131話 ミルクに浮かんだプリン……最高です
くっ、だが、やり過ぎてしまったようだ。気だるさが半端ない……体内魔素をほぼ使い切ったか!?
いや、まだだ……まだ何もやりきっていない。未だに始まってすらいない。今倒れるわけには……。
フラフラになりつつも、気力を振り絞って、スプライトを説得しにかかる──。
「ええ、いいわよ」
あっけなく了承が取れたのだが、もうこのときには、膝が笑っていた。
とはいえ、予定どおり、先に入ってもらって、入浴後の色っぽいお姿を拝見させてもらうつもりでいたのだが……。
「なに言ってるのよ? 一緒に入ってよ。あたしもユタンも使い方なんて知らないんだから」
「わからん」
どぉうぇいっ、い、いいんじゃろか!? 夢やなかろうか?! ほんまに、ほんとに、よかとですか?
「よっしゃあっ!」と雄叫びを上げつつも、急遽、衝立だけは拵えた。さすがに脱衣所をもう一つ造るだけの余力が残っていなかったので……ヘタレと笑うがいいさ。
だって……洗い場だって、湯船だって、一緒なんだぞ……タオル一枚で前を隠しきれないほどのすっぽんぽんのスプライトさんと。
……ユタンちゃんも傍らにいるが、さすがの俺でも今はそっちに意識は割けないでいる。
そっぽを向いてる振りをしながら、二人に……特に一人にシャワーやボディーソープのボトルの使い方とか、懇切丁寧に洗い方を含めて、実地で教えていく。
泡まみれって、なんでこんなにもエロいのか!? うっはぁ、尋常じゃねぇ。
はあ、泡と一緒にとろけちゃいそう。
全身いっぱいに、かいていた汗をすっかり洗い流して、さっぱりしたところで湯船に移った。
途中、濡れたタオルが張り付いたプリンが、歩く度にぷるんぷるん震えていたのを俺は一生忘れない。
檜の香り漂う浴槽に張られたのは、乳白色のミルク風呂だ。
普段、自分が浴槽に浸かっているときは、湯の中が見えない方が落ち着くもんだから。
スプライトに説明するときにも、そう言っちゃった手前……もう、仕方がなかったので……こんなことならと、今は後悔してる。ただの透き通ったお湯の方がいいケースがあったのかよ、って。
いや、俺にしては上出来だって! なにを贅沢なこと考えてるんだよ。贅沢に慣れてちゃ駄目だっての。幸せがどんどん薄まっていっちゃうよ。
充分だろ!? これでも充分すぎるだろうに。
見てみろよ、湯船に気持ちよさそうに浸かって、寛いでるあの表情を。
うん、俺には充分だね。
それにプリンにミルクをぶっかけるなんて……いや、ミルクに浮かんだプリン……最高です。
──どれほど経ったのか、ちょっとわからなくなったけど、でも、ほらっ! やっとのことで、理性を取り戻すことができました。
湯船に浮かべた洗面器──半分くらいお湯を入れたその洗面器に乗って、ユタンちゃんが両手で楽しそうに漕いで遊んでいるのが目に入ってきたくらいだから。
しっかりと身体が温まり、疲れがすっかり取れた。
完全にのぼせあがる前に、風呂をあがるとしよう。
ミルク風呂だったから、シャワーでしっかりとミルクを洗い流しておくのだけは忘れない。
その湯だけは水の精霊さんの御力を拝借した……すまん、もう、空っぽなんだよ。うん、助かった。
でも、最後の最後で、スプライトのやつが……いや、女神様がとんでもないことを言い出した。
「むくみとかいうのを取るには、入浴後に……えっと、マッサージだっけ? それをした方が良いって言ってたじゃない。やってよ! あたしに。やったことないから」
やりますとも、槍増すとも、今度こそはと、根性入れ直し……あ、はれっ?! ──ッゥ──
──目を覚ましたときには毛布に包まれていた……なんだよ、夢かよ? と思ったが、なんか、いつもと景色が違う。
しばらくして、ここがさっき丹精込めて造りに造った脱衣所であることに気づいた。
そばで色っぽく女の子座りしていたスプライトに訊くと、どうやらあの後、俺は疲れ果てた末、気を失って倒れてしまっていたそうだ。
身体を拭いて、パンツだけは穿いた後だったから、そのまま毛布を掛けて寝かしてくれてたらしい。
何度か様子を見たり、起こそうとしてくれたりしたみたいだが、翌朝……そう、もう日が変わっていた。結局は朝となった今まで寝落ちしたままだったらしい。
「晩御飯はどうした? 用意してなかっただろう?」と訊くと、「作り置きの燻製を二人で食べて、レモン水とオレンジジュースを飲んで済ませたから平気」と告げられた。
なんにしても、空腹で一夜を過ごしたのでなくて、良かった。
「寝るときもここの床って、すごく居心地がよかったよ。気に入っちゃった! つくるの大変みたいだから、無理しなくていいけど、機会があったら、またつくって。また一緒にお風呂入ろうねっ」
俺は首が折れるのも厭わぬ速さで何度も頷くしかなかった。
ふっはぁあ、良かったぁ~ぁ! ほんとに……生きてて、良かったよぉぉぅ!!




