねえか。


 あはは、今なら、美少女が裸で誘ってきても、結構、平静を装えそうですらある……後で絶対に相当塞ふさぎ込むだろうけどな。


 怖い、若い子。


 でも、正直、立て板に水な美少女とお話しするのは、まじ楽しい。


 話だけで大満足! なんて思える日がこんなにも早く訪れるとは……。


 いやいや、決してれたわけではないんだよ。他はすこぶる元気だもの。それゆえに辛いんだけど。


 それはそうと、ウッドエルフの隊長から、この森には【幻影結界】が張られているって、聞いた覚えがあるけど、迷わないのだろうか?


 いや、あれは森の外へ外へと誘導され、いつのまにか森から抜け出てしまうだけだったっけな。


 そういえば、最初に会ったあの連中とは、あれ以来、一度も会わなかった気がするけど、警備で里の外にでも出払ってたのかな? まっ、いっか。


 アリエルの話しぶりからして、道は覚えているようだし、案内通りに付いていくしかないか。


「それにしても、どうやって幻影結界を抜けて、エルフの郷まで辿りつけたんだ?」


「あぁ、それな! たぶん、これのせいだろうな」


 おまっ、結構いい胸、いや、なんでもない……。


 アリエルが襟元えりもとから黄金色に輝く首飾りを取り出して、こちらに見せてきた。


 結界破りの効果があるアイテムなのだろうか?


「いや、それにしたって、エルフの郷までの道、どうやって知ったんだよ」


「まあ、そこは実戦でつちかった勘? 途中でなんかきれいなちょうを見つけてな。それを追っかけてたら……なんか着いた……エルフの郷に」


 勘って、おまえ……。あ……れ? ……俺もそういえば、どこかで……そんな。


「勘違いするなよ! ちゃんと道は覚えてっから、帰り道は大丈夫だ」


 なにかが思い出せそうになって、記憶を辿っていたのに、大声で弁解し出したアリエルにさえぎられた。ああんもぉう、消えちまったじゃねえか!


 仕方ないので、質問を続ける。


「なあ、この妖精の森って、結構広いの? どのくらいで森を抜けるんだ?」


「そうだなぁ、妖精の森自体は結構広いとは思うけど、こちら側から抜けるのには、それほどかからないはず……今日の夕刻ぐらいには抜けられるかな? ……まあ、その先もしばらく別の森だけどな」


 アリエルによると、妖精の森の中で火をおこすのはタブーと昔から言い伝えられているそうだ。


 火を使うことが辛うじて許されるであろう妖精の森のぎりぎり外側──アリエルが往路で野営した場所に夕方までには辿り着きたいらしい。


 今のペースでも結構余裕があるそうだから、急ぎはしないみたいだ。


 そうやって話しながら、計り知れないほどの樹齢を重ねた大樹ひしめく森の中、道なき道を渓谷沿いに進んでいくと、かなり大きな岩が目に入ってくる。


 その一枚岩の上半分は浸食されたのか、まるでテーブルの上のように平らな面になっていた。


 アリエルが軽やかな足取りで飛び乗ると、ここで休憩すると言い出した。


 あぁ、確かに……春のうららかな日差しが心地好い。


 お弁当として、食堂のおねえさんから大量に頂いたサンドイッチをアリエルにも分けてやると、一口頬張ほおばってから、唖然あぜんとしていた。


 ふふふ、そうだろう、そうだろう! 食堂のおねえさんの料理は、超が付くほど旨いのだ。


 別れ際に抱きつかれた感触を思い出して、幸せな気持ちに包まれる。


 絶対にあのお尻もいいものに違いない。今更ながら、抱きつかれた拍子に、しれっと触っておけばよかったと後悔をしている。いやいや、いかん。そうじゃない。


 ともかくだ。こんなにも緑の綺麗なところでいただく、美味しいお弁当は極上だ。


 んだ湧き水だって、ほのかに甘くて、なんとも旨い。


 こんなにゆるりと羽休めをさせてもらって良いのだろうか?


 ふぅ~、空気も旨い。


 なべて世は事もなし! あはははは。


 あぁ、でも、これで……もう本当に、おねえさんの料理って、しばらくの間、食えねえじゃんか……。


 うぅっ、もう帰ろっかな?


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