140話 つうか、なんだ?! 偽って?
こうしてやっとのことで、ユタンちゃん専用モビルスーツ……おっと、違った……ユタンちゃん専用妖精モデルシューズの製作が開始されたというわけだ。
もし仮に色が赤にできるのだったなら、是が非でも、ここは三倍速を期待したいところだ。
黒だと三人必要になるし、青だとビール腹だし、白とかオレンジとかだと、もう普通の人には伝わらなさそうだしな。
あぁ~あ、また見てぇ……ガンダ△、特にファーストGとか逆襲のSとか、なんかの拍子に見たくなるな。くぅ、もう無理なのか、もう異世界では……。
郷愁に浸ってばかりもいられないし、次、行こう。
とはいえ、結構な数の靴屋を聞き回ってたから、もう時間的な余裕がそれほどないんだが。
でも、ホテルでもらった地図でちょっと気になったことが……。
そう思って地図を何度も見返していたら……大変なことが判明した。
と言っても、地図に書いていることではなく……いや、地図に書いてはあるんだけど、その内容ではなく、文字……そう文字のことだ。
……う~ん、ちょっと……恥ずかしい。今まで気が付かなかったなんて。
えっと、えっちなこととかではなくて、その……読めちゃいました文字が……もちろん俺ではなく、スプライトさんが。
そうなんだよね。スプライトは何気に文字が読めるみたいなんすわ。
俺の勝手な思い込みから、妖精は人族の文字が読めないと勘違いしていただけで。
どうやら多少の方言的な違いとか、時代的な違いとかはあっても、元々が共通言語だそうで、大した違いはないのだとか……。
そういえば、初めて魔導書を見て、俺が文字読めないとわかったときにも、散々馬鹿にしてきたくらいだったもんな。
あのときは単に悪戯好きで、からかってきてるだけだと勘違いしていたけど。
そっかぁ、文字読めたのかぁ……なんだかなぁ。
そうとわかれば、早速、先ほどから気になってた疑問をぶつけてみよう。
「なあ、スプライト。これって通りの名称だよな?」
「えっ、どれっ!? ええ、そうね。それがどうかしたの?」
「いや、だって、これと、それと、ここも、後はこれなんかも、俺には全部同じ文字に見えるんだけど」
「ええ、そうよ。だって同じ単語だし、一緒よ。あれっ!? え、変ねぇ?」
「だろうっ? おかしいんだよ、この地図。通りの名前だけは結構間違ってるんだよ」
「ちょっと、貸して! ……んっ?! あぁ、そういうこと!! わかったわ。違うわよ、間違ってなんかないの、この地図自体は……たぶん」
「なんだよっ!? たぶんって」
「えっとね。それは──」
スプライトが言うには、通りの名前は似ているが、ちょっとだけ違うそうだ。
とはいえ、俺が指摘した単語はまったく一緒で「パインフルーツ通り」という綴りであった。
これが【パインフルーツ通り】から始まって、【南パインフルーツ通り】、【北パインフルーツ通り】、【東パインフルーツ通り】、【西パインフルーツ通り】、【中央パインフルーツ通り】、【新パインフルーツ通り】、【真パインフルーツ通り】とか、【偽パインフルーツ通り】とか、とにかくパインフルーツの大安売り……つうか、なんだ?! 【偽パインフルーツ通り】の偽って?
まあ、余程、パイナップルがよく採れる地なんだろうということはわかった。
そう思って、果物屋らしき店を二軒ほど覗いてみたものの、ちょっと見た限りでは、パインフルーツらしき物を見つけることができなかった。
スプライトにも協力してもらうために、どういった果物かの説明をした。そのせいもあってか、二人とも興味が湧き、今では食べたそうな表情を浮かべたり、時折生唾を飲んだりしている。
なんとか探し出して、食べさせてあげたいんだけど……。
くそっ、嫌だが、仕方ねえか!? やはり奴らに訊くのが早いかぁ。
やだなぁ、絶対、奴らを喜ばせちゃうのはわかりきってるのに……でも、うちのお嬢さん方を喜ばす方が最優先だから、ここはしょうがない。
「おーい! ちょっと、すんません。アンバサダーの人、ちょっといい?」
「なんだぁ、事件すかぁ? あんたを捕まえればいいんすかぁ?」
やっぱりな。こいつら、さっきからずっとスプライトのこと、ちらちら見てたから、嫉妬してるんじゃないかとは思ってたけど、あからさまだな……本当、こんな連中に治安任せてて、大丈夫なん?
これでも、まあ、ごろつきよりは、ましってことなのか?
それとも、ごろつきに定職を与えて、監視してる体なのかもな。




