125話 ほらほら、見てる見てる
ははは……晴れたなぁ、すっかり……うん、いい天気だぁ。
それにしても、雨の中をどんどん進むのは結構だけど、どろんこまみれなんだよなぁ……いや、足下もそうなんだけど、あの【歩いてくボックス】が……あぁ~あ。
あれっ!? ユタンちゃんって、前、ちゃんと見えてんのか?
あぁ、大丈夫か! 別に、壁が透けて見えてるわけじゃないもんな。
光の屈折を利用しててよかったよ。視界不良の運転は危ないからね。
にしても、汚いなぁ。
たとえ水洗いしたとしても、またすぐに泥が付いちゃうだろうし……撥水加工でもしとくか? 汚れ落ちも速いだろうから。
『ユタンちゃん! ちょっと止まって。あと、こっちに来て。少し休憩しよう』
おぉっ! 泥道でも、凄い機動力だ。
「おわっと!」
危うく泥まみれにされるとこだった……あれっ?! 今のって、わざとじゃないよね?
まぁっ、いっか。それより撥水加工の方が先だ。
えっとぉ……愛車にかけてたあの馬鹿高かったやつ。ガラスコーティングの。
その前のフッ素コーティングの方は、いまいちだったからな。
別に、金出して人に頼むわけじゃないし、値段うんぬんは関係ねえしな。
そもそも、自分の魔法でちゃちゃっとやるから、どうせ只だ。
なら、性能が良さそうな方で。
確か、シリコンウエハーの表面処理剤にも使われてるやつだって、雑誌にも載ってたもの。
う~ん、イメージだけでいけるかな?
あっと! その前に、【歩いてくボックス】の傷だらけの表面をきれいに削っとくか!?
いや、でもなぁ。ユタンちゃんがしてくれた塗装も剥がしたくないんだけど……。でも、仕方ないか。また、お願いしよう。
あれっ!? これって? へえ、そうなんだぁ。表面塗装じゃなかったのかぁ。
おっ、やっぱり地金そのものに色が付いてる!? でも、これって、どうやったわけ? すげえな。
まあいいや、それならそれで。
丁度いいから、風と土の融合魔法【グラインダー】で少し削って、傷を消しちまおう。
──よしっ! こんなもんだろ。
後は、ガラスコーティングだ。
とにかく、油とか、水とか余すところなく弾いてくれるイメージで……しかも、ごろごろと、いつも転がってるわけだから、傷が全く付かないほどの硬質のガラスをイメージして、表面加工を施す。
どうだ!? やったか?
いぇーいっ! 成功じゃん。ぴっかぴかだもんよ。
おっ! ユタンちゃんも、喜んでる喜んでる。
やっぱ、細かい傷とかいっぱい付いてたからな……そりゃあ、気になるよな。ユタンちゃんの眼力なら当然だ。
「なんか前にも増して、高級感が出てきたんでねえの。ははは、ユタンちゃんもそう思う? だよねぇ!」
やったね。ユタンちゃんの機嫌もなんか良くなったみたいだし、ここはだめ押しということで……。
じゃじゃーんっ! 豚のベーコン……を始め、各種燻製の数々だ。
実はまだ、ユタンちゃんには内緒にしてあったんだよね。
ほらほら、見てる見てる……って、あぁぁ!
「ごめん、ごめんよぉ。別に焦らすつもりなんてなかったのに……ああ、もう、こんなに涎たらしちゃって」
えっと、タオルは、っと……よしっ! これでいいな。
「ははは、好きなのを選んでね。今日はどれがいい? ん!? これかぁ? えっと、これは水牛肉の燻製だよ。さあ、どうぞ!」
「まいど」
あはは……かわいっ!
「スプライトも味見してみないか? 俺もまだ食ってないし」
「うん、ありがと」
「はい、どうぞ!」
「はい、どうも! えへへ」
んっ!? やっぱ硬いな……こりゃぁ確かに、肉屋の説明どおり、金槌で叩いて、肉の繊維を崩してなかったとしたら、食べられなかったかもな。
でも、味の方は悪くない……表面をカリカリに仕上げてるから、芳ばしくて、これはこれで旨い。
肉の繊維の方も、コンビーフみたいだと思えなくもないし、噛めば噛むほど旨みが出てくる感じだ。
まぁ、やっすい肉だったから、こんなもんだろ。
よく噛まなきゃならんから、顎も鍛えられるし、脳の血流も良くなるから、頭に良い。
唾液の分泌が促されて、消化にもいいし、免疫だって上がる。
「コスパも最高だから、食べ盛りの子どもがいる家庭向きだぞ」って、肉屋も言ってたくらいだからな。そういうことなんだろう。
二人も結構気に入ってくれたみたいだし。うん、良かった良かった。




